コロナ新変異株「ニンバス株」とは?強烈なのどの痛みが特徴

最近、「ニンバス株」という新型コロナウイルスの変異株の名前をニュースやSNSで目にして、不安に感じていませんか。
オミクロン系統の新しい変異株であるニンバス株とは一体どんなウイルスなのでしょうか。
本記事では、ニンバス株の特徴や感染力、症状について解説します。過度に心配しすぎず、正しい知識を身につけて、落ち着いて備えていきましょう。
1. ニンバス株とはどんな変異株か
ニンバス株は、2023年末頃から登場したオミクロン株から派生した新しい変異株です。
「NB.1.8.1」という系統番号で分類されており、2025年に入ってから世界中で報告例が増えてきました。
日本でも2025年5月以降に確認され、夏頃までに主流の変異株に置き換わったとされています。
現在、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は「5類感染症(季節性インフルエンザに近い扱い)」となっており社会的な制限は緩和されていますが、ウイルス自体は変異を繰り返しながら依然として存在しています。
【参考情報】「新型コロナウイルス感染症の5類感染症移行後の対応について」厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/corona5rui.html
【参考情報】”Tracking SARS-CoV-2 Variants” by World Health Organization
https://www.who.int/activities/tracking-SARS-CoV-2-variants
1-1. オミクロン系統のひとつ
ニンバス株はオミクロン株から分かれて出てきた仲間のひとつです。
オミクロン株はデルタ株など過去の変異株と比べて、上気道(鼻やのど)に症状が出やすく、重症化しにくい特徴があります。
ニンバス株も基本的にはこの傾向を受け継いでおり、ウイルスが肺まで達して重い肺炎を起こすケースは従来より少ないと考えられています。
【参考情報】”Variants and Genomic Surveillance” by Centers for Disease Control and Prevention
https://www.cdc.gov/covid/php/variants/variants-and-genomic-surveillance.html
1-2. 「ニンバス」は愛称で公式名称ではない
「ニンバス株」という名前は正式な分類名ではなく、ニックネームとして使われている呼び名です。
ウイルスの系統名「NB.1.8.1」にちなみ、海外の研究者がSNS上で「Nimbus(ニンバス)」という愛称を付けたとされ、それが日本の専門家やメディアにも広まりました。
なお、過去にも「ケルベロス」「エリス」など神話由来の愛称が付けられ話題になった例がありますが、いずれも正式名称ではありません。
【参考情報】”SARS-CoV-2 variants of concern” by European Centre for Disease Prevention and Control
https://www.ecdc.europa.eu/en/covid-19/variants-concern
2. ニンバス株の感染力と広がり方
ニンバス株の感染力は、従来の変異株よりやや強いと考えられています。
実際、2025年夏頃には国内感染者報告数が増加に転じ、ニンバス株が従来株に急速に置き換わり主要な株となりました。
その背景には、ウイルス自体の広がりやすさだけでなく、人の移動増加や換気不足などの要因もあるとされています。
【参考情報】”Surveillance and Data Analytics” by CDC
https://www.cdc.gov/covid/php/surveillance/index.html
2-1. 従来株より広がりやすい理由
ニンバス株が広がりやすい一因として、「のどの粘膜に付着しやすい」という変異がある可能性が指摘されています。
