咳をしたら、血の味がする…血の種類と考えられる病気

この記事は、咳や痰に血が混じる場合の原因や対処法についてご説明します。

咳や痰に血が混じる場合、血痰(けったん)と喀血(かっけつ)に分類され、それぞれ異なる原因が考えられます。

血痰は痰に血が混じる状態のことです。喀血は、病気が原因となることが多く、特に大量の出血や息切れを伴う場合は、直ちに救急受診が必要です。

呼吸器内科では、痰の色や性状、伴う症状を総合的に判断し、適切な検査を行います。咳や痰に血が混じる場合は、冷静に観察し、医師に詳細を伝えましょう。

1.咳や痰に血が混じる:血痰と喀血について


ご自身の咳や痰に血が混じるのを発見した場合、とても不安に思う方も多いでしょう。

対処法は咳や痰に血が混じる原因や程度によって異なります。ここでは、血痰と喀血の違い、それぞれの特徴や原因についてご説明します。

1-1.血痰とは

血痰は、痰に少量の血液が混じる状態です。痰の中に血液の筋が見られたり、ピンク色がかった痰が出る場合が当てはまります。

血痰の特徴は以下のとおりです。

① 呼吸器感染症が原因の場合が多い
気管支炎や肺炎などの呼吸器感染症が原因となることが多くみられます。

② 喫煙者の方に多く見られる
長年の喫煙習慣がある方が血痰が出る傾向です。

③ 一時的で自然に止まることが多い
多くの場合、血痰は一時的なもので自然に止まります。

◆「気管支炎」について詳しく>>

◆「肺炎」について詳しく>>

血痰の原因としては、気管支や肺からの出血も考えられます。具体的には、以下の病気が原因となることが多いです。

・気管支拡張症
・肺結核
・非結核性抗酸菌症
・肺がん
・肺塞栓症

〈参考文献〉”Coughing up blood (blood in phlegm)” by nidirect govermment services
https://www.nidirect.gov.uk/conditions/coughing-blood-blood-phlegm

◆「気管支拡張症」について詳しく>>

◆「肺がん」について詳しく>>

1-2.喀血とは

喀血は、咳とともに大量の鮮紅色(せんこうしょく:あざやかな紅色)の血液が出る状態です。喀血の特徴は以下です。

① 重篤な疾患が原因となることが多い
肺がんや結核、肺出血などの重篤な疾患が原因であることが多いです。

② 大量出血のため、呼吸困難などの症状を伴うことがある
喀血は大量の血液が出るため、呼吸困難などの症状を伴うことがあります。

③ 緊急的な対応が必要
喀血は緊急的な対応が必要であり、速やかに医療機関を受診する必要があります。

喀血の原因としては、以下の病気が考えられます。

・肺がん
・肺結核
・肺出血
・気管支拡張症
・肺塞栓症

1-3.血痰と喀血のまとめ

血痰と喀血を区別することは非常に重要です。

血痰であっても、原因が重篤な疾患である可能性があるため、継続して医療機関を受診し、精査を受ける必要があります。

一方、喀血の場合は緊急的な対応が求められ、速やかに医療機関を受診する必要があります。特に、大量の出血や息切れがある場合は、直ちに救急受診が必要です。

2.ポイントは血液が混じる痰以外の症状


咳や痰に血が混じる場合、咳や痰だけでなく、ほかの症状にも注目します。

痰に血液が混じる原因のひとつは、口や鼻の粘膜からの出血です。

激しい咳がなく、少量の血液が痰に混じっている場合、口や鼻の粘膜からの出血である可能性が高いといえます。鼻血や歯茎からの出血が痰に混じることがあるためです。

一方、咳や発熱などの症状がある状態で痰に血液が混じる場合は、のどや気管支、肺からの出血の可能性があります。

原因の疾患としては気管支拡張症、肺結核、非結核性抗酸菌症、肺がん、肺塞栓症といった病気が考えられます。

さらに、消化器系からの出血、例えば食道や胃からの吐血の可能性もあります。この場合は通常、コーヒーかすのような色をしていることが多いです。

3.血痰・喀血・吐血は色や性状で見分けることも可能


口から血液が出る症状には、血痰、喀血、吐血の3つがあります。

これらは、その色や性状が異なるため、見分けることが可能です。
ここでは、それぞれの特徴と見分けるポイントについてご説明します。

<血痰>
血痰は、痰に少量の血液が混じっている状態のことで、以下のような特徴があります。

・色:鮮紅色や淡い赤色をしている。
・性状:痰に血液の筋が入り、泡立った痰に血液が混じっていることが多い。
・量:痰の中に少量の血液が混ざっているだけで、ほとんどが痰である。

血痰の原因には、気管支炎や肺炎などの呼吸器感染症、気管支拡張症、肺結核、肺がんなどが考えられます。血痰は比較的一時的で自然に止まることが多いですが、原因が重篤な場合もあるため、注意が必要です。

<喀血>
喀血は、咳と共に大量の鮮紅色の血液が出る状態です。特徴は以下の通りです。

・色:鮮紅色で真っ赤。
・性状:泡立った血液が出る。ほとんどが血液で、痰はほとんど見られない。
・量:大量の血液が出る。咳や呼吸困難を伴うことが多い。

喀血の原因には、肺がん、肺結核、肺出血、気管支拡張症、肺塞栓症などの重篤な疾患があります。喀血は緊急的な対応が必要であり、速やかに医療機関を受診する必要があります。

