風邪とインフルエンザの違いとは?家族で知っておきたい症状・ケア・受診の目安
子どもが発熱した、高齢の親がだるそう——そんなとき「ただの風邪かな?」「インフルエンザかも?」と迷うことはありませんか。
症状が似ているだけに、家庭での初期判断は重要です。
この記事では、家族が安心して対応できる“風邪とインフルエンザの違い”とケアのポイントを、年齢別にわかりやすく解説します。
1. まず知っておこう!子ども・高齢者に出やすい“風邪”と“インフルエンザ”の違い

季節の変わり目や冬場になると、「風邪かな?インフルエンザかも?」と迷う場面が増えます。
どちらも発熱や咳、鼻水などの症状が出ますが、原因ウイルスや症状の出方・進行スピードには大きな違いがあるのをご存知でしょうか。
特に子どもや高齢者は体力や免疫の影響で症状が分かりにくいこともあり、家庭で早めに見分ける意識が大切です。
【参考情報】”Is a Cold or Flu?” by Centers for Disease Control and Prevention
https://www.cdc.gov/flu-resources/php/resources/cold-or-flu.html
1-1. 発症のスピードと症状の違い
風邪の多くは「ライノウイルス」や「コロナウイルス(季節性)」など、鼻や喉に感染しやすいウイルスが原因です。
ここでいう季節性コロナウイルスは、昔から存在する一般的な風邪の原因ウイルスであり、新型コロナウイルス(COVID-19)とは異なります。
一方、インフルエンザは「インフルエンザウイルス(A型・B型など)」による感染で、全身に強い炎症反応が出やすい特徴があります。
風邪はのどの痛みや鼻水からゆっくり始まり、微熱や倦怠感を伴う程度で済むことが多いですが、インフルエンザは突然38〜40℃の高熱、強い関節痛・筋肉痛、全身のだるさを伴うことが多く、発症のスピードが圧倒的に速いのが特徴です。
1-2. 感染力と流行の時期
インフルエンザは感染力が非常に強く、咳やくしゃみなどの飛沫を介して一気に家庭や学校へ広がります。
潜伏期間は1〜3日と短く、家族の誰かが感染すると短期間で全員に広がるリスクがあります。
風邪は一年を通して発生しますが、インフルエンザの流行は気温と湿度が低い冬に集中し、乾燥によってウイルスが長く空気中にとどまることも感染拡大の一因です。
家庭での初期対応としては、発症直後からのマスク着用・加湿・十分な休養が基本です。
また、症状が出たらすぐに体温を記録し、症状の経過を家族で共有しておくと、受診時に医師が正確に判断しやすくなります。
【参考情報】『インフルエンザとは』東京都健康安全研究センター
https://idsc.tmiph.metro.tokyo.lg.jp/diseases/flu/
【参考情報】”About the Common Cold” by Centers for Disease Control and Prevention
https://www.cdc.gov/common-cold/about/index.html
2. 年齢別にみる症状の特徴と見分け方(幼児・小学生・高齢者)
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インフルエンザや風邪は、年齢によって症状の出方や重症化のリスクが異なります。
同じウイルスに感染しても、子どもと高齢者では免疫力・体力・体温調節機能が大きく違うため、家庭での見守り方も変える必要があります。
2-1. 幼児・小学生で気をつけたいサイン
子どもは免疫が未熟で、感染しやすく、症状が急に強く出やすいのが特徴です。
インフルエンザでは、38〜40℃の高熱に加え、頭痛・関節痛・強い倦怠感が出ることが多く、発熱後すぐに食欲が落ちてぐったりするケースもあります。
また、咳や鼻水よりも「元気がない」「反応が鈍い」などの全身症状に注意が必要です。
高熱が続く場合は、インフルエンザ脳症や脱水の危険もあるため、水分が取れているか、尿の回数が減っていないかを確認しましょう。
熱が続いてつらそうなときは、解熱剤を使うタイミングや種類について医師に相談してください。
【参考情報】”Flu and Children” by Centers for Disease Control and Prevention
https://www.cdc.gov/flu/highrisk/children.html
