咳が止まらない…何科を受診すればいい?

「咳が長引いてつらい…」そんなお悩みを抱えていませんか?

咳はなんらかのからだの異変を知らせる症状のひとつですが、2週間以上続く場合は注意が必要です。

長引く咳は「慢性咳嗽(がいそう)」と呼ばれ、その理由にはさまざまな病気が原因となっていることがあります。咳の特徴や症状によって、考えられる原因や適切な対処法は異なります。

もし咳が止まらずご不安を感じている場合は、早めに呼吸器内科への受診を検討しましょう。この記事では、適切な受診先や日常での対処法についてご説明いたします。

1.2週間以上咳が止まらない時に考えられる病気


ここからは、2週間以上咳が続く慢性咳嗽の原因となる代表的な病気についてご紹介いたします。

【咳喘息】

咳喘息は、気管支喘息の一種で、咳だけが主な症状として現れる病気です。

通常の喘息とは異なり、呼吸困難や呼吸時のヒューヒュー・ゼーゼーという喘鳴音があまり目立たないのが特徴です。とくに夜間や早朝に咳が悪化することが多く、睡眠の質を低下させる原因にもなります。

症状は、季節の変わり目や寒暖差の大きい時期に悪化しやすく、また、運動や冷たい空気、強い香りなどで誘発されることもあります。

アレルギー体質の方や、喫煙者の方、過去に喘息の既往がある方は発症リスクが高くなります。

◆「咳喘息」について詳しく>>

【参考文献】”Cough-Variant Asthma” by Cleveland Clinic
https://my.clevelandclinic.org/health/diseases/25200-cough-variant-asthma

【慢性気管支炎】

慢性気管支炎は、長期間の喫煙、大気汚染や職場での粉塵(ふんじん)・化学物質への長期間の曝露などが原因で気管支に慢性的な炎症が起こり、痰を伴う咳が続く病気です。

とくに朝起きた時に痰が多く出ることが特徴で、症状が3か月以上続き、2年連続で繰り返される場合に診断されます。

喫煙は最大の原因です。長年の喫煙により気管支の粘膜が傷つき、粘液の分泌が増加することで症状が現れます。

【参考文献】”Chronic Bronchitis” by MedlinePlus
https://medlineplus.gov/chronicbronchitis.html

【気管支拡張症】

気管支拡張症は、気管支が異常に拡張し痰がたまりやすくなることで咳が続く病気です。

気管支の壁が弱くなり、部分的に膨らんで袋のような形になったり、筒のように広がったりすることで、痰が溜まりやすい状態になります。その結果、慢性的な咳と膿が混じったような濃い痰が出ます。

気管支拡張症の原因はさまざまで、たとえば、幼少期の重度の肺炎や百日咳などの感染症、免疫不全、慢性的な気道閉塞などがあります。

また、はっきりとした原因が特定できないことも少なくありません。

◆「気管支拡張症」について詳しく>>

【参考文献】”Bronchiectasis” by Cleveland Clinic
https://my.clevelandclinic.org/health/diseases/21144-bronchiectasis

【逆流性食道炎】

逆流性食道炎は、胃酸が食道に逆流することで起こる病気ですが、咳の原因にもなります。

胃酸が喉まで逆流することで咳反射が誘発され、慢性的な咳につながります。とくに就寝時や食後に症状が悪化することが特徴です。

逆流性食道炎による咳は、胸やけや喉の違和感を伴うことが多いですが、このような症状がない場合もあります。

肥満、妊娠、喫煙、アルコール摂取、特定の食品(脂っこいものや酸っぱいものなど)などが症状を悪化させる要因となります。

【参考文献】”Gastroesophageal reflux disease (GERD)” by Mayo Clinic
https://www.mayoclinic.org/diseases-conditions/gerd/symptoms-causes/syc-20361940

【副鼻腔炎】

副鼻腔炎は、副鼻腔(鼻の周りにある空洞)の炎症が生じるため、後鼻漏(鼻水が喉に流れ落ちる症状)が起こり、咳を引き起こします。鼻づまりや鼻水、頭痛などの症状を伴うことが多いですが、後鼻漏による咳だけが目立つ場合もあります。

風邪やアレルギー性鼻炎がきっかけになることがあり、鼻の粘膜が炎症を起こし、副鼻腔への通り道が塞がれると、細菌やウイルスが繁殖しやすくなり副鼻腔炎へと発展します。

また、鼻中隔湾曲症(鼻中隔が強く曲がっているせいで、鼻づまりやいびき、嗅覚障害が慢性的に現れる病気)などの要因や、喫煙、大気汚染なども発症や悪化の原因となります。

