咳が2週間以上続いてる…風邪じゃない?

喉が痛い時に咳が出たり、熱っぽく感じた時に咳が出たりすることがあると思います。
このようなとき、まず疑うことは風邪だと思います。

しかし、市販薬や病院を受診してもらった薬を服用したのに、あるいは市販薬や病院に頼らず自然治癒したのに、咳だけが長引くことがあると思います。

長引く咳はどのようなことが考えられるのでしょうか。
咳が2週間以上続く場合に考えられることを、詳しく解説します。

【参考文献】”Cough” by Mayo Clinic
https://www.mayoclinic.org/symptoms/cough/basics/definition/sym-20050846

1.そもそも咳とはなにか


咳は外から入ってきた風邪ウイルス、ほこり、煙などの異物を体の外に出して肺や器官などの呼吸器を守るための働きです。

気道まで到達した異物は、気道にある咳受容体を刺激することで、その信号が脳の咳中枢に伝えられることで咳が出ます。

咳には気道に溜まった痰を排出する役割もあります。

2.風邪は2週間あれば治る


「風邪」と病院で診断され、処方された薬を飲み続けたり、市販薬を飲み続けることで風邪は数日のうちに治ります。

病院を受診しなくても、薬を飲まなくても、自然に良くなることもあります。

風邪の原因となるウイルスの種類により、症状や持続期間はさまざまです。喉の痛みや発熱をきっかけに、発症のピークは2~3日目で徐々に寛解に向かいます。

咳は症状として現れることが遅く、長引きます。一様には言えませんが、風邪の症状がある期間は平均7~10日ほどです。

しかし、2週間ほどしても咳だけが残ることがあり、このような場合は風邪ではないと考えられます。

3.2週間以上、長引く咳で考えられる病気とは


では、2週間も咳が続く場合、どのような病気が考えられるのでしょうか。一例として以下を紹介いたします。

3-1.呼吸器感染症

呼吸器感染症はインフルエンザや、RSウイルス感染症など最近だと聞き慣れたものもありますが、2週間ほど咳が続く場合は、呼吸器感染症はマイコプラズマ肺炎やアトピー性咳嗽などが考えられます。

この2つの呼吸器感染症について、1つずつ説明します。

【参考情報】『呼吸器感染症』国立感染症研究所
https://www.niid.go.jp/niid/ja/route/respiratory.html

①マイコプラズマ肺炎

マイコプラズマ肺炎とは、「肺炎マイコプラズマ」という細菌に感染することで起こる呼吸器感染症です。患者さんの大半を14歳以下が占めていますが、成人の報告もあります。

会話やくしゃみによる口からのしぶきをを吸い込む飛沫感染、皮膚や粘膜の直接的な接触などによる接触感染が感染の原因だと言われています。

家庭や学校など、施設内での感染の広がりがみられ、感染から発症までの潜伏期間は長く、2~3週間ぐらいです。

症状は発熱、全身の倦怠感、頭痛、痰が伴わない咳などが症状として挙げられます。

咳は熱が下がった後も3~4週間と長期にわたって続くことが特徴です。一部の患者さんは肺炎となり、重症化することもあります。

治療方法としては、抗菌薬(抗生物質)の使用が挙げられます。
抗菌薬でマイコプラズマ肺炎に効果があるものは一部に限られており、抗菌薬の効かない「耐性菌」が増えてきています。しかし、耐性菌に感染した場合は他の抗菌薬で治療をおこない、軽症で済む患者さんがほとんどです。

【参考文献】『マイコプラズマ肺炎に関するQ&A』厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou30/index.html

②アトピー性咳嗽

アトピー性咳嗽とは、呼吸困難な発作はないが咳が長く続く病気です。

アレルギーと深く関わっており、喉に痒みやイガイガ感がある乾いた咳が特徴的です。また、喘息の症状を抑えるためなどで使用する狭くなった気管支を広げる目的の気管支拡張薬が、アトピー性咳嗽には効果を発揮しません。

アトピー性咳嗽の咳は、たばこの煙、エアコン、会話、運動などをきっかけに咳が出ることがあります。そして、就寝時、深夜から早朝、起床時、早朝の順で咳が多くみられ、このような症状は咳喘息と似ています。

原因としては、咳受容体の感受性がかなり高くなってしまっていることです。
咳は気道にある咳受容体を刺激することで、その信号が脳の咳中枢に伝えられることで咳が出ると説明しました。この感度が上がってしまっているため、通常だと反応しないようなわずかなたばこの煙や会話によって必要以上に反応してしまい、咳が誘発されてしまいます。

検査は胸部レントゲン検査、呼吸器機能検査をおこない、この時点で異常がないとアトピーの原因は何か、血液検査や皮膚テストなどで調べます。

気管支拡張薬が効かないことも確認することで咳喘息ではないと判断し、アトピー性咳嗽に効果的なヒスタミンH1拮抗約やステロイド薬が有効と確認した後にアトピー性咳嗽と判断されます。

治療方法はヒスタミンH1受容体拮抗薬を使用し、効果がない場合は吸入ステロイド薬の追加をします。それでも効果がない場合は、経口してロイド療法をおこないます。

咳がよくなれば治療は中止は可能ですが、約半数の患者さんは再発するとされています。その際は同じ治療で軽快していくことがほとんどです。

3-2.気管支喘息(喘息)

気道に炎症が続き、刺激によって気道が敏感になり発作的に気道が狭くなることを繰り返す病気です。炎症の原因はダニ、ハウスダスト、ペットのフケ、カビ、煙、冷たい風などが挙げられます。

