間質性肺炎の基本情報

間質性肺炎は、肺の間質と呼ばれる部分に炎症が起こる病気です。

肺が正常に機能しなくなることで、呼吸困難や咳などの症状が現れます。

この記事では、間質性肺炎の特徴、症状、診断・検査、治療についてご説明いたします。

疑わしい症状がある場合は、早めに診察を受け、正しい治療をすることが何よりも大切です。
自己判断するのは避け、呼吸器内科をはじめとした医療機関への受診を早めに検討しましょう。

1.間質性肺炎の特徴


間質性肺炎は、肺の間質と呼ばれる組織に炎症が発生する疾患です。

肺は、肺胞というたくさんの袋が集まってできています。

間質は、その肺胞を支える結合組織で、いわば「肺のすき間」のような部分です。
この部分に炎症や線維化が進行すると、肺が硬くなり、呼吸が困難になります。

原因や進行度によりさまざまなものがあり、それぞれ治療法が異なります。

原因は多岐にわたりますが、ここからは主なものをご紹介しましょう。

【特発性肺線維症】
まずは、特発性肺線維症が挙げられます。

特発性肺線維症は原因が不明で、肺の間質が徐々に硬化していく病気です。間質性肺炎の中でも最も一般的なタイプといえます。

【医薬品】
また、医薬品の一部では間質性肺炎を引き起こす可能性があるものがあります。

代表的なものは、抗がん薬、抗リウマチ薬、インターフェロン、漢方薬(小柴胡湯など)、解熱消炎鎮痛薬(アスピリン、サリチル酸など)、抗生物質、抗不整脈薬(アミオダロン)などです。

これらの薬剤は、直接肺の細胞を傷害することにより炎症を引き起こす場合と、免疫反応を引き起こすことにより炎症を引き起こす場合があります。

前者は、抗がん剤などによる細胞直接傷害型です。原因となる医薬品を使用してから発症までに数週間から数年かかります。

後者は、薬に対するアレルギーのような免疫反応型で、医薬品の使用後早期(1〜2週間程度)に発症することが多いです。

【膠原病】
また、膠原病関連肺炎として、リウマチや全身性硬化症などの膠原病が原因で発症する場合があります。

【その他】
そのほかには、アスベストやシリカなどの粉塵を長期間吸入することで発症する職業性肺炎、ウイルスや細菌、真菌感染が原因となる感染症なども間質性肺炎の原因となります。

【参照文献】『重篤副作用疾患別対応マニュアル 間質性肺炎 (肺臓炎、胞隔炎、肺線維症)』厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/shingi/2006/10/dl/s1019-4d3-01.pdf

2.間質性肺炎の症状


間質性肺炎は「息切れ(呼吸困難)」「空咳(痰のない咳)」「発熱」の3つが主な症状です。

ここからは、それぞれについて詳しくご説明しましょう。

<息切れ(呼吸困難)>
初期段階では、運動時や坂道や階段を上がるときに息切れがみられます。

進行すると、歩くだけでも息切れを感じるようになり、日常生活にも支障をきたすことがあります。

息切れは、肺の間質に炎症や線維化が起こり、肺が硬くなって正常な呼吸ができなくなるためにおこります。

<空咳(痰のない咳)>
間質性肺炎の咳は、痰を伴わず、乾いていることが特徴です。

空咳は、持続的に続くことが多く、患者さんにとって大きな不快感を伴います。肺の炎症が原因で咳反射が引き起こされることが原因です。

<発熱>
発熱は、間質性肺炎の症状としてみられることがありますが、必ずしも全ての患者さんに現れるわけではありません。

発熱がある場合は、肺の炎症が重症化している可能性があることを示しています。

〈参考文献〉”Interstitial lungdisease” by Mayo Clinic
https://www.mayoclinic.org/diseases-conditions/interstitial-lung-disease/symptoms-causes/syc-20353108

