血痰が出る原因は?心配な病気と呼吸器内科を受診する目安

血痰が出ると、「肺がんでは?」「悪い病気にかかっているのでは?」と、不安になるでしょう。

痰の中に血が混じっていても、心配ない場合もあれば、重大な病気が潜んでいる場合もあり、判断が難しいこともよくあります。

この記事では、血痰の原因や病院を受診する目安を説明します。気になる方は、ぜひ確認して役立ててください。

1.血痰の原因

血痰とは、肺や気管支などの呼吸器から出た血液が、痰に混じったものです。

呼吸器が出血する原因として多いのは、以下の3つです。

1-1.咳による刺激

風邪などの呼吸器感染症にかかって咳が出ると、気道や気管支が咳で刺激されて傷つき、出血することがあります。その血液が痰に混じって排出されると、血痰になります。

このような場合は、原因となる病気が治れば血痰も出なくなるので、あまり心配ありません。

1-2.腫瘍による刺激

気道の内側や近いところに、がんなどの腫瘍ができると、気道が刺激されて傷つき、出血することがあります。

血痰のほか、「咳が2週間以上続いている」「息苦しさや胸の痛みがある」場合は、念のため病院で検査を受けることをおすすめします。

【参考情報】『Lung cancer』Mayo Clinic

1-3.抗血栓薬の影響

抗血栓薬(血液をサラサラにする薬)を飲んでいると、血が固まりにくくなるので、ちょっとした傷でも、一度出血するとなかなか止まらなくなります。

そのため、咳や乾燥などの刺激で呼吸器が傷つくと、出血が長引き、血痰が出やすくなります。

抗血栓薬を服用している人で、血痰が続く場合は、主治医に相談して適切な処置を受けましょう。

2.血痰と似ている症状

血痰とは別の症状で、口から血が出ることもあります。

2-1.喀血(かっけつ)

咳とともに、口から血液を吐き出す症状です。血液に空気の泡が混じっていることもあります。

喀血の主な原因は、肺結核など呼吸器の病気です。

2-2.吐血(とけつ)

胃や食道などの消化器からの出血を、口から吐き出す症状です。食べカスも一緒に吐くことがあり、血痰や喀血に比べ、血の色は黒っぽいことが多いです。

吐血の主な原因は、胃潰瘍など消化器の病気です。

2-3.口の中や歯茎、鼻の出血

歯周病や口内炎、歯肉炎などが原因で口の中や歯茎が出血したり、鼻血が喉に流れ込んで口から出てきたものを、血痰と間違うことがあります。

どんな理由にしても、口から血が大量に出た場合はすぐに病院を受診し、処置や治療を受けてください。

【参考情報】『血痰・喀痰を見たときの診断の進め方』日本医事新報社

3.血痰が出る病気

血痰が出る病気のうち、代表的なものを紹介します。

3-1.呼吸器感染症

風邪、インフルエンザ、新型コロナウイルス感染症などにかかって咳が出ると、咳の刺激で呼吸器が出血し、血痰が出ることがあります。また、気管支炎や肺炎でも、同様の理由で血痰が出ることがあります。

血痰が出る呼吸器感染症のうち、特に早期発見・早期治療が必要な病気は肺結核です。

肺結核にかかると、風邪のような症状が2週間以上続き、悪化すると血痰や息苦しさも出てきます。

肺結核は空気感染するため、感染者が咳をすると、家族や職場の人など、近くにいる人に感染させてしまうリスクが非常に高いです。

3-2.その他の呼吸器疾患

喘息やCOPDなど、感染症以外の呼吸器疾患でも、咳の刺激などで呼吸器が出血し、血痰が出ることがあります。

また、肺がんや気管支拡張症、非結核性抗酸菌症など、肺の病気が原因で血痰が出ることがあります。

気管支拡張症とは、何らかの原因で気管支が広がってしまい、元に戻らなくなる病気です。咳や痰に加え、血痰や喀血が生じることがあります。

非結核性抗酸菌症とは、 結核菌以外の抗酸菌に感染して起こる病気です。初期症状は出ないことも多いのですが、咳や痰、血痰、寝汗、体重減少が見られることがあります。

【参考情報】『呼吸器の病気』一般社団法人日本呼吸器学会

4.病院を受診する目安は?

血痰が大量に出た場合は、すぐに病院を受診してください。

量が多いと、出血による貧血でふらふらしたり、吐いた血液によって息が苦しくなる恐れがあります。

たとえ少量でも、長引いていたり、何度も繰り返し出る場合も、病院を受診しましょう。肺や気管支のどこかで出血が続いているかもしれません。

風邪などの呼吸器感染症で血痰が出た場合は、そんなに心配ないのですが、風邪が治っても血痰が治まらないなら、別の病気が隠れている恐れがあります。

血痰が「一度に大量に出た」「何度も繰り返し出る」「長引いている」場合は、病院を受診して原因を調べましょう。

5.何科を受診したらよいか

血痰は、呼吸器からの出血が原因であることが多いので、できれば呼吸器内科を受診して、専門的な検査を受けましょう。難しい場合は、一般の内科か耳鼻咽喉科を受診してください。

血痰が大量に出た場合は、窒息するかもしれないので、すぐに救急外来を受診するか、救急車を呼んでください。

【参考情報】『Q4たんに血が混じりました』日本呼吸器学会

6.呼吸器内科で行う検査とは

血痰で受診した場合、呼吸器内科では、必要に応じて以下の検査を行います。

・血液検査
・胸部画像検査
・喀痰検査

血液検査では、「貧血の有無」「出血しやすい状態になっているのか」「炎症が起こっているのか」などを確認します。

胸部画像検査では、出血している部位を確認したり、出血の原因となる病気があるかないかを確認します。

喀痰検査では、痰の中に細菌やがん細胞が混じっているかどうかを確認します。

【参考情報】『喀痰細胞診』日本予防医学協会

7.おわりに

口から血が出る原因はさまざまですが、血痰の場合は、呼吸器の病気である可能性が高いです。

中でも喫煙者は肺がんのリスクが高いため、血痰が続く場合は、必ず呼吸器内科を受診して検査を受けてください。