家族が気づく危険ないびき・口呼吸の対処法と受診のポイント
「夜中のいびきがうるさくて眠れない」「寝ているパートナーが口を開けて苦しそう…」そんな経験はありませんか。
いびきや口呼吸は単なる生活音と思われがちですが、実は睡眠時無呼吸症候群など健康リスクのサインの場合もあります。
本人に自覚がない分、家族の気づきと対応が重要です。
この記事では、危険ないびきの特徴から、角が立たない伝え方、観察のチェック方法、そして受診のポイントまでを分かりやすく解説します。
大切な家族全員が安心して眠れる環境を一緒に整えていきましょう。
1.危険ないびきのサインに要注意

いびきには「たまたま疲れている時のいびき」から「放置できない危険ないびき」まで様々なタイプがあります。
家族が夜中に気づけるいびきの危険サインを知っておくことで、重大な疾患の見逃しを防ぐことにつながります。
1-1. 呼吸が止まる・不規則ないびきは要警戒
常に大きないびきをかいていたり、いびきが途中でピタッと止まり、また「グウッ」と激しい音で再開するようなパターンは要注意です。
このような断続的・不規則ないびきは、睡眠中に一時的に呼吸が止まっている可能性があります。
呼吸が止まる(無呼吸)が繰り返される状態は睡眠時無呼吸症候群(SAS)の典型的な症状です。
とくに10秒以上の呼吸停止や、苦しそうにあえぐ音を伴う場合は早急な対策が必要です。
また、いびきの音量が非常に大きく隣の部屋まで聞こえる場合も、気道が狭く深刻な状態かもしれません。
こうした危険ないびきを放置すると、夜間の低酸素状態により体に負担がかかり、翌日の強い眠気や集中力低下にもつながります。
【参考情報】”What Is Sleep Apnea?” by National Heart, Lung, and Blood Institute
https://www.nhlbi.nih.gov/health/sleep-apnea
1-2. いびきが引き起こす健康リスク
「ただのいびき」だからといって侮ってはいけません。睡眠中の激しいいびきや無呼吸は、体が十分な酸素を取り込めない状態を招きます。
血液の中の酸素濃度が低下し、心臓に負担がかかって高血圧を発症しやすくなったり、動脈硬化が進行して不整脈・心筋梗塞・脳梗塞など命に関わる合併症のリスクも上がるといわれています。
実際に、重度の睡眠時無呼吸症候群を治療せず放置すると突然死を招くことがあるとの報告もあるのです。
また、夜間に何度も無呼吸で睡眠が分断されることで極度の睡眠不足となり、日中の強い眠気から居眠り運転などの重大事故につながるケースも知られています。
このように、いびきの陰には様々な健康リスクが潜んでいるため、家族が危険サインに気づいたら早めの対応が肝心です。
◆『いびきで眠れない…夫婦でできる睡眠改善と受診のすすめ』について>>
【参考情報】『いびきとSAS』日本睡眠歯科学会
https://jadsm.jp/ippan/about_sas.html
2.口呼吸にも潜む問題点

大きないびきをかく人の多くは、睡眠中に口で呼吸する(口呼吸)傾向があります。実はこの口呼吸自体も、健康や睡眠の質に影響を与える要因です。
口呼吸の何が問題なのか、なぜ口呼吸になってしまうのかを確認してみましょう。
2-1. 口呼吸が招くデメリット
本来、呼吸は鼻でするのが理想です。鼻は空気を加湿・浄化するフィルターの役割を持っています。
しかし、口呼吸になると空気が直接喉に入り、喉が乾燥してしまいます。
その結果、起床時に喉の痛みや口の渇きを感じることが増え、風邪や喉の炎症なども起こしやすくなるのです。
さらに口内が乾燥すると虫歯や歯周病、口臭のリスクも高まります。
また、睡眠中に口呼吸になる人は舌が喉の奥に落ち込みやすく、気道を狭めていびきを悪化させる傾向があります。
実際、朝起きたとき「口の中がカラカラに乾いている」ようなら、夜間に口呼吸でいびきをかいていた可能性が高いといえます。
【参考情報】”The impact of mouth breathing on dentofacial development” by National Center for Biotechnology Information
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC9498581/
2-2. なぜ口呼吸になってしまうのか
口呼吸の原因として多いのは、鼻づまりなどで鼻から十分に息ができない状態です。
アレルギー性鼻炎や副鼻腔炎で慢性的に鼻が詰まっている人、鼻中隔のゆがみがある人などは無意識に口で息をする癖がつきやすくなります。
また、肥満によって首周りや喉の組織に脂肪がつくと気道が狭まり、寝ている間に口呼吸・いびきを誘発します。
他には、扁桃肥大やアデノイド肥大(喉の奥の扁桃組織の腫れ)など耳鼻咽喉科的な問題がある場合も口呼吸の要因の1つです。
日本人は顎が小さく気道がもともと狭いため、欧米人に比べて肥満でなくても睡眠時無呼吸になりやすいと言われています。こうした骨格的特徴も関係し、「口を開けて寝る癖」がついてしまっている人もいます。
このように口呼吸は身体の様々な不調やいびき悪化につながる要因となるため、できるだけ鼻呼吸に改善することが望ましいでしょう。
普段から鼻づまりがひどい場合は、一度病院で相談してみることをおすすめします。
◆『いびきが気になるときは何科を受診するか知っていますか?』について>>
【参考情報】『睡眠時無呼吸症候群』健康長寿ネット
https://www.tyojyu.or.jp/net/kenkou-tyoju/tyojyu-suimin/suiminjimukokyushokogun.html
3.本人に自覚がない理由と上手な伝え方