<吐血>
吐血は、胃や食道からの出血で、嘔吐と共に血液が出る状態を指します。特徴は次の通りです。

・色:暗赤色や赤黒色。
・性状:食物残渣が混じっていることが多く、胃酸で変色し、暗い色。
・量:大量の血液が出ることがあり、胃や食道からの出血が原因である。

吐血の原因には、消化性潰瘍や食道静脈瘤破裂、胃がんなどが考えられます。吐血も緊急的な対応が必要です。消化器系の医療機関を受診しましょう。

<見分けるポイント>
血痰、喀血、吐血は、色や性状、伴う症状の違いから見分けることが可能です。

・色の違い:血痰は鮮紅色や淡い赤色、喀血は鮮紅色、吐血は暗赤色や赤黒色。
・性状の違い:血痰は泡立った痰に血液の筋が混じっている、喀血は泡立った鮮紅色の血液が大量に出る、吐血は食物残渣が混じり、暗い色をしている。
・伴う症状:血痰は呼吸器感染症に伴うことが多く、喀血は重篤な呼吸器疾患によるもので、吐血は消化管からの出血に伴うことが多い。

4.血が咳や痰に混じる時に行う検査


咳や痰に血が混じる場合、原因を特定するために以下の検査が必要に応じて行われます。

4-1.問診


医師による問診では患者さんの症状や病歴、生活習慣などを詳しく聞き取ります。
咳や痰の状態、出血の程度、呼吸困難の有無などを確認することで、初期診断の手がかりとします。

4-2.胸部X線検査


胸部X線検査では、肺の状態を調べます。
肺がんや肺結核、気管支拡張症などを確認することができます。肺の構造的な異常を確認するのに有効です。

4-3.喀痰検査

喀痰(痰)を採取し、細菌や結核菌の有無を調べます。
また、がん細胞の有無も検査可能です。細菌感染や結核、肺がんの早期発見に役立ちます。

4-4.気管支鏡検査

気管支ファイバースコープを使って、気管支の状態を直接観察します。
これより、出血部位を特定が可能です。必要に応じて、生検(組織の一部を採取して詳しく調べる)も行います。

4-5.CT検査

胸部CTスキャンでは、肺や気管支、血管の詳細な画像を取得します。
肺がんや気管支の異常、血管の異常を詳しく調べることができます。X線検査では見つけにくい微細な異常も発見可能です。

4-6.血液検査

血液検査では、貧血や炎症反応の有無を確認します。
喀血による大量の出血がある場合、貧血が進行しているかどうかを評価します。炎症マーカーの上昇は感染症の可能性があります。

4-7.呼吸機能検査

肺の機能を調べ、閉塞性や拘束性の異常がないかを確認します。
慢性閉塞性肺疾患(COPD)や喘息など、呼吸器の機能に関する異常を検査するために行われます。

5.喀血は重篤な病気が潜んでいるかも


喀血は、重症な疾患が原因である可能性が考えられます。

5-1.喀血を引き起こす病気とは

喀血を引き起こす主な病気について、以下にご紹介いたします。

<気管支拡張症>
気管支拡張症は、気管支の壁が広がり、損傷しやすくなる病気です。
気管支の拡張によって粘液がたまりやすくなるため、細菌感染が繰り返されます。慢性的な咳と大量の痰がでます。
炎症が進行すると喀血が見られることがあります。

<非結核性抗酸菌症>
非結核性抗酸菌症は、結核菌とは異なる抗酸菌による感染症です。
気道や肺に慢性の感染を引き起こし、喀血の原因となります。抗酸菌は環境中に広く存在し、免疫力が低下している方や肺疾患がある方が感染しやすいです。

<特発性喀血症>
特発性喀血症は、原因不明で発症する喀血です。
患者さんに明らかな基礎疾患がないにもかかわらず、繰り返し喀血が見られることがあります。
特発性喀血症は比較的稀ですが、原因が明確でないため、詳細な検査と継続的な観察が必要です。

<肺アスペルギルス症>
肺アスペルギルス症は、アスペルギルス属のカビによる感染症です。
免疫力が低下している患者さんや慢性の肺疾患がある方に発症しやすく、喀血を引き起こします。
とくに肺の空洞部分にカビが繁殖するアスペルギローマ(真菌球)が形成されると、喀血のリスクが高まります。

<肺結核や肺結核後遺症>
肺結核は、結核菌による肺の感染症です。
結核にかかると肺に炎症が起こり、結核治療後も肺に瘢痕組織(治癒する過程でできる組織)や空洞が残ることがあります。
この病変部位が出血しやすくなるため、喀血が見られることがあります。

<肺がん>
肺がんは、喀血の主要な原因の一つです。
がんが気道や血管に侵入し、破壊することで出血が起こります。がんの進行に伴い、出血の頻度や量が増えることがあります。
喀血が肺がんの初期症状であることも多いため、注意が必要です。
喀血は、上記のような重篤な病気が原因であることが多いため、早期に適切な診断と治療を受けることが重要です。

咳と同時に鮮やかな血液が出るという症状がある場合、速やかに呼吸器内科を受診を検討しましょう。適切な診断と治療により、病気の進行を防ぎ、症状の改善を図ることが可能です。

5-2.特に注意すべき喀血

咳とともに大量の血が出る(激しい咳が出る)、息切れがある(呼吸が苦しい)、大量の出血(筋力低下、立ちくらみ、発汗、心拍数の上昇など失血症状がみられる)などの状態が合併している場合には、救急受診が必要です。

これらのような深刻な症状がなくても、喘息やCOPD、肺がんなどの呼吸器疾患の方が喀血した場合、早急にかかりつけ医へ受診することが重要です。

◆「喘息の症状」について詳しく>>

6.おわりに

咳や痰に血が混じっても、まずは落ち着いて観察することが大切です。

血液の色や量、頻度などを注意深く確認し、正確に医師に伝えましょう。

冷静な対応が、早期の問題発見と治療に繋がります。