肺炎とは

肺炎は肺が炎症を起こしている状態で、細菌、ウイルス、真菌などが原因となって起こります。

肺炎の主な症状は、高熱、咳、たんなどで、風邪とよく似ています。症状から見分けるのは難しく、気がついたらかなり重症になっていたということもあります。両者は似ていますがまったく異なる病気です。

風邪は主に鼻や喉などの上気道に原因となる微生物が感染して炎症を起こすのに対して、多くの肺炎は主に肺の中の感染症です。肺の中の肺胞という部位に炎症が起こり肺炎になります。

この記事では、肺炎について原因や検査、治療方法について詳しくご紹介します。

1.肺炎とはどのような病気なのか


肺炎は、風邪やインフルエンザと同様の感染症のひとつで、肺に炎症が起こる病気です。

【参考資料】American Lung Association『Pneumonia』
https://www.lung.org/lung-health-diseases/lung-disease-lookup/pneumonia

一般には、細菌やウイルスの感染による急性のものを差します。重症化して命に関わることもあるので、症状がある場合早めの受診が大切です。

肺炎は風邪と似ている症状のことがありますが、高熱と激しい咳が1週間近く続く場合は肺炎の可能性があります。
また、呼吸が速くなる、呼吸困難などの症状がみられた場合も注意が必要です。早急に呼吸器専門の医療機関を受診することが推奨されます。

2.肺炎の原因と種類

肺炎は原因によっていくつかの種類に分類されています。以下に、肺炎の主な種類をご説明します。

2−1.細菌性肺炎

細菌が原因となる肺炎で、肺炎球菌が最も一般的な原因です。肺炎球菌以外の細菌が関与することもあります。

抗生物質で治療することが一般的です。

2−2.ウイルス性肺炎

ウイルスが原因となる肺炎です。インフルエンザウイルス、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)、コロナウイルスなどにより引き起こされます。ウイルス性肺炎は一般的に抗ウイルス薬で治療されることがありますが、対症療法が主流です。

2−3.非定型肺炎

非定型肺炎は、通常の肺炎とは異なり特殊な細菌や微生物が原因で起こります。

たとえば、非定型肺炎の原因となる微生物には、マイコプラズマやクラミジアなどがあります。これらは通常の細菌やウイルスとは違って、微生物の一種で、特殊な性質を持っています。

非定型肺炎の症状は、一般的な肺炎とは異なり、風邪のような症状が出やすいと言われています。例えば、くしゃみ、咳、のどの痛み、発熱などです。

治療は、一般的な抗生物質では治療が難しく、特殊な抗生物質が必要な場合があります。

2−4.肺真菌症

肺真菌症は、肺に影響を及ぼす特殊な種類のカビなど真菌類によって引き起こされる病気です。一般的なものには カンジダ、アスペルギルス、クリプトコッカスなどがあります。

通常、これらの真菌類は自然界に広く存在しており肺炎の引き金にはなりません。しかし免疫機能が低下したり持病がある場合に、肺に感染症を引き起こし肺真菌症につながる場合があります。

治療には、抗真菌薬が使われます。

2−5.過敏性肺炎

過敏性肺炎は、アレルギー反応が原因で引き起こされます。

通常、免疫システムはからだを守るために働きますが、過敏性肺炎では免疫システムが誤って反応してしまうことにより引き起こされます。

アレルギー性気管支肺アスペルギルス症(ABPA)も過敏性肺炎の一種です。カビや菌類に対するアレルギー反応が原因で、くしゃみ、咳、息切れなどが起こります。

治療には、ステロイドや抗アレルギー薬が使われ、アレルギーの症状を軽減することを目指します。

2−6.誤嚥性肺炎

誤嚥性肺炎は、食べ物や飲み物が誤って気管に入り込んでしまうことが原因になります。
食べ物や液体は通常食道を通って胃に運ばれるべきですが、誤って気管に入ると肺に炎症が起きてしまうのです。

気がづかないうちに食べ物や液体が誤って気管に入り込む状態の不顕性誤嚥も理由になります。不顕性誤嚥とは、気がづかないうちに食べ物や液体が誤って気管に入り込む状態を指します。不顕性誤嚥は寝ている間にも起こります。

主に高齢者の方や嚥下障害のある方は注意が必要です。症状には咳、発熱、呼吸困難などがあります。

治療には、誤嚥を予防するためのリハビリテーションや食事療法が行われることがあります。

3.肺炎の検査と治療


肺炎の診断に使われる検査と主な治療方法についてご説明します。

3−1.肺炎の検査

肺炎の検査では、まず初めに患者さんの体温を測ります。発熱は肺炎の典型的な症状の一つです。胸部を聴診器で聞いて、異常な呼吸音や肺の音を確認します。痰を調べ、病原体(細菌やウイルス)の有無を確認することもあります。

また、X線やCTスキャンを使用して肺の炎症を確認します。血液検査も行われ、白血球数や炎症マーカーの検査を行い、炎症の程度を把握します。

3−2.肺炎の治療

肺炎の治療は原因を確認し、それに対する適切な抗菌薬を使用することが一般的です。

軽症の場合は、抗菌薬を服用し外来通院で治療を行います。重症な場合は入院が必要です。入院し安静を保ちながら抗菌薬を注射にて投与します。

治療の目的は、症状を抑え合併症を予防することです。抗生物質のほかにも、症状に応じて解熱剤や咳止め薬が処方されます。

治療方法は、感染性肺炎のタイプや重症度、患者さんの年齢、全体的な健康状態によって異なります。肺炎のはっきりした診断がつかず、緊急を要する症状の場合は、エンピリックセラピー(経験的治療)と呼ばれる治療を行うことがあります。

肺炎治療中は十分な休息が必要です。体力を回復するために睡眠も欠かせません。また水分を十分に摂ることが大切です。

【参考文献】日本呼吸器学会『ストップ!肺炎』
https://www.jrs.or.jp/activities/guidelines/file/stop_pneumonia_2021.pdf

4.「歯磨き」で肺炎予防


誤嚥性肺炎を防ぐために重要なもののひとつに歯磨きがあります。

歯磨きによって口腔内の細菌を減らすことで、誤嚥性肺炎のリスクを減らすことができます。誤嚥性肺炎は、細菌が唾液や食べ物と一緒に肺に流れ込むことにより生じます。高齢者の方に多いので、とくに普段から行える歯磨きを大切にしましょう。

とくに寝る前の歯磨きは、睡眠中の不顕性誤嚥による肺炎予防に効果的です。歯科での定期的なメンテナンスや口腔ケアも重要です。

5. おわりに

肺炎は気が付かないうちに症状が進行している場合もあります。普段からご自分の体調の変化に注意しましょう。

原因によって治療方法が異なるので、呼吸器専門家の診察が重要です。ただの風邪だと思って放置せず、疑わしい症状が続く場合は早めの診察を検討しましょう。

治療後も定期的なフォローアップが必要となります。歯磨きも予防のひとつです。風邪やインフルエンザのような感染症にかからないよう対策をしましょう。