以上のような病気は、咳以外の症状が目立たないこともあるため、原因の特定が難しい場合が多いです。また、これらの病気以外にも肺がんや結核などの重大な疾患が原因である可能性もあります。

◆「肺がん」について詳しく>>

2-3週間以上続く咳嗽は、上記のように上気道感染(いわゆる風邪症候群)以外の原因が隠れている可能性が高くなります。そこからはただ症状を緩和するだけではなく原因を探りに行くアプローチを伴う治療が必要です。

初期対症療法などで軽快しない咳嗽は、はっきりと方針をもった専門的観点を必要ですので早めに専門医受診をお勧めします。

【参考文献】”Sinus Infection (Sinusitis)” by Cleveland Clinic
https://my.clevelandclinic.org/health/diseases/17701-sinusitis

2.咳の種類や特徴について


咳は種類や特徴によって考えられる原因や病気が異なります。

ここからは、咳の特徴と原因となる可能性がある病気について見ていきましょう。

2-1.乾いた咳・湿った咳

咳は大きく分けて「乾いた咳」と「湿った咳」の2種類があります。それぞれの特徴と考えられる病気についてご説明します。

【乾いた咳(空咳)】

乾いた咳は、痰を伴わない咳で、のどに痒みや刺激感を感じるのが特徴です。気道の粘膜が何らかの刺激を受けたり、炎症を起こしたりすることで引き起こされます。

たとえば、空気の乾燥やアレルギー、ウイルス感染などが原因となることが多く、しばしば咳き込むような形で現れます。初期症状として現れることも多いため、見逃さず原因を探ることが大切です。

主な原因となる病気としては、以下のようなものがあります。

・咳喘息
前述の通り、咳のみが主症状の喘息の一種です。気管支の過敏性が高まることで、些細な刺激でも咳が誘発されます。

・気管支喘息
気道が狭くなることで起こる病気で、咳以外にも呼吸困難や喘鳴を伴うことがあります。アレルギー反応や気道の過敏性が原因となります。

・百日咳
細菌感染によって起こる病気で、発作的な咳が特徴です。ワクチン接種が一般的になった現在でも、成人での発症が増えています。

◆「百日咳」について詳しく>>

・薬剤性咳嗽
特定の薬剤の副作用として咳が現れることがあります。とくにACE阻害薬(高血圧の薬の一種)による咳が知られています。

【参考文献】”Drug-Induced Cough” by National Institues of Health
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC8604055/

・感冒(かぜ)の初期症状
ウイルス感染の初期段階では、乾いた咳が現れることがあります。

このような乾いた咳は夜間に悪化しやすく、睡眠を妨げる原因となることもあります。また、長期間続くことで喉の痛みや声のかすれなどの症状を引き起こす可能性もあります。

【湿った咳(痰のからむ咳)】

湿った咳は、痰を伴う咳で、胸の奥でゴロゴロした音がすることが特徴です。気道内に分泌物や異物が存在することが主な原因です。

痰を排出しようとするからだの防御反応であり、感染症や炎症が原因となることが多いです。また、気管支や肺の疾患が関与している場合もあるため、長引く場合は原因をしっかりと特定する必要があります。

湿った咳が主な原因となる病気には、以下のようなものがあります。

・慢性気管支炎
長年の喫煙などにより気管支に慢性的な炎症が起こり、多量の痰が産生されます。

・気管支拡張症
気管支が異常に拡張することで痰がたまりやすくなります。

・肺炎
細菌やウイルスによる肺の感染症です。発熱や胸痛を伴うこともあります。

◆「肺炎」について詳しく>>

・気管支肺炎
気管支から肺胞にかけての炎症で、とくに高齢者の方や免疫力の低下した方がかかりやすい病気です。

・COPD(慢性閉塞性肺疾患)
長期にわたる喫煙などにより肺の機能が低下する病気で、慢性的な咳と痰が特徴です。

◆「COPD」について詳しく>>

【参考文献】”COPD” by Mayo Clinic
https://www.mayoclinic.org/diseases-conditions/copd/symptoms-causes/syc-20353679

