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喘息の方が空気清浄機を使用する効果について解説!

喘息は、気道が慢性的に炎症を起こし、咳や息苦しさ、喘鳴(ぜんめい)などの症状が現れる疾患です。

日常生活のなかで症状を悪化させる要因として、空気中のアレルゲンや有害物質が挙げられます。

これらの悪化要因を減らすために、空気清浄機の使用が注目されています。

この記事では、空気清浄機の仕組みや種類、喘息に影響するアレルゲンについてご説明し、喘息の方にとってどのような効果が期待できるかをご紹介いたします。

1. 空気清浄機について


ここからは、空気清浄機についてご説明しましょう。

1-1.空気清浄機とは?

空気清浄機は、室内の空気を吸い込み、汚れやアレルゲン、有害物質を取り除くための家電製品です。

最近では多くのご家庭で導入されており、特に花粉症や喘息など呼吸器系疾患を持つ方には注目されています。

◆「喘息の症状」とは>>

空気清浄機にはさまざまな種類があります。それぞれの特徴を以下にご説明いたしましょう。

【参考文献】”Guide to Air Cleaners in the Home” by U.S. Environmental Protection Agency
https://www.epa.gov/indoor-air-quality-iaq/guide-air-cleaners-home

1-2.空気清浄機の主な種類

空気清浄機の主な種類は以下になります。

1. ファン式
ファン式は、内部に搭載されたファンで空気を吸い込み、複数のフィルターを通して汚れやアレルゲンを除去する仕組みです。

国内で販売されている家庭用空気清浄機のほとんどがファン式であり、高い集じん能力と安定した性能が特徴です。

【参考文献】”HEPA Filters: Help or Hype?” by Allergy & Asthma Network
https://allergyasthmanetwork.org/news/hepa-help-hype/

