子どもの長引く咳が心配。原因と対処について
咳は、空気の通り道である気道に侵入した異物などを追い出すための防御反応です。
子どもは大人よりも気管支が細く柔らかいため、少しの異物や痰などで詰まりやすく咳が出やすいです。
風邪などで咳が出ることがありますが、長引く咳や痰の中には感染症以外の喘息や肺炎などの疾患が隠れていることがあります。
咳の原因となる疾患について詳しく説明していきます。
1.風邪による咳
風邪とは「かぜ症候群」といい、一般的に咳、痰、くしゃみ、鼻水、鼻づまり、のどの痛み、発熱などの症状をまとめた呼び方です。
原因の80−90%がウィルスによるものと言われており、鼻腔から咽頭までの上気道に急性の炎症が起こることで咳などの症状が出現します。
しっかり栄養、水分を摂取して休んでいれば、1週間から遅くても2週間以内に改善することがほとんどです。
食欲が低下する場合も多いですが、温かいスープや味噌汁などを摂ることで、栄養と一緒に水分を摂取できます。
また、リンゴジュースなど糖分の入ったものや体に速やかに吸収される経口補水液などもおすすめです。
【参考文献】『かぜ症候群』日本呼吸器学会
https://www.jrs.or.jp/citizen/disease/a/a-01.html
2.風邪以外による咳
激しい咳や2週間以上続く咳は、風邪以外の疾患が原因である可能性があります。いくつか考えられる疾患をみていきましょう。
2-1.急性気管支炎
急性気管支炎は、ウィルスや細菌により気管支に急性の炎症が起こる病気です。
そのほとんどがウィルス感染によるもので、症状は、鼻水、のどの痛み、倦怠感、咳、発熱などがあります。
咳は、痰の絡まない乾いたものから始まり、痰が絡む湿ったものになっていくのが特徴です。
細菌感染を疑う時には抗菌薬の投与が処方されますが、ほとんどの場合が発熱や痰などの症状に対して行う対症療法となります。
症状が軽い場合は、冷たい霧が出る加湿器やスチーム加湿器などが有効なこともあります。
2-2.肺炎
肺は、肺胞と呼ばれる空気で満たされている小嚢(袋)からできています。
肺炎にかかると、肺胞は膿や液体で満たされ、取り込む酸素が少なくなり呼吸をする時に苦しく感じます。
主な原因は、ウィルス、細菌、真菌によるものです。発熱、痰が多い湿った咳、鼻水などの症状があります。
特に乳幼児では、強い咳や呼吸困難が起こる事があり、熱がなくても顔色が悪い、早く苦しそうな呼吸、短時間で続く激しい咳、ぐったりしている場合にはすぐに病院を受診しましょう。
【参考文献】『肺炎について』厚生労働省検疫所FORTH
https://www.forth.go.jp/moreinfo/topics/2013/04170943.html
2-3.マイコプラズマ肺炎
マイコプラズマ肺炎とは、マイコプラズマという細菌に感染した肺炎です。学童期以降や大人がマイコプラズマに感染した場合、肺炎となる可能性が高いです。
症状は、発熱、咳、鼻水などで、咳の初めは乾いた咳ですが、徐々に痰が絡んだ咳にかわり2週間から1ヶ月程度続きます。
また、感染直後では「ゼーゼー」といった喘鳴などの喘息様の呼吸をする事もあります。
自然に治癒する事もありますが、抗菌薬による治療を行うことが一般的です。
【参考文献】『子どものマイコプラズマ肺炎』奈良医師会
https://nara.med.or.jp/for_residents/2169/
【参考文献】『マイコプラズマ肺炎とは』NIID国立感染症研究所
https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/503-mycoplasma-pneumoniae.html
2-4.小児喘息
喘息は、気道が常に炎症を起こしている状態で、ウィルスやアレルギー物質、タバコなどの刺激が加わると気道が狭くなり、激しい咳や息が苦しいなどの喘息発作を繰り返す病気です。
発作が起きると咳や喘鳴(ゼーゼー、ヒューヒューといった呼吸音)、息切れなどの症状が出現します。
