喘息治療で使われる「フルタイド」の特徴や副作用について解説!

フルタイドという医薬品をご存知でしょうか?
フルタイドは、吸入ステロイドに分類されている医薬品であり、喘息の症状をコントロールする「長期管理薬」でもあります。
フルタイドにはディスカスとエアゾールが存在し、年齢や吸入する力などによって使い分けることが可能です。
今回は、フルタイドの特徴や副作用、注意点などを解説します。
1.フルタイドとはどんな薬?
フルタイドは、「フルチカゾンプロピオン酸エステル」という吸入ステロイドが配合されている喘息治療薬です。
喘息は、気管支などに炎症が起こり、気道が狭まることで起きる疾患です。
吸入ステロイドは、空気の通り道である気道の炎症を鎮める働きがあり、喘息の発作を予防することができます。
フルタイドなどの吸入ステロイドは、気道の炎症にのみ働きかけるため、内服のステロイド薬に比べると全身性の副作用が少ないことがメリットです。
喘息治療薬は、喘息の症状をコントロールして発作が起きないようにする「長期管理薬」と、喘息の発作を治療する「発作治療薬」が存在します。フルタイドは長期管理薬に分類されており、喘息の発作が起きないようにする働きがあります。
フルタイドには、「ディスカス」と「エアゾール」という形状が流通しています。
ディスカスは、粉末の薬剤を自分で吸い込む吸入器であり、吸入するタイミングを合わせる必要がないというメリットがありますが、患者さんの吸入力が低下している状態だとうまく吸入できないことがデメリットです。
エアゾールは、薬剤を霧状に噴射する吸入器であり、吸入力が低下している患者さんでも吸いやすい設計になっています。しかし、薬剤の噴霧と吸入のタイミングを合わせる必要があり、口の中や喉に薬剤が残りやすいというデメリットがあります。
フルタイドが使われる疾患として気管支喘息があります。
【参考文献】”Fluticasone Oral Inhalation” by Medline Plus
https://medlineplus.gov/druginfo/meds/a601056.html
2.フルタイドの服用方法
成人では、フルタイドの配合成分フルチカゾンプロピオン酸エステルとして通常1回100μgを1日2回吸入します。症状により増減が可能であり、最大1日800μgまでが限度です。
小児の場合は、フルチカゾンプロピオン酸エステルとして通常1回50μgを1日2回吸入します。症状によって増減が可能であり、最大1日200μgまでが限度です。
・ディスカス
1.吸入器のグリップに親指をあて、カチッと音がするまでスライドさせてカバーをあけます
2.レバーをカチッと音がする前で押しつけ、吸入口が開いたことを確認します
3.息を深く吐いて、吸入器を水平にして吸入口をくわえます
4.下を下げて喉の奥を広げるイメージで勢いよく、深く薬剤を吸い込みます
5.吸入器を口から外して口を閉じて3〜4秒息を止めます
6.口を閉じて鼻から息を吐きます
7.吸入器のカバーを閉じて、口の中や喉をうがいでしっかり洗い流します
【参考情報】『<吸入器別>正しい吸入方法ディスカス/アドエア、フルタイド、セレベント』環境再生保全機構
https://www.erca.go.jp/yobou/zensoku/basic/adult/control/inhalers/method04.html
・エアゾール
1.ボンベ部分を上にしてよく振ります
2.吸入器に息がかからないように、ゆっくり深く息を吐きます
3.吸入口をくわえて、ボンベの上部を1回おします
4.薬剤が噴霧されたら3秒間深く吸ってください
5.3〜5秒間程度息を止めてから、鼻から息を出してください
6.吸入口にキャップをはめて、口の中や喉をうがいでしっかり洗い流します
【参考情報】『吸入器の特徴と注意点エアゾール製剤』環境再生保全機構
https://www.erca.go.jp/yobou/zensoku/basic/adult/control/inhalers/feature04.html
3.フルタイドの副作用
フルタイドの主な副作用として以下のようなものがあります。
・嗄声(させい)
・口腔カンジダ
・口腔および咽喉頭症状(痛み、不快感など)
嗄声は、声がかすれて出にくくなる症状であり、吸入ステロイドによって咽頭筋の筋力が低下することで起きます。
口腔カンジダは、吸入ステロイドの働きによって免疫力が低下することで常在菌であるカンジダ菌が増殖することで起きます。症状として、口腔内に白苔(はくたい:白いコケのようなもの)ができるなどがあります。