のどは口に近く、ウイルスが増殖すると咳や会話による飛沫で周囲へ拡散しやすくなります。
そのため、学校や家庭内でも従来同様に感染が広がりやすく、特に乳幼児や高齢者と同居している場合には注意が必要です。
ただし、感染経路自体はこれまでの新型コロナと変わりません。
主に飛沫感染(咳やくしゃみなど)やエアロゾル感染、接触感染によって人にうつります。
基本的な感染対策の重要性は従来と同じという認識で問題ないでしょう。
2-2. 世界的な広がりと日本の流行状況
ニンバス株は2025年初頭に初めて検出され、春から夏にかけて欧米やアジアなど世界各地で流行が確認されました。
日本でも2025年6月時点で、採取された検体の中から最も多く検出された系統がこのニンバス株だったとのデータがあります。
現在では国内の新型コロナ感染の約4割がニンバス株によるものとも推定されており、都市部を中心に広く置き換わりました。
幸い、重症化率に大きな変化はなく医療体制に急激な負荷は生じていませんが、感染者数そのものは増えているため注意が必要です。
【参考情報】『COVID-19の報告が増加!新学期の感染拡大に注意!』京都府感染症情報センター
https://www.pref.kyoto.jp/idsc/old/2025natsuake.html
【参考情報】”SARS-CoV-2 Variants Data Explorer” by Outbreak.info
https://outbreak.info/
3. ニンバス株の症状と特徴
ニンバス株で最も特徴的と言われる症状は、他に例のない「強烈なのどの痛み」です。
海外では「まるでカミソリの刃でのどを切られたような痛み」とも表現され、話題になりました。
実際、ニンバス株に感染した人からは「コロナ感染は3回目だが、今回はのどの激しい痛みがどんどん強くなった」「水を飲むだけで声を上げてしまうほど痛かった」などの声が報告されています。
こうした強いのどの痛みがニンバス株の代名詞のようになっていますが、もちろん全員に当てはまるわけではありません。
比較的軽症の場合は「少しのどがイガイガする」「風邪をひいたかな?」程度のこともあります。
【参考情報】”Symptoms of COVID-19″ by CDC
https://www.cdc.gov/covid/signs-symptoms/index.html
3-1. 主な症状は従来株と同じ
のどの痛み以外の症状については、基本的に従来のオミクロン株の症状と大きな違いはありません。
具体的には以下のような症状が見られます。
・発熱(高熱になる場合もあるが、微熱のこともあり)
・咳・たんが出る(出ない場合もあり)
・強い倦怠感
・頭痛や筋肉痛
・鼻水・鼻づまり など
味覚・嗅覚の異常(味やにおいを感じにくい症状)は、初期の新型コロナではよく報告されましたが、オミクロン株以降はあまりみかけません。
ニンバス株でも同様に、上記のような一般的な風邪に似た症状が中心です。
実際、ニンバス株だけが珍しい症状というわけではないとの専門家の見方もあります。
しかし、その痛みの強さから「今までの風邪やコロナと違う」と感じる人が多いため、ニュースなどでも強調されているのです。
◆「コロナ以外のウイルス感染で咳がでる病気や予防法」について解説>>
3-2. 子どもや若者への影響
ニンバス株は、子どもから大人まで幅広い年代で感染が確認されています。
特に2025年夏頃には10歳未満の子どもの感染が増えているとの報告がありました。
ただし、子どもは基礎疾患がなければ重症化しにくい点はこれまでの新型コロナと同様です。
その一方で、子どもは急に症状が悪化することもあるため、呼吸が苦しそうにしていないか、ぐったりしていないかなど注意深く見守る必要があります。
特に乳幼児の場合、細気管支炎(細い気管支の炎症)や肺炎を起こしやすく、急に呼吸状態が悪くなることがあります。
高熱が続いたりゼーゼーと息をしている場合は早めに相談してください。
4. ニンバス株の重症化リスクは従来株と同じ?