喘息は軽度の発作だからと放置したり、治療を中断すると喘息の症状が悪化してしまいます。
子どもの喘息では、喘息発作を起こす原因の除去や気管支拡張薬とステロイド吸入による継続した治療を行うことで治癒できる場合も多いため、治療を続けることが大切です。
2-5.クループ症候群
クループ症候群は、ウイルス感染が原因で起こる気管とのどの炎症です。
発熱や鼻水、「キューキュー」など高い呼吸音(吸気性喘鳴)が聞こえるなどの症状があります。
最も特徴的な症状は、オットセイの鳴き声や犬の遠吠えのような「ケーンケーン」と犬の遠吠えのような咳があり、夜に悪化することが多いです。
生後6ヶ月から3歳位の子供に多く見られます。
軽症であれば、水分補給や加湿により自然治癒できますが、重症になると点滴、酸素などの入院治療が必要です。
2-6.副鼻腔炎
副鼻腔とは、頬、両目の間、額の下の骨の中にある粘膜でおおわれた空洞で、それぞれが鼻の中でつながっています。
風邪などにより、鼻や副鼻腔の粘膜に炎症が起こり副鼻腔炎となります。
症状は、主に鼻詰まり、色のついた粘性の強い鼻水、頭痛などがありますが、鼻水が気道に流れ込むことで痰が絡んだような咳がでたり、発熱、喉の痛みなども出現する事があります。
急性の副鼻腔炎は鼻汁の吸引や抗生剤などの適切な治療を受けると1、2週間で治ることが多いですが、放っておくと慢性副鼻腔炎になり治療に数ヶ月かかる事もあります。
【参考文献】『小児の鼻副鼻腔炎』日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会
https://www.jibika.or.jp/modules/disease_kids/index.php?content_id=18
3.受診の目安と家での対処法
子どもの咳が続いたり、辛そうな時は病院に行った方が良いのか判断に迷うことがあります。
次に受診の目安や家でできる対処法などを説明します。
3-1.受診の目安
子どもの咳の原因は様々です。
咳があっても食欲があり、しっかり水分を摂取出来ていれば問題ありません。
しかし、呼吸が苦しそうであったり、咳で夜に眠れていない、またぐったりして顔色が悪い場合にはすぐに病院を受診してください。
また、2週間以上続く咳の場合は、風邪ではなく喘息やアレルギーが原因の病気や他の疾患の可能性があるため、病院で検査を行い正しい治療を受けましょう。
市販の咳止めを使用している時には、喘息の症状を悪化させてしまう可能性があるため、喘息を疑う場合は使用を中止し医師に相談しましょう。
3-2.家でできる対処法
軽い咳の場合に、家で出来る対処法をご紹介します。
まず、咳の原因物質を取り除くことが必要です。埃や花粉、動物のアレルギーがある子どもでは、こまめな掃除を行い動物などは避けるようにしましょう。
ご家族でタバコを吸っている方がいたら、タバコの煙が刺激になり咳が誘発されるためタバコをやめてもらいましょう。
また、咳は冷たい空気や乾燥により誘発されるため、室内を加湿したり寒暖差を最小限にすることで軽減される事があります。
仰向けでは、咳が誘発されたり呼吸が苦しくなることがあります。横向きや上半身を起こした体制で咳が少なくなり眠れることもあります。
小さい子供では頭を起こした状態で抱っこをするのも良いでしょう。
【参考文献】”Coughing” by Nemours KidsHealth
https://kidshealth.org/en/parents/childs-cough.html
4.おわりに
咳の症状には、様々な原因があります。
数日で治る事もありますが、呼吸器疾患だけではなく他の疾患が原因の可能性もあります。
喘息や肺炎などの呼吸器疾患では、放置しておくと症状が悪化してしまう可能性もあるため、病院での適切な治療が必要です。
子どもは自分の症状を上手く伝えられないことも多いため、苦しそうな呼吸をしている、咳が2週間以上続いているなどの気になる症状があれば、すぐに病院を受診しましょう。