これらの副作用を防ぐためには、フルタイドの吸入後に、薬剤が残らないように口の中や喉を入念にうがいすることが重要です。
めったにありませんが、重大な副作用としてアナフィラキシーショックがあります。アナフィラキシーショックは、薬剤によって急激なアレルギー症状が起きる状態であり、呼吸困難や全身の赤み、むくみなどが起きます。適切な治療を受けないと命に関わることもあるため、フルタイドを使用して体調の変化を感じた場合、すぐに医療機関へ受診してください。
【参考情報】『吸入ステロイド薬の副作用である嗄声発言の要因解析』医療薬学40(12)716-725(2014)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjphcs/40/12/40_716/_pdf
【参考文献】”Flovent hfa (fluticasone propionate) inhaler label” by accessdata.fda.gov
https://www.accessdata.fda.gov/drugsatfda_docs/label/2010/021433s015lbl.pdf
4.使用上の注意点
フルタイドを使用する上で、体質や持病、併用薬などに注意が必要です。
・妊婦、授乳婦
吸入ステロイドであるフルタイドは、全身性の副作用が少ないため、妊婦や授乳婦への安全性が高いと考えられています。しかし、お腹の赤ちゃんや乳児にフルタイドが影響する可能性もあるため、主治医に相談することが大切です。
・小児
フルタイドは、吸入ステロイドの中でも15歳未満の小児にも使えるという特徴があります。しかし、5歳未満での臨床試験はなく、吸入方法を伝えるのも難しい可能性があるため注意が必要です。
・高齢者
高齢になると吸入力が低下することが考えられるため、吸入力が低下していても使いやすいエアゾールへの変更を検討した方が良いでしょう。
また、高齢になると持病などで併用薬が増えることもあり、お薬によっては作用に影響が生じる可能性があります。併用薬がある場合は、医師や薬剤師に確認してもらうことで安心してお薬を飲めます。
・保管方法
吸入をした後は、吸入口を乾いた布やティッシュなどで拭いてください。湿気が少なく、直射日光に当たらない場所に保管することも、吸入器を正常に作動させるためにも重要です。
5.フルタイドの薬価
・フルタイド50ディスカス
薬価1個 772.8円
・フルタイド100ディスカス
薬価1個 1117.2円
・フルタイド200ディスカス
薬価1個 1456.3円
・フルタイド50μgエアゾール120吸入用
薬価1瓶 1067.5円
・フルタイド100μgエアゾール60吸入用
薬価1瓶 1132.6円
2024年9月現在、フルタイドのジェネリック医薬品は存在しません。代わりになるような市販薬も存在しないため、フルタイドを入手するためには医療機関に受診して調剤薬局で交付してもらう必要があります。
6.おわりに
フルタイドは、吸入ステロイド薬であり、長期管理薬に分類されている喘息治療薬です。
またフルタイドは、気道の炎症を鎮めることで喘息の症状をコントロールして発作が起きないようにします。
ただし、口の中や喉に薬剤が付着したままだと、嗄声や口腔カンジダなどの副作用があらわれる可能性があるので、吸入後は必ずうがいをしてください。
喘息の症状をしっかり抑えるためには、フルタイドの継続的な使用が必要であり、自己判断でフルタイドの使用を中止しないことが大切です。喘息や咳などの症状にお悩みの方は、医療機関へ受診してみてください。
喘息は、約40年前に吸入ステロイド治療が普及し始めてから劇的に予後が改善しました。
当時は、年間10,000人近くの方が喘息によって生命にかかわっておられました。
現在、年間約1,000人と減少している要因は、吸入ステロイド治療を主体とした喘息治療の進歩です。
逆にいうと、必要な方に適切な治療が施されない場合は、当時の割合に戻るということになります。実際に近年で生命にかかわる状態となる方は、適切な治療が行われなかった高齢者の患者さんが多くを占めています。必要な場合は適切に治療を続行することが望ましいです。
また、ステロイドということで、体に対する影響を懸念する方もいると思いますが、吸入タイプにすることで、経口ステロイドの1/100の量で効果があることと、気道からの吸収率は1-13%ですので、1/1000-1/10000の全身影響で続行できることになります。長期に使用するリスクは最小限に抑えられますのでご安心ください。