過敏性肺炎ってどんな病気?

過敏性肺炎とは、カビや細菌、羽毛などの特定の物質を繰り返し吸い込むことにより引き起こされるアレルギー性の肺炎です。外因性アレルギー性肺胞炎とも言われています。
また、この病気はアレルギー性である為、花粉症と同様に、原因となる物質を吸っても発症しない人がいます。

1. 過敏性肺炎とは


特定の物質を繰り返し吸い込むことにより起こるアレルギー反応で、気管支や肺に炎症が生じる病気です。長期化することで慢性化し肺が固くなっていきます。
年齢では30~50代の人で、春から秋に多い傾向があります。

【参考資料】『Hypersensitivity Pneumonitis』American Lung Association
https://www.lung.org/lung-health-diseases/lung-disease-lookup/hypersensitivity-pneumonitis#:~:text=Hypersensitivity%20pneumonitis%20is%20an%20immune,and%20animal%20proteins%20or%20chemicals.

原因となる物質としてはカビ(真菌)や細菌、鳥の糞、羽毛、ポリウレタンの原料となるイソシアネートなどがあります。
原因物質に接する機会のある農夫や塗装工といった職業の方、鳥を飼っている方や加湿器を使用している方が過敏性肺炎に発症する傾向があります。また夏型過敏性肺炎は湿気が多くなりやすい浴室や台所、エアコンなどに発生したカビを吸い込むことが原因となります。

また、過敏性肺炎は、急性過敏性肺炎と、慢性過敏性肺炎に分けられます。
急性過敏性肺炎は数時間~数週間での体調不良を生じるのに対して、慢性過敏性肺炎は数か月から数年で進行していきます。
急性過敏性肺炎の内訳は、夏型過敏性肺炎が74%と最も多く、農夫肺が8%、加湿器肺が4%、鳥飼病が4%となっています。
慢性過敏性肺炎の内訳は、鳥関連過敏性肺炎が60%を占め、夏型過敏性肺炎が15%、住居関連過敏性肺炎が11%となっています。
加湿器肺と鳥関連過敏性肺炎は、加湿器や羽毛製品を多く利用する冬期に発症します。

2. 症状


過敏性肺炎の症状として、咳、呼吸困難、発熱、悪寒、だるさなどがあります。
特徴としては、特定の場所で症状が現れることや、毎年同じ季節に発症するということがあげられます。
入院後に症状が良くなっても、退院後に再発することが多いという特徴があります。
慢性過敏性肺炎が進行すると、「ばち指」を認めます。「ばち指」では、手の指が太鼓のばちのように変形します。

3. 検査


主な検査は、胸部CT検査と血液検査があります。
胸部CT検査では、炎症の影があるかを確認します。
過敏性肺炎では、モザイク分布のすりガラス陰影とよばれる淡い陰影が見られます。
血液検査では、原因物質に対する抗体があるかについてを確認します。
急性過敏性肺炎では特異抗体が陽性となりますが、慢性過敏性肺炎では抗体陽性率が低いです。
また、原因物質を吸入する吸入誘発試験や、必要な場合には気管支肺胞洗浄や肺生検を行うこともあります。気管支肺胞洗浄は、気管支鏡を使って肺の中に生理食塩水を入れ、回収した液の成分を調べます。肺生検は胸腔鏡を使用、あるいは開胸術で病変の一部を採取して調べる検査です。

4. 治療


基本的な治療は、原因となる物質を避けることです。
とくに軽度の急性過敏性肺炎は予後が良好で、一般的に抗原を避けることで改善します。再発予防のためにも抗原の回避が重要となります。そのため、原因となる物質が家や職場環境にある場合には引っ越しなど環境を変える対策が必要になります。

重症の場合や、慢性過敏性肺炎が進行した場合は、ステロイド薬や免疫抑制薬、抗繊維化薬を使用してアレルギー性の炎症をやわらげたり、繊維化を抑える治療をします。呼吸困難が改善しない場合には、自宅での酸素吸入も検討されます。

【参考資料】「新・呼吸器専門内科医テキスト」日本呼吸器学会
https://www.nankodo.co.jp/g/g9784524226894/

5. 予防・対策

この病気の予防・対策は、抗原に接触しないようにすることです。
すでに症状がひどい場合や対策しても改善しない場合は、環境改善が必要になりますが、以下に対策方法をあげますので、ご参考いただけると幸いです。

・職業柄、抗原に接触しやすい方は、粉塵を低減する対策(例:堆肥に水をかけ湿らせる)や防塵マスクを使用する。
・住居の場合、エアコン、壁、水回りのカビの防止・除去を行う。※すでに症状がある人は自身で行わず、ホームクリーニングなどを依頼するとよいでしょう。
・鳥の飼育をしない・鳥の羽毛布団やダウンジャケットがある場合、捨てる。
・加湿器を使用する方は、加湿器やフィルターを清潔にし、水の交換をよく行う。

 

6.おわりに

過敏性肺炎は、カビや菌の増殖など生活環境が原因のことも多く、誰にでも起こる可能性があります。粉塵にさらされる職業の方も注意が必要です。
咳や発熱などの気になる症状がありましたら、早めに呼吸器内科を受診してください。