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咳で肋骨が痛い…妊娠中・産後は我慢しないで!呼吸器内科で安心受診を

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「咳が止まらなくて、肋骨のあたりが痛い…」

妊娠中や産後のママは、こんな症状を感じても「育児中だから仕方ない」と我慢してしまうことが多いのではないでしょうか。

実は、妊娠・出産を経た女性の体は、咳による肋骨への影響を受けやすい状態になっています。

この記事では、その理由と呼吸器内科での安心できる対応について解説します。

1. 妊娠中・産後に咳で肋骨が痛くなりやすい理由

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妊娠中や産後の女性が咳による肋骨(ろっこつ)の痛みを感じやすいのには、医学的な理由があります。

ホルモンバランスの変化や骨・筋肉の状態が通常とは大きく異なるため、咳の衝撃を受けやすい状態になっているのです。

1-1. ホルモンバランスの変化と骨・靭帯への影響

妊娠中から産後にかけて、女性の体内では「リラキシン」というホルモンが多く分泌されます。

このホルモンは、出産に備えて骨盤や関節、靭帯(じんたい)を緩める重要な役割を果たしています。

リラキシンの影響は骨盤だけでなく、全身の関節や靭帯に及びます。

そのため、肋骨周辺の筋肉や靭帯も通常より不安定な状態となり、咳をした時の衝撃で痛みを感じやすくなってしまいます。

このホルモンの影響は、産後すぐに止まるわけではありません。

個人差はありますが、産後3~6か月程度はリラキシンの影響が続くため、授乳期間中も咳による痛みを感じやすい状態が続きます。

【参考情報】『妊娠中・産後の症状等に対して考えられる措置の例』厚生労働省 働く女性の心とからだの応援サイト
https://www.bosei-navi.mhlw.go.jp/gimu/w_sochi.html

【参考情報】”The effect of relaxin on the musculoskeletal system” by U.S. National Library of Medicine
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4282454/

1-2. 妊娠授乳関連骨粗鬆症(PLO)のリスク

妊娠・授乳中は、赤ちゃんの骨や歯を作るために、お母さんの体からたくさんのカルシウムが使われます。

そのため、一時的に骨密度が低下し、骨が脆(もろ)くなることがあります。

まれなケースですが、妊娠後期から産後半年以内に「妊娠授乳関連骨粗鬆症(こつそしょうしょう)(PLO)」と呼ばれる状態になることがあります。

この状態では、通常なら問題にならない程度の咳やくしゃみでも、肋骨骨折を起こす可能性があります。

特に動作時や咳、くしゃみで背中から腰にかけての痛みが走る場合は、注意が必要です。

発症時期は妊娠後期から産後半年以内に多く見られます。

◆『激しい咳がでて、あばら骨が痛い時はどうする?』について>>

【参考情報】”Pregnancy & Lactation — Bone Health and Osteoporosis Foundation” by Bone Health & Osteoporosis Foundation
https://www.bonehealthandosteoporosis.org/preventing-fractures/general-facts/what-women-need-to-know/

2. 授乳姿勢・抱っこによる胸郭への負担

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産後の育児生活では、授乳や抱っこの時間が1日の大部分を占めます。

