喘息やCOPD治療で使われる「シムビコート」の特徴や副作用について解説!
シムビコートという医薬品をご存知でしょうか?
吸入ステロイドとβ2受容体刺激薬を配合した吸入薬であり、喘息治療薬として広く使われています。
他の喘息治療で使われる吸入薬と異なる点として、発作治療薬と長期管理薬の両方の側面を持っていることにあります。
当記事では、シムビコートの特徴や副作用などについて解説します。
1.シムビコートとはどんな薬?
シムビコートには、吸入ステロイドの「ブテソニド」とβ2受容体刺激薬の「ホルモテロール」が配合されています。
喘息は、呼吸するときに空気が通る道(気道)に炎症が起き、発作的に気道が狭くなる疾患です。
吸入ステロイドによって気道の炎症を鎮め、β2受容体刺激薬によって気道を拡張して呼吸しやすくする効果があります。
通常、喘息治療薬は、喘息の発作を鎮める「発作治療薬」と喘息の症状をコントロールして発作が出ないようにする「長期管理薬」に分類できます。
シムビコートは、発作治療薬と長期管理薬の両方の使い方ができることが特徴です。喘息発作を予防するために長期的に使用して、発作が出てしまったときに追加で吸入することで喘息を治療できます。
シムビコートは、気管支喘息や慢性閉塞性肺疾患(COPD:慢性気管支炎・肺気腫)の症状を緩和するために使われます。
【参考文献】”Utility and effectiveness of Symbicort® Turbuhaler®” by National Institutes of Health
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC6130086/
2.シムビコートの服用方法
シムビコートはドライパウダー吸入式喘息・COPD治療配合剤に分類されており、吸入器から薬剤を吸い込みます。
1.まずはシムビコートのキャップを外します。
2.シムビコートの下部にある回転クリップを右に止まるまで回転させます。
3.左にカチッとするまで回転クリップを戻します。
4.シムビコートのマウスピースに息がかからないように息を吐きます。
5.シムビコートのマウスピースを咥えて、そばをすするように勢いよく吸います。
6.3〜4秒ほど息を止めて、ゆっくり息を吐きます。
7.キャップを閉めて、しっかりうがいをします。
・気管支喘息
成人では、1回1吸入を1日2回吸入します。症状によって増減することも可能ですが、1回4吸入1日2回が最高用量です。
発作が起きた場合は追加で吸入できます。発作が起きたときに1吸入し、数分経っても改善しない場合は、追加1吸入します。1回の発作で最大6吸入までとなっています。
長期管理と発作治療で合計1日8吸入までが基本ですが、症状が重い場合は一時的に12吸入まで増やすことも可能です。
・慢性閉塞性肺疾患
成人では、1回2吸入を1日2回吸入します。
最高用量で使用する場合は、副作用のリスクもあるので注意が必要です。
【参考文献】”What Symbicort Turbohaler is and what it is used for” by Electronic Medicines Compendium
https://www.medicines.org.uk/emc/product/1327/pil#gref
3.シムビコートの副作用
シムビコートの国内臨床試験において、314例中58例(18.5%)に副作用が報告されています。主な副作用として以下のものがあります。
・嗄声(させい:声がかれてうまく発声できない状態)(5.4%)
・筋痙攣(手の震えなど)(2.9%)
・動悸(2.5%)
その他にも、口腔カンジダ(舌の表面や粘膜に白い苔状の斑点が現れるなどの症状)などが認められることもあります。
このような副作用はシムビコートの薬剤が口や喉に残ってしまうことで発現しやすくなるため、吸入後は必ずうがいをすることが副作用を予防するためにも重要です。
めったにありませんが、重大な副作用として以下のものがあります。
・アナフィラキシーショック
・重篤な血清カリウム値の低下
アナフィラキシーショックは、何らかの物質を原因として急激なアレルギー反応を起こす疾患です。アナフィラキシーショックは早急に処置を受ける必要があり、唇の腫れやふらつき、全身の痒みなどがあらわれたら、すぐに医療機関へ受診してください。
