咳が止まらない・味がしないときに考えられる原因と診断の重要性
風邪やインフルエンザ、新型コロナウイルス感染症などが治ったあとに、「咳が止まらない」「味がしない」といった症状が続くことがあります。
体調が回復してきたのに症状だけが残ると、不安になる方も多いのではないでしょうか。
こうした症状は、感染症のあとに一時的に起こることもありますが、長引く場合は別の病気が隠れていることもあります。
特に、咳と味覚異常が同時にみられる場合は、新型コロナウイルス感染症の回復後も続く症状だけでなく、副鼻腔炎、咳喘息、嗅覚障害なども含めて考えることが大切です。
この記事では、咳が止まらないことと味がしないことが同時に起こる主な原因、受診の目安、診療科の選び方、自宅でできる工夫について、一般の方にもわかりやすく解説します。
1. 咳が止まらない・味がしない症状はなぜ起こるのか

咳が止まらない、味がしないといった症状は、風邪のあとにみられることもあります。
ただし、実際には「味覚」そのものではなく、「嗅覚」の低下によって味がしないように感じている場合も少なくありません。
まずは、この2つの症状がどのように起こるのかを整理しておきましょう。
1-1. 味がしない原因は嗅覚の低下が関係
食べ物のおいしさは、舌で感じる甘味・塩味・酸味・苦味・うま味だけで決まるわけではありません。
実際には、食べ物の香りを鼻で感じる嗅覚も大きく関わっています。
そのため、鼻づまりや鼻の炎症、嗅覚の低下があると、舌の味覚に大きな異常がなくても「味がしない」と感じることがあります。
特に風邪や新型コロナウイルス感染症のあとには、鼻の粘膜や嗅覚に関わる部分が影響を受け、においが分かりにくくなることがあるでしょう。
その結果、食事の風味が分からず、「何を食べてもおいしくない」「味が薄く感じる」といった症状につながるのです。
【参考情報】『歯・口の機能』厚生労働省
https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/teeth/h-01-001.html
1-2.咳が長引くのはなぜ?感染後に起こる変化
咳は、本来は気道(空気の通り)に入った異物や病原体を外に出すための防御反応です。
しかし、風邪などが治ったあとも気道の粘膜に炎症が残ると、少しの刺激でも咳が出やすい状態が続くことがあります。
これを感染後咳嗽(がいそう)と呼びます。
会話をしたとき、冷たい空気を吸ったとき、寝る前や夜中などに咳が出やすくなる場合は、このような気道の過敏な状態が背景にあることが多いです。
通常は時間とともに改善しますが、長引く場合は咳喘息や副鼻腔炎、胃食道逆流症などの可能性も考える必要があります。
このように、咳が長引く原因はひとつではありません。
◆「コロナ以外のウイルス感染で咳がでる病気と予防法」について>>
2. 咳が止まらない・味がしないときに考えられる主な原因

症状が同時に続いているときは、ひとつの病気だけで説明できるとは限りません。
ここでは、比較的よくみられる原因を整理します。
2-1. 新型コロナウイルス感染症の罹患後症状
新型コロナウイルス感染症のあとに、咳、息切れ、倦怠感、嗅覚障害、味覚障害などが続くことがあります。
厚生労働省も、咳や嗅覚・味覚障害を代表的な罹患後症状(回復後も続く症状)として挙げています。
ただし、重要なのは「コロナ後だから様子を見る」ではなく、症状が長引いている理由をきちんと見極めることです。
罹患後症状のように見えても、実際には副鼻腔炎や咳喘息など、別の病気が続いていることもあります。
【参考情報】『新型コロナウイルス感染症の罹患後症状(いわゆる後遺症)に関するQ&A』厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kouisyou_qa.html
【参考情報】『Long COVID or Post-COVID Conditions』WHO
https://www.who.int/health-topics/coronavirus#tab=tab_3
2-2. 副鼻腔炎や鼻水がのどに落ちる状態

鼻の奥に炎症が残ると、副鼻腔炎を起こしたり、鼻水がのどに流れる後鼻漏(こうびろう)が起きることがあります。
この状態になると、のどが刺激されて咳が続くことがあるのです。
また、鼻の通りが悪くなることで嗅覚が低下し、「味がしない」と感じる原因になることもあるでしょう。
黄色や緑色の鼻水が続く、鼻づまりがある、顔の重だるさがある、においが分かりにくいといった症状があれば、鼻の病気が関係している可能性があります。
【参考情報】『鼻の病気』日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会
https://www.jibika.or.jp/modules/disease/index.php?content_id=21
2-3. 咳喘息や気道の過敏性
熱がないのに乾いた咳が続く、夜間や早朝に咳が強くなる、会話や季節の変わり目で咳き込みやすい場合は、咳喘息が疑われます。
咳喘息では一般的な咳止め薬だけで十分に改善しないこともあり、吸入薬などが必要になる場合もあるでしょう。
感染症のあとに気道が敏感になり、そのまま咳喘息が見つかるケースもあります。
咳が長引くときに「後遺症だから仕方ない」と考えてしまうと、適切な治療が遅れることがあるため注意が必要です。
◆「咳が止まらない…コロナ後の後遺症?それとも別の病気?」について>>
【参考情報】『Asthma』NIH
https://www.nhlbi.nih.gov/health/asthma
2-4. 口の乾燥や食欲低下による味覚の変化
発熱や体調不良のあとには、水分不足や口の乾燥、食欲低下によって味を感じにくくなることがあります。
また、十分に食事がとれていない状態が続くと、味覚に必要な栄養素が不足しやすくなり、味覚異常が悪化することもあると言われています。
症状が軽くても、食事量が減っている、口が乾きやすい、においも味も分かりにくいという場合は、早めに相談したほうが安心です。
【参考情報】『Taste Disorders』NIH
https://www.nidcd.nih.gov/health/taste-disorders
3. 受診の目安

