激しい咳がでて、あばら骨が痛い時はどうする?

激しい咳が続くと、からだにさまざまな影響が現れることがあります。

そのなかでも疲労骨折をおこしやすいあばら骨に痛みを感じる場合には注意が必要です。

※疲労骨折:繰り返しの負荷が加わることで生じる骨折

この記事では、激しい咳がからだに及ぼす影響や、あばら骨の疲労骨折、とくに高齢女性の方が注意すべき点、適切な対応方法についてご説明します。

1. 激しい咳は体全体に影響がでる


激しい咳が続くと、喉や胸だけでなく、あばら骨や腹部にまで痛みが広がることがあります。

一般的な咳では、喉や胸に軽い痛みが出ることはあっても、あばら骨や腹部にまで痛みが出ることはまずありません。

しかし、咳がひどい場合には、あばら骨や腹部に痛みが出ることがあり、骨などへの影響も考えられます。

骨に影響がある場合、とくに息を吸い込んだり、動いたり、咳をしたときに激しく痛みます。

咳が長期間続く場合や強い咳が頻繁に出る場合、からだに大きな負担がかかっている可能性があるので、自己判断で症状を放置するのはおすすめできません。

2.咳でおこるあばら骨の疲労骨折


激しい咳が続くと、全身に筋肉痛がでるほどの負担がかかり、丈夫な骨にもヒビが入ることがあります。

とくに肺の近くにあるあばら骨には負担がかかりやすく、繰り返し受けるストレスによって疲労骨折がおこりやすいとされます。

放置すると、痛みが増すだけでなく骨のヒビが進行し、さらなる合併症を引き起こす可能性もあります。

疲労骨折は通常、スポーツ選手や肉体労働者に見られることが多いですが、激しい咳によっても発生することがあるのです。

あばら骨の疲労骨折は、咳による強い圧力が繰り返しかかることで、骨の微小な損傷が蓄積し、やがて骨にヒビが入ることが原因です。

症状として、咳や深呼吸をする際の鋭い痛み、肋骨周辺の腫れや圧痛(異常のあるところを押すと痛みを感じること)があらわれます。

疲労骨折が生じた場合、あばら骨の部位に負担をかけないことが最も重要です。体をひねる動作や痛みを引き起こす動作を避け、安静にすることが基本的な治療となります。

痛みが軽度な場合には、消炎鎮痛剤の内服と湿布などで経過をみることが一般的です。

痛みがやや強い場合には、バストバンドやトラコバンドとよばれる固定帯による圧迫固定の使用を検討します。

【参照文献】『骨折の解説 肋骨骨折』日本骨折治療学会
https://www.jsfr.jp/ippan/condition/ip09.html

3.高齢女性はとくに注意が必要


骨粗しょう症になりやすい高齢女性の方で激しい咳が続く場合、あばら骨の疲労骨折をおこしやすいため非常に注意が必要です。

骨粗しょう症は、日本では約1000万人以上の患者さんがいると言われており、高齢化に伴ってその数は増加傾向です。

エストロゲン(女性ホルモンのひとつ)の減少が骨の強度に影響を与えるため、閉経後の女性は特に多く見られます。

骨密度が低下し骨がもろくなっている状態で骨粗しょう症になっても、通常は痛みを感じません。

しかし、転ぶなどのちょっとしたはずみで骨折しやすくなります。そのため、激しい咳が続く場合、あばら骨の疲労骨折をおこしやすいです。

そのほか、骨折が生じやすい部位には、脊椎の圧迫骨折、手首の骨(橈骨遠位端(とうこつえんいたん)骨折)、太ももの付け根の骨(大腿骨頚部骨折)などがあります。

骨折が生じると、その部分が痛くなり動けなくなることがあります。また、背中や腰が痛くなった後に、背中が丸くなったり身長が縮んだりすることもあります。

カルシウムやビタミンDを豊富に含む食事、定期的な運動(特に負荷のかかる運動)、定期的な骨密度検査を受けるなどで骨粗しょう症の予防に努めましょう。

【参照文献】『症状・病気をしらべる「骨粗鬆症(骨粗しょう症)」』日本整形外科学会
https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/osteoporosis.html

【参考文献】”Osteoporosis” by Mayo clinic
https://www.mayoclinic.org/diseases-conditions/osteoporosis/symptoms-causes/syc-20351968

4.激しい咳がでたときは?


激しい咳が続く場合、自己判断で症状を放置するのは危険です。ここからは、激しい咳が出たときの対処法をご説明いたします。

4-1.咳止め薬で喘息は治らない

市販の咳止め薬は、一時的に咳を止めることができるかもしれませんが、根本的な改善にはなりません。
とくに喘息の場合、市販薬を使用しても症状が進行する恐れがあります。
喘息は、発作的に現れる咳、痰、息苦しさ、喘鳴(ぜんめい:呼吸時にゼーゼー、ヒューヒューという音がする)、胸苦しさなどの症状が特徴です。症状は、とくに夜から早朝、季節の変わり目に起こりやすいです。
喘息発作はさまざまな刺激によって引き起こされます。主な発作の原因は、風邪、運動、ダニやハウスダスト、花粉などのアレルゲン、たばこ、気温や気圧の変化などです。
これらの刺激を避けることで、発作の予防につながります。
喘息の重症度は、症状の頻度や強さ、呼吸機能の検査結果によって、「軽症間欠型」、「軽症持続型」、「中等症持続型」、「重症持続型」の4つに分類されます。
たとえば、週1回以上の頻度で症状が現れ、日常生活や睡眠に支障が出る場合は「中等症持続型」または「重症持続型」に該当します。
各重症度に応じた治療法をおこない、市販薬ではなく適切な治療を受けることが重要です。
適切な治療を受けなければ、激しい咳が続き、骨への負担が増すことになります。

【参考文献】”Asthma attack” by Mayo clinic
https://www.mayoclinic.org/diseases-conditions/asthma-attack/symptoms-causes/syc-20354268

4-2.早めに呼吸器内科へ

市販の咳止め薬は、主に咳を一時的に抑えるために使われますが、原因となる炎症や感染を治療するものではありません。

とくに、喘息や気管支炎などの慢性疾患が原因の場合、根本的な治療を行わないと、症状が悪化し続けるリスクがあります。

呼吸器内科では、咳の原因を多角的に診断し、適切な治療法をおこないます。

たとえば、喘息の場合は吸入ステロイド薬や気管支拡張薬が処方されます。炎症を抑え、呼吸を楽にすることで、咳の頻度や強さを軽減します。

また、感染症が原因の場合は、抗生物質の使用が必要になることもあります。

いずれの場合も、早期に適切な治療を受けることで、症状の進行を防ぎ、体への負担を軽減することができます。

咳が長引く場合や、症状がひどい場合は、自己判断で市販薬に頼らず、呼吸器内科の診断を受けることが重要です。

◆「呼吸器内科とは?」について詳しく>>

5.おわりに

激しい咳が続くと、あばら骨にまで痛みが広がることがあります。

特に高齢女性の方は骨粗しょう症による骨折のリスクが高いため、注意が必要です。

市販の咳止め薬だけでは根本的な改善にはならないため、早めに呼吸器内科などの専門医を受診し、適切な治療を受けることが重要です。

症状がある場合、自己判断するのは避け、からだに異常を感じたら早めに医療機関への受診を検討しましょう。