咳が出て嘔吐してしまう病気と対処法
激しい咳が続くと、吐いてしまうことがあります。特に小さい子どもは、咳き込んだ後に嘔吐することはよくあります。
この記事では、咳に加え、吐き気を催したり嘔吐を引き起こす病気について解説します。また、適切な対処方法や、症状が出た場合に受診したい診療科についても紹介します。
いざというときに、ご自身や大切な方を守るために役立ててください。
1.咳が出て吐いてしまうのはなぜ
咳が出て吐いてしまう時は、以下のような原因が考えられます。
1-1.咳き込み嘔吐
激しい咳が続くと、胃が刺激されて吐き気が起こり、嘔吐することがあります。この現象を「咳き込み嘔吐」といいます。
咳き込み嘔吐は、喘息や新型コロナウイルス感染症など、咳症状が強く出る病気の際に起こりやすくなります。
【参考情報】『Cough』Cleveland Clinic
https://my.clevelandclinic.org/health/symptoms/17755-cough
1-2.消化器疾患
胃や食道など消化器の病気が原因で、吐き気とともに咳が現れることもあります。
考えられる病気としては、胃食道逆流症(逆流性食道炎)や感染性胃腸炎などがあります。
1-3.消化器官が未熟
乳幼児は消化器官が未熟なため、軽い刺激で咳き込んでしまい、吐くことがよくあります。
このような場合、発熱や下痢などの症状がなく、嘔吐しても元気なら、問題ないことが多いでしょう。
2.咳と嘔吐のある呼吸器疾患
咳と嘔吐がある場合に考えられる、主な呼吸器疾患を紹介します。
2-1.喘息
喘息は、気道が慢性的な炎症を起こすことによって、咳や息苦しさが現れる病気です。
特に夜間や早朝に症状が悪化しやすく、激しい咳が続いて嘔吐することもあります。
喘息の原因は、ダニなどのアレルギーによるものと、ストレスや呼吸器感染症などアレルギー以外のものがあります。
治療には、吸入ステロイド薬や気管支拡張薬を用います。
同時に、アレルギーの原因となる物質を取り除くなど、生活の中から悪化の原因を減らす対策も重要です。
2-2.咳喘息
咳喘息は、咳が長く続く呼吸器疾患です。喘息とよく似た病気ですが、喘息特有のヒューヒュー・ゼイゼイという呼吸音や息苦しさはありません。
原因ははっきりわかっていませんが、アレルギーの素因がある人が発症しやすいと考えられています。
治療には、喘息と同じように、吸入ステロイド薬や気管支拡張薬を用います。
2-3.新型コロナウイルス感染症
新型コロナウイルス感染症は、SARS-CoV-2ウイルスによって引き起こされる呼吸器感染症です。
主な症状は咳、発熱、咳、のどの痛み、呼吸困難で、激しい咳が続く場合には、吐くこともあります。
一部の患者さんには、感染後に咳、倦怠感、息切れなどの後遺症が見られ、長期間続くことがあります。
軽症の場合は自宅療養が中心となりますが、重症になると入院治療が必要なこともあります。
2-4.RSウイルス感染症
RSウイルスは、主に乳幼児や高齢者に呼吸器疾患を引き起こす、非常に感染力の強いウイルスです。
感染すると、鼻汁、咳、発熱などの症状が現れます。特に乳幼児は重症化しやすく、咳き込み嘔吐が起こることがあります。
軽症の場合は自宅での療養となりますが、重症になると、入院して点滴などの治療が必要となる場合があります。
2-5.その他
以下の疾患でも、激しい咳により嘔吐することあります。
・風邪
・気管支炎
・インフルエンザ
・マイコプラズマ肺炎
3.咳と嘔吐のある消化器疾患
消化器疾患でも、咳と嘔吐、両方の症状が現れることがあります。
3-1.胃食道逆流症(逆流性食道炎)
胃食道逆流症は、胃酸や消化液が食道に逆流することによって引き起こされる病気です。