咳や味覚異常は自然に改善することもありますが、長引く場合や強い症状がある場合は、医療機関で原因を確認することが重要です。
3-1. 早めに受診したい症状
次のような症状がある場合は、早めの受診をおすすめします。
・咳が2週間以上続いている
・息苦しさや胸の痛みがある
・高熱が続く
・痰に血が混じる
・咳が強くて眠れない
・食事や水分が十分にとれない
・味やにおいの異常が数週間以上続いている
このような場合は、感染症のあとに残った症状だけでなく、別の病気が隠れていないか確認する必要があります。
3-2. すぐに相談したいケース
呼吸がつらい、胸が苦しい、水も飲めないほどつらい、ぐったりしているといった場合は、自己判断で様子を見続けず、早めに医療機関へ相談してください。
特に、咳が強くなっているのに改善の兆しがない場合は注意が必要です。
【参考情報】『Q11. 発作性もしくは突然呼吸が苦しくなります。』日本呼吸器学会
https://www.jrs.or.jp/citizen/faq/q11.html
4. 何科を受診すればよい?

咳と味覚異常が同時にあると、何科に行けばよいのか迷うことがあります。
症状の中心がどこにあるかで考えるとわかりやすくなります。
4-1. 咳が主な症状なら呼吸器内科
咳が長引いていてつらい場合は、呼吸器内科の受診が適しています。
呼吸器内科では、咳喘息、気管支炎、肺炎、アレルギー、逆流性食道炎に伴う咳など、さまざまな原因を確認します。
必要に応じて胸部レントゲン、CT、呼吸機能検査などが行われます。
4-2. 味やにおいの異常が目立つなら耳鼻咽喉科
鼻づまり、においがしない、味がしないといった症状が強い場合は、耳鼻咽喉科が適しています。
副鼻腔炎や嗅覚障害の有無、鼻の炎症、口の乾燥などを詳しく確認できます。
4-3. 両方ある場合も原因を整理することが大切

咳も味覚異常もある場合は、まずつらい症状が強いほうから受診してもかまいません。
呼吸器内科と耳鼻咽喉科の両方で診断が必要になることもあります。
症状をひとつの原因だけで決めつけず、必要に応じて複数の視点で診断することが大切です。
5. 自宅でできる工夫

受診までの間に、症状を少しでも悪化させない工夫をしておくことも大切です。
自宅でできる簡単な対処法を症状別に紹介します。
【参考情報】『Self-Care for Respiratory Symptoms』CDC
https://www.cdc.gov/respiratory-viruses/prevention/index.html
5-1. 咳を和らげるための工夫
部屋の乾燥を避け、こまめに水分をとりましょう。
乾いた空気、たばこの煙、ほこり、冷たい空気は咳を悪化させやすいため、できるだけ避けることが大切です。
室内の湿度は40〜60%を目安に保つと、気道の乾燥を防ぎ、咳の悪化を防ぎやすくなります。
湿度の目安は以下の通りです。
■ 湿度の目安
40%未満:乾燥しすぎ(喉・肌トラブルが起きやすい)
40〜60%:快適・健康的な範囲
60%以上:やや高め(カビ・ダニが増えやすい)
夜に咳がつらい場合は、上半身を少し高くして休むと楽になることがあります。
◆「夜になると咳が止まらないのはなぜ?体のしくみと原因・対策を解説!」について>>
5-2. 味がしないときの工夫
味を感じにくいときは、香り、だし、酸味、温度、食感を意識すると食べやすくなることがあります。無理に濃い味にせず、食べやすいものを少しずつ摂ることが大切です。
また、においが分かりにくいと、ガス漏れや食品の傷みに気づきにくくなるため、日頃からガス機器の安全確認や、食品の期限・見た目を意識して確認することが大切です。
◆「咳が止まらない時に取り入れたい食べ物と栄養ケア」について>>
6. おわりに
咳が止まらない、味がしないという症状は、風邪やインフルエンザ、新型コロナウイルス感染症が治ったあとに起こることがあります。
ただし、それだけで説明できるとは限らず、副鼻腔炎、咳喘息、嗅覚障害など別の病気が関係していることもあります。
特に、咳が2週間以上続く、味やにおいの異常が改善しない、息苦しさや胸の痛みがあるといった場合は、自己判断で長く様子を見すぎないことが大切です。
症状をきちんと診断し、必要な治療につなげることが、回復への近道になります。