家族から見れば明らかな大音量のいびきや無呼吸も、当の本人は「いびきをかいている実感がない」ということが少なくありません。
そのため、いくら「いびきを何とかして!」とお願いしても本人に危機感が伝わらず改善しないケースが多いのです。
この章では、本人が自覚しにくい理由と、角が立たない伝え方のコツについて説明します。
3-1. 睡眠中のいびきを本人が自覚できない理由
いびきや睡眠中の無呼吸は、本人が眠っている間に起きているため自覚症状になりにくいものです。
周囲から指摘されて初めて「自分がいびきをかいている」と知る人も多く、恥ずかしさや驚きから最初は信じてもらえないこともあります。
また、「いびきを治そう」と本人が思っても、実際には睡眠時の無意識下で起こる現象のため根本的な解決は難しい場合があります。
例えば、睡眠時無呼吸症候群の場合、原因が肥満や骨格・鼻疾患など多岐にわたり、一朝一夕で完全にいびきを止めるのは困難です。
単に「気合でいびきを止める」といった様な対処で改善できないことを、家族も理解しておく必要があります。
本人に悪気がないのはもちろん、「努力が足りない」訳でもないのです。
眠っている間の症状だからこそ周囲がサポートする意識を持つことが大切です。
【参考情報】”Sleep Disorder Symptoms Among Adults in 8 States and the District of Columbia” by CDC
https://www.cdc.gov/pcd/issues/2021/21_0305.htm
3-2. 角が立たない伝え方と受診のすすめ方
デリケートないびきの話題を伝えるには言い方の工夫もポイントです。
いきなり「いびきがうるさい!やめて」と責めるのではなく、健康面を心配していることを強調しましょう。
「夜中に呼吸が止まっていて心配になった」「朝とても疲れていそうだけど大丈夫?」といった声かけは、相手への思いやりが伝わりやすくなります。
また、スマートフォンの録音機能やアプリで実際のいびきを「見える化」して共有するのも有効です。
自分のいびきの音を客観的に聞けば、本人も危機感を持ちやすくなるでしょう。
そして、「最近ニュースでも睡眠時無呼吸症候群ってよく聞くから、一度専門の先生に相談してみない?」というように、病院受診を前向きに提案してみてください。
「たかがいびき」と軽視せず、早めに検査を受けることで安心できることを伝えると良いでしょう。
本人が病院に抵抗を感じる場合は、「一晩つける簡単な機械で検査できるらしいよ」など、検査は意外と簡単に受けられることも教えてあげましょう。
家族からの優しい後押しが、早期発見・治療の大きなきっかけになります。
◆『睡眠時無呼吸症候群は呼吸器内科で検査・治療がおこなえます』について>>
【参考情報】『睡眠時無呼吸症候群(SAS)がもっとよくわかる話』睡眠時無呼吸なおそう.com TEIJIN
https://659naoso.com/special/column_family/
4.家族ができる観察チェックリストと記録方法