2-2. 高齢者で注意すべき「発熱しにくいインフルエンザ」
高齢者は免疫反応が弱く、感染しても高熱が出にくい傾向があります。
そのため「微熱だけどなんとなくだるい」「食欲がない」などの軽い症状で始まることが多く、気づいたときには肺炎や脱水が進んでいることも少なくありません。
また、体温が上がらない代わりに意識がぼんやりする、動作が遅くなる、転倒が増えるなど、行動面の変化が最初のサインになることがあります。
家庭では、いつもより会話が少ない、食事量が減ったなどの「日常との違い」に早く気づくことが重要です。
こまめに水分補給を促し、口の乾燥や喉の痛みを訴えるときは、加湿器やぬるま湯でのうがいを活用しましょう。
【参考情報】『インフルエンザQ&A』厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou01/qa.html
【参考情報】”Flu and People 65 Years and Older” by Centers for Disease Control and Prevention
https://www.cdc.gov/flu/highrisk/65over.htm
3. 家庭でできるケアと注意すべきサイン(脱水・誤嚥・呼吸困難など)
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風邪やインフルエンザにかかったとき、家庭でのケアは回復を左右する大切な要素です。
特に子どもや高齢者では、体力の低下や脱水、誤嚥などの合併症を防ぐことが第一。
「安静」「水分」「栄養」「環境」の4つを意識して過ごすことで、悪化を防ぎ、安心して回復を待つことができます。
3-1. 体を休ませるための環境づくり
まずは安静と睡眠の確保が基本です。
熱が高いときは無理に動かず、静かな環境で十分に休ませましょう。
室温は20〜23℃、湿度は50〜60%を目安に保つと、呼吸がしやすくウイルスも乾燥しにくくなります。
加湿器がない場合は、濡れタオルをかけたり洗濯物を室内に干したりするだけでも効果的です。
また、枕を少し高めにして呼吸を助け、頭痛や鼻づまりをやわらげましょう。
寝具やタオルは清潔に保ち、共有は避けることが大切です。
3-2. 食事・水分・睡眠のポイント
高熱時は食欲が落ちやすいので、水分補給を最優先にします。
経口補水液やスープ、麦茶などを少しずつ頻回に与えると良いでしょう。
子どもや高齢者では「喉が渇いた」と言えないこともあるため、口や唇の乾燥、尿の減少などを目安にこまめに補給を促します。
食事は消化の良いおかゆ、うどん、野菜スープなどがおすすめです。
熱が下がったあとも体力が戻るまでは無理せず、3〜5日ほどは消化の良い食事を続けると安心です。
眠れないほどの咳や熱がある場合は、部屋を静かにして姿勢を変えながら体を休めます。
睡眠不足は免疫力を下げ、回復を遅らせる原因にもなります。
3-3. 受診を急ぐべき「危険サイン」
以下のような症状が見られるときは、速やかに医療機関へ相談・受診してください。
【受診チェックリスト】
□ 38℃以上の発熱が3日以上続く
□ 息が苦しい・ゼーゼーする
□ 水分がとれない・尿が極端に少ない
□ 意識がもうろうとする、ぐったりしている
□ 高齢者で食事量が減り、動作が遅くなっている
【参考情報】『インフルエンザ対策のポイント』東京都感染症情報センター
https://idsc.tmiph.metro.tokyo.lg.jp/diseases/flu/point/
【参考情報】”What to Do If You Get Sick” by Centers for Disease Control and Prevention
https://www.cdc.gov/flu/takingcare/index.html
4. 受診を迷ったらこのチェックリストを活用!いつ受診すべきか

風邪やインフルエンザは多くが自然に回復しますが、家庭での判断が遅れると重症化につながることがあります。
特に子ども・高齢者・持病のある人では、体の変化が出にくかったり急変したりするため、早めの相談が安心です。
4-1. 受診判断の基準(症状・持病・年齢別)
① 子どもの場合:発熱が続く、ぐったりしている
子どもは高熱が出ても元気そうに見えることがありますが、「食欲」「水分摂取」「反応」の3点が判断のポイントです。
【受診チェックリスト(子ども)】