2. 電気集じん式
電気集じん式は静電気を利用して空気中の粒子(ホコリや花粉など)を吸着する方式です。

フィルター交換が不要な製品もあり、ランニングコストが低い点が魅力ですが、大量の汚れには対応しにくい場合があります。

3. イオン式
イオン式はプラズマイオンやマイナスイオンを放出して空気中の有害物質を分解・除去する方式です。

脱臭効果も期待できますが、大量のホコリや花粉には対応しきれないこともあります。

4. ハイブリッド式
最近では複数の方式を組み合わせたハイブリッド型も登場しています。

例えば、ファン式とイオン式を組み合わせた製品では、それぞれの長所を活かした高性能な空気清浄が可能です。

1-3.国内で主流なのはファン式

日本の家庭では、多くの家庭用空気清浄機がファン式です。

その理由として、高性能なHEPAフィルター(微小粒子用エアフィルター)との組み合わせによる高い集じん能力や、多様な製品ラインナップが挙げられます。

また、お手入れもしやすく、多くの方にとって扱いやすい点も魅力です。

2. ファン式空気清浄機の仕組みについて


ファン式空気清浄機の仕組みは、その名の通り「ファン」を使って室内の空気を吸い込むことです。

そして複数の段階のフィルターで汚れやアレルゲン、有害物質を取り除きます。この仕組みについて詳しく見ていきましょう。

2-1.ファン式空気清浄機の基本構造

ファン式空気清浄機の基本構造は下記の通りです。

1. プレフィルター
最初に通過するプレフィルターは、大きなホコリやゴミ(髪の毛やペットの毛など)をキャッチします。

この段階で大きな異物が取り除かれることで、次に続くフィルターへの負担が軽減されます。

2. 集じんフィルター(HEPAフィルター)
次に通過する集じんフィルターは、微細な粒子(PM2.5やダニ・花粉など)を捕捉します。

特にHEPAフィルターは非常に高性能で、0.3マイクロメートル以上の粒子を99.97%以上除去できると言われています。

この性能は喘息患者さんにとって大きなメリットとなります。

3. 脱臭フィルター
最後に通過する脱臭フィルターは、ニオイ成分(たばこの煙やペット臭など)を吸着して分解します。

一部製品では活性炭フィルターが使用されており、高い脱臭能力があります。

2-2.ファン式空気清浄機の動作の仕組み

ファン式空気清浄機は、まず室内の汚れた空気を本体内部に吸い込むことから動作を開始します。

吸い込まれた空気は、内部に設置されたフィルターを通過する過程で段階的に浄化されていきます。

これらのフィルターは、前述の通りホコリや花粉といったアレルゲン、さらには有害物質などを効果的に取り除く役割を担っています。

そして、フィルターによってきれいになった空気は再び室内へと送り返され、これにより室内の空気環境が徐々に改善されていきます。

ただし、このような空気清浄機の効果を持続的に得るためには、定期的な掃除やフィルターの交換といったメンテナンスが欠かせません。

この点については、後ほど詳しくご説明いたします。

3. 家の中に出やすい、喘息に影響する主なアレルゲン


喘息症状を引き起こす原因となるアレルゲンは多岐にわたります。

家の中にも多く存在しており、それらへの対策が重要です。

ここからは代表的なアレルゲンについてご説明いたしましょう。

3-1. ダニ

ダニは家庭内で最も一般的なアレルゲン源と言われています。
布団やカーペットなどの布製品に特に多く潜んでいます。

その死骸やフンが乾燥して細かい粒子となり、それらが空中に浮遊すると喘息症状を引き起こすことがあります。

ダニ対策としては、まず布団や枕カバーといった寝具類を週に1回以上の頻度で洗濯し、できるだけ高温で乾燥させることが基本です。

高温によってダニを死滅させる効果が期待できるため、天日干しや乾燥機の活用が有効です。

また、カーペットやソファーなどの布製品についても、ダニの温床になりやすいため、こまめに掃除機をかけて清潔を保つことが大切です。

加えて、室内の湿度を50%以下に管理することで、ダニの繁殖を抑えることができます。

さらに、ダニ防止用のカバーなど専用アイテムを活用することも、対策の効果を高めるうえで有効です。

3-2.カビ(真菌)

カビは湿気の多い場所で発生しやすい微生物です。
カビの胞子が空気中に飛散することが喘息症状を悪化させる原因となります。

カビの胞子は非常に小さく、目には見えないため、知らないうちに吸い込んでしまうことがあります。

とくに浴室や台所、押し入れなど湿気がこもりやすい場所では注意が必要です。

カビを減らすための対策として、以下の方法が挙げられます。

・室内の湿度管理
カビは湿度が70%以上になると繁殖しやすくなるため、室内の湿度を50〜60%程度に保つことが理想的です。

除湿器やエアコンの除湿機能を活用し、湿気をコントロールしましょう。

・換気の徹底
湿気がこもりやすい場所では換気を徹底することが重要です。

浴室では入浴後に換気扇を回すか窓を開けて乾燥させましょう。また、台所では調理中に換気扇を使用することで湿気の発生を抑えることができます。

・定期的な掃除
カビは一度発生すると繁殖スピードが速いため、早めの対処が必要です。浴室や窓枠などカビが発生しやすい場所は定期的に掃除し、防カビ剤などを活用して再発を防ぎましょう。

・家具の配置工夫
押し入れやクローゼットなど通気性が悪い場所もカビの温床になりやすいと考えられます。家具は壁から少し離して配置し、空気の流れを確保することも効果的です。

カビ対策は、喘息などの症状を悪化させないためだけでなく、住宅全体を健康的な環境に保つうえでも大切です。

普段から湿度をコントロールし、こまめに掃除をすることで、カビの発生を防ぐことができます。日常的に意識して取り組むことで、喘息予防につながるでしょう。

3-3.花粉

花粉は季節性のアレルゲンとして知られています。
とくに春先(スギ花粉)や秋(ブタクサ花粉)の時期に多く飛散します。

花粉症の症状と喘息症状が重なると呼吸困難などが悪化する恐れがあるため、自宅の中でも花粉対策を行うことが重要です。

花粉は屋外から侵入するため、以下のような対策で家の中への持ち込みを防ぎましょう。

・外出後のケア
外出先から帰宅した際には衣服や髪についた花粉を玄関先で払い落とします。

また、帰宅後すぐにシャワーを浴びることでからだについた花粉を洗い流すことも効果的です。

・洗濯物は室内干し
洗濯物を屋外に干すと花粉が付着してしまうため、花粉シーズン中は室内干しがおすすめです。
また、乾燥機付き洗濯機や衣類乾燥機を利用することで効率よく乾かすこともできます。