本人が自覚しにくいいびきや無呼吸も、一緒に寝ている家族だからこそ気づけるポイントがあります。
ここでは家族が夜間に観察すべきチェック項目と、いびきの状態を記録して医師に伝えるための工夫について紹介します。
4-1. 観察ポイント
ご家族のいびきが気になるとき、以下のポイントをチェックしてみましょう。
「睡眠中の様子」と「日中の様子」の両面から観察することが大切です。
【夜間のチェックポイント】
(1)いびきの音の大きさ・リズム(非常に大きないびきか、不規則に途切れるいびきか)
(2)呼吸が止まっていないか(無呼吸の有無と持続時間)
(3)寝相や体位(仰向けでいびきが悪化していないか、頻繁な寝返りや苦しそうな姿勢はないか)
(4)睡眠の深さ(何度も目が覚めていそうか)
【日中のチェックポイント】
(1)日中の過度な眠気や居眠りをしてしまうことはないか
(2)朝の疲労感や頭痛の有無
(3)夜間の頻尿
これらは睡眠時無呼吸症候群によく見られる症状です。
チェックリストを作って〇×をつけていくと、受診時に医師へ具体的に伝えやすくなります。
「最近太って首回りが太くなった」「いつも口を開けて寝ている」などの生活上の変化も併せてメモしておくと良いでしょう。
【参考情報】『こんな兆候はない?睡眠時無呼吸のパートナーチェック』アイチケット広場
https://park-sc.paa.jp/park2/dc/041/chapter2-03/
4-2. 録音・アプリの活用で客観的な記録を
家族とは別室で寝ている場合や、より正確にいびきの状況を把握したい場合には、録音やスマホアプリの活用がおすすめです。
スマートフォンを枕元に置き、一晩中録音しておけば、翌日にいびきの音量や無呼吸の有無を確認できます。
また、近年はいびきや睡眠を記録する専用アプリも多数開発されています。
アプリを使えばいびきが発生したタイミングや音量がグラフ化され、日による変動も把握しやすくなるでしょう。
「SnoreLab(いびきラボ)」など無料で使えるアプリもあり、睡眠中の音を自動検知して録音・スコア化してくれる機能があります。
この様なツールを活用することで、本人が自分の睡眠状態を客観視する助けになりますし、記録データを医師に見せれば診断の参考にもなります。
例えば、いびきがひどい夜は決まって仰向け寝だった、飲酒した日の方が無呼吸が多かった、といった傾向も見えてくるかもしれません。
さらに、起床時の口の渇きや喉の痛みも重要な記録事項です。これらは口呼吸のサインであり、いびき悪化のヒントになります。
最低でも1〜2週間程度、平日と週末を含めてデータを集めると、その人のいびきのパターンが掴みやすくなるでしょう。
5.危険サインを感じたら早めに専門受診を

家族の協力でいびきの実態が把握できたら、必要に応じて医療機関で検査・治療を受けましょう。
特に無呼吸を伴うようないびきは自然に治ることは稀で、専門的なアプローチが必要です。
この章では、受診の目安となるサインや、検査・治療の流れ、受診時のポイントについて説明します。
5-1. 呼吸停止や重いいびきは専門医へ
もし「睡眠中に10秒以上呼吸が止まる」「毎晩大音量のいびきをかいている」といった状況なら、迷わず呼吸器内科の睡眠外来などの専門医を受診しましょう。
厚生労働省も「ひどいいびきや睡眠中の呼吸停止がある場合、速やかに専門の医療機関で検査・治療を受けることが大切」と注意喚起しています。
受診のタイミングとしては、「週に何度も無呼吸が見られる」「日中の強い眠気で生活に支障が出ている」「いびきの音で家族が別室で寝ざるを得ないほど深刻」などの場合が目安と言えます。
【参考情報】”Sleep Apnea – MedlinePlus” by U.S. National Library of Medicine
https://medlineplus.gov/sleepapnea.html
5-2. 検査の流れと日々の様子を伝えるメリット
病院ではまず、問診でいびきの状況や生活習慣について詳しく聞かれます。
家族が観察したいびきの様子(無呼吸の有無や頻度、音の特徴)・アプリ等を使用した記録を医師に伝えると診断の助けとなるでしょう。
問診後は、簡易検査といって携帯式の装置を自宅で一晩装着し、いびきや呼吸状態・血中酸素濃度を計測する検査を行う場合が多いです。痛みはなく、自宅で普段通り眠りながら検査できます。
結果次第では、1泊入院での精密検査(睡眠ポリグラフ検査)となるケースもあります。
この検査では脳波や心電図、酸素濃度、体位、いびき音などを詳細に記録し、睡眠時無呼吸症候群の重症度を判定します。
重症度に応じて、治療法(CPAP療法・マウスピース・外科手術・減量指導など)が提案されます。治療が始まった後も、家族が継続をサポートすることが大切です。
例えば、CPAP療法というマスクを使う治療では、家族の励ましが機器装着の習慣化を助けるとの報告もあります。
このように、家族が寄り添い協力することで、いびきの改善と健康回復の可能性が高まる効果が期待されます。
当院ではCPAP器具の貸出と月1回の通院による治療を行っています。
◆『基礎疾患を持つ方のための睡眠時無呼吸症候群の手術について』について>>
【参考情報】『睡眠時無呼吸症候群 / SAS』健康日本21アクション支援システム 厚生労働省
https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/dictionary/heart/yk-026.html
6.おわりに
毎晩のいびきや口呼吸は、家族にとって深刻な悩みですが、その陰には放置できない健康問題が潜んでいる可能性があります。
大切なのは、本人に自覚がなくても家族が異変を見逃さず対処することです。
危険ないびきのサインに気づいたら、優しく声をかけて受診を促し、専門的な検査・治療につなげましょう。
家族の協力と適切な対応によって、睡眠環境と健康状態はきっと改善できます。
つらいいびきを我慢し続けるのではなく、ぜひ今回の記事を参考に、家族みんなで安心して眠れる毎日を取り戻してください。
