喘息の子どもが保育園に通うときに知っておきたいこと
朝起きて子どもの咳を聞いた瞬間、保育園に連れて行くべきか迷った経験は、喘息を抱えるお子さんの保護者の方なら一度はあるのではないでしょうか。
この記事では、喘息の子どもを保育園に通わせるうえでの基本的な考え方を整理しながら、特に判断に迷いやすい朝の状態別・症状別の対応について、詳しく解説していきます。
1. 喘息の子どもは登園判断に迷いやすい

喘息という病気は、症状が出現したり落ち着いたりを繰り返すところがあります。
昨日まで元気に遊んでいたのに、今朝になって突然咳が増えてしまう。
そんな予測しにくい変動が起きやすいため、保護者の方が迷ってしまうのも当然のことです。
1-1. 喘息は環境で症状が変わる
保育園は、複数の子どもが同じ空間で過ごす環境であると同時に、一日の多くの時間を過ごす日常生活の場でもあります。
そのため、喘息のある子どもにとっては、自宅と同様に日常生活の中で環境への配慮が重要です。
保護者が近くにいない状況なので、体調の変化が気になり、心配になることもあるでしょう。
保育現場では、お昼寝の時間帯や屋外での活動、室内の花粉やホコリなど、環境に気を配る必要があることが広く知られています。
【参考情報】『保育所におけるアレルギー対応ガイドライン』こども家庭庁
https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/e4b817c9-5282-4ccc-b0d5-ce15d7b5018c/cc94d067/20240205_policies_hoiku_86.pdf
1-2. 夜間の悪化が朝の判断を難しくしている
喘息には、夜間から明け方にかけて症状が出やすいという特徴があります。
夜中に咳で目が覚めたり、朝方に咳が増えたりすることも少なくありません。
朝の時点では症状が気になって保育園を休ませたものの、日中には落ち着くこともあり、登園の判断が難しく感じられることもあるでしょう。
2. 登園判断のチェックポイント

喘息の子どもを保育園に登園させても良いのか、判断の迷いを少しでも減らすためには、毎朝確認する項目を固定化することが有効です。
その日の気分やなんとなくの勘に左右されず、決まった順番で観察することで、判断の軸が整ってきます。
おすすめしたいのは、次の3つの視点を順番に確認していく方法です。
2-1.呼吸が苦しそうでないかを確認する
最初に確認すべきは「呼吸のしやすさ」です。
これは喘息において最も重要な観察点といえます。
・いつもより息が苦しそうに見える
・呼吸のペースが速い
・ゼーゼー・ヒューヒューという音が強く聞こえる
・胸や肋骨の周辺がへこむような呼吸をしている
・横になるのを嫌がって抱っこされているほうが楽そうにしている
こうしたサインを確認することで、その日の呼吸の状態をつかむことができます。
2-2.体全体の調子を見る
次に見るべきは「全身状態」です。
呼吸が軽そうに見えても、全身の状態が落ちている日は無理はできません。
・食欲はあるか
・水分を摂れているか
・機嫌はどうか
・普段どおりに遊べているか
こうした要素は、その子の「いつもと比べてどうか」という視点で判断することが大切です。
平熱であっても、ぐったりしていたり食事を嫌がったりするなら、その日は体が回復を必要としているサインかもしれません。
2-3.夜間から朝までの経過を振り返る
最後に思い出したいのが「昨夜からの経過」です。
・夜に何度も咳で目を覚ましていなかったか
・眠れない時間が長くなかったか
・明け方になって咳が増えていなかったか
こうした夜間の情報は、登園の可否を判断するだけでなく、医療機関を受診すべきかどうかを考える材料にもなります。
夜の睡眠が大きく妨げられているなら、たとえ朝に元気そうに見えても、日中に疲れが出て体調が崩れるリスクが高まります。
3. 咳が出ている日の登園をどう考えるか

喘息による咳の症状があっても「元気そうに見える」という印象だけで、登園させて全く問題ないとも限りません。
ここでは、よく見られるシーン別に、判断の考え方を整理してみます。
3-1.元気はあるが、咳が出ている場合
まず、元気そうだが咳だけがある場合です。
呼吸が苦しそうではなく、食事もしっかり摂れていて、普段どおりに遊べている。こうした状態なら、登園できることも多いでしょう。
ただし、集団生活においては園との連携をしっかり取った方が良い場面も存在します。
運動の時間や屋外での活動などに配慮が必要な旨を伝えるのが大切です。
体調管理の情報を園に共有しておくことは、子どもの安全を守るうえで重要です。
「無理に走ると咳が出やすいです」といった短い一言で構いません。きちんと伝えておくことで、保育士もより注意深く観察してくれるようになるでしょう。
3-2.夜間の咳が強い日
次に、夜間に咳き込んでいる場合です。
夜の咳が強い日は、朝になって元気そうに見えても、日中になって体調が崩れることがあります。
夜の睡眠が大きく妨げられているなら、その日の登園は慎重に判断したほうが安心です。
体力は睡眠中に回復するため、十分に眠れなかった日は余裕が少なくなっています。
無理をさせると、かえって回復が遅れることもあります。
3-3.薬で症状が落ち着いている場合
吸入などの頓用薬を使ったら症状がすっかり落ち着く場合も判断に迷うところです。
薬を使ってしばらくすると完全に元の状態に戻るのか、それとも少し落ち着いた程度で、また苦しくなりそうな様子があるのか。
追加の対応が必要になりそうな気配があるなら、無理をしない選択をとるほうが適切でしょう。
一方で、こうした発作を繰り返さないためには、目の前の症状を抑えるだけでなく、気道の炎症そのものを落ち着かせていく治療が欠かせません。
その中心になるのが、吸入薬や内服薬を毎日継続して使用する治療です。