・窓やドアの管理
花粉シーズン中は窓やドアを開けっぱなしにせず、空気清浄機などで室内環境を整えるよう心掛けましょう。
網戸にも花粉防止用フィルターを取り付けると効果的です。

・玄関周辺の掃除
花粉は靴底について持ち込まれることもあるため、玄関周辺をこまめに掃除することで家全体への広がりを防ぐことができます。

これらの対策によって家の中でも花粉症の症状による喘息悪化リスクを軽減できます。

特定のシーズンには特別な注意が必要ですが、小さな工夫で大きな効果が得られるでしょう。

◆「花粉症の基礎知識」>>

3-4.ペットの毛やフケ

ペット(犬や猫、うさぎなど)の毛やフケも喘息症状を引き起こす主要なアレルゲンです。

ペット自身は愛らしい存在ですが、その毛やフケにはタンパク質成分(アレルゲン)が含まれており、それが空気中に舞うことで吸い込むリスクが高まります。

また、一部のペットでは唾液や尿にもアレルゲン物質が含まれる場合があります。

喘息患者さんの場合、ペットとの安全な暮らしには以下のような配慮が必要です。

・ペットとの接触頻度を減らす
ペットと同じ部屋で過ごす時間を減らしたり、寝室には入れないようにすることでアレルゲンとの接触機会を減らします。

・定期的なブラッシング
ペットの毛並みを整えながら抜け毛やフケを取り除くことで、空中への拡散量を抑えます。
ただし、この作業は屋外で行うかマスク着用で行うよう注意してください。

・掃除機掛けと空気清浄機使用
ペット飼育家庭では通常以上にこまめな掃除機掛けが必要です。
また、高性能なHEPAフィルター搭載の空気清浄機も併用すると効果的です。

・ペット用グッズのお手入れ
ペット用ベッドやおもちゃなどにもフケや毛が付着するため、それらも定期的に洗浄しましょう。

喘息患者さんの場合、ペット飼育そのものについて慎重に検討する必要があります。

◆「喘息でペットを飼育するときの注意点」>>

3-5.たばこ

たばこの煙には数百種類もの有害物質が含まれており、その中には喘息症状を悪化させる刺激物質も多く含まれています。

喫煙者ご本人だけでなく、副流煙(受動喫煙)によって周囲の方にも影響があります。

また、「第三次喫煙」と呼ばれる現象では衣類や家具に付着したたばこの成分が再び空気中へ放出されるため、完全禁煙以外ではリスク回避は難しいと言えます。

たばこによる影響から喘息患者さんを守るためには以下の対策が必要です。

・完全禁煙
喫煙者ご本人だけでなくご家族全員で禁煙することが理想的です。

電子タバコについても、加熱時に有害物質を放出し、2μm(マイクロメートル)以下の微小粒子が肺奥まで到達して喘息患者さんの気道炎症を悪化させます。

蒸気にも有害物質が含まれるため、電子タバコを使用している方の近くにいるだけでリスクが生じます。

・喫煙者の方との接触回避

喘息患者さんは喫煙者の方との接触時間そのものも短縮するよう心掛けてください。
外出時にも喫煙エリア近くには近づかないよう注意しましょう。

たばこの影響は喘息だけでなく健康全般に悪影響があります。
ご家族全員で協力して禁煙環境づくりに取り組むことが推奨されます。

◆「タバコで咳が出る理由」>>

【参照文献】環境再生保全機構『悪化因子の対策 室内環境を見直しましょう|成人ぜん息』
https://www.erca.go.jp/yobou/zensoku/basic/adult/control/measures/indoor.html

4.ファン式空気清浄機はアレルゲンを減らすことができるか?

