呼吸器内科とはどんな診療科? 扱う病気と症状を解説します

咳や痰、息苦しさが続いて困っているときは、呼吸器内科で相談してみましょう。

この記事では、呼吸器内科ではどのような病気を診るのか、どのような症状で受診すればいいのかを解説します。

体調がすぐれないとき、どの診療科にかかればいいのか、悩むこともあるのではないでしょうか。病院を選ぶ際の目安として、ぜひ読んで参考にしてください。

1.呼吸器内科とは

呼吸器内科とは、気道・気管支・肺などの病気を専門的に診る診療科です。

風邪のような身近な感染症から、肺がんなどの命にかかわる病気まで、呼吸器に関する病気を専門に扱っています。

2.呼吸器内科で扱う感染症

以下、呼吸器内科で扱う代表的な感染症を紹介します。

2-1.風邪

ウイルスや細菌に感染して起こる病気です。主な症状は、咳・鼻水・発熱・のどの痛みです。

安静にしていれば自然と治ることがほとんどですが、症状がつらいときには、咳止め薬などを用いて体の負担を軽くします。

2-2.インフルエンザ

インフルエンザウイルスに感染すると発症します。38℃以上の高熱や関節痛などの症状が急激に現れます。

症状が現れてから12時間~48時間の間に抗インフルエンザ薬を服用すると、悪化を防ぐことができます。

【参考情報】『インフルエンザとは』国立感染症研究所

2-3.気管支炎

ウイルスなどの感染が気管支に広がり、炎症を起こす病気です。痰や咳など、風邪と似た症状が強く現れます。

健康な大人なら自然に治ることが多い病気ですが、乳幼児は重症化することもあります。また、タバコなどが原因で慢性化している場合は治療が必要です。

【参考情報】『急性気管支炎』MSDマニュアル家庭版

2-4.肺炎

ウイルスや細菌などが肺に入って炎症を起こし、咳や発熱、倦怠感などの症状が強く現れます。乳幼児や高齢者、持病のある方が肺炎にかかると、重症化のリスクがあります。

特に高齢者は、肺炎になってもほとんど症状が現れず、いきなり症状が悪化する恐れがあります。

【参考情報】『市中で起こる肺炎』日本呼吸器学会

2-5.新型コロナウイルス感染症

コロナウイルスの感染により、咳や発熱、倦怠感などの症状が現れる病気です。治療には、抗炎症薬や抗ウイルス薬を用いることもありますが、軽症なら特に治療をしなくても快方に向かいます。

罹患後の後遺症については、症状に応じた対症療法を行います。

【参考情報】『新型コロナウイルス感染症について』厚生労働省

2-6.肺結核

病気が広がり、約半数の方が亡くなります。

治療では、抗結核薬を6ヶ月間内服します。結核菌の量が多ければ、入院して治療を行うことがあります。

【参考情報】『結核について』結核予防会

3.呼吸器内科で扱う感染症以外の病気

以下、呼吸器内科で扱う感染症以外の病気を紹介します。

3-1.喘息

空気の通り道である気道が慢性的な炎症を起こし、さまざまな刺激に敏感になる病気です。刺激により気道が狭くなると、激しい咳や呼吸困難が引き起こされます。

治療には、炎症をコントロールする薬(長期管理薬:コントローラー)と、発作時にそれを抑える薬(発作治療薬:リリーバー)を使います。

【参考情報】『Asthma』Mayo Clinic

3-2.咳喘息

喘息とよく似た病気ですが、喘息に特有の呼吸音や呼吸困難はなく、咳だけが続きます。

放っておくと、約3分の1の方が喘息に移行するといわれています。治療には、喘息の治療薬を用います。

3-3.COPD(慢性閉塞性肺疾患)

気管支や肺胞に炎症が起こり、呼吸がしにくくなる病気です。原因の多くはタバコです。

慢性的な咳や痰、動いたときに起こる息苦しさなどの症状があります。重症になると、日常的に酸素投与が必要になり、在宅酸素を導入する場合もあります。

【参考情報】『Chronic Obstructive Pulmonary Disease (COPD)』CDC

3-4.肺がん

肺に発生するがんで、原因の多くはタバコです。初期症状がわかりにくい病気なので、気づいたときには進行していることも多いです。

がんの種類や転移の有無によって選択肢は異なりますが、抗がん剤や放射線、手術で治療します。

【参考情報】『肺がん』がん情報サービス|国立がん研究センター

3-5.睡眠時無呼吸症候群

寝ている間に、呼吸が止まったり浅くなったりすることを繰り返す病気です。肥満をはじめとした原因により、気道が狭くなることで発症します。放っておくと心血管疾患のリスクが高くなります。

治療では、CPAP(シーパップ)などの医療機器を用いて、寝ている間の呼吸をサポートします。

【参考情報】『睡眠時無呼吸症候群 / SAS』e-ヘルスネット|厚生労働省

4.呼吸器内科を受診すべき症状

下記のような症状が続いている人は、呼吸器内科の受診を検討しましょう。

・咳
・痰
・息苦しさ
・いびき 

軽症の場合は、一般の内科を受診しても構いませんが、「2週間以上続いている」「日常生活に支障がある」「何だかいつもと違う」という場合は、専門医の診察を受けてみましょう。

さらに、以下のような場合も呼吸器疾患の可能性が高いので受診をおすすめします。

・風邪を引いた後、咳だけが残っている
・夜間や早朝になると咳き込む
・特定の季節(梅雨など)や天候(台風など)で咳が出る
・冷たい空気を吸うなど、何らかのきっかけで咳が出ると止まらなくなる
・市販の風邪薬や咳止め薬を使っても効果が感じられない 
・痰に血が混じっている
・階段や坂道を上ると息切れがする
・夜間睡眠中によく目が覚める

上記のような症状が続いている場合は、喘息やCOPD、睡眠時無呼吸症候群など、長期にわたり治療が必要な病気の可能性があります。

治療には時間がかかるかもしれませんが、早めに治療を開始するほど、病気の悪化を防ぐことができます。

5.呼吸器内科で行う検査

呼吸器内科では、問診とともに、必要に応じた検査を行います。

5-1.画像検査

レントゲンや胸部CTで、肺の状態などを確認します。呼吸器疾患の判別に役立つ、基本的な検査です。

5-2.血液検査

採血を行い、血液中の細胞や抗体などの数値を調べます。全身の健康状態が分かるため、呼吸器疾患以外でもよく行う検査です。

5-3.呼吸機能検査

呼吸機能を調べるため、呼気NO検査、スパイロメトリー、モストグラフなどの専門的な検査を行います。

呼気NO検査では、炎症によって上昇するNO(一酸化窒素)の値を測ることで、喘息やアレルギー疾患の可能性を調べます。

スパイロメトリーでは、肺活量や、酸素を取り込む力などを調べ、肺の機能を測定します。

モストグラフは、気道の状態を調べる検査です。喘息やCOPDの疑いがあるときに、よく行われます。

6.おわりに

呼吸器疾患の多くは、風邪のような症状から始まります。

「風邪かな?」と思っていたのに、なかなかよくならない場合や、咳や痰がしつこく続いているときは、呼吸器内科で原因を調べてみましょう。

「こんな軽い症状で受診していいの?」「ただの風邪かもしれないし」と、ためらう必要はありません。おかしいと感じたら、早めに相談してください。

呼吸器内科では、インフルエンザや肺炎球菌、新型コロナウイルス感染症などのワクチン接種も行っています。治療だけではなく、病気の予防にもぜひ役立ててください。