毎日の治療は、効果を実感しにくいこともあり、つい忘れてしまったり、症状がない日は省いてしまったりしがちです。
しかし、きちんと続けることで気道の状態が安定し、発作そのものが起こりにくくなっていきます。
家族が声をかけ合いながら支えることも、治療を続けていくうえで大切なポイントになります。
【参考情報】『小児ぜん息治療ガイドライン』日本小児アレルギー学会
https://www.jspaci.jp/assets/documents/childhood-asthma-guideline.pdf
4.登園を控えたほうがいいサインを見逃さない

迷ったら大事をとるのが安全な考え方です。
自分の症状をうまく言葉で伝えられない子どもの場合、体調の変化に周囲が気づきにくく、知らないうちに症状が悪化してしまうことがあります。
次のようなサインがあるときは、登園か自宅安静かを考えるよりも医療機関への受診を優先した方が良いでしょう。
4-1.強い発作を疑う症状
呼吸が苦しそうで会話や遊びも難しい状態や、顔色が悪くぐったりしているのに、横になるのを嫌がる様子が見られるときは、保育園どころではありません。
肋骨の間などがはっきりとへこんで見える呼吸の場合は速やかに医療機関に相談する必要があります。
こうした状態を見極めるには、普段から子どもの様子をよく観察しておくことが大切です。
「いつもと違う」という感覚は、保護者にしか分からないことも多く、その直感は軽視すべきではありません。
【参考情報】”Asthma” by Health New Zealand
https://info.health.nz/health-topics/conditions-treatments/lungs/asthma
4-2.無理をすると悪化しやすい状態
強い発作のサインほどではなくても、これから症状が強くなりそうな兆候があるときは注意が必要です。
以下のような症状は「これくらいは大丈夫かな」と様子見で済ませたくなりますが、無理をさせることで症状が急に悪化することがあります。
・特に激しい運動をしていないのに少し息が荒い気がする
・寝かせようとしても「大丈夫」と言って起きていようとする
・目覚めてしばらくしてもぼんやりした様子が続いている
また、朝起きてすぐに頓用の吸入が必要だった場合も休ませる判断をした方が安心でしょう。
しっかり休んで悪化を防ぐことも、立派な治療の一部です。
日々の喘息管理の一環として、吸入薬を適切に使うためにも、吸入薬の種類や正しい使い方について理解しておくことも大切です。
5.子どもの登園について悩みが続くときは

毎朝登園判断に迷う状態が続くと、保護者の精神的負担も大きくなってしまうことでしょう。
この種の迷いは一人で抱え込まず、医療機関と一緒に整理したほうが早く解決することもあります。
5-1. 相談を考えたい目安
相談を考えたい目安としては、夜間や明け方の咳が以前より増えてきた、保育園から「日中の咳が多い」と指摘された等、症状の変化がある時です。
登園判断に毎朝悩んでしまうといった状況も、かかりつけ医や呼吸器専門医に相談することで、具体的な対応策が見えてくる可能性があります。
5-2. 保育園と連携する
保育園では、医師の診断や指示を園と共有するための書類として、生活管理指導表などが使用されています。
こうした書類を活用することで、園・保護者・医療機関の三者が情報を共有し、連携した対応がとれるようになります。
「園にどう伝えたらいいか分からない」という悩みも、受診時に医師と一緒に整理することができます。
【参考情報】『アレルギー児の安心・安全な学校生活のために 入学・進学のときに知っておきたいこと』環境再生保全機構
https://www.erca.go.jp/yobou/zensoku/sukoyaka/45/feature/feature01.html
5-3判断の迷いを減らす仕組み化をする
判断の迷いを減らすうえで特に有効なのが、アクションプランです。
症状の程度をゾーンで分けて、「この状態なら何をするか」「いつ受診するか」を前もって決めておくことで、その場での判断に迷いにくくなります。
家庭内で判断基準が統一されれば、登園可否の判断も自然とぶれにくくなっていきます。
【参考情報】”Asthma Action Plan” by Centers for Disease Control and Prevention
https://www.cdc.gov/asthma/action-plan/documents/asthma-action-plan-508.pdf
6.おわりに
喘息のある子どもが保育園に通うこと自体は、決して無理なことではありません。
ただ、喘息が波のある病気である以上、咳の有無だけでは判断しきれない日が出てくるのも事実です。
子どもの健やかな成長を支えるためには、無理をさせないことと、過度に制限しないことのバランスが大切です。
喘息という病気と上手につきあいながら、子どもが安心して保育園生活を送れる環境を、周囲と協力しながら整えていきましょう。
