喘息で痰が出るのはなぜ?色や性状でわかる原因と対処法
咳をしても痰(たん)が出きらず、息苦しさを感じていませんか?
喘息をお持ちの方の中には、痰が絡んで日常生活に支障を感じている方も少なくありません。
痰の色や粘り気には、体の状態を知る重要なヒントが隠されています。
この記事では、喘息で痰が出る理由や、痰の状態から分かること、そして家庭でできる対処法から呼吸器内科での治療まで詳しく解説します。
1. 喘息と痰の関係

喘息で咳が続くとき、痰が絡んでしまうことはありませんか?
痰は体にとって必要な防御反応ですが、喘息がある方では痰の量や性質が変わりやすくなります。
この章では、痰とは何か、そして喘息で痰が出やすくなる理由について解説します。
1-1. 痰とは何か
痰は、気道から分泌される粘液と、体内に侵入した異物やウイルス、細菌などが混ざり合ったものです。
健康な人でも、気道は常に少量の粘液を分泌しており、この粘液が異物を絡めとって体外に排出する働きをしています。
通常、この粘液は無意識のうちに飲み込まれていますが、炎症が起きると粘液の分泌量が増え、意識して咳をして出さなければならない「痰」となります。
【参考情報】『Q6. 黄色または緑色のたんが出ます。』日本呼吸器学会
https://www.jrs.or.jp/citizen/faq/q06.html
1-2. 喘息で痰が出やすくなる理由
喘息は、気道が慢性的に炎症を起こし、刺激に対して敏感になっている状態です。
この慢性的な炎症により、気道の粘膜から分泌される粘液の量が増え、痰が出やすくなります。
喘息患者さんの気道は、炎症によって粘膜が腫れ、気道が狭くなっている状態です。
さらに、粘液の分泌が増えることで、痰が気道に溜まりやすくなるでしょう。
咳をしても痰が出きらず、呼吸が苦しくなることがあります。
1-3. 喘息の痰と風邪の痰の違い
風邪をひいたときにも痰が出ますが、喘息の痰と風邪の痰には違いがあります。
風邪の場合、ウイルスや細菌による急性感染が原因で、通常は1週間程度で症状が治まり、痰も減っていくのが通常です。
風邪の痰は、黄色や緑色になることが多く、これは白血球がウイルスや細菌と戦った後の痰であることを示しています。
一方、喘息の痰は、慢性的な気道の炎症が原因で出ています。
風邪が治った後も痰が長く続く場合や、咳と痰が2週間以上続く場合は、喘息やその他の呼吸器疾患の可能性があるため、呼吸器内科を受診することをおすすめします。
【参考情報】”Asthma” by Centers for Disease Control and Prevention
https://www.cdc.gov/asthma
2. 痰の種類と性状でわかること

痰の色や粘り気には、体の状態を知る重要なヒントが隠されています。
ここでは、痰の種類と性状から分かることを解説します。
2-1. 透明・白色の痰
透明または白色の痰は、喘息の患者さんでよく見られます。
これは、気道に炎症はあるものの、細菌感染を起こしていない状態を示していることが多いです。
喘息の気道では、粘液に含まれる糖タンパク質が多く、ネバネバとした粘り気の強い痰になります。
このような痰は、咳をしても出にくく、喉に絡んだ感覚が残りやすいのが特徴です。
2-2. 黄色・緑色の痰
黄色や緑色の痰は、細菌感染の可能性を示しています。
白血球の一種である好中球に含まれる酵素が、痰に色をつけるためです。
喘息の患者さんが風邪をひいた場合や、気管支炎、副鼻腔炎を併発した場合に、このような色の痰が出ることがあります。
黄色や緑色の痰が3日以上続く場合や、発熱を伴う場合は、医療機関を受診しましょう。
【参考情報】『喀痰・咳嗽(かくたん・がいそう)』健康長寿ネット
https://www.tyojyu.or.jp/net/byouki/rounensei/kakutan-gaisou.html
2-3. 粘り気の強い痰とサラサラした痰
痰の粘り気(粘度)は、気道の状態や体の水分バランスを知る手がかりになります。
