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夜になると咳が止まらないのはなぜ?体のしくみと原因・対策を解説!

夜 咳 原因 対策

夜中になると咳が止まらず、なかなか眠れない——そんな悩みを抱える方は少なくありません。

昼間はおさまっているのに、布団に入ると咳込んでしまうという方も多いでしょう。

実は、「眠れないほど続く夜の咳」には、体のしくみ・生活環境・病気などが深く関わっているのです。

この記事では、夜に咳が出やすくなる理由と主な原因、家庭でできる対策をわかりやすく解説します。

1. 夜に咳が出やすくなる体のしくみ

夜 咳 しくみ
夜になると「咳が止まらない」「寝つくと咳込む」という人が増えるのは、自律神経(じりつしんけい)のはたらきや、寝る姿勢血の流れの変化などが関係しています。

1-1. 自律神経の変化

自律神経とは、呼吸や心臓の動きを自動でコントロールする神経です。

昼は活動モードの「交感神経(こうかんしんけい)」、夜はリラックスモードの「副交感神経(ふくこうかんしんけい)」が優位になります。

夜は副交感神経の影響で気道(空気の通り道)が少し狭くなるため、咳が出やすい状態になります。

【参考情報】”Why Lungs Keep Time: Circadian Rhythms and Lung Function” by National Institutes of Health
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8818323/

1-2.姿勢の影響

眠っている間は横になることで、体にかかる重力の向きが昼間と変わります。

その結果、鼻や胃からの流れ方も変化し、咳の原因になることがあります。

まず、鼻や副鼻腔(ふくびくう:鼻の奥の空洞)でつくられた鼻水が、寝ている間にのどの方へ流れ込むことがあります。

これを「後鼻漏(こうびろう)」と呼び、のどの奥を刺激して寝ている間にむせるような咳や、寝起きのしつこい咳を引き起こす原因になります。

また、胃の内容物や胃酸が食道やのどに逆流しやすくなるのも、横になる時間帯です。

胃酸は強い酸性の液体なので、のどや気道に触れると炎症を起こし、ヒリヒリ感や違和感、咳につながります。

特に食後すぐに横になる人や、逆流性食道炎がある人では、夜間の咳を悪化させる大きな要因になります。

このように、「姿勢の変化」だけでも、鼻水や胃酸といった体内の流れが変わり、夜に咳が出やすくなる仕組みがあるのです。

◆「寝る姿勢はどれがいい?」>>

【参考情報】『後鼻漏』日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会
https://www.jibika.or.jp/modules/disease/index.php?content_id=16

1-3.血流と炎症の反応

夜は、体の中のホルモンのリズムや血液の流れ方(血流)が、昼間とは変わってきます。

夜になると体は休息のモードに入り、血管が広がって血液の流れが全体的にゆるやかになります。

このとき、体が温まることで血流がさらに増え、炎症が起きている場所(のどや気道)にも多くの血液が集まりやすくなるのです。

炎症がある部分に血液がたくさん流れると、そこが一時的に腫れやすくなったり、敏感になったりします。

そのため、昼間は気にならなかった刺激でも、夜になると咳が出やすくなることがあります。

つまり、夜は体の自然なリズムによって炎症の反応が一時的に強まりやすい時間帯と言えるでしょう。

これらの現象は「炎症が悪化する」というよりも、炎症の影響が一時的に表に出やすくなると考えられます。

夜間に咳が出やすくなるのは、複数の要因が重なって起こる自然な体の反応なのです。

【参考情報】『Q&A:夜間や早朝に呼吸が苦しくなる』日本呼吸器学会
https://www.jrs.or.jp/citizen/faq/q12.html

【参考情報】”The endogenous circadian system worsens asthma at night independent of sleep” by National Institutes of Health
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8449316/

2. 炎症を起こす一時的な要因

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炎症にはいくつかのパターンがあり、風邪をひいたあとなどに一時的に起こる炎症を「急性期(きゅうせいき)」と呼びます。

