クループ症候群の咳 犬吠様咳嗽の特徴と見分け方・受診の目安を解説
夜中や明け方に、子どもが突然「ケンケン」「コンコン」と犬が吠えるような咳をし、声までガラガラになっていたら、心配になる保護者の方は多いのではないでしょうか。
この特徴的な咳は、医学的には犬吠様咳嗽(けんばいようがいそう)と呼ばれています。
この記事では、クループ症候群の咳の特徴や他の病気との見分け方、家庭での対応の目安を解説します。
1. クループ症候群とはどんな病気か

クループ症候群は、主に乳幼児から小学校低学年の子どもに多くみられ、喉の奥が腫れることで起こる呼吸器の病気です。
この章では、クループ症候群が起こる仕組みや発症しやすい年齢・季節について解説します。
1-1. クループ症候群が起こる仕組み
クループ症候群は、ウイルス感染をきっかけに喉頭(こうとう)から気管にかけて炎症とむくみが生じることで発症します。
原因となるウイルスは、パラインフルエンザウイルスが最も多く、他にもRSウイルス、アデノウイルス、インフルエンザウイルスなどがあります。
これらは普通の風邪を起こすウイルスと同じなので、最初は風邪と区別がつかないこともあるでしょう。
【参考情報】『RSの次はパラインフルが流行?!この秋冬、子どもが気をつけるべき感染症とは?』Benesse
https://st.benesse.ne.jp/ikuji/content/?id=110274
喉頭は空気の通り道であると同時に、声を出す器官でもあります。
特に小さな子どもは直径が数ミリしかないため、少し腫れるだけでも空気の流れが大きく乱れます。
大人なら問題にならない程度の腫れでも、子どもでは呼吸に影響が出やすいのです。
炎症が起こると粘膜が腫れて気道が狭くなり、空気が通りにくくなります。
その結果、咳や呼吸の音に特徴的な変化が現れます。
狭くなった気道を空気が通るときに特有の音が生じるため、独特の咳の音となって現れるのです。

1-2. 発症しやすい年齢と季節
発症の中心は生後6か月から3歳ごろですが、小学校低学年までみられることもあります。
この年齢に多いのは、気道が細く免疫力も十分でないためです。
季節は、秋から冬に多く見られますが、春先にも発症することがあります。
保育園や幼稚園など集団生活の場で広がりやすく、兄弟姉妹がいる家庭では、上の子が風邪をひいた数日後に下の子が発症するケースもよくみられます。
なお、クループ症候群は夜間や明け方に症状が強く出やすいという特徴があります。
その理由については、次の章で詳しく説明します。
2. クループ症候群の咳の特徴

クループ症候群を疑う大きな手がかりは、咳の「音」「出方」「タイミング」にあります。
ここでは、犬吠様咳と呼ばれる独特な咳の音、声のかすれ、呼吸時の音、そして夜間に症状が強くなる理由など、クループ症候群の特徴的な症状について詳しく説明します。
2-1. 犬吠様咳嗽と呼ばれる独特な咳の音
クループ症候群の咳は、「ケンケン」「コンコン」と犬が吠えるような乾いた音が特徴です。
英語では「barking cough(吠える咳)」と呼ばれ、世界共通で認識されている症状です。
痰が絡む湿った咳ではなく、空気が狭い場所を通るときに出る硬く響く金属的な音で、一般的な風邪の咳とは明らかに違います。
「オットセイの鳴き声のよう」と表現されることもあります。
【参考情報】”Croup” by Mayo Clinic
https://www.mayoclinic.org/diseases-conditions/croup/symptoms-causes/syc-20350348
2-2. 声のかすれを伴うのが特徴
クループ症候群は、咳と同時に声がかすれる、ガラガラ声になることが多くあります。
これは喉頭に炎症が起きているためです。
泣いたときにも、いつものような大きな泣き声が出ず、弱々しい声になることも特徴的です。
声のかすれは咳の前兆として現れることもあるため、「いつもと声が違うな」と感じたら、注意深く様子を観察することが大切と言えるでしょう。
2-3. 吸気性喘鳴(息を吸うときの音)
症状が強い場合、息を吸うときに「ヒューヒュー」「ゴーゴー」といった音が聞こえることがあります。
これを吸気性喘鳴(きゅうきせいぜんめい)と呼びます。
喉が腫れて空気の通り道が狭くなっているため、空気を吸い込むときに音が出ます。
この症状が見られる場合は、気道が狭くなっている可能性があるため、早めの受診をおすすめします。
2-4. 夜間・明け方に咳が集中する理由
クループ症候群の大きな特徴の一つが、夜間や明け方に症状が強く出やすいことです。
日中は落ち着いていても、夜中に突然咳き込んで目を覚ますケースがよくみられます。
理由としては、横になることで喉のむくみが強まること、夜間は空気が乾燥しやすいこと、体内で炎症を抑えるホルモンが夜間に減少することなどがあげられます。
このホルモンは朝に向けて増えていくため、明け方から症状が落ち着くことも多いと言われています。
【参考情報】『クループ』MSDマニュアル家庭版
https://www.msdmanuals.com/ja-jp/home/23-小児の健康上の問題/乳児および小児における呼吸器疾患/クループ
3. 風邪・喘息・気管支炎との咳の違い