粘り気の強い痰(ねばねばした痰)
気道の炎症が強いときや、体内の水分が不足しているときに見られます。
粘度が高いと、痰が喉や気道に張り付きやすくなり、咳をしても出にくくなります。
その結果、息苦しさが増したり、喘鳴(ヒューヒュー、ゼーゼーという音)が強くなることがあります。
粘り気の強い痰が続く場合は、こまめに水分を摂ることで粘度を下げ、排出しやすくすることが期待されます。
また、室内の湿度を適切に保つことも大切です。
サラサラした痰(水っぽい痰)
サラサラした痰は、気道の粘液が比較的薄く、水分が多い状態です。
風邪の初期や、アレルギー反応が起きているときに見られることがあります。
サラサラした痰は出しやすい一方で、量が多いと頻繁に咳が出たり、喉に流れ込んで不快感を覚えることがあります。
透明でサラサラした痰が大量に出る場合は、アレルギー性鼻炎や副鼻腔炎などが背景にある可能性も考えられます。

痰の粘度と対処法
・粘り気が強い場合:
水分補給、室内の加湿、温かい飲み物の摂取が有効です。
去痰薬(ムコダインやムコソルバンなど)の使用も、医師と相談しながら検討しましょう。
・サラサラした痰が多い場合:
アレルゲンや刺激物質を避け、鼻や喉の炎症を抑えることが大切です。
症状が続く場合は、呼吸器内科やアレルギー科を受診することをお勧めします。
痰の粘度や量の変化を観察することで、気道の状態をより正確に把握し、適切な対処法を選ぶことができます。
2-4. 血が混じった痰
痰に血が混じっている場合は、注意が必要です。
少量の血が混じる程度であれば、激しい咳によって気道の粘膜が傷ついた可能性がありますが、何度も血痰が出る場合や、大量の血が混じる場合は、速やかに医療機関を受診してください。
3. 喘息で痰が出やすくなるメカニズム
喘息で痰が多く出るのには、いくつかの理由があります。
この章では、気道の炎症や過敏性、そして時間帯によって症状が変わる理由について、わかりやすく解説します。
3-1. 気道の炎症と粘液の分泌増加
喘息の気道では慢性的な炎症が続いていますが、この炎症がどのように痰の量を増やすのか、体の仕組みをもう少し詳しく見ていきましょう。
炎症が続くと、気道の粘膜にある粘液を作る細胞が活発に働き始めます。
さらに、炎症が長引くとこの細胞の数自体が増えるため、粘液の分泌量がどんどん増えていくのです。
また、炎症が起こった際に、気道から炎症を引き起こす物質が放出されます。
この物質には、気道の粘膜をさらに刺激し、粘液の分泌を促すだけでなく、粘液の粘り気を強くする働きがあります。
その結果、痰が出にくくなり、喉や気道に絡みやすくなるでしょう。
健康な人の気道では、粘液は少量しか作られず、気道の表面にある小さな毛のような組織(線毛)によって自然に外へ運ばれます。
しかし、喘息では炎症によってこの毛の動きが鈍くなり、粘液を外へ押し出す力が弱まります。
こうして、痰が気道に溜まりやすくなり、咳をしても出しにくい状態が作られるのです。
3-2. 気道の過敏性と痰の関係
喘息の患者さんの気道は、健康な人に比べて刺激に対して敏感になっています。
この気道の過敏性により、わずかな刺激でも気管支が収縮し、粘液の分泌が増えます。
タバコの煙、香水、冷たい空気、運動などが刺激となり、痰が増えることがあるでしょう。
気道の過敏性をコントロールするためには、吸入ステロイド薬による治療が重要です。
3-3. 夜間や早朝に痰が増える理由
喘息の患者さんの中には、夜間や早朝に痰が増えて息苦しさを感じる方がいます。これにはいくつかの理由があります。
まず、夜間は副交感神経が優位になり、気管支が収縮しやすくなります。
また、横になって寝ることで、痰が喉に溜まりやすくなるでしょう。
さらに、夜間は気道の炎症が悪化しやすい時間帯でもあります。
このような夜間や早朝の症状がある場合は、治療の見直しが必要なサインです。主治医に相談しましょう。
◆『喘息発作がおきた。パニックにならないためには?』について>>
