インフルエンザの治療で使われる薬「リレンザ」の特徴や副作用について解説!

インフルエンザの治療薬の一つである「リレンザ」についてご紹介します。
リレンザは吸入タイプの抗ウイルス薬で、インフルエンザウイルスの増殖を抑えて症状を和らげる効果があります。
この記事では、どのような薬なのか、成分や作用、使い方から副作用、注意点、薬価まで解説します。
1. リレンザとはどんな薬
?
リレンザは抗インフルエンザウイルス薬の一つで、有効成分は「ザナミビル水和物」です。
インフルエンザウイルスが体内で増殖するときに使う「ノイラミニダーゼ」という酵素の働きを妨げ、ウイルスが感染細胞から体の外に出られなくすることで増殖を抑えます。
その結果、ウイルスの広がりを防ぎ、発熱期間を短縮して症状の悪化を抑える効果があります。
リレンザは粉末状の薬を専用の吸入器「ディスクヘーラー」で吸い込む吸入薬です。
吸入によりインフルエンザウイルスが増殖している部位(喉や気管支など)に直接薬を届けることができるのが特徴です。
◆リレンザが処方される主な疾患
・A型インフルエンザウイルス感染症
・B型インフルエンザウイルス感染症
・新型インフルエンザ(かつて流行した2009年H1N1型などの新型株にも効果あり)
・インフルエンザの発症予防(家族内や集団内で感染者が出た場合の予防投与)
【参考情報】『リレンザ 患者向医薬品ガイド』医薬品医療機器総合機構(PMDA)
https://www.info.pmda.go.jp/downfiles/guide/ph/340278_6250702G1028_1_00G.pdf
【参考情報】“Influenza (Flu) Antiviral Drugs and Related Information” by U.S. Food and Drug Administration
https://www.fda.gov/drugs/information-drug-class/influenza-flu-antiviral-drugs-and-related-information
2. リレンザの使用方法
・基本的な服用方法(治療の場合):
通常、成人・小児とも1回10mg(5mg入りのブリスター2個分)を1日2回、5日間続けて吸入します。
朝夕の2回に分け、医師に処方された計10回分(ブリスター20個分)を5日かけて使い切ります。
症状が出たらできるだけ早く使用を開始することが重要で、発症後48時間以内に治療を始めれば症状の改善が早まる可能性が高いとされています。
・予防目的で使う場合:
インフルエンザを発症した方と濃厚接触した家族などに対し、医師の判断で予防投与されることがあります。
通常、成人・小児とも1回10mgを1日1回、10日間吸入します。
接触後できるだけ早く(接触後36時間以内)使用を開始する必要があります。
予防効果はリレンザを連日使用している期間のみ持続するため、処方された日数は毎日欠かさず吸入することが大切です。
2-1.吸入の手順
1.吸入器の準備:
ディスクヘーラーのカバーを外し、トレー(薬剤ディスク装着部)を引き出します。トレーを一度取り外して、薬剤が入った円形のロタディスクをトレーの所定の位置(4つの穴)にセットし、カチッと音がするまで元の位置に押し込みます。
2.薬剤ディスクに穴を開ける:
吸入器のフタを垂直に立てて閉じ戻すことで、ロタディスクの中の1つのブリスター(薬剤カプセル)に穴が開きます。
3.息を吐いて吸入:
吸入器を水平に持ったまま、一度口から息をゆっくり吐き出します。その後、吸入口をしっかりくわえて、素早く深く息を吸い込んで薬剤を肺に吸入します。吸入後は2~3秒程度息を止め、薬が気道に行き渡るようにします。
4.2回目の吸入:
1回目の吸入が終わったら、再度トレーを引き出してから戻し、ディスクを回転させて、次のブリスターをセットします。。同じ手順でもう一度吸入します。これで1回分(2ブリスター分10mg)の投与が完了です。医師の指示に従い、1日2回の吸入を規則正しく続けましょう。
5.使用後の注意:
吸入器は他の人と共有しないでください。また、使用後はカバーを閉じて、直射日光や高温多湿を避け、子供の手の届かない場所に保管します。使い方に不安がある場合は、事前に医師や薬剤師に遠慮なく相談しましょう。
【参考情報】“Influenza Antiviral Medications: Summary for Clinicians” by Centers for Disease Control and Prevention