咳が出る病気は多く、クループ症候群との見分け方が難しいこともあります。
ここでは、間違えやすい病気との違いを整理します。
3-1. 風邪の咳との違い
一般的な風邪の咳は、痰が絡んだ湿った咳が多く、時間帯による差は比較的少なく、日中も夜間も同じように咳が出ます。
一方、クループ症候群は、乾いた咳が夜に集中し、声のかすれを伴うのが特徴です。
また、風邪は鼻水や鼻づまりが主な症状ですが、クループ症候群は喉の症状が中心です。
ただし、最初の1〜2日は区別が難しいこともありますので、咳の音と声の変化に注目することが見分けるポイントです。
3-2. 喘息の咳との違い
喘息は、「ゼーゼー」「ヒューヒュー」という喘鳴(ぜんめい)が目立ち、息を吐くときに苦しそうになります。
一方クループ症候群は、息を吸うときに音が強く出やすく、喉のあたりから聞こえます。
また、喘息は繰り返し発作が起こりますが、クループ症候群はウイルス感染に伴う一時的な症状なのが一般的です。
ただし、いつもと違う様子が見られたら早めに医師に相談しましょう。
3-3. 気管支炎との咳の違い
気管支炎は、咳が長引き、湿った「ゴホゴホ」という咳が特徴です。
1〜2週間程度かけて徐々に咳が強くなり、経過は比較的緩やかでしょう。
クループ症候群は、数日以内にピークを迎え、夜間に急激に悪化することが多いですが、通常は1週間程度で改善すると言われています。
また、気管支炎は声のかすれが目立たないのに対し、クループ症候群は声の変化がはっきりと現れます。
これが見分けるポイントとなるでしょう。
4. 症状観察のチェックリスト

クループ症候群が疑われるかどうかを判断するために、家庭で確認できるポイントを整理します。
この章では、咳の音や呼吸の様子、全身状態のチェック方法や年齢別の注意点について説明します。
4-1. 咳の音と出方を確認する
まず犬が吠えるような「ケンケン」「コンコン」という乾いた咳が出ているかを確認しましょう。
次に、咳が出る時間帯に注目してください。
夜間や明け方に急に咳き込み始める場合、クループ症候群の可能性が高まります。
可能であれば、咳の様子をスマートフォンで動画撮影しておくと、医療機関を受診した際に医師に正確に伝えることができます。
4-2. 声と呼吸の変化を見る
声と呼吸の変化として、声がガラガラしていたり、かすれていることがありますが、以下の点も確認しましょう。
・泣いたときに声が弱い、出にくい
・息を吸うときに「ヒューヒュー」「ゴーゴー」という音がする
・呼吸のたびに喉のあたりがへこむ(陥没呼吸)
・呼吸が速い、または浅い
喉の腫れが強い場合、呼吸の音にも変化が現れます。
特に吸気性喘鳴や陥没呼吸が見られる場合は、気道が狭くなっている可能性があるため、速やかな受診が必要です。
4-3. 全身状態のチェック
咳や呼吸の様子だけでなく、子どもの全身状態も観察しましょう。
ぐったりしていないか、いつもと比べて元気がないかなどを確認します。
水分が取れているかどうかも重要です。
飲み物を嫌がる、よだれが多くなっているといった症状が見られる場合は、喉の腫れが強くなっている可能性があります。
また、顔色や唇の色もチェックしましょう
顔色が青白い、唇が紫色がかっているといった変化は、酸素が十分に取り込めていない可能性を示すサインです。
このような変化が見られたら、すぐに医療機関を受診することをおすすめします。
4-4. 年齢別の注意点
乳児(0〜1歳)は気道が細いため、急速に悪化する可能性があります。
ミルクが飲めなくなったり、元気がない場合は早めに医療機関に相談しましょう。
幼児(1〜3歳)は最も発症しやすい年齢層と言われています。
不安から泣いて症状が悪化することがあるため、保護者が落ち着いて対応しましょう。
小学生以上は比較的軽症と言われていますが、本人の「息が苦しい」という訴えには注意を払いましょう。
5. 家庭でのケアと受診・治療について