これらの姿勢が長時間続くことで、肋骨や背中に思わぬ負担をかけてしまい、咳をした時の痛みを引き起こしやすくなります。

2-1. 授乳・抱っこ姿勢が肋骨周辺に与える影響

長時間の授乳や抱っこでは、どうしても前かがみの姿勢が続いてしまいます。

この姿勢を長く維持することで、背中や肋骨周辺の筋肉が常に緊張した状態となり、肋間神経痛(ろっかんしんけいつう)を引き起こしやすくなります。

特に産後は、前述したリラキシンの影響で体を支える力が弱くなっているため、筋肉の強ばりから痛みが出やすい状態です。

出産直後の腹部の筋肉の活動低下も、体のバランスを崩しやすくする要因となります。

また、赤ちゃんを抱っこする際に片側だけに負担をかけたり、同じ側の肩や腕ばかりを使ったりすることも、体のバランスを崩し、肋骨周辺の痛みの原因となります。

2-2. 猫背姿勢による胸郭の圧迫

赤ちゃんの様子を覗き込む姿勢や、長時間の猫背が続くことで、肋骨が圧迫され、胸郭(きょうかく)の動きが制限されます。

この状態では呼吸も浅くなり、肋骨の正常な動きが縮小されてしまいます。

胸郭の動きが制限された状態で咳をすると、衝撃が特定の肋骨に集中しやすくなり、痛みを感じやすくなります。

また、猫背姿勢では背骨や肋骨、背中の筋肉への負担が増加し、コリ感や痛みが出やすくなります。

◆『咳による胸の痛み。考えられる理由や病気について』≫

【参考情報】”Biomechanics of the Thorax – research evidence and clinical” by PubMed Central
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4534848/

3. 妊娠中・産後に咳が長引きやすい理由

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妊娠中や産後の女性は、一般的な成人と比べて咳が長引きやすい傾向があります。

これには免疫機能の変化や生活環境の変化が大きく関わっています。

3-1. 免疫力の低下と感染症

妊娠中は、赤ちゃんを異物として攻撃しないよう、お母さんの免疫機能が自然に調整されます。

この仕組みは赤ちゃんを守るために必要ですが、同時に風邪やインフルエンザなどの感染症にかかりやすくなるという側面もあります。

産後も、出産による体力の消耗や睡眠不足により、免疫機能が低下した状態が続きます。

そのため、感染症にかかりやすいだけでなく、回復にも時間がかかり、感染後の咳が長引きやすくなります。

特に妊娠中は、肺が圧迫されて呼吸機能も低下するため、呼吸器感染症の症状が長期化しやすい傾向があります。

3-2. 育児中の睡眠不足と体力低下

新生児の授乳は2~3時間おきに必要で、夜泣きへの対応も加わると、お母さんは慢性的な睡眠不足状態になります。

睡眠不足は免疫力を低下させ、体の回復力も弱めてしまいます。

また、育児による体力の消耗や精神的なストレスも、免疫力低下の大きな要因となります。

ストレスホルモンの分泌が増えることで、体の防御機能が正常に働かなくなり、咳の症状が長引きやすくなります。

さらに、育児に追われて十分な休息を取れないことで、一度出始めた咳がなかなか治まらないという悪循環に陥りがちです。

◆『長引く咳で疑われる疾患について』≫

◆『咳が2週間以上続いてる…風邪じゃない?』≫

【参考情報】『睡眠』働く女性の心とからだの応援サイト(厚生労働省)
https://www.bosei-navi.mhlw.go.jp/health/sleep.html

【参考情報】”Flu & Pregnancy” by Centers for Disease Control and Prevention (CDC)
https://www.cdc.gov/flu/highrisk/pregnant.htm

4. 咳と肋骨の痛みを放置するリスク

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「育児中だから体調不良は仕方ない」「病院に行く時間がない」と、咳と肋骨の痛みを我慢し続けることには、実は重大なリスクが潜んでいます。

早期の対処が必要な理由を詳しく解説します。

4-1. 肋骨疲労骨折の可能性

激しい咳が長期間続くと、最初は肋間筋(ろっかんきん)の疲労による痛みだったものが、やがて肋骨の疲労骨折やヒビに発展する可能性があり、特に前述した妊娠授乳関連骨粗鬆症の状態では、この危険性が高まります。

