季節の変わり目は喘息発作の予防を!

喘息の患者さんにとって、季節の変わり目は注意が必要な時期です。

季節の変わり目に起こるさまざまな要因が喘息発作のリスクを高めます。

この記事では、喘息のきっかけとなる季節特有の原因と、喘息発作のリスクを軽減する予防方法をご説明いたします。

1.喘息発作は秋におこりやすい?


喘息の発作は秋におこりやすいとされています。以下で、その理由をご説明いたします。

1-1. 突然の気温低下

喘息発作が秋に起きやすい理由の一つは、突然の気温の低下が関係しています。

寒暖差は喘息の患者さんにとって大きな刺激です。その刺激が気道の収縮や炎症を引き起こし、喘息の発作がおこりやすくなります。

とくに秋は朝晩の気温差が大きくなる季節なので、喘息発作がおきやすくなります。

【参考文献】”Asthma Triggers” by Asthma Australia
https://asthma.org.au/triggers/change-in-weather-cold-air-and-extreme-weather/

1-2. 夏に大繁殖!秋はダニの死骸やフンがたくさん

秋になると、夏に大繁殖したダニの死骸やフンが大量に発生し、喘息発作を引き起こす大きな要因となります。

ダニアレルギーは、生きているダニそのものよりも、ダニの死骸や糞が原因となる場合が多く、ダニの死骸やフンを含んだホコリを吸い込むことにより、喘息症状が悪化しやすくなります。

ダニアレルギーのある方は、自宅からダニを減らすことで、喘息症状を軽減することが可能です。秋にはとくに定期的な掃除を行い、室内のダニやダニの死骸、フンを減らす努力をしましょう。

【参考文献】『気管支喘息とは』京都府医師会
https://www.kyoto.med.or.jp/child/pdf/all-4.pdf/

1-3. 秋は風邪をひきやすくなる

秋は気温が下がり、密閉された屋内で過ごす時間が増えるため、風邪やインフルエンザのウイルスが広がりやすくなります。

喘息の患者さんは、風邪やインフルエンザのウイルスに感染すると喘息症状が悪化するリスクが高まります。ウイルスは気道の炎症を引き起こし、喘息発作を誘発するからです。

そのため、秋の季節には手洗いの徹底や予防接種などを通じて、感染症から身を守ることが喘息の管理にも重要となります。

1-4. 秋の花粉

秋にはブタクサやヨモギなどの花粉が飛散し、喘息の患者にとって発作の引き金となることがあります。

花粉は気道に入るとアレルギー反応を引き起こし、喘息症状の悪化につながります。

もし秋になると喘息の症状が悪化する方は、花粉症の可能性も考慮してアレルギー検査を受けることがおすすめです。アレルギー検査を通じて、具体的なアレルゲンを特定し、適切な対策と治療を行うことが可能になります。

【参考文献】『 成人ぜん息Q&A~病気について~』環境再生保全機構
https://www.erca.go.jp/yobou/zensoku/basic/adult/qa/sick.html/

2.気温が急な変化をする時とは?


気温の急な変化も喘息が悪化する原因となります。

急激な気温の変化は、特定の気象現象が発生したときに起こる可能性があります。ここからは気温に大きな変化をもたらす、寒冷前線の通過後、晴れた夜の翌朝、フェーン現象についてご説明します。

2-1. 寒冷前線の通過後

寒冷前線が通過後は、気温が大きく下がることがあります。

気温の低下は寒冷前線が暖かい空気を押し上げるので、その後ろから冷たい空気が流れ込むために起こります。このため、その地域の地表近くの気温は下がる傾向になり、しばしば天気も変化しやすくなります。

2-2. 夜に雲がない日の翌朝

夜に雲がないと、地表からの放射冷却が促進されるため、翌朝の気温が下がります。

昼間、地表は太陽の熱を吸収し蓄えています。夜になると蓄えた熱は大気中に向けて放射されます。雲がある場合は、雲が地球からの放射を防ぎ、熱を大気中に留めます。

雲がない場合、放射熱は効率よく大気中に逃れることができるので、地表近くの空気がより冷えやすくなり気温が下がります。そのため、晴れた夜は冷え込みやすく、翌朝にはより寒くなります。

2-3. フェーン現象とは

フェーン現象は、山脈を越える風が急激に加熱・乾燥することで生じる気象現象です。
風が山脈に当たると、風は山脈を上昇し、このとき空気は冷えて雲ができ雨や雪が降ります。

山脈の頂上を超えたあと風は下降し、この下降過程で空気が圧縮され加熱されます。このため空気は暖かく乾燥しています。山の反対側ではとても暖かくて乾燥したフェーン風が吹くことになります。

つまり、フェーン現象とは、山を越えてきた風が、山の向こう側でとても暖かく乾燥した状態になることです。山の向こう側の地域では、急激に気温が高くなり、乾燥した天気になることがあります。

【参考文献】”Extreme weather and asthma” by National Institutes of Health
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC10245140//

3.梅雨のジメジメと冬の乾燥


ジメジメとした湿気の多い梅雨と乾燥した冬では、快適な湿度を保つための対策が異なります。

梅雨の時期は湿度が高いので、不快感を感じやすくカビが発生しやすくなります。

一方、冬は湿度が低下しやすく、空気の乾燥により肌や気道に悪影響を及ぼすことがあります。とくに湿度が40%未満になると、気道の粘膜が荒れ、喘息の発作が起こりやすくなります。

<梅雨時の湿度対策>

・除湿器の使用や定期的な換気で、室内の湿度を適切に保ちます。

・カビ防止剤を使用し、カビを予防します。

<冬の湿度対策>

・加湿器を使用して、湿度が40%未満にならないようにします。加湿により気道の粘膜が保護され、喘息の発作のリスクを減らすことができます。

・体内の水分を保つために、十分な水分摂取を心がけます。

ただし、除湿器や加湿器の使用の際はフィルター清掃などのメンテナンスを定期的に行いましょう。メンテナンスを怠ると本来の機能が弱まり、例えば、発作の原因となる物質を吸い取ることができなくなったり、空気中にまき散らしてしまったりする為、メンテナンスをしっかり行い、正しく使用することが大切です。

【参考情報】”Asthma” by Asthma and Allergy Foundation of America
https://aafa.org/asthma/asthma-triggers-causes/weather-triggers-asthma/#:~:text=With%20increasing%20temperatures%20and%20more,actually%20cause%20asthma%20as%20well.

4.おわりに

季節の変わり目は、とくに喘息の患者さんにとって症状悪化のリスクが高まります。

寒暖差、ダニ、風邪やインフルエンザのウイルス、花粉などが喘息発作を引き起こす要因です。秋は寒暖差とダニの影響が大きく、花粉症のリスクも高まります。

梅雨と冬には湿度管理が重要で、40%未満にならないよう加湿や除湿を適切に行うことが大切です。室内環境の気温や湿度を調整し、喘息発作のリスクを減らしましょう。