【参考情報】”What Is Asthma?” by National Heart, Lung, and Blood Institute
https://www.nhlbi.nih.gov/health/asthma
4. 痰を減らすための生活習慣と家庭でできるケア

喘息の痰を減らすためには、日々の生活習慣の見直しと、家庭でできるセルフケアが大きな力となります。
ここでは、医療機関での治療と並行して取り組んでいただきたい、具体的な対処法をご紹介します。
4-1. 適切な湿度管理で気道を守る
気道の乾燥は、痰の粘度を高め、排出を困難にします。
室内の湿度を40〜60%に保つことで、気道の粘膜が潤い、痰が出やすくなるでしょう。
湿度管理の具体的な方法としては、まず湿度計を使って室内の湿度を日常的に確認することが大切です。
加湿器を使用する場合は、こまめに掃除をしてカビやバクテリアの繁殖を防ぎましょう。
加湿器がない場合でも、濡れたタオルを室内に干したり、洗濯物を部屋干ししたりすることで、ある程度の湿度を保つことが期待できます。
特に冬場やエアコン使用時は、室内が乾燥しやすいため、注意が必要です。
また就寝中の乾燥を防ぐため、寝室の環境を整えることが効果的でしょう。
4-2. 水分補給で痰を出しやすくする
こまめな水分補給は、痰の粘度を下げ、排出を促進する働きがあります。
喘息の患者さんでは、喉や気管支の粘膜を潤わせておくために、水分の摂取が重要です。
水やお茶を少量ずつ、こまめに飲むことを心がけましょう。
温かい飲み物は、喉を潤すとともに気道をリラックスさせることが期待されます。
ただし、冷たすぎる飲み物は気道を刺激することがあるため、常温や温かい飲み物がおすすめです。
また、のど飴やハチミツは適量であれば喉を潤す働きがありますが、過剰摂取は糖分の取りすぎにつながり、かえって喉の乾燥を招いたり、血糖値の上昇を引き起こすことがあるため注意が必要です。
【参考情報】『【実践編】上手に痰を出す方法』環境再生保全機構
https://www.erca.go.jp/yobou/zensoku/copd/sputum/03.html
4-3. 痰を楽に出す工夫
痰が喉に絡んで苦しいときは、無理に強く咳き込むのではなく、楽に痰を出す工夫をすることが大切です。
前かがみの姿勢(椅子に座って前傾し、肘をテーブルにつく姿勢)は、横隔膜が動きやすくなり、呼吸が楽になります。
また、横向きで寝る、上半身を少し高くして寝るなど、寝る姿勢を工夫することで、痰が喉に溜まりにくくなり、呼吸も楽になるでしょう。
深呼吸をゆっくり行うことで、気道が広がり、痰が移動しやすくなります。
鼻からゆっくり息を吸って、口からゆっくり息を吐いて深呼吸します。
もう吸えないところまで胸いっぱい吸ってから、ゆっくりと吐きましょう。
水分補給と腹式呼吸で痰が出やすい状態になったら、軽く咳払いをして痰を吐き出します。
体位ドレナージ(重力を利用して痰を移動させる方法)などの専門的な排痰法が行われることもありますが、これらは患者さんの状態に応じた評価や指導が必要になります。
当院では、まずは薬物療法や日常生活の工夫など、無理のない方法で症状の改善を目指すことを基本とし、必要に応じて専門的な対応が可能な医療機関をご紹介しています。
4-4. アレルゲンを避けて気道の刺激を減らす
ハウスダストやダニ、カビ、花粉などのアレルゲンは、喘息の炎症を悪化させ、痰の分泌を増やす原因となります。
こまめな掃除が基本です。床は拭き掃除をしてから掃除機をかけると、ホコリが舞い上がるのを防げます。布団やカーテンも定期的に洗濯し、ダニを減らしましょう。
換気と空気清浄機の活用も有効です。空気清浄機を使う場合は、フィルターの掃除も忘れずに行いましょう。
花粉の時期は、外出時にマスクを着用し、帰宅時には衣服についた花粉を払い落とすことも大切です。
4-5. 禁煙と受動喫煙対策
タバコの煙は、気道を刺激し、炎症を悪化させます。
喫煙している方は、禁煙することが何よりも大切です。
