「咳が止まらない…炎症が原因?」

「咳が長引く」「呼吸が苦しい」そんな症状がある時は、もしかしたら風邪ではないかもしれません。
この記事では、2週間以上続く咳で疑われる病気と、炎症が原因で起こる代表的な呼吸器疾患について解説します。
肺炎、COPD(慢性閉塞性肺疾患)、気管支喘息など、それぞれの症状や風邪との違いを知り、早期発見・早期治療につなげましょう。
1.咳が止まらない場合に疑われる疾患
咳が2週間以上続く場合、単なる風邪ではなく、他の病気が原因となっている可能性があります。
咳は、体が異物や病原体を排除しようとする防御反応の一つですが、長期間続く場合は、適切な診断と治療が必要です。
咳が止まらない場合に考えられる主な疾患は以下の通りです。
1−1.感染症による咳
感染症が原因で咳が長引くことがあります。代表的な疾患には以下のものがあります。
・肺炎:
細菌やウイルスが肺に感染し、炎症を引き起こす疾患。発熱や痰を伴うことが多い。
◆「肺炎」について>>
・百日咳:
百日咳菌による感染症で、激しい咳が長期間続く。特に子どもや高齢者に重症化しやすい。
◆「百日咳の基本情報」>>
・結核:
結核菌による慢性感染症で、長引く咳や血痰、発熱、体重減少を伴う。早期診断と治療が重要。
・新型コロナウイルス感染症(COVID-19):
発熱、倦怠感、呼吸困難を伴うことがある。長期的な咳が後遺症として残るケースもある。
◆「新型コロナウイルス感染症の基礎知識」>>
1−2.呼吸器系の疾患による咳
呼吸器の疾患が原因で、慢性的に咳が続くことがあります。
・咳喘息:
気道の炎症により咳が持続するが、喘鳴(ぜんめい・ゼーゼー、ヒューヒューする音)は伴わないことが多い。夜間や早朝に咳が悪化しやすい。
◆「咳喘息の症状とは?」>>
・気管支喘息:
気道が過敏になり、発作的な咳や息苦しさが起こる。アレルギーが関与することが多い。
◆「喘息の症状とは?」>>
・慢性閉塞性肺疾患(COPD):
主に喫煙が原因で気道が狭くなり、慢性的な咳や痰、息切れが続く。
◆「COPDの基本情報」>>
・肺がん:
進行すると血痰を伴うことがあり、喫煙歴のある人は特に注意が必要。
◆「肺がんの基本情報」>>
・間質性肺炎:
肺の線維化により、息切れや乾いた咳が続く。進行すると呼吸困難を引き起こす。
◆「間質性肺炎の基本情報」>>
1−3.その他の原因による咳
呼吸器以外の要因で咳が続くこともあります。
・逆流性食道炎:
胃酸が食道へ逆流することで、刺激による慢性的な咳を引き起こす。
特に就寝中や食後に悪化しやすい。
・後鼻漏(こうびろう):
鼻水が喉へ流れ込むことで咳が出る。
アレルギー性鼻炎や副鼻腔炎が原因となることが多い。
・薬剤性の咳:
高血圧治療薬(ACE阻害薬など)が副作用として咳を引き起こすことがある。
【参考情報】「病院・介護施設などで起こる肺炎」日本呼吸器学会
https://www.jrs.or.jp/citizen/disease/a/a-05.html
【参考情報】「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)」日本呼吸器学会
https://www.jrs.or.jp/covid19/
【参考情報】「百日咳」厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou11/01-05-23.html
【参考情報】「結核」厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou11/01-02-02.html
【参考情報】”Cough” by MedlinePlus
https://medlineplus.gov/cough.html?utm_source=chatgpt.com
2.炎症がもととなる呼吸器の病気
炎症は、体が細菌やウイルス、有害物質などの刺激から自分を守るための防御反応です。
呼吸器では、感染や喫煙、大気汚染などの影響で炎症が起こると、気道や肺の組織がダメージを受け、さまざまな病気を引き起こします。
炎症がもととなる、代表的な3つの呼吸器疾患について詳しく説明します。
2-1.肺炎
肺炎は、細菌やウイルス、真菌などの病原体が肺に感染し、炎症を引き起こす病気です。
通常、健康な人の気道には防御機能が備わっており、異物や病原体が侵入しても排除されます。
しかし、免疫力が低下している場合や、大量の病原体が侵入した場合には、防御機能が追いつかず、感染が成立してしまいます。