https://www.cdc.gov/flu/hcp/antivirals/summary-clinicians.html
3. リレンザの副作用
リレンザは一般的に安全性の高い薬ですが、まれに副作用が現れることがあります。主な副作用として、次のような症状が報告されています。
・消化器症状:下痢、吐き気、嘔吐、食欲不振など
・皮膚症状:発疹、かゆみ、蕁麻疹(じんましん)
・呼吸器症状:咳、喉や胸の違和感、息苦しさ
・中枢神経症状:頭痛、めまい、不眠など
・異常行動:興奮して急に走り出す、徘徊する、大声を出す等の行動異常(特に小児・未成年で報告)
多くの場合、副作用の症状は一時的で軽度ですが、まれに重篤な副作用が起こる可能性もあります。
頻度は非常に低いものの、以下のような重大な症状が現れることが報告されています。
・ショック・アナフィラキシー:全身の発赤、じんましん、息苦しさ、胸の締め付け、嘔吐、顔面蒼白、意識がもうろうとする等
・重度の気管支けいれん:激しい喘鳴(ぜんめい)や呼吸困難など、重い喘息発作のような症状
3-1.副作用への対処と予防策
リレンザを吸入した後は、特に小児では一人にしないようにし、保護者が様子を見ることが大切です。
インフルエンザ罹患時には異常行動が起こり得るため、転落など事故防止のためにも症状が落ち着くまでは目を離さないようにしましょう。
【参考情報】『抗インフルエンザ薬の使用適応について(改訂版)』日本感染症学会
https://www.kansensho.or.jp/modules/guidelines/index.php?content_id=25
また、喘息など呼吸器の持病がある方は、リレンザ吸入により喘息発作を誘発するおそれがあります。
主治医と相談のうえ必要と判断された場合のみ使用し、吸入前に予め喘息の吸入薬(気管支拡張薬)を使用して気道を拡げておくといった対策も有効です。
リレンザの粉末には乳糖(乳製品由来の成分)が添加物として含まれているため、牛乳アレルギーのある方も注意が必要です。
副作用かな?と感じる症状が出た場合は自己判断で使用を中止せず、軽い症状でも早めに医師または薬剤師に相談してください。
特に呼吸困難、激しいめまい、意識障害など重い症状が現れた場合は、すぐに使用を中止して医療機関を受診しましょう。
【参考情報】『リレンザ添付文書(乳糖含有に関する注意)』PMDA
https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med?japic_code=00046544
【参考情報】『リレンザ(吸入)を使用する際、気をつけていただくこと』国立保健医療科学院
https://h-crisis.niph.go.jp/archives/24110/
【参考情報】“Antiviral Adverse Events” by Centers for Disease Control and Prevention
https://www.cdc.gov/flu/hcp/antivirals/antiviral-adverse-events.html
4. 使用上の注意点
リレンザを使用する際に特に注意すべき人・状況についてまとめました。
該当する方は、事前に必ず医師に伝えて相談するとよいでしょう。
・妊婦:
妊娠中でも医師が必要と判断すればリレンザを使用できます。吸入薬で全身への移行量がごくわずかなため胎児への影響は少ないと考えられており、妊娠初期に使用しても先天異常(赤ちゃんの奇形)の発生率は増加しなかったとの報告があります。
ただし治療上の有益性がリスクを上回る場合に限り使用され、自己判断で使わず必ず主治医に相談してください。
授乳中の方も同様に医師の指示で使用可能ですが、投与中は授乳を控えるよう記載されています。母乳への移行はごく微量とされていますが、念のため主治医に相談すると安心できるでしょう。
・小児:
概ね5歳以上の子どもから使用可能です。5歳未満(乳幼児)では臨床試験データがなく安全性が確立していないため、通常リレンザは処方されません。
また幼児だと吸入操作が難しいため、処方されるのは吸入手技が理解できる年齢というのが目安です。小児が使う際は必ず保護者が吸入方法をサポートし、必要に応じて薬剤師の指導のもと事前に練習しておくと安心です。
・高齢者:
高齢の方でもリレンザを含む抗インフルエンザ薬は広く使われています。65歳以上で持病があるなどインフルエンザが重症化しやすい方では、ワクチン接種や感染予防策に加えてリレンザの予防投与が早期から積極的に検討されます。