これは、しばらくすると自然におさまることが多いタイプです。

2-1. 風邪やインフルエンザのあと

風邪やインフルエンザが治ったあとでも、気道の粘膜に炎症が残ることがあります。

この状態では、ほこりや冷たい空気、会話などのちょっとした刺激でも咳が出やすく、数週間〜1か月ほど続くこともあります。

このような咳を「感染後咳嗽(かんせんごがいそう)」といい、多くは自然に回復しますが、長引く場合は病院での診察が必要です。

◆「インフルエンザについて詳しく」>>

【参考情報】”Twenty-four hour pattern in symptom intensity of viral and allergic rhinitis” by National Institutes of Health
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7126948/

2-2. 急な気温変化や乾燥による刺激

空気が急に冷えたり、乾燥したりすると、気道の粘膜が刺激されて炎症が起こることがあります。

特に秋〜冬の季節は、昼と夜の気温差が大きく、それが夜間の咳を誘発する一因となります。

暖房や冷房の使い方によっても室内が乾燥し、炎症が悪化しやすくなるため注意が必要です。

2-3. 強い刺激物や煙を吸い込んだとき

たばこの煙や大気汚染、調理中の煙などを吸い込むと、粘膜が炎症を起こすことがあります。

急にむせるような咳が出たり、咳がしばらく続いたりする場合は、このような一時的な刺激が原因になっていることもあります。

【参考情報】『たばこの害』日本呼吸器学会
https://www.jrs.or.jp/citizen/nosmoking/think/

【参考情報】『微小粒子状物質PM2.5』環境省
https://www.env.go.jp/air/osen/pm/info.html#ABOUT

3. アレルギーや生活環境

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夜の咳には、アレルギーや生活環境も深く関わっています。

特に寝室は長時間すごす場所なので、空気中のハウスダスト・花粉・ダニなどの影響を受けやすい環境です。

アレルギーがある人は気道が敏感になっているため粘膜が炎症を起こしやすく、夜に咳が悪化しやすい状態になります。

3-1. ダニやハウスダスト

ダニやハウスダストは、寝具・カーペット・カーテン・ぬいぐるみなどに溜まりやすい代表的なアレルゲン(アレルギーの原因物質)です。

特に布団やまくら、マットレスは長時間体をあずけるため、ダニの死がいやフン、ホコリを吸い込みやすくなり、気道への刺激が強まります。

夜は副交感神経が優位になって気道が少し狭くなるため、こうした刺激があると咳が出やすくなります。

「布団に入ると咳が出る」「朝起きると喉がイガイガする」という場合は、このダニ・ハウスダストが原因の可能性が高いでしょう。

対策のポイント
・布団やシーツは週1〜2回洗濯・天日干しをする
・布団乾燥機を活用して湿気を減らす
・掃除機を丁寧にかけ、ホコリを溜めない
・枕やぬいぐるみも定期的に洗うか、乾燥させる

◆「ダニだけじゃないアレルゲンと掃除のポイント」>>

【参考情報】”Dust Mites” by American Lung Association
https://www.lung.org/clean-air/indoor-air/indoor-air-pollutants/dust-mites

3-2.花粉

春や秋の花粉シーズンには、窓を開けたまま寝ることで花粉が寝室に入り込み、夜間の咳を悪化させることがあります。

寝ている間に吸い込むと、鼻や喉の粘膜が刺激され、炎症が起こりやすくなります。

特に、アレルギー性鼻炎(アレルギーによる鼻の炎症)がある人では、鼻水がのどに流れる「後鼻漏」が起こりやすく、それが咳の原因になることもあります。

対策のポイント
・花粉の多い時期は、寝るときは窓を閉める
・カーテンや寝具にも花粉が付着するので、定期的に洗濯する
・空気清浄機を活用し、室内の花粉を減らす

◆「花粉症の仕組みと対策」>>

3-3.空気の乾燥

乾燥した空気は、喉や気道の粘膜を刺激しやすく、炎症を悪化させる原因の1つです。

特に冬は暖房によって室内が乾燥しやすく、夜間に咳が強くなる要因になります。

粘膜が乾燥すると、異物やアレルゲンに対する防御力が下がり、少しの刺激でも咳が出やすくなります。

「寝ている間に喉がカラカラになる」「朝起きると声がかすれている」という人は、乾燥の影響を受けている可能性が考えられるでしょう。

対策のポイント
・加湿器を使って湿度を40〜60%に保つ
・濡れタオルを部屋にかけるなど簡単な加湿も効果的
・エアコンの風が直接体に当たらないように調整する

◆「外的刺激と対処法」>>

4. 夜に咳を起こす主な病気

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夜の咳が長引くとき、急性期の炎症や一時的な刺激だけではなく、病気が関係している場合があります。

