インフルエンザの基本情報
新型コロナウイルス感染症の影響でインフルエンザの流行が例年より少なかったことから、全年齢でインフルエンザへの抗体保有率が下がっていると言われています。
特に高齢者や小さい子どもの場合は感染してしまうと重症化するリスクがあり、死亡することもある病気です。
この記事では、症状や種類、検査、治療、感染してしまった場合の注意点などをご紹介します。
1.症状・特徴
インフルエンザはインフルエンザウイルスが原因で起こる感染症で、飛沫感染で広がり特に冬に流行します。
症状は風邪と似ていますが、風邪に比べて重い症状が現れることが多いです。
主な症状には次のようなものがあります。
・38℃以上の高熱
・頭痛
・全身倦怠感
・筋肉痛
・関節痛
・咳
・鼻水
・のどの痛み
また、肺炎や脳症などの重い合併症になることもあります。
インフルエンザウイルスにはA、B、Cの3つの型があり、人の間で流行するのは主にA型とB型です。
A型とB型のインフルエンザウイルスの表面にはHA(ヘマグルニチン:赤血球凝集素)やNA(ノイラミニターゼ)という棘状の糖たんぱく質があります。
ウイルスがヒトの細胞内に入る際に重要なのがHA、細胞内に入り増殖した後に周りの細胞に感染を広げていく働きをするのがNAです。
【参考情報】『インフルエンザとは』国立感染症研究所
https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/219-about-flu.html
1-1.A型インフルエンザ
A型インフルエンザウイルスは毎年少しずつ遺伝子変異を起こすため、毎年のように流行を繰り返すのが特徴です。
人から動物へ、動物から人へと感染することもあり、特に鳥インフルエンザが突然変異を起こして人に感染するようになると、人に感染したことがないHAを持ったインフルエンザウイルスが出現するため、感染が拡大しやすい傾向にあります。
このように感染症が大流行することをパンデミックと呼び、1918年のスペイン風邪や2009年の新型インフルエンザなどが有名です。
また、HAとNAの組み合わせによってたくさんの亜型があるため、同じシーズンの中で2回A型インフルエンザにかかることもあります。
流行時期としては11~2月が多く、症状は高熱や頭痛、関節痛、筋肉痛などが中心となります。
【参考文献】”Influenza A” by Healthdirect
https://www.healthdirect.gov.au/influenza-a-flu
1-2.B型インフルエンザ
B型インフルエンザは、人と人との間でしか感染せず、変異もほとんどないため大流行を起こす可能性は低いとされています。
流行時期としては2~3月が多く、症状は下痢や腹痛などのお腹の不調から始まるのが特徴です。
1-3.その他のインフルエンザ
<季節性インフルエンザと新型インフルエンザの違い>
季節性インフルエンザは、原因となるA型インフルエンザウイルスの抗原性が小さく変化しながら毎年流行を繰り返します。
それに対して新型インフルエンザは、抗原性が大きく変化したものです。
抗原性が大きく異なるウイルスが現れると、多くの人が免疫を持っていないため、急速に感染が拡大します。
一旦感染が拡大し、多くの人が免疫を獲得すると、新型インフルエンザも季節性のインフルエンザになり落ち着いていきます。
【参考情報】『令和5年度インフルエンザQ&A/Q3』厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/infulenza/QA2023.html
<鳥インフルエンザ>
鳥インフルエンザは、鳥類に対して感染性を示すA型インフルエンザの一種です。
通常、人に感染することはありませんが、死んでいる野鳥などを見つけても触らないようにしましょう。
<薬剤耐性インフルエンザ>
薬剤耐性インフルエンザとは、抗インフルエンザウイルスが効かない、または効きにくくなったウイルスのことです。
治療薬に対して抵抗性を示しますが、他のインフルエンザウイルスより感染力が強いわけではありません。
【参考情報】『抗インフルエンザウイルス薬の薬剤耐性化とその対応について』厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou01/kouen-kensyuukai/pdf/h28/kouen-kensyuukai_04.pdf
2.検査・治療
比較的症状が軽い場合は、受診せず自宅にある常備薬などで療養することもできます。
ただし、持病がある方や妊娠している方、乳幼児、高齢者などは重症化しやすいため、なるべく早めに病院を受診してください。
2-1.受診する診療科は?
