喘息、COPD治療で使われる「メプチンエアー」の特徴や副作用について解説!
メプチンエアーという医薬品をご存知でしょうか?
メプチンエアーは、喘息治療薬の中でも「発作治療薬」に分類される医薬品であり、喘息発作を速やかに抑えることを目的としています。
大人だけでなく子どもにも使えるので、幅広い年齢層に使えることもメプチンエアーのメリットの一つです。
今回は、メプチンエアーの特徴や副作用、注意点などを解説します。
1.メプチンエアーとはどんな薬?
メプチンエアーには、「プロカテロール塩酸塩」という成分を配合しています。
喘息は、何らかの理由によって空気の通り道である気管支粘膜が炎症を起こすことで、気管支が狭くなってしまう疾患です。プロカテロール塩酸塩水和物は、β2受容体刺激薬に分類されており、気管支に存在するアドレナリンβ2受容体を刺激することで気管支を広げて、喘息の発作を抑えます。
喘息治療薬は、喘息の症状をコントロールして発作を予防する「長期管理薬」と喘息の発作を速やかに鎮める「発作治療薬」が存在し、メプチンエアーは発作治療薬に分類されています。
メプチンエアーに配合されているプロカテロール塩酸塩は、さまざまな剤形が販売されており、吸入薬タイプとしてメプチンエアー(エアゾール)以外にもメプチンイングヘラー(ドライパウダー式吸入剤)、ネブライザーという機械にセットして使う「吸入液」があります。
内服薬としては「錠剤」「シロップ」「ドライシロップ」があります。ドライシロップは、シロップとは異なり粉状ですが、水に溶かすことでシロップとして服用も可能です。そのため、粉薬が苦手な子どもでも使えることがメリットです。
メプチンエアーは、気管支喘息や慢性気管支炎、肺気腫における発作(気道が狭くなって呼吸困難になる状態)を抑えるのに使われます。
なお、慢性気管支炎と肺気腫は、あわせてCOPD(慢性閉塞性肺疾患)と呼ばれており、たばこの煙などの有害物質を長期間吸い込むことで、呼吸がしにくくなる病気です。
【参考情報】『成人ぜん息の基礎知識 ぜん息を知る』環境再生保全機構
https://www.erca.go.jp/yobou/zensoku/basic/adult/knowledge/medicine.html
【参考情報】”Effect of proactive use of inhaled procaterol on dyspnea in daily activities and quality of life in patients with chronic obstructive pulmonary disease” by National Institues of Health
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19827580/
2.メプチンエアーの服用方法
メプチンエアーは、成人では1回20μg(2吸入)、子どもでは1回10μg(1吸入)を吸入します。年齢や症状によって増減することも可能です。
メプチンエアーの吸入方法は以下のようになります。
1.キャップを外してボンベが上になるように持って、吸入器を数回振ります
2.吸入器に息がかからないように息を吐きます
3.吸入口をくわえて、ボンベを1回押すのと同時になるべく深く吸ってください
4.吸入器を口から外して、苦しくない程度に息を止めます
5.ゆっくり息を吐きます
6.なるべくうがいをします
【参考情報】『成人ぜん息の基礎知識 ぜん息をコントロールする』環境再生保全機構
https://www.erca.go.jp/yobou/zensoku/basic/adult/control/inhalers/method08.html
3.メプチンエアーの副作用
メプチンエアーの主な副作用として以下のようなものがあります。
・動悸
・振戦(手や足など体の一部が振るえること)
・吐き気
メプチンエアーなどβ2受容体刺激薬は、交感神経に存在するアドレナリンβ2受容体に働きかけるため、自律神経のうち交感神経が優位になります。特に、気管支と心臓の自律神経のつながりは強く、β2受容体の働きが強くなることで心臓に負担がかかることもあるので注意が必要です。自律神経のうち交感神経が優位になることで動悸や振戦、吐き気などの副作用があらわれます。