クループ症候群は、家庭でのケアと受診の判断を適切に行うことが大切です。
この章では、家庭でできる基本的なケア方法、受診を考える目安、夜間に慌てないための事前準備、医療機関での治療について解説します。
5-1. 家庭でできる基本的なケア
・加湿対策
室内の湿度を50〜60%程度に保ちましょう。
加湿器がない場合は、濡れたタオルや洗濯物を室内に干す方法も効果的です。
暖房を使うと湿度が下がるため、加湿をすることを忘れないようにしましょう。
・体位の工夫
抱っこして上体を起こすと、呼吸が楽になることがあります。
寝かせる場合も、枕やクッションで頭を少し高くしましょう。
・水分補給
スプーン1杯ずつ、少量をゆっくり飲ませましょう。
常温または少し冷たい飲み物が適切です。
・環境調整
室温を20〜22℃程度に保ち、タバコの煙や芳香剤などの刺激臭を避けましょう。
こまめに掃除することも大切です。
・子どもを落ち着かせる
保護者の方が落ち着いて対応し、「大丈夫だよ」と優しく声をかけながら安心感を与えましょう。
まずは保護者の方が深呼吸をして落ち着くことが大切です。
◆『子どもの咳が止まらない時のチェックポイント』について>>
5-2. 受診を考える目安
<すぐに受診・救急搬送を検討すべき症状>
・呼吸が明らかに苦しそう(呼吸が速い、肩で息をしている)
・唇や顔色が青白い、紫色になっている
・ぐったりして反応が鈍い
・胸やお腹が呼吸のたびに大きくへこむ
<翌日までに受診を検討すべき症状>
・犬吠様の咳が続いている
・声のかすれが強い
・夜間に何度も咳で目を覚ます
・いつもと様子が違う
すぐに受診すべき症状が見られる場合は、119番への連絡も視野に入れましょう。
5-3. 夜間に慌てないための事前準備
クループ症候群は夜間に症状が出やすい病気なので、事前の準備が大切です。
夜間・休日診療の連絡先や小児救急電話相談(#8000)の番号をスマートフォンに登録したり、メモをしておきましょう。
保険証や医療証、お薬手帳の保管場所を家族で共有しておくことも重要です。
【参考情報】『こどもの救急』日本小児科学会
https://kodomo-qq.jp/
症状が出た時間、咳の特徴、体温などをメモしておくと受診時に役立ちます。
咳の様子を動画で記録しておくのも効果的です。
症状が出たときは、慌てずに呼吸の様子、顔色や唇の色、水分が取れるかを確認しましょう。
5-4. 医療機関での治療について
クループ症候群と診断された場合、症状の程度に応じた治療が行われます。
医師は咳の音、声のかすれ、呼吸の様子などを確認して診断します。
軽症の場合は、家庭での加湿と安静で経過観察となります。
中等症以上の場合は、ステロイド薬の投与(内服または吸入)が行われます。
ステロイド薬は炎症を抑え、気道の腫れを改善する効果があります。
症状が強い場合は、エピネフリンの吸入や酸素投与が必要になることもあります。
エピネフリンは、一時的に症状を和らげる目的で使用されることがあり、効果は短時間のため、病院で経過を観察しながら使用します。
重症の場合は入院管理となります。
【参考情報】”Croup: Causes, Symptoms & Treatment” by Cleveland Clinic
https://my.clevelandclinic.org/health/diseases/8277-croup
適切な治療により、多くの場合は2〜3日で症状の改善が見られます。
咳は1週間程度続くことがありますが、徐々に軽くなっていくのが一般的と言われています。
6. おわりに
クループ症候群は、咳の音や出る時間帯、声の変化などの特徴で他の病気と見分けることができます。
咳だけでなく、呼吸の様子や元気度を総合的に観察することが大切と言えるでしょう。
症状が軽い場合は家庭でのケアで改善することもありますが、呼吸困難の兆候が見られる場合は迷わず医療機関を受診しましょう。
