咳喘息の症状とは?喘息との違いについても解説します
風邪が治ったと思うのに、咳だけがずっと続いていると、心配になるのではないでしょうか。
咳はよくある症状なので、少し長引いたからといって、病院を受診するほどではないと思うかもしれません。
しかし、咳が2週間以上続いているなら、咳喘息という病気にかかっている可能性があります。
この記事では、咳喘息の原因や症状などを説明していきます。しつこい咳で悩んでいる方は、ぜひ参考にしてください。
1.咳喘息とはどのような病気か
咳喘息とは、咳だけが8週間以上続く病気です。
慢性的に咳が続く病気といえば、真っ先に喘息を思い浮かべるかもしれません。
咳喘息は、喘息と非常によく似た病気ではありますが、喘息の症状である喘鳴(ぜんめい:ゼイゼイ・ヒューヒューという呼吸音)はありません。
また、喘息発作であれば息苦しさを感じますが、咳喘息では息苦しさはほとんど現れません。
咳喘息は、風邪やコロナなどの呼吸器感染症をきっかけに発症することが多いです。発熱や痰などの風邪症状が治まった後も、しつこく咳が続いている場合は、咳喘息の可能性があります。
2.咳喘息の症状
咳喘息では、咳だけが慢性的に続きます。呼吸器疾患によくある痰や呼吸困難は、通常ありません。
その他、下記のような症状があれば咳喘息の疑いが濃厚になります
・夜間から早朝にかけて咳がひどくなる
・風邪やコロナにかかった後、咳だけが続いている
・寒暖差が激しい日に症状が悪化する
・市販の風邪薬や咳止め薬を服用しても効かない
・季節や天気によって症状の変化がある
上記の症状は、喘息でも現れます。しかし喘息の場合は、咳だけではなく息苦しさや喘鳴もあるので、そこが区別のポイントとなります。
喘鳴がひどい時は、患者の背中に耳を当てるだけで聞こえることもあります。
◆「新型コロナウイルス」の基本情報>>3.咳喘息の原因
咳喘息の原因は、はっきりとは分かっていません。しかし、アレルギーの素因をもった人が発症しやすいと言われています。
【参考情報】『Allergies』Cleveland Clinic
アレルギー体質の人は、ハウスダスト、カビ、ペットの毛、花粉などのアレルゲンに反応し、気道(鼻・口から肺まで続く空気の通り道)に炎症を起こすことで咳が出ます。
アレルギーがなくても、タバコの煙、運動、飲酒、精神的ストレスなどが刺激となり、咳が出ることもあります。
4.咳喘息の診断
咳喘息は、以下の基準に沿って診断します。
・咳だけが3週間以上続いている
・喘鳴のような喘息の症状がない
・これまで喘息と診断されたことがない
・喘息治療に用いる気管支拡張薬で症状が改善する
咳喘息の正確な診断基準は、「8週間以上咳が続いている」となっています。
しかし、咳が8週間も続いているのに、治療をせずに放っておくと、ますます症状が悪化する恐れが高いです。
2週間以上咳が続いていたら「おかしい」と判断して病院を受診し、早めに治療を開始しましょう。
5.咳喘息の検査
以下、咳喘息の診断に必要な検査について説明します。
5-1.画像検査
他の病気と咳喘息を見分けるために行います。
咳喘息であれば、肺のレントゲンに異常は見られません。
しかし、長引く咳の原因が他の疾患だった場合、レントゲンやCTに異常を認めることがあります。
5-2.血液検査
アレルギーの有無や、気道の炎症の程度などを調べます。
アレルギーがある場合、咳喘息の症状を引き起こす物質(アレルゲン)がわかります。その物質を避けて生活することで、症状の悪化を防ぐことができます。
5-3.呼吸機能検査
呼吸機能や気道の状態、呼気に含まれる物質の数値を確認する検査をします。
スパイロメトリーや呼気NO検査、モストグラフなどの検査があります。
・スパイロメトリー:肺の容量や呼吸機能の状態を調べる検査
・呼気NO検査:吐いた息に含まれる一酸化窒素(NO)の濃度を測定し、気道の炎症を 調べる検査
・モストグラフ:気道抵抗を測定し、気道の狭まりを調べる検査
5-4.気管支拡張薬の吸入
他の疾患ではないことを確認した上で、咳喘息の可能性が高い場合、気管支拡張薬の吸入を行う場合があります。
気管支拡張薬は咳喘息に対して治療の効果が高いため、改善がみられた場合は咳喘息である可能性があります。
咳喘息だった場合、気管支拡張薬の投与後に、呼吸機能検査のデータが改善します。
【参考情報】『咳嗽に関するガイドライン(第2版)』日耳鼻119:157ー162,2016
6.治療薬について
咳喘息の症状は、市販の風邪薬や咳止め薬を使っても改善しません。
治療には、病院を受診して適切な薬を処方してもらい、服用する必要があります。
6-1.吸入ステロイド薬
治療の中心となるのは、気道の炎症を抑える吸入ステロイド薬です。
代表的な薬剤には、フルタイドやオルベスコなどがあります。
吸入開始後、症状が落ち着いてきたら、経過を見ながら数ヶ月かけて、少しずつ吸入量を減らしていきます。
【参考情報】『慢性咳嗽の病態、鑑別診断と治療-咳喘息を中心に-』日本内科学会雑誌第105巻第9号
6-2.気管支拡張薬
炎症を起こして狭くなった気道を、一時的に広げる薬です。吸入ステロイド薬と併せて用います。
代表的な薬剤は、メプチン、テオフィリン、ホクナリンなどです。
6-3.抗アレルギー薬
アレルギーにより症状が引き起こされている場合に使います。薬によって気道の炎症を抑えると、狭くなった気道が広がってきます。
代表的な薬剤は、オノン、シングレア、キプレスなどです。
7.咳喘息から喘息に移行するのか
咳喘息は放っておくと、約30%は喘息に移行すると言われています。
しかし、3~6ヶ月程度かけて、治療をしっかりと行うことで、喘息への移行を防ぐことができます。
治療開始後、1~2週間程度で症状が改善することは多いです。しかし、症状が出なくなっても、治ったわけではありません。
治ったと勘違いして治療を止めてしまうと、また症状が現れます。自己判断せず、医師の診察を継続して受けましょう
8.おわりに
咳喘息や喘息は、市販薬では治療できません。的確な診断を受け、適切な治療を行わなければ、悪化していきます。
咳喘息ではなくても、咳が2週間以上続いていれば、何らかの呼吸器疾患が隠れている可能性は高いです。おかしいと思ったら、呼吸器内科で検査を受け、原因を調べましょう。