アレルギー性の咳は市販薬を使用していいの?

アレルギーとは、特定の物質(アレルゲン)に過敏反応を示すことで、くしゃみ、鼻水、かゆみ、咳などさまざまな症状が現れる状態です。

この記事では、アレルギー反応だと考えられる咳がでた場合、どのように対応すべきか、また、市販薬を使用してもいいのかをご説明いたします。

薬局やドラックストア、インターネットなどさまざまな場所で手軽に市販薬は購入できますが、正しい判断で適切に使用できるようにしましょう。

1. アレルギーとは


アレルギーは、特定の物質に対する過剰な免疫反応によって引き起こされる反応です。

通常、無害な物質(アレルゲン)に対して免疫系が誤って反応し、炎症やそのほかの症状を引き起こします。

アレルゲンと呼ばれる物質には花粉、ダニの糞、ペットの毛、特定の食品などがあります。

また、遺伝的要因や過剰な衛生環境、環境要因によって影響を受けることがあります。

免疫の過剰反応が、ヒスタミンなどの化学物質を放出し、くしゃみ、鼻水、目のかゆみ、皮膚の発疹、呼吸困難などの症状を引き起こします。

※ヒスタミン:体内にさまざまな働きを持つ化学物質であるが、過剰になるとアレルギーなどの健康問題を引き起こす可能性がある。

そのほかの一般的な症状には、発赤、腫れ、じんましん、喉の腫れや閉塞感、吐き気、下痢などもあります。

重篤な場合にはアナフィラキシーショックと呼ばれる全身的な過敏反応が生じることもあり、速やかな医療処置が必要です。

アレルギーには個人差があり、特定のアレルゲンに対する反応も異なります。そのため正確な診断と適切な管理が重要です。

アレルゲンを避けたり、必要に応じた治療をすることで症状を軽減することができます。

【参考文献】”Allergies” by Mayo Clinic
https://www.mayoclinic.org/diseases-conditions/allergies/symptoms-causes/syc-20351497

2.アレルギーで咳がでる病気とは


アレルギーによる咳は、免疫の過敏反応が引き起こすさまざまな疾患に関連しています。ここでは咳の主な原因となる喘息、花粉症、アトピー咳嗽についてご説明いたします。

2-1.喘息

喘息は、空気の通り道である気道の慢性的な炎症によって引き起こされる呼吸器系の疾患です。

気道が収縮し、過剰な粘液が分泌されることで呼吸困難や咳、喘鳴(ぜんめい:ゼーゼー、ヒューヒューといった呼吸音)などの症状が現れます。

さらに気管支の過敏性が高まると発作が引き起こされます。

喘息の主な原因は、遺伝的要因や環境要因、アレルギー反応などです。

アレルギー性喘息では、特定のアレルゲン(花粉、ハウスダスト、ペットの毛など)に対する過敏反応が気道の炎症を引き起こし、喘息発作を誘発することがあります。

そのほかの原因として、感染症や冷たい空気、ストレスなどがあり、喘息の発作を誘発する要因として考えられます。

喘息の特徴的な症状は次のようなものです。

1.息苦しさや呼吸困難
2.激しい咳(特に夜間や早朝に悪化する)
3.喘鳴

喘息の症状には個人差があり、重症度や発作頻度も異なります。

適切な治療と管理が必要で、気管支拡張薬やステロイド吸入薬などを使用して炎症を抑える治療法が一般的です。

早期診断と適切な治療によって、喘息の管理や予防が可能といえます。

◆「喘息発作が起きたときの対処方法」について詳しく>>

【参照文献】『気管支喘息の診断と治療』日本内科学会雑誌 107 巻 3 号
https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/107/3/107_476/_pdf

2-2.花粉症

花粉症は、特定の植物の花粉に対する過剰な免疫反応によって引き起こされるアレルギー性疾患です。
主な原因は、花粉という無害な物質に対する免疫系の誤った反応です。

スギやヒノキ、ブタクサなどの花粉が空中に舞いやすい乾燥した日や風の強い日には、とくに症状が顕著に現れる傾向があります。

花粉症は季節性であり、特定の植物が花粉を放出する時期に症状が悪化します。

炎症を引き起こすことで、鼻や目などの粘膜が過敏に反応し、以下のような症状が現れます。

1.くしゃみや鼻水
2.目のかゆみや充血
3.喉のかゆみやイガイガ感
4.呼吸困難や喘鳴(重度の場合)

花粉症には個人差があり、重度や発作頻度も異なるため、適切な対処法と管理が重要です。特定の花粉を避けたり、抗アレルギー薬を使用して症状を軽減しましょう。

【参考文献】”Hay fever” by Mayo Clinic
https://www.mayoclinic.org/diseases-conditions/hay-fever/symptoms-causes/syc-20373039

2-3.アトピー咳嗽(がいそう)

アトピー咳嗽(がいそう)は、アトピー性喘息やアレルギー性鼻炎などのアトピー性疾患に伴って発生する特徴的な症状です。
気道の過敏性や炎症によって引き起こされ、乾いた咳が特徴です。とくに夜間や早朝に悪化することが多いとされます。