3.間質性肺炎の診断・検査


ここからは、間質性肺炎の診断に使われるさまざまな検査についてご説明しましょう。

<画像検査>
まず、胸部レントゲンや胸部CTなどの画像検査が基本となります。

これらの画像検査では、肺の間質部分の炎症や線維化の有無、程度を確認します。

胸部CTでは、より詳細な画像で病変を評価することができる高分解能CT(HRCT)も使用されます。

<血液検査>
血液検査も間質性肺炎の診断に重要です。

特にKL-6やSP-D(サーファクタントプロテインD)という血液検査の項目が疾患マーカーとして使われます。

これらのマーカーは、間質性肺炎の活動性や進行度を反映するため、診断や経過観察に有用です。そのほか、膠原病などの原因となる疾患の有無を確認するための血液検査も行われます。

<呼吸機能検査>
呼吸機能検査では、肺の機能を評価することが可能です。

肺活量や肺拡散能などを測定し、間質性肺炎による呼吸障害の程度を確認します。

また、動脈血液ガス分析により、血中の酸素や二酸化炭素の濃度を測定し、肺のガス交換能力を評価します。

運動時の酸素飽和度測定も行われ、運動負荷下での酸素供給能力を確認します。

<気管支鏡検査>
より詳しい検査として、気管支鏡検査が行われます。

気管支鏡を使って気管支内部を直接観察し、必要に応じて細胞や組織のサンプルを採取します。炎症の原因や病変の詳細を把握するのに役立ちます。

<外科的肺生検>
さらに詳しい診断が必要な場合、外科的肺生検が行われます。

外科的手法で肺の組織を採取し、病理検査を行います。

外科的手法は、最も確実に病変の性質を評価できますが、一方で検査に伴うリスクもあります。

そのため、主治医と十分に話し合い、必要性とリスクを天秤にかけて検査するかどうかを検討します。

4.間質性肺炎の治療

間質性肺炎の治療は、原因や病型に応じてさまざまな方法があります。

進行性の病気であるため、治療の主な目標は病状の進行を遅らせることです。
原因が特定できる場合には、原因の除去が最優先となります。

例えば、薬剤性やアレルギー性の間質性肺炎の場合、原因となる物質を除去することが重要です。

特定の医薬品が原因であれば、その医薬品の使用を中止し、代替薬を検討します。

アレルギー性の場合も同様に、アレルゲンの除去を行います。

ステロイド薬は、炎症を抑えるために使用され、特に膠原病に関連する間質性肺炎では有効です。炎症の進行を抑え、症状の悪化を防ぐ効果があります。場合によっては、ステロイドと併用して免疫抑制剤の使用を検討します。

免疫抑制剤は、免疫反応を抑えることで、炎症の進行を遅らせ、症状の安定化をはかります。長期間の使用が必要となることもあり、その際には副作用の管理も重要です。

特発性間質性肺炎(IPF)の場合、原因が特定できないため、抗線維化薬が治療の中心となります。ピルフェニドン(ピレスパ®)やニンテダニブ(オフェブ®)といった抗線維化薬は、症状の進行を遅らせる効果があります。

病状が進行し呼吸不全がみられる場合には、在宅酸素療法(HOT)が導入されます。自宅で酸素を吸入することで、呼吸困難の症状を緩和し、日常生活の質を改善します。

また、呼吸機能の改善を目指す呼吸リハビリテーションも重要です。呼吸リハビリテーションでは、呼吸筋の強化や有酸素運動を通じて、患者さんの呼吸能力を高める訓練が実施されます。

急速な病状悪化(急性増悪)が起こる場合には、迅速な対応が求められます。
急性増悪に対しては、ステロイドや人工呼吸器管理、抗炎症効果を持つ新規の抗凝固薬、血液浄化療法などが用いられます。

5.おわりに

間質性肺炎は、原因や症状が多岐にわたる複雑な病気です。

早期の診断と適切な治療が重要であり、専門医による治療を続けることが不可欠といえるでしょう。日常生活の改善や定期的な検査を通じて、症状の進行を抑えることが可能です。

疑わしい症状がある場合は、早めに呼吸器内科への受診を検討しましょう。

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