喘息とは?原因や症状・治療・検査について呼吸器内科医が徹底解説
喘息は、咳や息苦しさなどの症状が長く続く慢性的な呼吸器の病気です。
「咳が2週間以上続いている」「夜や早朝に咳き込んで眠れない」といった場合、単なる風邪ではなく、喘息の可能性があります。
特に、風邪の後に咳だけが長引く場合や、季節の変わり目に症状が出やすい場合は注意が必要です。
この記事では、喘息の主な原因や症状、受診の目安についてわかりやすく解説します。
1.喘息とは

喘息は、子どもから大人まで幅広い年代に見られる呼吸器の病気です。
「発作が出たときだけ対処すればよい」と思われがちですが、実は症状がないときも気道の炎症は続いており、放置すると治療が難しくなることもあります。
この章では、喘息の基本的な仕組みや患者数の実態、長期的な炎症がもたらす影響について解説します。
1-1. 気道の慢性炎症が起こる病気
喘息とは、空気の通り道である気道に、慢性的な炎症が起こる病気です。
炎症を起こした気道は敏感になっているので、「ホコリを吸った」「冷たい空気を吸った」などのささいな刺激にも反応して、咳や息苦しさが現れます。
気道の炎症は、症状がないときでも続いているため、適切な治療を受けないと、何らかのきっかけでまた症状が現れて、激しい発作が起こる可能性があります。
【参考情報】『ぜん息とは』環境再生保全機構
https://www.erca.go.jp/yobou/zensoku/basic/adult/knowledge/index.html
発作を繰り返すことで、気道の炎症が徐々に強まり、症状が出やすくなることがあります。
こうした状態を防ぐためにも、早めの対策と適切な治療が大切と言えるでしょう。
1-2. 日本の喘息患者数
喘息は「子どもの病気」というイメージを持つ方も多いかもしれませんが、実は大人になってから発症するケースも少なくありません。
厚生労働省の患者調査によると、国内の喘息患者数は約117万人と報告されています。
年代別に見ると、0〜14歳の小児に多い一方、35歳以上になると再び患者数が増える傾向があります。
成人発症の喘息は、成人喘息全体の70〜80%を占めるというデータもあり、大人でも喘息を発症する可能性があることを知っておくことが大切です。
【参考情報】『患者調査』環境再生保全機構
https://www.erca.go.jp/yobou/zensoku/investigation/prevalence/01.html
1-3. 気道リモデリングとは
喘息の炎症が長い間続くと、気道の壁が徐々に厚く硬くなり、元に戻りにくくなります。これを「気道リモデリング」といいます。
リモデリングが進むと、薬を使っても気道が十分に広がらなくなり、治療が難しくなることがあります。
だからこそ、症状が軽いうちから早めに治療を開始し、継続することがとても重要となります。
【参考情報】『What Is Asthma?』American Lung Association
https://www.lung.org/lung-health-diseases/lung-disease-lookup/asthma/learn-about-asthma/what-is-asthma
2. 喘息の症状

喘息の症状は人によって異なりますが、特徴的なパターンがあります。
どのような症状が、いつ起こりやすいのかを理解しておくことで、早めに気づき、対処しやすくなります。
2-1. 主な4つの症状
以下のような症状が「2週間以上」続いているときは、喘息の疑いがあります。
・咳
・喘鳴(ぜんめい)
・息苦しさ
・胸の痛み
喘鳴とは、ヒューヒュー・ゼーゼーという特徴的な呼吸音です。炎症により、気道が狭くなっているときに起こります。
2-2. 喘息を強く疑うチェックポイント
さらに、以下の項目にも当てはまれば、喘息を強く疑います。
・アレルギーがある
・家族にアレルギーがある
・夜間や秋など、特定の時間や季節に症状が出る
・市販の咳止め薬を飲んでも症状が治まらない
アレルギーは、喘息に関係する要因のひとつとされています。
ご家族(親や祖父母など)にアレルギー体質の方がいる場合、お子さんも同じような体質を受け継ぐ場合もあります。
また、喘息による咳は、市販の風邪薬や咳止めで一時的に症状が和らぐことはあっても、十分に改善しないことがあります。
市販薬を数日使用しても症状が続く場合は、無理に続けず、一度医療機関で原因を確認すると安心でしょう。
2-3. 症状が出やすいタイミング
喘息の症状は、1日の中でも特定の時間帯に出やすい傾向があります。
特に夜間から明け方にかけて症状が強くなりやすいのが特徴です。
これは、自律神経のリズムによって気道が夜中に狭くなりやすいためと言われています。
また、季節の変わり目・気温や湿度の急激な変化・運動後・タバコの煙や香水などの刺激物を吸い込んだときにも症状が現れやすいです。
「決まった時間に咳が出る」「特定の場所にいると咳が出る」という場合は、喘息のサインかもしれません。
【参考情報】『Asthma Symptoms』American Lung Association
https://www.lung.org/lung-health-diseases/lung-disease-lookup/asthma/symptoms-diagnosis/symptoms
3.喘息の原因

