タバコで咳がでる理由。長引くときは?
タバコを吸っていると、「なんだか咳が出るな」「咳が長引くな」と感じることはありませんか?
咳が出たり長引いたりする原因は、タバコです。
タバコには非常に多くの有害物質が含まれており、タバコを吸う本人だけでなく、その周囲の人にも影響を及ぼします。
そのため、タバコを吸うということは、さまざまな病気を引き起こす原因となります。
今回の記事では、タバコを吸うとなぜ咳が出るのか、疑われる病気や禁煙について解説します。
タバコを吸う人で咳にお困りの方や禁煙について考えている方は、ぜひ最後までお読みください。
1. タバコを吸うと咳がでる。なぜ?
タバコを吸うと咳が出やすくなるのは、以下のような理由があります。
・空気の通り道である気道内の痰が増える
・痰の粘度が増す
・気管内の異物を出す働きが弱くなる
・タバコに含まれる物質や強い香りが刺激になる
タバコを吸うと、直接肺に有害物質を吸い込んでいるため、気道や気管支に汚れが溜まりやすく、その汚れを痰と一緒に排出しようとして咳が出ます。
汚れを含んだ痰は、粘度が高いため出しにくく、タバコの影響で気管内の異物を出す働きが弱くなっています。
そのため、なかなか痰の排出ができないために、何度も咳が出たり、咳が長引いたりなどの状態になるのです。
タバコを吸うと、咳だけでなく、痰や息切れなどの呼吸器症状があらわれます。
その他にも、脳卒中や心臓病、糖尿病、歯周病などの病気の原因となります。
【参考情報】『せきが続く人は「禁煙を!」』大学病院医療情報ネットワークセンター
https://square.umin.ac.jp/nosmoke/material/TS_cough.pdf
2.違いは?「一時的な咳」と「慢性的な咳」
咳は続く期間によって、考えられる病気や原因が異なります。
<一時的な咳>
一時的な咳は、1~3週間程度で治まる急性の咳です。
多くは、風邪やインフルエンザ、気管支炎などの感染症が原因です。
<遷延性(せんえんせい)の咳>
遷延性の咳は、3週間以上続く咳を指します。
肺炎や副鼻腔炎などが原因です。
咳が長引くほど、感染症が原因の可能性は低くなります。
<慢性の咳>
慢性の咳は、8週間以上続く咳です。
長く続く慢性の咳は、喘息やCOPD(慢性閉塞性肺疾患)などの病気が考えられます。
2週間以上、咳が続いている場合には、早めに受診をして原因を調べましょう。
3.タバコで続く咳。疑われる3つの病気
タバコを吸う人で、咳が長引いている場合、疑われる病気が3つあります。
・喘息
・COPD
・肺がん
タバコを長期間吸っていると、気管支や肺が刺激を受け、呼吸機能が低下します。
呼吸機能が低下すると、さまざまな呼吸器症状があらわれ、病気にかかりやすくなるのです。
タバコを長期間吸っている人が、咳が長引いている場合に疑われる病気を3つ解説します。
3-1.喘息
気管支喘息とは、慢性的な気道の炎症と、それに伴う気道の過敏性が高くなった状態です。
主な症状は、咳や痰、息苦しさ、喘鳴(ぜんめい:ゼーゼー・ヒューヒューという呼吸音)などです。
タバコと喘息の関係は、以下のような状態を引き起こします。
・気管支喘息の発症
・発作の増悪
・症状の持続
タバコの煙はアレルギーを引き起こす誘因となるため、喘息の発症や発作の誘発などにつながります。
タバコを吸っている本人だけでなく、周囲でタバコの煙を吸わされている人も、喘息のリスクが高まります。
【参考文献】”Asthma” by Mayo Clinic
https://www.mayoclinic.org/diseases-conditions/asthma/symptoms-causes/syc-20369653
3-2.COPD(慢性閉塞性肺疾患)
COPDとは、気管支の慢性的な炎症により呼吸機能が低下する病気です。
タバコには非常に多くの有害物質が含まれており、長年タバコを吸うことで、気管支や肺が黒く汚れます。
それが原因となり、慢性的な炎症が生じるのです。
酸素を取り込み二酸化炭素を出す役割のある肺胞の壁が破壊されるために、ガス交換ができなくなり呼吸機能が低下します。