主な原因は、アレルギー反応や気道の過敏性の高まりです。

アトピー性喘息やアレルギー性鼻炎などのアトピー性疾患を持つ方が、特定の刺激物やアレルゲンに反応して気道が過敏になり、乾性の咳が現れます。

一般的なアトピー咳嗽の症状には次のようなものがあります。

1.乾いた咳(特に夜間や早朝)
2.喉のイガイガ感
3.呼吸困難感

治療薬として、一般的にはアレルギー症状を抑えるヒスタミンH1受容体拮抗薬が第1選択とされます。効果は約60%とされており、もし効果が不十分な場合は、次のステップとして吸入ステロイド薬が追加されます。

それでも症状が改善しない場合には、1〜2週間の経口ステロイド薬による治療がおこなわれます。

【参考文献】”Cough variant asthma and atopic cough” by National Insitutes of Health
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3463094/

3.アレルギー以外にも咳がでる病気


咳はアレルギー疾患だけでなく、そのほかの病気が原因でも発生します。以下で、咳のアレルギー以外の原因をご説明いたします。

3-1.呼吸器感染症による咳

呼吸器感染症は、風邪やインフルエンザなどのウイルスや細菌によって引き起こされる疾患です。

喉や気道、肺などの呼吸器系に影響を及ぼし、咳や鼻水、発熱などの症状を引き起こします。咳は、異物や病原体を排除しようとする自然な反応であり、感染症による咳は通常、痰を伴うことが多いです。

3-2.感染症以外の呼吸器疾患による咳

感染症以外の呼吸器疾患による咳には、COPD(慢性閉塞性肺疾患)や肺がんなどがあります。

COPDは主に喫煙などの要因によって引き起こされ、気管支拡張や肺気腫(肺の組織が破壊され、呼吸機能が低下する病気)などが呼吸器系に影響を与え、慢性的な咳や喘鳴を引き起こします。

肺がんも呼吸器系の重篤な疾患であり、腫瘍が気道や肺組織に発生することで咳や血痰が現れることがあります。

3-3.呼吸器疾患以外の病気による咳

呼吸器疾患以外の病気による咳の原因には、心不全や胃食道逆流症、心因性咳嗽などがあります。

心不全では心臓の機能低下が原因で体液がたまり、それが気道刺激となって咳を引き起こすことがあります。

胃食道逆流症では胃酸が食道に逆流し、喉の刺激から咳が生じます。

心因性咳嗽はストレスや精神的要因からくる無意識的な咳であり、特定の心理的要因によって誘発されることがあります。

4.アレルギーの咳は市販薬で治る?


アレルギーによる咳は、多くの場合、市販薬で一定の緩和が見込めますが、その効果は症状や原因によって異なります。

それぞれの症状に適した治療法についてご紹介しましょう。

4-1.喘息の場合は?

喘息の咳は、市販薬だけでは改善が難しいことがあります。

喘息は気道の炎症や収縮によって呼吸困難や咳などの症状を引き起こす慢性的な疾患であり、適切な治療が必要です。

治療には、吸入薬やステロイドなどの処方薬が必要となる場合があります。

2週間以上咳が続いている場合は喘息の可能性が考えられます。なるべく早く呼吸器内科を受診を検討しましょう。

4-2.花粉症の場合は?

花粉症に対する市販薬は主に抗ヒスタミン薬、抗アレルギー薬などがあります。

抗ヒスタミン薬は、くしゃみや鼻水、目のかゆみなどの症状を和らげるのに効果的で、とくに第2世代のものは眠気を少なく抑えられるため広く使用されています。

抗アレルギー薬は、体のアレルギー反応自体を抑制することで、花粉症によるさまざまな症状を軽減します。

また、肌荒れやかゆみに対しては軟膏剤の使用が適切です。有効成分にはジフェンヒドラミン塩酸塩などがあります。

市販薬を選ぶ際は、ご自身の症状を正しく理解し、必要に応じて医師の助言を得ることが重要です。

ただし、市販薬では完全に改善することができない場合があります。症状が重く改善しない場合は、病院への受診を検討しましょう。

4-3.アトピー咳嗽の場合は?

アトピー咳嗽とは、アトピー性のアレルギー疾患に伴う特徴的な咳です。

市販薬は一時的な症状緩和に役立つことがありますが、効果的でない場合があります。

特にアレルギーによる病気の経験がある方が2週間以上咳が続いており、市販薬を使用しても症状の改善が見られない場合は、なるべく早急に病院の受診を検討しましょう。

5.おわりに

アレルギーによる咳は、市販薬を用いた自己治療が効果的な場合もありますが、喘息や花粉症、アトピー咳嗽のような疾患では、専門医の診断と治療が必要です。

咳が2週間以上続く場合や市販薬での改善が見られない場合は、呼吸器内科など病院への受診を検討しましょう。

アレルギー反応だけでなく、そのほかの呼吸器疾患や心因性疾患も咳の原因となり得るため、適切な診断と治療を受けることが重要です。