ファン式空気清浄機は、室内の空気中に浮遊するアレルゲンを減らすために有効な手段のひとつです。

前述のとおり、HEPAフィルターのファン式空気清浄機は微細な粒子を捕集する能力が高く、多くのご家庭で喘息対策として利用されています。

ファン式空気清浄機がアレルゲンを減らす具体的な効果について、以下にご説明いたします。

・ダニやその糞・死骸
ダニの糞や死骸は非常に軽く、掃除機や布団の振動などで簡単に空中に舞い上がります。

HEPAフィルター搭載の空気清浄機はこれらの微細な粒子を吸い込み、室内の空気中から取り除くことができます。

ただし、ダニそのものを駆除することはできないため、空気清浄機と併せて掃除や湿度管理が必要です。

・カビの胞子
カビ胞子は目には見えないほど小さいため、吸い込むことで喘息症状を悪化させる可能性があります。

HEPAフィルターはこれらの微細な粒子も99.97%以上捕集できる性能を持つため、カビ対策として有効です。

ただし、空気清浄機自体が湿度の高い場所で使用されると内部にカビが発生する恐れがあるため、定期的なメンテナンスが重要です。

・花粉
花粉は季節性アレルゲンであり、外から侵入して室内に広がります。ファン式空気清浄機は花粉粒子を効率的に捕集するため、花粉症状による喘息悪化リスクを軽減できます。

特に窓やドア付近に設置すると効果的です。

・ペットの毛やフケ
ペットの毛やフケは比較的大きな粒子ですが、それでも空中に舞うことで吸い込むリスクがあります。

ファン式空気清浄機はこれら粒子も捕集可能ですが、ペットを飼っているご家庭では掃除機での掃除との併用が不可欠です。

・たばこの煙
たばこの煙にはPM2.5など微細な粒子が含まれており、喘息症状を悪化させる原因となります。

HEPAフィルター搭載の空気清浄機はこれら粒子も除去可能ですが、有害物質そのものを完全に取り除くことは難しいため、禁煙環境づくりが最優先となります。

【参考文献】”Allergies and Asthma | Indoor Air” by Lawrence Berkeley National Laboratory (.gov/.edu)
https://iaqscience.lbl.gov/allergies-and-asthma

【参考文献】”Will air cleaners reduce health risks?” by U.S. EPA
https://www.epa.gov/indoor-air-quality-iaq/will-air-cleaners-reduce-health-risks

4-1.注意点

ファン式空気清浄機を使用する際には以下の点にも注意しましょう。

・設置場所
空気清浄機は部屋全体の空気循環を促進するため、壁際ではなく部屋の中央付近に設置すると効果的です。
花粉対策の場合には窓や玄関付近への設置もおすすめです。

・フィルター交換と掃除
HEPAフィルターは定期的な交換が必要です。交換時期は製品によって異なるため、取扱説明書を確認してください。

また、本体内部やプレフィルター部分にも汚れが溜まることがあるので、月1回程度を目安に掃除しましょう。

これらの空気清浄機は、適切に定期清掃を行って機能するものであることは十分気を付けてください。
清掃を怠ると逆にアレルゲンが繁殖し室内にばらまくことになります。

・適切なサイズ選び
空気清浄機には適用可能な床面積があります。部屋の広さに合った製品を選ぶことで最大限の効果が得られます。

・電力消費
ファン式空気清浄機は電力消費量が比較的大きいため、省エネ性能も考慮して選ぶと良いでしょう。

以上のようなポイントを押さえることで、ファン式空気清浄機によるアレルゲン対策効果を最大限に引き出すことができます。

5.おわりに

喘息患者さんにとって空気清浄機はアレルゲン吸入リスクを軽減するための有力なツールですが、その効果には限界もあります。

環境整備に加え、気になる症状がある際には、早めに呼吸器内科などの専門医を受診し、適切な治療を行いましょう。