症状は咳や痰が出て、喘息発作と呼ばれる「ゼーゼー」「ヒューヒュー」という呼吸音を伴って息苦しくなります。夜間や早朝に悪化しやすいことが特徴です。

症状がなければ治ったと思われるかと思いますが、気道の炎症は続いています。気道が固く狭くなると元には戻らなくなるため、薬を使って症状を抑えます。吸入ステロイドを使用し、重症度によって量を調節します。

【参考文献】『呼吸器の病気』日本呼吸器学会
https://www.jrs.or.jp/citizen/disease/c/c-01.html

3-3.咳喘息

喘息と違い「ゼーゼー」「ヒューヒュー」という呼吸音を伴った咳はせず、咳がただ長引くことを症状とする病気です。

アレルギー炎症などにより気道があまりにも過敏になってしまい、気道が少しでも伸び縮みすることで咳が出やすくなってしまっていることが原因だと考えられます。よって、気管支拡張薬を使用し咳が改善すると、咳喘息だと診断できます。

治療は主に吸入ステロイド薬の使用になります。軽症で数か月の治療の後、数年間再発がない方もいれば、1年間通じて持続的に治療が必要な方もいます。

【参考情報】”Cough-Variant Asthma” by Cleveland Clinic
https://my.clevelandclinic.org/health/diseases/25200-cough-variant-asthma

3-4.COPD(慢性閉塞性肺疾患)

COPDはChronic Obstructive Pulmonary Diseaseの略で肺の生活習慣病とも言われており、肺気腫や慢性気管支炎も合わせた慢性閉塞性肺疾患という病気です。

最大の原因は喫煙で、受動喫煙も発症の原因です。粉塵、大気汚染、乳幼児期の呼吸器感染、遺伝なども原因として挙げられます。

たばこの煙や化学物質などの有害物質を吸い込むことで、気管支が炎症を起こし痰が溜まることで空気が通りにくくなります。そして、肺胞が破壊され酸素の供給ができなくなってしまいます。

咳や呼吸困難などの症状は気管支喘息と似ていますが、進行性である点は異なります。

少しの動作で息切れしやすい、一日に何度も咳が出る、黄色の粘り気のある痰が出る、呼吸をする特に「ゼーゼー」「ヒューヒュー」と音が鳴る、これらの症状があるとCOPDの可能性は高いです。喫煙歴が10年以上ある方、40代以上の方はリスクが高いと言われています。

寛解に向かうには禁煙が必須です。一旦低下した肺機能を回復させることは困難ですが、禁煙と薬物治療によって進行を防ぎます。

薬物療法には、気管支を広げて呼吸を楽にする気管支拡張薬があり、吸入薬、張り薬、内服薬があります。重症者には、呼吸を助けるために酸素を供給する器具を使った酸素療法が検討されます。

【参考文献】『COPD (慢性閉塞性肺疾患)」東京都保健医療局
https://www.hokeniryo.metro.tokyo.lg.jp/kensui/copd/

3-5.アレルギー性鼻炎

花粉やダニなどのアレルゲンを体内から外に出すために、くしゃみ、鼻水、鼻づまりの症状が出る病気です。アレルギー性鼻炎での鼻水が、喉の方に流れてしまうことで、喉頭アレルギーも発症して咳や喉の不快感が出ることがあります。

アレルゲンの花粉はスギ(2~4月)、ヒノキ(3~5月)、ブタクサ(8~9月)が代表的で季節に合わせて飛んでいるため、「季節性アレルギー性鼻炎」、ダニは1年中存在するため「通年性アレルギー性鼻炎」と呼ばれます。ダニは1年中存在しますが、高温・高湿を好みその時期に繁殖するため、8~9月が特に注意が必要です。

外出時に吸い込んだ花粉は鼻や喉の粘膜についており、帰宅したら早めのうがいが効果的です。鼻うがいの併用はより効果が発揮します。マスクも有効的で不織布マスクがおすすめです。鼻を出さない、面を触らない、再利用しないを必ず守ってください。

ダニは日本が高温・高湿であるため繁殖しやすいです。ダニそのものがアレルゲンではなく、フンや死骸に含まれる成分がアレルゲンとなります。

布団は週に1度天日干しをおこない、ダニの死骸除去のため掃除機をかけましょう。布団乾燥機をおこなうのもよいとされていますが、こちらも使用後は掃除機をかけてください。

【参考情報】”Allergic Rhinitis” by Cleveland Clinic
https://my.clevelandclinic.org/health/diseases/8622-allergic-rhinitis-hay-fever

3-6.副鼻腔炎

鼻の周りには「副鼻腔」と呼ばれる4つの空間(上顎洞・篩骨洞・前頭洞・蝶形骨洞)があり、この空間が炎症を起こしている状態を副鼻腔炎と言います。以前は「蓄膿症」という呼ばれ方もしていました。

黄色や緑色の粘り気のある鼻汁、鼻づまり、頬・鼻周囲・額の痛み、顔やまぶたの腫れ、発熱などの症状に加え、咳、痰、微熱などの呼吸器系の症状も出ます。

これらの症状が落ち着いた後もすっきりしないとなれば炎症が慢性化している可能性があります。

【参考文献】『耳鼻咽喉科・頭頸部外科が扱う代表的な病気」日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会
https://www.jibika.or.jp/modules/disease/index.php?content_id=21

4.おわりに

風邪で咳が2週間以上続くことはなかなかありません。

もしも、以上のような病気だった場合、治療を先延ばしにしてしまうことで重症化する恐れもあります。

「ただの風邪」と思いこまず、2週間以上咳が続く場合は、呼吸器内科を受診しましょう。