・気管支炎
気管支の炎症によって、多量の痰を伴う咳が出るのが特徴です。症状は急性と慢性のタイプがあります。

急性の場合は一時的な感染や刺激によって引き起こされるのに対し、慢性の場合は喫煙や大気汚染などが関与していることが多いです。

◆「気管支炎」について詳しく>>

このように、咳の種類によって考えられる病気が異なるため、病院での診察時に咳の特徴を正確に伝えることが大切です。痰の色や量、咳の頻度や時間帯なども重要な情報となるため、しっかりと把握しておくとよいでしょう。

2-2.急性の咳・慢性の咳

咳は、持続期間によって「急性の咳」と「慢性の咳」に分類されます。急性か慢性かの分類は、咳の原因を特定し、適切な治療を行うための重要な手がかりです。ここからは、それぞれの特徴と考えられる病気についてご説明しましょう。

【急性の咳】

急性の咳は、3週間未満で治まる咳を指します。多くの場合、感染症が原因です。急性の咳の主な原因となる病気は以下のようなものがあります。

・感冒(かぜ)
ウイルス感染による上気道炎で、最も一般的な急性咳嗽の原因です。鼻水、のどの痛み、発熱などを伴うことがあります。通常1〜2週間で自然に治まりますが、咳のみが長引くことがあります。

・急性気管支炎
ウイルスや細菌による気管支の炎症で、発熱や胸の痛み、痰を伴う咳が特徴です。通常2〜3週間で改善しますが、喫煙者の方や高齢者の方では長引くことがあります。

・インフルエンザ
インフルエンザウイルスによる感染症で、突然の高熱や全身の倦怠感、関節痛などと共に咳が現れます。重症化すると肺炎を併発する可能性があるため注意が必要です。

◆「インフルエンザ」の基本情報>>

・肺炎
細菌やウイルスによる肺の感染症で、高熱や呼吸困難、胸痛などを伴う咳が特徴です。高齢者の方や免疫力の低下した方では重症化しやすいため、早期の治療が重要です。

・百日咳
百日咳菌による感染症で、発作的な咳が特徴です。初期は風邪に似た症状ですが、次第に激しい咳発作が現れます。大人の方では典型的な症状が出にくいこともあります。

・気管支喘息の急性増悪
アレルゲンや感染症をきっかけに喘息発作が起こり、急激な咳の悪化が見られることがあります。

以上のような急性の咳は、多くの場合、自然に治まります。しかし、以下のような症状が見られる場合は、早急に医療機関を受診しましょう。

・3週間以上咳が続く
・呼吸困難や胸痛を伴う
・高熱が続く
・血痰が出る
・全身状態が悪化する場合

【慢性の咳】

慢性の咳とは、8週間以上続く咳を指します。長期間の咳は、日常生活に大きな支障をきたし、睡眠不足や疲労、仕事や学業のパフォーマンス低下を招くなど、生活の質を著しく低下させる可能性があります。そのため、単なる症状として放置せず、原因を特定することが重要です。

慢性の咳の主な原因となる病気には、以下のようなものがあります。

・咳喘息
前述の通り、咳のみが主症状の喘息の一種です。夜間や早朝に悪化することが特徴で、気管支拡張薬が有効なことが多いです。

・慢性気管支炎
長期の喫煙などにより気管支に慢性的な炎症が起こり、痰を伴う咳が続きます。禁煙が最も効果的な治療法となります。

・気管支拡張症
気管支が異常に拡張し、痰がたまりやすくなることで慢性的な咳が続きます。定期的な痰の排出と感染予防が重要です。

・逆流性食道炎
胃酸の逆流により咳が誘発されます。食生活の改善や薬物療法が有効です。

・副鼻腔炎
副鼻腔の炎症により後鼻漏が起こり、咳を引き起こします。抗生物質や鼻腔洗浄などの治療が行われます。

・COPD(慢性閉塞性肺疾患)
長期の喫煙などにより肺の機能が低下する病気で、慢性的な咳と痰が特徴です。禁煙と薬物療法が基本的な治療となります。

・間質性肺炎
肺の間質(肺胞の周りの組織)に炎症が起こり、乾いた咳と息切れが特徴的な病気です。原因はさまざまで、膠原病や薬剤性、原因不明のものなどがあります。

ここまでご説明してきたような慢性の咳は長期間にわたるため、生活に大きな影響を与えることがあります。以下のような点に注意して原因を探り、適切な対処を行うことが重要です。

◆「間質性肺炎」について詳しく>>

【参考文献】”Interstitial lung disease” by Mayo Clinic
https://www.mayoclinic.org/diseases-conditions/interstitial-lung-disease/symptoms-causes/syc-20353108