血清カリウム値の低下は、ステロイドやキサンチン誘導体(テオドールなど)、利尿剤の併用によって起きることがあります。
シムビコート以外にも併用薬がある場合は、定期的な血液検査を受けたり、医師や薬剤師に薬の飲み合わせを確認してもらったりすることで安全にお薬を使用できます。
【参考文献】”SYMBICORT- budesonide and formoterol fumarate dihydrate aerosol” by National Insutitutes of Health
https://dailymed.nlm.nih.gov/dailymed/drugInfo.cfm?setid=fafa4cf1-99c2-43d5-73ad-51f256de3be0
4.使用上の注意点
シムビコートは、長期管理薬と発作治療薬の両方の側面を持つ便利な薬剤である一方、患者によっては注意して使うポイントも存在します。
・妊婦、授乳婦
シムビコートは、気道にのみ効果があらわれるように設計されており、全身への作用は少ないとされています。
しかし、妊娠している女性の方がシムビコートを使用する場合、お腹の中の赤ちゃんの成長に影響する可能性があります。
また、乳児への影響はないと考えられていますが、ヒトの母乳にシムビコートの成分が移行することも報告されているため、注意が必要です。
妊婦や授乳婦の方でシムビコートの使用を検討している場合は、赤ちゃんのためにも主治医にご相談ください。
・小児
シムビコートは、小児への使用に対して承認されていないため、他の薬剤を選択する必要があります。
シムビコートと同様に吸入ステロイドとβ2受容体刺激薬の合剤で、小児にも使える薬剤としてアドエア50エアゾールがあります。
症状によって最適な薬剤が異なるので、気になる場合は主治医へ相談することが大切です。
・高齢者
高齢になると吸入する力が低下することもあります。シムビコートがうまく吸えない場合は、十分に効果があらわれないこともあるので他の薬剤への変更を検討することも必要です。
【参考情報】『災害派遣医療スタッフ向け アレルギー疾患対応マニュアル』日本アレルギー学会
https://www.jsaweb.jp/uploads/files/allergic_diseases_manual.pdf
【参考文献】”Budesonide and formoterol (inhalation route)” by Mayo Clinic
https://www.mayoclinic.org/drugs-supplements/budesonide-and-formoterol-inhalation-route/description/drg-20068949
5.シムビコートの薬価
・シムビコートタービュヘイラー30吸入
薬価1キット1638.2円
・シムビコートタービュヘイラー
薬価1キット2859.6円
シムビコートにはジェネリック医薬品も販売されているので、お薬代を安く抑えたい方はジェネリック医薬品へ変更してみてください。
・ブデホル吸入粉末剤30吸入「JG」
薬価1キット758.1円
・ブデホル吸入粉末剤60吸入「JG」
薬価1キット1364.6円
・ブデホル吸入粉末剤30吸入「ニプロ」
薬価1キット875.4円
・ブデホル吸入粉末剤60吸入「ニプロ」
薬価1キット1599.1円
・ブデホル吸入粉末剤30吸入「MYL」
薬価1キット758.1円
・ブデホル吸入粉末剤60吸入「MYL」
薬価1キット1364.6円
6.おわりに
シムビコートは、吸入ステロイドとβ2刺激薬の2種類が配合されている吸入薬であり、「長期管理薬」と「発作治療薬」の二つの使い方ができます。
吸入ステロイドによって気管支の炎症を鎮め、β2受容体刺激薬によって気管支を拡張させて呼吸を楽にする働きがあります。
シムビコートは嗄声や手の震え、動悸などの副作用があり、副作用を予防するためにも吸入後のうがいが重要です。
シムビコートを使っても十分に効果を感じなかったり、合わなかったりした方は、アドエアやレルベア、フルティフォームなどへの変更が選択肢になります。
喘息のつらい症状は、適切に治療することでコントロールできます。喘息に悩んでいる場合は、医療機関で相談してみてください。