肺炎が進行すると、肺の中に炎症性の分泌物(痰や滲出液)がたまり、肺胞でのガス交換が妨げられます。
その結果、体に十分な酸素を取り込むことができなくなり、さまざまな症状が現れます。
主な症状としては、発熱、咳、黄色や緑色の痰、息苦しさ、胸の痛みなどがあります。
特に高齢者や基礎疾患を持つ人では、典型的な症状が見られず、倦怠感や食欲不振などの軽い症状しか出ないこともあります。
そのため、軽い体調不良でも注意が必要です。
肺炎にはさまざまな種類があり、代表的なものとしては以下が挙げられます。
・細菌性肺炎:
肺炎球菌やインフルエンザ菌などの細菌が原因で発症。抗菌薬(抗生物質)が有効。
・ウイルス性肺炎:
インフルエンザウイルスや新型コロナウイルス(COVID-19)などが原因。抗ウイルス薬が使われることもある。
・誤嚥性肺炎:
飲食物や唾液が誤って気道に入り、そこに含まれる細菌が原因で発症。高齢者に多い。
肺炎は放置すると重症化し、呼吸不全や敗血症などの合併症を引き起こすことがあります。
そのため、早期の診断と適切な治療が重要です。
特に、高齢者や基礎疾患を持つ人、免疫力が低下している人は、肺炎球菌ワクチンやインフルエンザワクチンの接種が推奨されています。
肺炎の疑いがある場合は、自己判断せずに医療機関を受診し、適切な検査と治療を受けることが大切です。
肺炎の主な症状は以下の5つです。
・発熱(38℃以上の高熱が出ることが多いが、高齢者では目立たない場合もある)
・咳(最初は乾いた咳でも、進行すると黄色や緑色の痰が出ることが多い)
・息苦しさ(呼吸困難)(酸素不足により息が切れやすくなる)
・倦怠感・食欲不振(全身のだるさや疲れが抜けない)
・胸の痛み(咳や深呼吸をすると胸が痛むことがある)
以下の症状がある場合、肺炎の可能性があるため、早めの受診をおすすめします。
・ 熱が長引く(3日以上続く)
・ 強い咳や黄色・緑色の痰が出る
・ 息苦しさや胸の痛みがある
・ 食事や水分がとれず、ぐったりしている
・ 高齢者や基礎疾患(糖尿病・心疾患など)がある人で、少しの体調不良でも悪化しやすい
肺炎と風邪の違いは?
肺炎は 長引く発熱や悪化する咳・痰、息苦しさ が特徴です。
高齢者では熱が目立たず、ぼんやりしている、食欲がないなどの症状がサインになることもあります。
肺炎は放置すると重症化することがあるため、「風邪だと思ったけど長引く」「呼吸がつらい」と感じたら早めに医療機関を受診しましょう。
【参考情報】「肺炎の症状」MSD製薬
https://www.haien-yobou.jp/what_disease/
【参考情報】”Pneumonia” by MedlinePlus
https://medlineplus.gov/pneumonia.html
2-2.慢性閉塞性肺疾患(COPD)
慢性閉塞性肺疾患(COPD)は、長期間にわたって有害な粒子やガス、特にタバコの煙を吸入することによって肺に慢性的な炎症が生じ、気道が狭くなったり、肺胞が破壊されたりする病気です。
この炎症によって気管支の壁が厚くなり、過剰な粘液が分泌されることで、慢性的な咳や痰が発生します。
また、肺胞の弾力性が失われることで空気の出し入れが難しくなり、呼吸機能が徐々に低下します。
COPDには「慢性気管支炎」と「肺気腫」という2つの病態があり、どちらも気道や肺に長期間の炎症が続くことで発症します。
慢性気管支炎では、気道の粘膜に炎症が起こり、咳や痰が長く続きます。
一方、肺気腫では、炎症によって肺胞の壁が破壊され、小さな肺胞が合体して大きな空間になり、酸素を十分に取り込むことができなくなります。
この病気は進行性であり、炎症が持続することで気道や肺の損傷が徐々に悪化し、放置すると日常生活に大きな支障をきたします。
特に、初期の段階では症状が軽く気づきにくいですが、病状が進行すると、少しの運動でも息切れを感じるようになります。
COPDは一度発症すると完全に元の状態に戻ることは難しいため、早期の発見と適切な治療が重要です。
COPDの主な症状は以下の5つです。
・慢性の咳や痰: 特に朝方にひどくなることが多いです。
・息切れ(呼吸困難): 階段の上り下りや坂道での息切れ、進行すると安静時にも息苦しさを感じます。
・喘鳴(ぜんめい): 呼吸時にヒューヒュー、ゼーゼーという音がすることがあります。
・胸の圧迫感: 胸が締め付けられるような感覚を覚えることがあります。
・体重減少・食欲不振: 病気が進行すると、全身の倦怠感や食欲不振が現れることがあります。
COPDと風邪の違いは?