肋骨の疲労骨折が起こると、深呼吸をするだけでも激痛が走ったり、体をひねる動作で耐えがたい痛みを感じたりします。

また、寝返りを打つことさえ困難になることもあるのです。

疲労骨折は一度起こると、完全に治癒するまでに数週間から数か月かかることがあり、育児に大きな支障をきたす可能性があります。

4-2. 呼吸器疾患の見逃しリスク

咳が2週間以上続く場合、単純な風邪ではなく、咳喘息(せきぜんそく)、気管支炎、肺炎などの呼吸器疾患が隠れている可能性があります。

これらの病気は、放置すると症状が悪化し、治療が困難になることがあります。

特に咳喘息は、適切な治療を受けないと気管支喘息に進展する可能性があります。

妊娠中や授乳中でも安全に使用できる治療薬があるため、早期の診断と治療が重要です。

また、まれなケースですが、長引く咳の背景に肺結核や肺がんなどの重大な疾患が隠れていることもあります。

早期発見・早期治療により、これらのリスクを回避することができます。

◆「咳喘息の症状」とは

◆『熱はないのに咳が止まらない…考えられる病気とは?』≫

5. 呼吸器内科でできる母体に優しい検査と対応

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「妊娠中や授乳中だから検査や治療が受けられない」と心配される方も多いですが、実際には母体と赤ちゃんの両方に配慮した安全な検査や治療が数多く用意されています。

5-1. 妊娠中・授乳中でも安全な検査

呼吸器内科では、まず詳しい問診と聴診から始まります。

これらは完全に安全で、妊娠中・授乳中でも何の心配もありません。

医師は症状の経過や生活環境について詳しく聞き取り、適切な診断の手がかりを得ます。

胸部レントゲン検査についても、必要最小限の被曝(ひばく)量であり、胎児への影響はほぼないとされています。

腹部を鉛のエプロンで保護することで、さらに安全性を高めることができます。

呼吸機能検査(スパイロメトリー)は、息を吹き込むだけの検査で、放射線や薬剤を使わないため、妊娠中・授乳中でも安心して受けることができます。

気道の炎症や狭窄(きょうさく)の程度を正確に把握することが可能です。

血液検査や痰(たん)の検査なども、必要に応じて安全に実施することができ、感染症やアレルギーの有無を調べることができます。

◆「呼吸器内科で行われる検査」について>>

5-2. 母体に優しい治療方法

吸入薬、特に吸入ステロイド薬は、妊娠中・授乳中でも安全に使用できることが確認されています。

吸入薬は気道に直接作用するため、全身への影響が少なく、胎児や母乳への移行もほとんどありません。

気管支拡張薬も、医師の指導の下で適切に使用すれば、妊娠中・授乳中でも問題なく使用することができます。

これらの薬剤により、咳の症状を効果的にコントロールすることが可能です。

重要なのは、受診の際に必ず妊娠中・授乳中であることを医師に伝えることです。

医師はその情報をもとに、最も適切で安全な薬剤を選択し、用量も慎重に調整してくれます。

我慢せずに適切な治療を受けることは、母体の健康を守るだけでなく、赤ちゃんの健康にとっても重要です。

お母さんが元気でいることが、赤ちゃんにとって最良の環境を提供することにつながります。

◆「吸入薬」についてくわしく>>

【参考情報】『女性のぜん息患者さんへ』環境再生保全機構
https://www.erca.go.jp/yobou/zensoku/basic/adult/case/women.html

【参考情報】”Patient Information for During Pregnancy” by Illinois Department of Public Health
https://dph.illinois.gov/topics-services/life-stages-populations/maternal-child-family-health-services/maternal-health/patient-information.html

6. おわりに

妊娠中や産後の咳と肋骨の痛みは、ホルモン変化や育児姿勢の影響で起こりやすく、決して我慢すべきものではありません。

咳が2週間以上続く場合や、肋骨に痛みを感じる場合は、早めに呼吸器内科を受診しましょう。

妊娠中・授乳中でも安全に受けられる検査や治療がありますので、安心してご相談ください。

ママが元気でいることが、赤ちゃんの笑顔につながります。