ゆっくりと進行する病気で、一度壊された肺胞は治療をしても元には戻りません。
COPDの主な症状は、慢性的な咳や痰、息苦しさなどです。
COPDは、タバコを吸う人の15~20%に発症するといわれています。
そのため、タバコはCOPDの最大の要因であり、喫煙習慣を背景とした生活習慣病といえるでしょう。
【参考文献】”COPD” by Mayo Clinic
https://www.mayoclinic.org/diseases-conditions/copd/symptoms-causes/syc-20353679
3-3.肺がん
肺がんとは、気管支や肺胞の細胞ががん化する病気です。
早期に症状がみられない場合も多く、進行してから症状があらわれ気づくこともあります。
主な症状は、咳や痰、血痰、胸の痛み、息苦しさなどです。
タバコには多くの発がん性物質が含まれているため、タバコを吸うと、肺がんだけでなくさまざまな臓器でがんが発生する可能性があります。
【参考文献】”Lung cancer” by Mayo Clinic
https://www.mayoclinic.org/diseases-conditions/lung-cancer/symptoms-causes/syc-20374620
4.受動喫煙でおこる咳
タバコを吸っている本人の周囲で、タバコの煙にさらされ、副流煙(タバコの先端から立ち上る煙)を吸い込むことを「受動喫煙」といいます。
受動喫煙でも、咳や痰、息切れなどの症状があらわれ、気管支喘息や慢性気管支炎などの病気を引き起こす原因となります。
その他にも三大死因である、肺がん、心筋梗塞、脳卒中を引き起こすことがわかっており、受動喫煙による健康被害は大きいです。
また、受動喫煙では、乳幼児や妊婦へも大きな影響を与えます。
<乳幼児の場合>
乳幼児突然死症候群(SIDS)のリスクが上がる
虫歯が増える
将来的にがんになる可能性が高くなる
<妊婦の場合>
胎児の発育遅延
出生児の低体重
流産のリスクが上がる
このように、受動喫煙はさまざまな健康被害をもたらします。
【参考情報】『受動喫煙―他人の喫煙の影響』厚生労働省e-ヘルスネット
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/tobacco/t-02-005.html
5.禁煙は難しいがメリットもたくさん
「タバコをやめよう!」と思っても、すぐに禁煙できる人は少ないでしょう。
タバコには、ニコチンと呼ばれる物質が含まれています。
タバコを吸う人は、このニコチンの血中濃度が一定以下に下がると不快に感じ、喫煙を繰り返します。
この状態は「ニコチン依存症」と呼ばれる病気で、禁煙が難しい原因です。
禁煙をしたいと考えるなら、禁煙外来を受診してみましょう。
禁煙外来では、貼り薬や飲み薬などを使って禁断症状を少なくします。
そのため、自力での禁煙より取り組みやすいといえるでしょう。
また、一定の条件を満たせば、健康保険を使って治療ができます。
禁煙が成功すれば、以下のようなメリットがあります。
・咳や痰、息切れなどの症状がなくなる
・将来的な病気のリスクが喫煙を続けた場合より下がる
・タバコに使うお金や時間を好きなことに使える
・食事がおいしく感じる
・肌がきれいになる
ここにあげた以外にも、さまざまなメリットがたくさんあるため、禁煙して損はありません。
【参考情報】『禁煙外来について』くまもと禁煙推進フォーラム
https://square.umin.ac.jp/nosmoke/material/gairai.pdf
6.おわりに
長年タバコを吸っていると、咳や痰、息切れなどがあらわれ、さまざまな病気のリスクが上がります。
2週間以上咳が続いている場合には、一度呼吸器内科を受診し、咳の原因を調べてみましょう。
タバコは、吸っている本人だけでなく、周囲の人々の健康にも影響します。
タバコは「百害あって一利なし」です。
禁煙で得られるメリットもたくさんあるので、ぜひ禁煙に取り組みましょう。