インフルエンザが疑われる場合、まずは近くの内科を受診するのが良いでしょう。
時期によっては発熱症状がある方の受診を行っていない場合や、診療時間・入口が異なる場合がありますので、事前に電話で相談することをおすすめします。
発熱患者の診療をしている医療機関が分からない場合、お住まいの市町村の保健所などに設置されている発熱相談センターに電話をすると受診の案内を受けることができます。
持病がある方や妊娠中の方はかかりつけの病院にまずは電話をして相談しましょう。
2-2.受診の目安は?
症状が出てから12時間以降に検査を行うと正しい結果が出やすく、また発症してから48時間以内に抗インフルエンザウイルス薬を服用すると、症状の悪化を防ぐことができる可能性が高くなると言われています。
そのため、症状が現れてから12時間から48時間の間に受診することが推奨されています。
また、次のような症状がある場合は早めに病院を受診しましょう。
・呼吸困難や息切れ
・胸の痛みが続いている
・嘔吐や下痢が続いている
・3日以上発熱が続いている
・症状が長引いて悪化している
【参考情報】『インフルエンザかな?症状がある方へ』厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou04/inful_what.html
2-3.検査方法
インフルエンザが疑われる場合、病院で「迅速診断キット」を使って検査するのが一般的です。
綿棒のようなものを鼻の奥に入れて粘膜を採取して行うので、人によっては痛みを感じることもあります。
結果が出るまで30分程度で、陽性/陰性の他にA型/B型のどちらに罹っているかも鑑別することができます。
2-4.治療
インフルエンザの治療としては、対症療法と抗インフルエンザ薬の投与を並行して行います。
対症療法とは、発熱などの今ある症状を緩和するための治療のことです。
自宅での安静療養が原則ですが、水分補給や食事摂取が難しい場合は病院で点滴を行うこともあります。
抗インフルエンザ薬には経口薬のタミフルや吸入薬のリレンザなどがあります。
途中で症状がなくなっても自己判断で中止せず、医師の処方通りに服薬しましょう。
【参考情報】『インフルエンザ』日本呼吸器学会
https://www.jrs.or.jp/citizen/disease/a/a-02.html
【参考文献】”Flu” by Cleveland Clinic
https://my.clevelandclinic.org/health/diseases/4335-influenza-flu
3.インフルエンザと診断された場合
症状が治まった後もウイルスの感染力はまだ残っているため、元気になったからといって職場や学校に行くとほかの人に感染させてしまう恐れがあります。
受診などのやむを得ない外出の際にはマスクを着用するなど、周囲に感染を広げないことも大切です。
3-1.自宅療養における注意点
インフルエンザと診断され、自宅で療養する場合は次の点に注意しましょう。
・処方された薬は、医師の指示に従い最後まで服用する
・こまめな水分補給、消化の良い食事を摂る
・部屋の湿度を50~60%に保つ
・1日数回の部屋の換気を行う
・家族などと同居している場合は、マスクや手洗いうがい、部屋を分けるなどを行い家庭内感染を予防する
また、稀にインフルエンザに感染した子どもが異常行動を起こし、高層階から転落するなどの死亡事故が報告されている為、未成年者がインフルエンザと診断された場合、一人にしないようにしましょう。
【参考情報】『インフルエンザの基礎知識』厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/bunya/iyakuhin/file/dl/File01.pdf
3-2.職場や学校へ、外出できるようになるのは
インフルエンザ発症前日から発症後3~7日間は、ウイルスを排出している状態です。
そのため、発症後1週間程度は外出を控えたほうが良いでしょう。
出席・出勤停止期間などは年齢によってわずかに異なります。
〈未就学児(幼稚園・保育園)の場合〉
園児の場合は「解熱後3日」かつ「発症後5日」が経過していることが登園の条件となります。
〈小学生以上の場合〉
学生の場合、「解熱後2日」かつ「発症後5日」が経過していることが登校の条件となります。
〈大人の場合〉
出勤停止期間について法律では決められていませんが、会社の就業規則などで定められている場合もありますので、そちらに従いましょう。
【参考情報】『インフルエンザQ&A』厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou01/qa.html
4. おわりに
インフルエンザは冬に流行することが多く、A型では発熱や痛み、B型では下痢や腹痛のような消化器症状が中心に起こります。
1週間程度で回復し軽症で済む場合も多いですが、持病がある方や妊娠している方などは重症化しやすく注意が必要です。
流行している時期は、日頃からの手洗いうがい、マスクの着用など感染予防に努めましょう。