風邪や乾燥による咳は時間とともにおさまることが多いですが、数週間〜数か月にわたって続く咳や、夜になると特に強くなる咳は、以下のような病気が原因になっていることがあります。

4-1.咳喘息

咳喘息は、気道(きどう:空気の通り道)が炎症によって敏感になり、少しの刺激でも咳が続いてしまう病気です。

普通の喘息(ぜんそく)のようなヒューヒューという音(喘鳴:ぜんめい)がないため、見過ごされやすいのが特徴です。

夜から明け方にかけて咳が強くなることが多く、数週間〜数か月続く場合もあります。

放っておくと本格的な気管支喘息に移行することもあるため、早めの診断と治療が大切です。

治療には、気道の炎症を抑えるための吸入ステロイド薬がよく使われます。

◆「喘息」の基本症状>>

◆「咳喘息の症状とは?」>>

◆「吸入ステロイド薬」について詳しく>>

4-2.気管支炎

風邪やウイルス感染のあとに、炎症が残って咳だけが続くことがあります。

急性期の延長として起こることもありますが、炎症がなかなか治らず長引くときは「気管支炎」と診断されることがあります。

咳は夜間や早朝に強く出る傾向があり、痰(たん)を伴うこともあります。

症状が3週間以上続く場合は、ただの風邪ではなく気管支炎に移行している可能性があるため、医療機関での診察が必要です。

◆「気管支炎」について>>

4-3.逆流性食道炎

逆流性食道炎は、胃酸が食道や喉に逆流し、粘膜を刺激することで咳が出る病気です。

寝ている間は体が横になるため、重力の影響で胃酸が上がりやすく、夜間に症状が強くなります。

「横になると咳が出る」「のどがヒリヒリする」「むせるような咳が続く」という場合は、この病気が関係していることがあります。

生活習慣の改善(就寝前の食事を控える・枕を高くするなど)でよくなることもありますが、改善しない場合は胃酸を抑える薬などによる治療が必要です。

◆「炎症が長引く慢性疾患」>>

【参考情報】”Gastroesophageal Reflux Disease” by MedlinePlus
https://medlineplus.gov/ency/article/000265.htm

5. 自宅でできる夜の咳対策

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夜の咳は、生活習慣や寝室の環境を少し見直すだけでも、軽くなることがあります。

これまで紹介したように、夜の咳には炎症やアレルギー、病気などさまざまな要因が関係していますが、日常の工夫で症状をやわらげられるケースもあります。

ここでは、自宅でできる主な対策を紹介します。

5-1.寝室の環境を整える

寝る場所の環境は、夜の咳に大きな影響を与えます。

湿度や温度、寝具の清潔さを整えることで、気道への刺激を減らし、咳を起こしにくい環境を作ることができます。

・室内の湿度は40〜60%に保つ
・室温は18〜22℃が目安
・寝具やシーツは週1〜2回洗濯・天日干し
・エアコンの風が直接当たらないようにする

◆「正しい加湿器の使い方」>>

5-2.生活習慣の工夫

夜の咳には、食事や生活リズムも大きく関係しています。

特に逆流性食道炎や自律神経の乱れが原因になっている場合、生活習慣を少し変えるだけで改善することがあります。

・食事は寝る2〜3時間前までに済ませる
・枕を少し高くして寝る
・脂っこい食事・アルコール・コーヒーを控える
・のどの乾燥を防ぐために、寝る前に少し水分をとる
・禁煙を徹底する
・適度な運動と規則正しい生活で、自律神経を整える

こうした工夫で改善が見られない場合は、自己判断せずに医療機関を受診しましょう。

【参考情報】『胃食道逆流症ガイド』日本消化器病学会
https://www.jsge.or.jp/committees/guideline/disease/pdf/gerd_2023.pdf

6. おわりに

夜の咳は、多くの場合は体のしくみや炎症などによる自然な反応ですが、長引くときや強いときには病気が関係していることもあります。

寝室の環境を整えたり、生活習慣を工夫したりすることで改善するケースは多いですが、改善しないときは早めに呼吸器内科などを受診しましょう。

しっかり原因を知って対応することで、安心して眠れる夜を取り戻すことができます。