喘息は基本的にアレルギーが関係する病気ですが、原因となるアレルギー物質が特定できるかどうかで分けて考えられています。
3-1. 喘息のタイプ
<原因が特定できるタイプ>
血液検査などで、何に対してアレルギーがあるかがはっきり分かるものです。
・ダニ
・花粉(スギ、ヒノキなど)
・ペットの毛 ・カビ ・ハウスダスト
<原因が特定しにくいタイプ>
検査を行っても、はっきりとした原因が特定できないものです。
※大人になってから発症する喘息では、こちらのタイプも少なくありません。
喘息患者さんの約6割が「原因が特定できるタイプ」、約4割が「特定しにくいタイプ」とされています。
成人の喘息は、原因がはっきりしないことも多いのですが、体重が増加傾向にある方は大人になってから喘息を発症しやすいという報告があります。
体重が増えると、気道への負担が増加し、狭くなりやすくなることがあるのです。また、脂肪細胞から出る「レプチン」というホルモンが、炎症を悪化させる可能性も示唆されています。
【参考情報】『Asthma and Obesity』CDC
https://www.cdc.gov/asthma/asthma_stats/asthma_obesity.htm
3-2.喘息を悪化させる主な要因(増悪因子)
・疲労、ストレス
・風邪やインフルエンザ
・タバコの煙
・大気汚染や排気ガス
・急激な気温の変化
・解熱鎮痛薬(アスピリンなど)
・食品添加物
これらの要因をできる範囲で避けたり、体調を整えたりすることで、症状の安定につながることがあります。
どのタイプであっても、適切な治療と日常管理によって、症状をコントロールしていくことが大切です。
4.喘息の検査・診断方法

喘息かどうかを確かめるためには、医療機関で適切な検査を受けることが大切です。
咳が2週間以上続いているときは、ほかの病気の可能性もあるため、自己判断せず呼吸器内科などの専門医に診てもらうとよいでしょう。
ここでは、喘息の診断に使われる主な検査方法をわかりやすく紹介します。
4-1. 問診・聴診
喘息の診断でもっとも重要なのが問診です。
医師は、どんな症状がいつ出るか・アレルギーや家族歴があるかなどを詳しく確認します。
受診前に「症状が出る時間帯・きっかけ・いつから続いているか」をメモしておくと、診察がスムーズになるでしょう。
また、聴診器で胸の呼吸音を確認し、「ゼーゼー・ヒューヒュー」という喘鳴(ぜんめい)がないかも調べます。
4-2. 呼吸機能検査(スパイロメトリー)
スパイロメトリーとは、肺活量や気道の狭さを数値で調べる検査です。
マウスピースをくわえ、思い切り息を吸ってから一気に吐き出します。最初の1秒間に吐き出せる空気の量(1秒量・FEV1)が低いと、気道が狭くなっているサインです。
また、喘息が疑われる場合には、必要に応じて検査の前後で気管支拡張薬(気管支を広げる薬)を吸入し、その後に数値の変化を確認することがあります。
これを可逆性試験と言います。
薬で改善が確認できると、喘息の特徴である気道の狭さが元に戻ることを示す、大切な診断材料になります。
【参考情報】『気道可逆性試験』慶応義塾大学病院
https://www.clinlab.med.keio.ac.jp/info/info2_2c.php
4-3. 呼気NO検査(FeNO検査)
呼気NO検査(FeNO検査)は、吐く息の中に含まれる一酸化窒素(NO)の濃度を測る検査です。
気道にアレルギー性の炎症(好酸球性炎症)が起きていると、NOの濃度が高くなります。
検査はマウスピースに向かってゆっくり息を10〜12秒吐くだけで完了し、子どもから高齢者まで比較的簡単に受けられます。
この数値が高いと喘息が疑われ、治療の効果を判断するのにも役立てられます。
4-4. アレルギー検査・画像検査
血液検査では、アレルギーに関係する「IgE抗体」の量や、どのアレルゲン(ダニ・花粉・ペットなど)に反応しているかを調べます。
アレルゲンが特定できると、生活の中でそれを避ける対策が立てやすくなります。
また、胸部X線(レントゲン)やCTは、喘息と似た症状を引き起こすほかの病気との区別(鑑別)のために行われることもあります。
喘息の診断は一つの検査だけで決まるものではありません。複数の検査と問診を組み合わせて総合的に判断します。
5.喘息の治療と日常生活の注意点