「重症化のリスク」について、現時点で専門家は「ニンバス株だから特別に重症化しやすいというデータはない」と評価しています。
WHO(世界保健機関)も2025年6月時点でニンバス株を「注目すべき変異株」に指定し、経過を監視していますが、他の株と比べて入院者数や死亡者数が増えている傾向は見られないと報告しています。
ニンバス株の重症化リスクは従来株と同程度か、それ以下と考えられているといえるでしょう。
4-1. 重症化しにくいものの油断は禁物
オミクロン株以降、新型コロナ全体の重症化率や致死率は低下傾向にあります。
ニンバス株もその傾向を引き継ぎ、多くの人にとっては命に関わるような重症化は起こりにくいとされています。
他の症状も風邪に近く、「のどが痛いけど高熱は出ない」「息苦しさもない」という軽症で済むケースが大半です。
特にワクチン接種や過去の感染で免疫を持っている人は、重症化を防ぐ効果が期待できます。しかし、「大丈夫だろう」と過信するのは危険です。
高齢者や基礎疾患(糖尿病・心臓病など)のある方は依然として注意が必要で、感染すると肺炎や持病の悪化により重症化するリスクがあります。
実際、2024年の国内の新型コロナによる死亡者数は約36,000人にのぼり、同年のインフルエンザ死亡者数(約2,900人)を大きく上回りました。
こうした事実からも、高齢者等のハイリスク者にとって新型コロナは依然注意が必要な感染症だとわかります。
4-2. 感染した可能性がある場合の対処法
もしニンバス株への感染が疑われる場合は、まず無理をせず自宅で安静にしましょう。
適宜、水分補給や鎮痛解熱剤などで症状を和らげながら様子を見ます。
高熱が続く、呼吸が苦しい、ぐったりしているなど症状が重い場合や高リスクの方は、早めに医療機関へ相談してください。
2023年5月の5類移行以降は法律上の外出制限はありませんが、発症後5日程度は他人にうつす可能性が高い期間です。
自分や周囲のためにも、症状がある間はできるだけ外出を控え、自宅で静養するようにしましょう。
5. ワクチンや感染対策は有効?
ワクチンや基本的な感染対策はニンバス株に対しても引き続き有効と考えられています。
厚生労働省も、新型コロナワクチンの効果について、ニンバス株にも効果が期待されると報告しています。
これはニンバス株が従来株と比べて、特別に免疫をすり抜ける能力(免疫逃避能)が強いわけではなく、ワクチンや過去の感染でできた抗体が十分に役立つ可能性が高いという意味です。
また、重症化予防のため高齢者や基礎疾患がある方には追加接種が引き続き推奨されています。
【参考情報】『新型コロナワクチンの供給について』厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/content/10906000/001551207.pdf
【参考情報】”How to Protect Yourself and Others” by CDC
https://www.cdc.gov/covid/prevention/index.html
5-1. 基本的な感染予防策の継続も◎
基本的な感染予防策もニンバス株に対して有効です。
例えば手洗いはあらゆる感染症予防の基本であり、ウイルスを手から体内に入れないために有効です。
また、人混みや狭い場所ではマスクの着用が飛沫拡散を防ぎます。
特に咳やのどの痛みなど症状がある場合は、周囲への思いやりとしてマスクをするのも良いでしょう。
さらに室内では換気を行い、ウイルス濃度を下げることも重要です。
猛暑などでエアコンを使用している場合でも、1時間に数回は窓を開けるなどして空気の入れ替えを意識しましょう。
こうした対策は、インフルエンザなど他の呼吸器感染症に対しても同様に効果があります。
過度に神経質になる必要はありませんが、「手洗い・マスク・換気」という基本を続けることで、ご自身やご家族を守ることにつながります。
【参考情報】「新型コロナウイルス感染症への対応について」厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/content/001092714.pdf
6. おわりに
新型コロナウイルスは今後も変異を続ける可能性がありますが、その都度ニュースの見出しに過剰に反応する必要はありません。
大切なのは、信頼できる情報源から正確な情報を得て、冷静に行動することです。
「ニンバス株」「カミソリの様な痛み」という言葉だけが独り歩きして不安を煽ることもありますが、実態を知れば過度に怖がることはないと理解できるでしょう。
引き続き適切な予防策をとりつつ、体調に注意して日常生活を送りましょう。
【参考情報】”COVID-19 Global Updates” by World Health Organization
https://www.who.int/emergencies/diseases/novel-coronavirus-2019