また、周囲の人が吸うタバコの煙(受動喫煙)も、喘息の症状を悪化させるため、避けるようにしましょう。
禁煙は簡単ではありませんが、医療機関での禁煙外来のサポートを受けることで、成功率が高まります。
5. 呼吸器内科での治療法

喘息で痰が絡むときは、家庭でのセルフケアに加えて、呼吸器内科での適切な治療が欠かせません。
ここでは、痰を減らすために呼吸器内科で行われる主な治療法をご紹介します。
5-1. 吸入ステロイド薬による気道炎症の抑制
喘息治療の基本は、気道の慢性的な炎症を抑えることです。
吸入ステロイド薬は、気道に直接作用するように作られており、気道の炎症を抑える働きがあります。
炎症が抑えられることで、粘液の過剰な分泌が減り、痰の量も減少します。
吸入ステロイド薬は、症状がない時でも気道で”ボヤ”のようにくすぶっている炎症を鎮めるため、毎日継続して使用することが重要です。
効果が出始めるまでに数日~1週間程度かかるのが一般的ですが、焦らず継続することで徐々に気道の過敏性が改善され、痰が減り、呼吸が楽になることが期待されます。
5-2. 去痰薬(ムコダイン・ムコソルバン)の役割
痰の粘り気が強くて出しにくい場合は、去痰薬が処方されます。
代表的な去痰薬には、ムコダインとムコソルバンがあります。
ムコダインは、痰の粘り気を増やす原因となる成分を減らし、気道粘液の粘り気を正常にすることで、痰のキレを良くする働きがあります。
服用すると一時的に痰が増えたように感じることがありますが、これは薬が作用して痰が出やすくなっている証拠です。
ムコソルバンは、肺サーファクタントの分泌を促進させ、気道粘液の粘り気を低下させる働きがあります。
また、気道粘膜上に存在する繊毛の運動を活発にして、痰を体外へ排出しやすくする作用が期待されます。
これらの去痰薬は、喘息の根本的な治療ではなく、痰の排出を助ける補助的な役割を果たします。
吸入ステロイド薬などの基本治療と併用することで、より快適な呼吸を取り戻すことが期待されるでしょう。
5-3. 気管支拡張薬の役割
気管支拡張薬は、気管支を広げて呼吸を楽にする薬です。
基本的には吸入ステロイド薬と組み合わせて使用されます。
気管支拡張薬には、長時間作用性β₂刺激薬(LABA)や長時間作用性抗コリン薬(LAMA)などがあり、気道の筋肉を弛緩させて気管支を広げる働きがあります。
吸入後すぐ(数分以内)に呼吸を楽にする効果が期待できます。
気管支が広がることで、痰が気道に溜まりにくくなり、排出もスムーズになるでしょう。
5-4. 定期的な診察の重要性
喘息の治療では、定期的な通院が非常に重要です。
症状が落ち着いている時でも、自己判断で通院をやめると、気道の炎症が再び悪化し、痰が増える原因となります。
定期的な通院の目的は、症状のコントロール状態を医師が確認し、適切な治療を継続することです。
吸入ステロイド薬を途中でやめると、数週間のうちに再び炎症が悪化することがあるため、医師の指示通りに薬を継続することが大切です。
通院時には、痰の量や色、呼吸の状態などを医師に伝えることで、治療内容の調整が行われます。
症状が安定してきたら、通院間隔を延ばすことも可能でしょう。
◆『喘息の定期受診、やめていませんか?忙しくても知っておきたい通院の重要性』について>>
【参考情報】『よりよい治療を受けるために|成人ぜん息(ぜんそく、喘息)』環境再生保全機構
https://www.erca.go.jp/yobou/zensoku/basic/adult/control/treat.html
6. おわりに
喘息で痰が絡むのは、気道の慢性的な炎症によって粘液の分泌が増えているためです。
痰を減らすためには、適切な湿度管理、こまめな水分補給、アレルゲン対策、禁煙など、日々の生活習慣の見直しが大切です。
また、吸入ステロイド薬や去痰薬など、呼吸器内科での適切な治療も欠かせません。
症状が落ち着いている時でも定期的な通院を続け、痰が絡んで呼吸が苦しいと感じたら、一人で悩まず呼吸器内科を受診しましょう。