喘息の治療は、薬だけでなく日常生活の改善もセットで行うことが大切です。
薬をきちんと使いながら、発作のきっかけを減らす環境づくりを続けましょう。
5-1. 何科を受診するか
喘息は呼吸器の病気なので、呼吸器内科を受診されることをお勧めします。
難しい場合は、まずは一般内科、その中でも呼吸器専門医やアレルギー専門医がいる病院を受診するのがよいでしょう。
喘息の検査内容については4章でもご案内しましたが、呼吸器内科では画像検査・血液検査・呼吸機能検査などで咳の原因を詳しく調べ、治療方針を検討します。
治療は、気道の炎症をコントロールして発作を防ぐ長期管理薬(コントローラー)と、発作が起こったときに症状を落ち着かせる発作治療薬(リリーバー)を中心に行っていきます。
5-2. 室内環境の整備
喘息の悪化を防ぐためには、薬の治療と並行して、室内の環境整備がとても重要です。
特にダニ・ハウスダスト・カビなどが原因の方は、寝室・カーペット・ソファなどをこまめに掃除し、アレルゲンの量を減らすことが症状のコントロールに役立ちます。
また、ペットアレルギーのある方は、ペットをできるだけ室内で飼わないようにすることが望ましいでしょう。
まずは医師に相談して血液検査(抗原特異的IgE抗体検査)を受け、自分のアレルゲンを把握してから対策を立てると、効果的な環境を無理なく整えることができるでしょう。
【参考情報】『悪化因子の対策 室内環境を見直しましょう』環境再生保全機構
https://www.erca.go.jp/yobou/zensoku/basic/adult/control/measures/indoor.html
5-3. 日常生活でのセルフケアのポイント
喘息のある方が日常生活で気をつけたい主なポイントを以下にまとめます。
【禁煙・受動喫煙の回避】
タバコの煙は気道を刺激するだけでなく、吸入ステロイド薬の効き目を弱めることも分かっています。
自分が吸わなくても、周囲のタバコの煙(受動喫煙)にも注意が必要です。
【十分な睡眠と疲労の回避】
睡眠不足は体の免疫を低下させ、アレルゲンへの反応を強めることがあります。
規則正しい生活を心がけましょう。
【ストレスをためない】
ストレスは自律神経のバランスを乱し、喘息を悪化させることがあります。
趣味や好きなことでうまく発散しましょう。
【薬の継続使用】
症状がないときでも、処方された長期管理薬を毎日きちんと続けることが発作を防ぐために大切です。
症状が改善したからといって自己判断で薬をやめると、気道の炎症が再び悪化する可能性があります。
必ず医師に相談のうえ、治療方針を決めましょう。
【参考情報】『Asthma』National Institute of Environmental Health Sciences
https://www.niehs.nih.gov/health/topics/conditions/asthma
6.おわりに
喘息は、適切な治療と日常生活の管理を続けることで、症状をコントロールしながら安定した生活を目指すことができる病気です。
まずはご自身の症状や原因を把握し、早めに呼吸器内科で相談することが大切です。
気になる咳や息苦しさが2週間以上続く場合は、無理に様子を見続けず、一度専門医に相談してみると安心です。
もし喘息と診断された場合でも、治療を継続することで日常生活への影響を抑えて過ごすことが可能とされています。
正しい知識を持ち、医師と相談しながら、ご自身に合った治療を続けていきましょう。