COPDの咳や痰は、長期間続く慢性の症状で、特に朝方に悪化することがあります。
息切れも、COPDでは体を動かした際に強く感じ、進行すると安静時にも息苦しさを覚えることがあります。
また、COPDは通常発熱を伴いません。
以下の症状がある場合、COPDの可能性があるため、早めの受診をおすすめします。
・ 慢性の咳や痰が続く
・ 階段や坂道で息切れを感じる
・ 呼吸時にヒューヒュー、ゼーゼーという音がする
・ 喫煙歴があり、呼吸器症状がある
・ 風邪をひくと、呼吸困難が長引く
COPDは早期発見・早期治療が重要な病気です。
気になる症状がある場合は、放置せずに医療機関を受診しましょう。
【参考情報】「COPD( 慢性閉塞性肺疾患)診断と治療のためのガイドライン第3版」厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/shingi/2010/04/dl/s0420-6j.pdf
【参考情報】”COPD – Chronic Obstructive Pulmonary Disease” by Centers for Disease Control and Prevention
https://www.cdc.gov/copd/index.html
【参考情報】”Chronic obstructive pulmonary disease (COPD)” by World Health Organization
https://www.who.int/news-room/fact-sheets/detail/chronic-obstructive-pulmonary-disease-(copd)
2-3.気管支喘息
気管支喘息は、気道(気管支)に慢性的な炎症が生じることで、気道が過敏になり、繰り返し発作を引き起こす疾患です。
この炎症により気道の粘膜が腫れ上がり、過剰な粘液が分泌されることで気道が狭くなります。
その結果、呼吸がしづらくなり、喘鳴(ゼーゼー、ヒューヒューといった音)や咳、息苦しさといった症状が現れます。
気道の過敏性が高まっているため、アレルゲン(花粉、ダニ、ペットの毛、カビなど)や刺激物質(タバコの煙、冷たい空気、大気汚染、強いにおい、運動など)に反応しやすく、発作が誘発されることが多いです。
また、風邪などのウイルス感染も発作のきっかけとなることがあります。
気管支喘息は、子どもから大人まで幅広い年齢層で発症しますが、特に小児喘息は成長とともに症状が軽快することもあります。
一方、成人発症の喘息は治りにくく、適切な管理を行わないと症状が悪化しやすい傾向があります。
また、発作が繰り返されることで気道の壁が厚くなり、元の状態に戻りにくくなる「気道リモデリング」が進行すると、慢性的な呼吸障害を引き起こす可能性があります。
この疾患は完治することは難しいものの、適切な治療によって発作を抑え、日常生活を快適に過ごすことが可能です。
そのため、長期間にわたる治療と管理が重要とされています。
気管支喘息の主な症状は以下の4つです。
・咳:特に夜間や早朝に悪化しやすい。
・喘鳴(ぜんめい):呼吸時に「ヒューヒュー」「ゼーゼー」といった音がする。
・息苦しさ:呼吸が浅くなったり、胸が締め付けられる感じがする。
・胸の圧迫感:胸が重く感じる。
気管支喘息と風邪との違いは?
気管支喘息は慢性的な炎症が原因で、症状が長期間続いたり、繰り返し発作が起こるのが特徴です。
また、風邪では高熱や全身の倦怠感が見られることが多いですが、喘息ではその症状は一般的ではありません。
以下の症状がある場合、気管支喘息の可能性があるため、早めに受診をおすすめします。
・夜間や早朝に咳や息苦しさが頻繁に起こる
・呼吸時に喘鳴が聞こえる
・日常生活や運動時に息切れを感じる
・市販の風邪薬を使用しても症状が改善しない
早期の診断と適切な治療により、症状のコントロールが可能です。
自己判断で放置せず、専門医の診察を受けることが重要です。
【参考情報】呼吸器学会「気管支ぜんそく」
https://www.jrs.or.jp/citizen/disease/c/c-01.html
【参考情報】”Asthma” by Centers for Disease Control and Prevention
https://www.cdc.gov/asthma/
【参考情報】”Asthma Care Quick Reference” by National Heart, Lung, and Blood Institute
https://www.nhlbi.nih.gov/files/docs/guidelines/asthma_qrg.pdf
3.おわりに
咳が止まらない、息苦しいなどの症状は、放置せずに早めに医療機関を受診することが大切です。
特別な対処の必要のないいわゆる「かぜ症候群」や「上気道炎」による咳嗽(がいそう)は(無治療でも)2-3週間以上長引かないのが特徴です。
咳がそれを超えて“長引く”というだけでも上記の他病態が隠れている可能性が否定できません。
長引く咳の場合は必ず対症療法だけではなく原因を探りに行く姿勢での治療検査を必要としますのでその場しのぎの治療をいたずらに長引かせることは避けて専門受診をお勧めします。