気管支炎について

気管支炎は、とくに冬場に流行することが多い呼吸器系の疾患です。咳が止まらない状態が続く場合、気管支炎の可能性を考えた方がいいかもしれません。

この記事では、気管支炎とは何か、症状や治療方法に至るまで詳しく解説していきます。

1.気管支炎とはどのような病気か


気管支炎は、風邪の一種である上気道炎に比べて気道の深い部分に生じる炎症です。気道は鼻や口から取り入れた空気を肺まで送る空気の通り道で、気管や気管支も気道に含まれます。この病気では、気管や気管支に炎症が起こり、咳や痰といった症状が現れます。

気管支炎は症状の経過によって、「急性気管支炎」と「慢性気管支炎」に分類されます。

2.急性気管支炎について


気管支炎のうち、急性気管支炎についてご説明します。

2-1.症状


以下は、急性気管支炎の代表的な症状です。

・咳:通常、痰が絡まない乾いた咳から始まり、次第に痰が絡む濡れた咳へと変化します。
・痰:色や濃度が異なる痰が出ることがあります。
・喉の痛み:喉の不快感や痛みが生じることがあります。
・発熱:体温が上昇し、寒気を伴うこともあります。
・声のかすれ:声帯に影響を及ぼし、声がかすれることがあります。

赤ちゃんや子どもは、免疫が未熟であるため、大人よりも重症化しやすいとされているので注意が必要です。赤ちゃんや子どもの症状では、ヒューヒューやゼーゼーといった苦しげな呼吸音(喘鳴:ぜんめい)が聞かれることがあります。

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呼吸が苦しい、速くなる、深く吸えないなどの呼吸困難や、高熱が続く、熱が下がらない場合は速やかに呼吸器専門の病院への受診を検討しましょう。

また、痰に赤い斑点や血液が見られる場合や、食欲がなくなり体重が減少する場合も、速やかに医師の診察を受けることが重要です。

2-2.原因

急性気管支炎の原因は、多くの場合ウイルスによる感染です。

原因になるウイルスには、インフルエンザウイルス、アデノウイルス、ライノウイルなどがあります。これらのウイルスは呼吸器系の感染を引き起こしやすい特性があります。

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また、肺炎球菌をはじめとした細菌感染が原因の場合もあります。

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加えて、非定型病原体による感染も急性気管支炎を引き起こす原因となります。非定型病原体とは、肺炎マイコプラズマや肺炎クラミドフィラなどで、標準的な抗生物質治療に対して耐性がある場合があります。

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化学物質の吸入も、気管支炎を引き起こす一因となるでしょう。防カビスプレーなどの化学物質が含まれる製品を使う場合には換気を充分に行い、気管支炎のリスクを回避しましょう。また、マスクの着用も有効です。

さらに、大気汚染や喫煙も気管支炎の原因として考えられます。大気中の汚染物質やタバコの煙は、呼吸器系に直接影響を及ぼし、気管支に炎症を引き起こすことがあります。

【参考文献】一般社会法人 日本呼吸器学会『急性気管支炎』
https://www.jrs.or.jp/citizen/disease/a/a-03.html

【参考文献】”Bronchitis” by Mayo Clinic
https://www.mayoclinic.org/diseases-conditions/bronchitis/symptoms-causes/syc-20355566

2-3.治療

急性気管支炎の治療は、基本的に安静を保ち、症状に応じた対処療法が中心となります。治療の目的は、主に症状の緩和と自然な治癒力を高めて回復することです。

痰が多い場合には、痰の排出を促す薬が処方されます。痰を伴わない乾いた咳の場合は、咳止め薬が用いられることが一般的です。

基礎疾患や合併症がない限り、抗菌薬の投与は通常必要ありません。これは、急性気管支炎の多くがウイルス感染によるものであり、抗生物質は効果を発揮しないためです。

原因の特定が困難なケースが多く、抗ウイルス薬や抗生物質が使用できない状況も少なくありません。そのため、安静を保ち、十分な栄養を摂取して免疫力を高めることが重要な治療方針となります。

3.慢性気管支炎について


急激に症状が出る急性気管支炎に対して、長期にわたる気管支の炎症の症状がある状態が慢性気管支炎です。以下で、慢性気管支炎についてご説明いたします。

3-1.症状

慢性気管支炎の主な症状は以下の通りです。

・咳:慢性気管支炎の最も一般的な症状で、長期間にわたり続く傾向があります。
・痰:粘稠で色がついていることが多い痰が特徴です。
・呼吸困難:とくに活動時に顕著になり、呼吸しづらく苦しい状態になることがあります。
・喘鳴:呼吸する際にヒューヒューという異音が聞かれます。これは、気管支の狭窄や閉塞を表しています。
・頻繁な呼吸器感染:慢性気管支炎の患者さんは、感染症にかかりやすく頻繁に呼吸器感染症になる傾向があります。

診断上で慢性気管支炎を疑う目安としては、原因不明の咳や痰が1年のうち3か月以上続き、さらにその状態が2年以上にわたる場合です。この場合、慢性気管支炎の可能性が高まります。

3-2.原因

慢性気管支炎の原因は、主に喫煙、アレルギー体質、大気汚染、百日咳、副鼻腔気管支症候群、抗酸菌感染などです。

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これらの要因は、気道に長期間の炎症を引き起こし、慢性的な咳や痰の原因となります。

とくに喫煙は、慢性気管支炎の最も一般的な原因の一つです。タバコの煙は気道の炎症を引き起こします。長期間にわたる喫煙は気管支の損傷を招くこともあるでしょう。

また、大気汚染物質や有害なガスを吸うことも、気管支炎のリスクを高めることが知られています。

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慢性気管支炎の患者さんの中には、気道から肺にかけて広範囲に炎症が発生し、肺機能検査で気流閉塞の証拠が見られる場合があります。このような症例は、「慢性閉塞性肺疾患(COPD)」と診断されることがあります。

COPDは、気管支に炎症が起こり、空気の通り道が狭くなる病気で、その主な原因は喫煙や大気中の有害物質に長期間さらされることです。

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3-3.治療

慢性気管支炎の治療は、患者さんの症状や疾患の進行度に応じてさまざまな方法があります。

喫煙者の方の場合、治療の第一歩としての禁煙が最も重要です。禁煙により、肺機能のさらなる損傷を防ぎ、症状の進行を遅らせることができます。

また、気管支拡張薬やステロイド吸入薬などの吸入薬による治療が一般的です。これらの薬は気管支の炎症を和らげ、気道を広げる効果があります。これにより、呼吸が楽になり、日常生活の質が向上するでしょう。

運動療法も有効です。適度な運動は肺機能を改善し、全体的な健康状態を良好に保つのに役立ちます。

重度の慢性気管支炎やCOPDの患者さんの場合、酸素療法が必要なこともあります。

4.おわりに

気管支炎は、その原因と治療方法が多岐にわたる病気です。原因にはウイルス感染、細菌感染、アレルギー体質、大気汚染、喫煙などがあり、治療法も対処療法、薬物療法、禁煙支援、運動療法などさまざまな方法があります。

気管支炎を予防するためには、普段の規則正しい生活を心がけることが非常に大切です。

手洗いやうがいは、感染症を予防する基本的な方法といえます。さらに、禁煙は、とくに慢性気管支炎の予防と管理において重要な治療法といえるでしょう。

気管支炎は、適切な予防策と治療法によって管理が可能な病気です。健康的な生活習慣の維持は、気管支炎のリスクを減らすだけでなく、そのほかの疾患の予防にもなるでしょう。

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