ご高齢の方は吸入の操作が難しい場合もありますので、家族や医療者のサポートのもと正しく使用してください。
・持病のある方:
喘息や慢性閉塞性肺疾患(COPD)等の呼吸器疾患をお持ちの方は、粉薬の吸入が刺激となり喘息発作を誘発するおそれがあります。
海外ではリレンザ使用による重篤な気管支攣縮(れんしゅく)の報告もあるため、これらの持病がある場合は原則として吸入薬の使用は慎重に検討されます。医師から指示があった場合を除き避けるのが無難です。
同様に、重い肺炎を患っているときなども吸入薬の効果が十分得られない可能性があります。糖尿病や腎臓病など他の慢性疾患をお持ちの方については、リレンザは全身への吸収が少ないため通常は特別な用量調節は不要ですが、念のため主治医に病歴を伝えてください。
・他の薬を服用している方:
現在飲んでいるお薬やサプリメントがある場合は、受診時に医師や薬剤師へ伝えてください。
リレンザは吸入薬であり相互作用(飲み合わせ)の報告はほとんどありませんが、他の抗インフルエンザ薬とは併用しないことが原則です。
特にタミフル(オセルタミビル)との併用は単独使用より効果が下がったとの報告があります。
リレンザの保管は室温で構いませんが、直射日光や高温多湿を避ける様にしましょう。
粉薬が湿気を帯びると吸入不良の原因になります。
使用中は蓋をしっかり閉めて埃や湿気が入らないようにします。
小児の手の届かない場所に保管し、誤って吸入したりいたずらしたりしないよう注意してください。
処方された用量を使い切ったら、吸入器ごと廃棄するようにしてください。
【参考情報】『妊娠中にインフルエンザにかかった場合に、薬を使用することはできますか?』国立成育医療研究センター
https://www.ncchd.go.jp/kusuri/process/qa_ninshin.html
【参考情報】『抗インフルエンザ薬の使用適応について(改訂版)』日本感染症学会
https://www.kansensho.or.jp/modules/guidelines/index.php?content_id=25
【参考情報】“Treating Flu with Antiviral Drugs” by Centers for Disease Control and Prevention
https://www.cdc.gov/flu/treatment/antiviral-drugs.html
5. リレンザの薬価
項目 | 内容 |
---|---|
薬価(1ブリスターあたり) | 約113.6円 |
1日の使用量 | 4ブリスター(2ブリスター × 2回) |
使用期間 | 5日間 |
薬剤費合計(20ブリスター分) | 約2,272円 |
自己負担額(公的医療保険3割負担) | 約680円 |
なお、薬剤費以外に医療機関での処方料などが別途かかることがあります。
また、薬価は改定により変動する可能性があるため、最新の価格は薬剤師に確認してください。
リレンザには現在、ジェネリック医薬品や市販薬はありません。
2025年時点でザナミビルを含む後発薬は国内未発売のため、リレンザを使用する場合はグラクソ・スミスクライン社の先発品を用いることになります。
【参考情報】『日本の医療保険制度の仕組み』日本医師会
https://www.med.or.jp/people/info/kaifo/system/
6. おわりに
リレンザは吸入が難しい小さなお子さんや、喘息などで吸入薬の使用に適さない方には向かない場合があります。
そのような場合、リレンザの代わりに使えるインフルエンザ治療薬(飲み薬のタミフルやゾフルーザ、吸入薬のイナビルなど)があります。
これらの薬も基本的な作用はリレンザと同じですが、剤形(飲み薬か吸入薬か)や服用回数、対象年齢に違いがあります。
リレンザが合わない場合でも他の選択肢もありますので、自己判断で中断せずに必ず医師と相談して自分に合った治療薬を処方してもらいましょう。
早めの治療開始と指示どおりの服薬継続が、インフルエンザから早く回復する鍵です。
【参考情報】“Treating Influenza (Flu)” by Centers for Disease Control and Prevention
https://www.cdc.gov/flu/media/pdfs/2024/09/treating-influenza.pdf