・咳の持続期間
8週間以上続く咳は慢性化している可能性があります。

・咳の性質
乾いた咳(空咳):気道の炎症やアレルギーが原因であることが多いです。
湿った咳:痰を伴い、感染症や気管支の異常が関与している可能性があります。

・随伴症状の有無
発熱、息切れ、胸痛などの症状がある場合は注意が必要です。

・生活環境や職業
粉塵や化学物質にさらされる環境、またはアレルゲンが多い場所での生活は、咳の原因になることがあります。

・喫煙歴
喫煙は慢性気管支炎や肺疾患のリスクを高めます。喫煙歴がある場合は原因となっていると考えられます。
以下の症状が見られる場合は、速やかに医療機関を受診しましょう。

・息切れを感じる場合
呼吸器系や心臓の病気が疑われる可能性があります。

・37.5度以上の発熱が3日以上続く場合
感染症や肺炎の可能性があります。

・胸痛がある場合
心臓や肺の深刻な疾患の可能性があります。

・体重が減少した場合
結核やがんなど、重大な疾患の兆候であることがあります。

◆「タバコで咳が出る理由」>>

3.咳が止まらない場合、呼吸器内科で相談しましょう


咳が長引く場合は呼吸器内科への受診を検討しましょう。呼吸器内科では、肺や気管支などの呼吸器系の病気を専門的に診断・治療します。

呼吸器内科を受診すると、まず問診から始まります。いつから咳が続いているか、どのような症状があるか、生活環境や仕事内容などについて詳しく尋ねられます。

次に、聴診や胸部レントゲン検査を行います。必要に応じて、呼吸機能検査やCT検査なども実施します。これらの検査結果をもとに、適切な診断と治療方針を立てます。

呼吸器内科では、咳の原因を特定し、適切な治療を行うことが可能です。

たとえば、気管支喘息と診断された場合は、吸入ステロイド薬や気管支拡張薬などの治療を行います。COPDの場合は、禁煙指導や薬物療法、リハビリテーションなどを組み合わせた治療です。

また、咳の原因が呼吸器系以外にある場合も考えられます。たとえば、前述のとおり胃食道逆流症(GERD)による咳や、心臓病による咳などもあります。このような場合は、適切な診療科と連携して治療を進めていきます。

このように、呼吸器内科を受診することで、咳の原因を正確に診断し、適切な治療を受けることができます。長引く咳の症状がある場合には、まずは、呼吸器内科での診察を受けましょう。

◆「呼吸器内科で行われる検査」とは>>

4.呼吸器内科とは?一般内科との違いについて


呼吸器内科と一般内科は、どちらも内科の一分野ですが、それぞれに特徴があります。

呼吸器内科は、その名の通り呼吸器系の疾患を専門的に診療する科です。主に扱う臓器は、肺、気管、気管支などで、主な疾患には以下のようなものがあります。

・気管支喘息
・慢性閉塞性肺疾患(COPD)
・肺炎
・肺がん
・間質性肺炎
・睡眠時無呼吸症候群
・結核

呼吸器内科の医師は、これらの疾患に関する専門的な知識と経験を持っています。また、呼吸機能検査や気管支鏡検査など、呼吸器系の特殊な検査にも精通しています。

一方、一般内科は幅広い内科疾患を診療する科です。一般内科で扱う疾患には、以下のようなものがあります。

・高血圧
・糖尿病
・脂質異常症
・胃腸疾患
・風邪などの感染症
・頭痛や腰痛などの一般的な症状

一般内科の医師は、患者さんの全身状態を考慮しながら適切な診断と治療を行います。

呼吸器内科と一般内科の大きな違いは、その専門性です。呼吸器内科は呼吸器専門的で高度な診療が可能です。一方、一般内科は幅広い疾患に対応できるため初期診療や総合的な健康管理に適しています。

長引く咳で受診する場合、まずは一般内科を受診し、そこで呼吸器系の疾患が疑われれば呼吸器内科を紹介されるというケースもあります。また、呼吸器系の持病がある方は、定期的に呼吸器内科を受診することが多いでしょう。

◆「呼吸器内科」について詳しく>>

◆「子供が呼吸器内科を受信する目安」について>>

5.おわりに

咳はからだを守る大切な反射ですが、2週間以上にわたって長期間続く場合は何らかの病気のサインかもしれません。

とくに、咳が2週間以上続いている場合は、早めに呼吸器内科受診を検討しましょう。