□ 38℃以上の熱が3日以上続く
□ 水分がとれず、唇や口が乾いている
□ ぐったりしていて反応が鈍い
□ 息が速い、ゼーゼー・ヒューヒューする
□ 顔色が悪く、唇が紫がかっている
② 高齢者の場合:軽い症状でも早めに相談を
高齢者は体温が上がりにくいため、微熱でも重い感染症のサインであることがあります。
【受診チェックリスト(高齢者)】
□ 37℃台でも体がだるく動けない
□ 息切れ・咳が強くなっている
□ 水分や食事を取らず、尿の回数が少ない
□ 意識がぼんやりしている
□ 持病の薬を飲めない状態が続く
③ 共通の注意ポイント
・強い咳や呼吸困難がある
・水分摂取ができない
・意識がもうろうとしている
・高熱や寒気が続き、体が震える
4-2. 受診時のポイント
受診の際は、発症時期・体温の経過・同居家族の発症有無を整理して伝えましょう。
マスクを着用し、できるだけ同伴者を減らすことで院内感染を防げます。
また、症状が軽くても基礎疾患や妊娠中の方は早めの相談が安心です。
【参考情報】『熱が出た』東京都こども医療ガイド
https://www.guide.metro.tokyo.lg.jp/symptom/netsu/index.html
【参考情報】『発熱 | 健康長寿ネット』
https://www.tyojyu.or.jp/net/byouki/rounensei/hatsunetsu.html
【参考情報】”Signs and Symptoms of Flu” by Centers for Disease Control and Prevention
https://www.cdc.gov/flu/signs-symptoms/index.html
5. 家族内感染を防ぐための予防&ケアのポイント

風邪やインフルエンザは、家庭の中で感染が広がりやすい病気です。
特に発症初期の2〜3日はウイルス量が多く、家族への感染リスクが高まります。
「家庭を小さな病院のように分けて考える」ことで、感染拡大を最小限に抑えることができます。
5-1. “ゾーニング”で家庭内感染を防ぐ
家庭内感染を防ぐ第一歩は、「動線を分ける」ことです。
感染者が使う部屋と家族の生活スペースをできるだけ分け、食事・洗面・トイレを別にできると理想的です。
難しい場合は、感染者の部屋をドアで仕切り、共用スペースに行く際はマスクを必ず着用しましょう。
また、看病する人をできるだけ1人に限定し、介助のたびに手洗い・うがいを徹底します。
使用済みのティッシュやマスクはふた付きのゴミ箱へ。
空気清浄機やサーキュレーターを併用すると、換気の効率も上がります。
5-2. マスク・手洗い・タオル共有NGルール
マスクは鼻と口をしっかり覆い、隙間ができないよう着用します。
外した後は表面に触れず、すぐにゴミ箱へ捨てましょう。
手洗いは30秒以上かけて流水と石けんで行い、特に食事やトイレ後、介助後には必ず実施します。
タオル・コップ・食器の共有は避け、使った食器はすぐ洗うか熱湯消毒を。
スマートフォンやリモコンなどの共用物もアルコールで拭くと安心です。
5-3. 食事・洗濯・ゴミ処理の工夫
感染者の食事は個別に配膳し、食器を洗う際は使い捨て手袋を着用します。
洗濯物は分ける必要はありませんが、手袋をして60℃以上または長めの乾燥機モードで洗うとより安全です。
ごみ袋を二重にして口をしっかり縛り、処分後は手洗いを忘れずに。
家庭内の衛生対策は完璧を求めすぎず、「できる範囲で続ける」ことが大切です。
【参考情報】『市中感染、家庭内感染はこうして防ごう(PDF)』厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/content/000761088.pdf
【参考情報】”Caring for Someone Sick” by Centers for Disease Control and Prevention
https://www.cdc.gov/flu/takingcare/caring-for-someone.html
6. おわりに
風邪とインフルエンザは、どちらも家庭内で注意が必要な身近な感染症です。
大切なのは、正しく見分け、家庭でのケアや受診の判断を家族全員で共有すること。
子どもや高齢者など、体調の変化を自分で伝えにくい人ほど、早い気づきと小さな行動が命を守ります。
今日からできることを少しずつ実践し、「家族みんなで支え合う暮らしの仕組み」を整えていきましょう。