メプチンエアーを使ってこれらの副作用があらわれた場合は、吸入ステロイドなどで喘息の発作が出ないように予防する治療に切り替えていく必要があります。
めったにないですが、メプチンエアーの重大な副作用としてアナフィラキシーショックと重篤な血清カリウム値の低下があります。
アナフィラキシーショックは、メプチンエアーに対する急激なアレルギー反応であり、蕁麻疹や呼吸困難などの症状がみられるので医療機関での処置が必要です。重篤な血清カリウム値の低下が起こると手足の脱力感や呼吸困難などがみられます。
メプチンエアーを使って体調に変化を感じたら、すぐに医療機関へ相談しましょう。
【参考情報】『β2刺激薬(交感神経刺激薬)』環境再生保全機構
https://www.erca.go.jp/yobou/zensoku/basic/medicine/05.html
4.使用上の注意点
メプチンエアーは、年齢や体質、併用薬などによって使用に注意が必要なこともあります。
・妊婦、授乳婦
メプチンエアーは、気管支のみに働きかけるため、比較的に全身性の副作用も少なく、母乳への移行も少ないと考えられており、お腹の赤ちゃんや授乳中の赤ちゃんへの影響は少ないと言えます。しかし、メプチンエアーが赤ちゃんへ影響する可能性もゼロではないので、主治医に相談することが大切です。
・小児
子どもの年齢によっては、吸入器の使用方法がうまく理解できなかったり、うまく薬剤を吸えなかったりする可能性があります。吸入器の使用に慣れるまで保護者がしっかりと観察して指導することが大切です。吸入器の使用法について不安がある場合は、医師や薬剤師に相談してみてください。
・高齢者
一般的に、高齢者は健康な若者に比べると肝臓や腎臓の機能が低下しているため、薬の代謝や排泄に時間がかかり、副作用のリスクが高くなる傾向があります。また、高齢になるにつれて薬を服用する可能性が高くなり、薬の飲み合わせや相互作用に注意する必要があります。特に、メプチンエアーは、カテコールアミン製剤(例:アドレナリンなどの気管支痙攣(きかんしけいれん)やアナフィラキシーショックの治療薬)やキサンチン誘導体(例:テオフィリンなどの気管支喘息治療薬)、ステロイド剤や利尿剤などは、副作用のリスクを高める可能性があります。持病などがあって他に薬を使っている場合は、医師や薬剤師に確認してもらった方が良いでしょう。
【参考情報】『授乳中のお薬Q &A』国立成育医療研究センター
https://www.ncchd.go.jp/kusuri/lactation/qa_junyu.html#q5
5.メプチンエアーの薬価
・メプチンエアー10μg吸入100回
薬価1キット 894.9円
・メプチンキッドエアー5μg吸入100回
薬価1キット 792.7円
メプチンエアーなどのプロカテロール塩酸塩としての吸入薬にはジェネリック医薬品は存在しません。
6.おわりに
メプチンエアーは、発作治療薬に分類されている喘息治療薬です。
喘息は、気管支粘膜に起きた炎症によって気道が狭くなることで呼吸しづらくなる病気です。メプチンエアーは、気管支のβ2受容体に働きかけて気管支を広げて喘息の発作を抑えます。
メプチンエアーの主な副作用として、動悸や振戦、吐き気などがあります。メプチンエアーが体質的に合わなかった場合は、吸入ステロイドなど別の薬剤への変更が必要になります。
喘息治療は、並行して行うべき二種類の治療があります。
1.発作の予防、喘息の気道過敏性を低下させ、リモデリングを予防する「コントローラー」
2.発作症状が出現したときに行う一時的な治療「リリーバー」
前者は、症状がないときでも切れ目なく行うべき治療であり、喘息治療の目標は後者の使用頻度をできるだけゼロに近づけることです。
メプチンエアーは「短期間作用型β2刺激薬」に分類され後者に相当します。
喘息治療中はどの薬剤がどういう役割かを理解していく必要がありますので、担当医と良く話し合いながら進めていきましょう。