主な症状は、胸やけや胃もたれ、吐き気、咳、のどの痛みです。さらに、胃酸の刺激により、食道に炎症や損傷が起こることもあります。
治療には、胃酸分泌抑制薬が用いられますが、症状が重い場合には、逆流を防ぐための手術を行うこともあります。
3-2.感染性胃腸炎
感染性胃腸炎は、ノロウイルスやロタウイルス、大腸菌など、ウイルスや細菌の感染によって引き起こされる病気です。
主な症状としては、嘔吐、下痢、腹痛、発熱などがあり、咳や鼻水など、風邪のような症状を伴うこともあります。
治療は、症状を和らげる対症療法が中心で、脱水を防ぐための水分補給も重要となります。
【参考情報】『感染性胃腸炎とは』国立感染症研究所
https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/383-intestinal-intro.html
4.咳込んで吐いてしまった場合の対処法
咳がひどく、吐いてしまったときの対処法を説明します。
4-1.顔を横に向けて寝る
吐いた物がのどに詰まらないように、寝るときは顔を横に向けましょう。バスタオルを背中に当てると、より安心です。
4-2.吐いた物を処理する
感染性胃腸炎の疑いがある場合、吐いたものは正しく消毒して処理することが重要です。
処理の方法ですが、まず、次亜塩素酸ナトリウム濃度0.1%の液を含ませた新聞紙や布で嘔吐物を覆い、内側から外側に向かって拭き取ります。次亜塩素酸ナトリウムの代わりに、家庭用の塩素系漂白剤を使うこともできます。
次に、ペーパータオルで嘔吐物を幅広く覆い、同量程度の1000ppmの消毒液をかけます。その後、外側から内側に向けてヘラなどを使って嘔吐物を取り除きます。
処理した嘔吐物は、2重にしたビニール袋に入れて廃棄しましょう。
【参考情報】『保育所における消毒の種類と使い方』厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/bunya/kodomo/pdf/hoiku02_2.pdf
4-3.飲み物を摂る
吐き気が治まったら、水分を補給して脱水症状を予防しましょう。
吐き気がまだ残っているうちに水分を摂ると、すぐに吐いてしまう恐れがあるので、必ず治まってからにします。ひと口ずつ、ゆっくりと水分をとりましょう。
ただし、牛乳や乳飲料、炭酸飲料、柑橘類(オレンジジュースなど)は、嘔吐を誘発することがあるため避けます。
飲み物を摂ることで気道が保湿されると、咳の緩和にも役立つでしょう。
5.病院を受診する目安
咳と嘔吐があるときに病院を受診する際の目安と、何科を受診すべきかを解説します。
5-1.激しい咳が止まらない
激しい咳が続いて吐いてしまう場合は、呼吸器内科の受診を検討しましょう。
例えば、コロナやRSウイルス感染症、百日咳のような呼吸器感染症の疑いがあります。
5-2.下痢がある
下痢があるなら、感染性胃腸炎の疑いがあります。
その場合は、消化器内科や内科、小児科を受診することをおすすめします。
5-3.胸やけ、胃もたれ、ゲップがある
胸やけ、胃もたれ、ゲップがある場合は、胃食道逆流症の可能性があります。
消化器内科や内科の受診を検討しましょう。
5-4.咳が2週間以上続いている
咳が2週間以上続いている場合、喘息や咳喘息の疑いがあります。
どちらも市販薬では咳が改善しないため、すみやかに呼吸器内科を受診して、自分に合った薬を処方してもらいましょう。
6.おわりに
咳と嘔吐が同時に現れる場合、呼吸器疾患や消化器疾患が考えられます。
症状が軽いようなら、自宅でできる対処法を実践し、心配な場合は、呼吸器内科、内科、消化器内科、あるいは小児科の受診を検討してください。