喘息でも注意すれば運動はできる
多くの人が、喘息になると運動により発作を起こしてしまうため、活動の制限が厳しいのではないか・・・そのような印象を持っているかもしれません。
学生であれば体育の授業を毎回休まないといけないと、不安になることもあるかもしれません。
しかし、実際には適度な運動を取り入れることが症状を軽減することにつながることもあります。
症状を悪化させないために大切なことは、運動の内容や環境を考え、発作を起こさないための準備や工夫をすることです。
今回は喘息でも運動を取り入れていくために、必要な注意点や準備について説明していきたいと思います。安全に適度な運動を取り入れていけるよう、参考に読んでください。
1.喘息患者が運動をするとどうなる?
喘息は気道(空気の通り道)に慢性的な炎症が起き、むくみや痰の増加で通り道が狭くなり、息苦しさや咳が出やすくなる病気です。
炎症を起こした気道はさまざまな刺激に対し敏感になっていますが、運動をすることで呼吸数は上がり、のどや気道が乾燥し、より刺激を受けやすくなります。
この状態で冷たい空気やホコリなどを吸い込んでしまうと、喘息の症状を悪化させることにつながります。
喘息患者の場合、治療によりしっかりコントロールされ、環境や運動の内容により安全に取り組むことも可能です。
強い体をつくるためには適度な運動習慣も必要になります。症状の悪化を予防するために、まずは、運動が喘息に与える影響をしっかり把握しておきましょう。
【参考情報】『運動をしましょう、続けましょう』環境再生保全機構
https://www.erca.go.jp/yobou/zensoku/sukoyaka/column/202109_1/
2.運動で注意すべきこと
喘息があっても運動の内容や環境に気を付けることで運動を取り入れることが可能です。
発作が起きないよう、体に無理なく運動を取り入れるためにも、まずは運動時に注意すべきことをしっかり意識しておく必要があります。
<注意すべきこと>
・息切れするほどの激しい運動は行わない
・のどが渇いてからではなくこまめに水分補給
・冷たい空気(寒い冬場)や乾燥で砂埃が多い環境での運動は特に注意する
・医師から運動制限が出ている場合は中止する
注意点をしっかり把握し、運動を開始する前はストレッチなど準備運動をしっかり行うことが、喘息症状の予防につながります。
喘息でも運動を継続して安全に取り入れるためには、継続した治療でしっかりコントロールすることもとても大切です。
運動は呼吸機能を整えるほか、免疫力アップやストレス解消などのメリットも多いため、医師と相談しながら、長く続けていくことを目指していきましょう。
3.喘息発作は運動で起こることがある
運動をすることで起きてしまう喘息発作を、「運動誘発喘息」と言います。
喘息発作を起こさず運動を行うためには、運動の内容や環境などに十分注意する必要がありますが、症状がコントロールできていない場合、「運動誘発喘息」を起こすリスクは高くなります。
発作を起こしやすい条件は、激しい運動を長時間行った時や、特に乾燥して空気が冷たい冬場、喘息がコントロールできていない状態などです。
空気が冷たく乾燥している環境での運動はとてもリスクが高くなります。可能な範囲でマスクを使用し、のどが渇く前にこまめに水分を補給するようにしましょう。
症状が落ち着いて調子が良いと思っても、適した環境が整っておらず、無理をしてしまえば発作を起こす可能性も高くなります。
<運動誘発喘息が起こったら>
・運動を中止する
・水分をとって楽な姿勢で休む
・発作を止めるための薬を吸入する
・改善しない場合は医療機関を受診する
発作が起こらないように予防するためには、継続した治療でしっかり喘息をコントロールしておく必要があります。
運動前に吸入薬を使用しコントロールすることもあるため、必ず医師に相談しながら運動を始めるようにしましょう。
また、運動の開始前にはストレッチなどの準備運動やウォーミングアップを念入りに行い、体を温めてから動くようにしてください。
【参考情報】『さまざまな喘息 運動誘発喘息』環境再生保全機構
https://www.erca.go.jp/yobou/zensoku/basic/adult/knowledge/exercise.html
【参考文献) ”Exercise-induced asthma” by Mayo Clinic
https://www.mayoclinic.org/diseases-conditions/exercise-induced-asthma/symptoms-causes/syc-20372300
4.おすすめの運動は?
喘息でも運動を取り入れることは可能ですが、安全に行うためには運動の種類を選ぶ必要があります。
特に負担が大きく発作のリスクが高い運動は、マラソン、サッカー、バスケットボールなどの持久力を必要とする運動になります。
走り続ける運動は、呼吸数が増え体への負担はとても大きく、気道(空気の通り道)が狭くなる喘息患者の場合、さらに負担がかかることになります。
また、呼吸数が上がることでのどや気道が乾燥し、余計に刺激を受けやすくなり発作を起こすリスクも高くなります。
<おすすめの運動>
・ウォーキング
・水泳
ウォーキングは会話ができる程度に行うことができ、体への負担が少なく無理せずに行える運動になります。
体重コントロールやストレス解消、睡眠の質を良くするなどのメリットも多い運動であり、年齢問わず無理なく取り組める点もおすすめです。
また、喘息発作を起こしやすい運動環境として、空気が冷たくなる時期や乾燥などがあります。
水泳は湿度が維持され、室内で行えることで温度も維持されていることから、喘息患者にはおすすめの運動になります。
泳がず、水中を歩くだけでも筋力アップや体重コントロールに効果が期待できます。
ウォーキングと同様、年齢問わず行うことができ、運動が苦手な場合にも比較的楽しく取り入れることができる運動になります。
5.おわりに
喘息でも運動を取り入れることは可能ですが、注意点を意識し、十分な準備を行うことが大切です。
発作を起こしにくい環境や運動の種類についても説明しましたが、どんなに気を付けても無理をしてしまえば症状を悪化させてしまいます。少しでも体調が優れないときは必ず休むようにしてください。
また、新たに運動を始める前には、必ず主治医に相談しましょう。
運動習慣は体を強くしたり、ストレスを解消できたりとメリットがとても多くあります。
喘息をしっかりコントロールし、安全に長く運動を続けていけるようにしたいですね。