肺サルコイドーシスとは?

サルコイドーシスとは、肺をはじめ眼、皮膚、心臓、神経など全身にイボやしこりのような肉芽腫(にくげしゅ)と呼ばれるものができる病気です。

自然治癒や軽症で済むことも多いですが、悪化して肺線維症を起こす場合もあり、難治化したものは指定難病とされています。

この記事ではサルコイドーシスの原因や症状、検査、治療について詳しくお伝えします。

1.原因


肺サルコイドーシスは当初、皮膚の病気として発見され、原因は長い間不明とされていました。

最近では皮膚の常在菌でニキビの原因でもあるアクネ菌が関係しているのではないかと言われています。

【参考情報】『アクネ菌病原論で考えるサルコイドーシス学』山口哲生
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsogd/39/1_2/39_1/_pdf

2.症状


サルコイドーシスの症状は、肉芽腫ができた部位によって違う「臓器特異的症状」と、どの部位にできても共通の「非特異的症状(全身症状)」があります。

肉芽腫が発生する臓器の割合で見ると日本では肺サルコイドーシスが86%と最も多いです。

しかし肺だけに留まることは少なく、サルコイドーシス患者の82.1%は複数の臓器に病変があると言われています。

【参考情報】『肺サルコイドーシスの動向』日本内科学会雑誌第105巻第5号
https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/105/5/105_905/_pdf

【参考文献】”Sarcoidosis” by Mayo Clinic
https://www.mayoclinic.org/diseases-conditions/sarcoidosis/symptoms-causes/syc-20350358

2-1.臓器特異的症状

肉芽腫が肺にできる肺サルコイドーシスの症状には次のようなものがあります。

・咳
・痰
・胸の痛み
・呼吸困難

しかし、約30〜40%の患者さんは自覚症状がほとんど無いと言われています。

進行して肺線維症という状態になってはじめて咳や息切れなどの症状が出てくることが多く、自分では異変に気づきにくい病気です。

肺に肉芽腫が形成されることによる両側肺門部リンパ節(肺の付け根にあるリンパ腺)の腫大があると、健康診断のX線検査で発見されることもあります。

また、肉芽腫が皮膚にできると皮疹が、眼にできると霧視(霧がかかったようにぼんやり見える)、羞明(まぶしく感じる)、飛蚊症(視界にちらちら蚊が飛んでいるように見える)などの症状が見られます。

【参考情報】『サルコイドーシス』日本呼吸器学会
https://www.jrs.or.jp/citizen/disease/d/d-03.html

2-2.非特異的症状

肉芽腫ができる場所に関係なく現れるサルコイドーシスの非特異的症状には次のようなものがあります。

・疲れや息切れ
・胸痛、関節痛、頭痛、背部痛、筋肉痛
・耳鳴、難聴
・手足の痺れ、温痛覚の低下、自律神経症状

このような全身症状が現れる原因としては、肉芽腫形成によってサイトカイン(免疫機能の調節にかかわるタンパク質)や、合併症としてのニューロパーチ―(末梢神経障害)や肺高血圧症、ステロイド治療による副作用などが考えられています。

【参考情報】呼吸器内科学レビュー『サルコイドーシス』

【参考情報】『サルコイドーシス(指定難病84)』難病情報センター
https://www.nanbyou.or.jp/entry/110

3.検査


サルコイドーシスが疑われる場合には、次のような検査を行います。

・血液検査:アンギオテンシン変換酵素(ACE)の増加が特徴的です。

・画像検査:胸部X線検査やCT検査で肺の病変を調べます。

・気管支鏡検査:肺の中を生理食塩水で洗う「気管支肺胞洗浄」を行い、回収した洗浄液から総細胞数やCD4陽性Tリンパ球の増加があるか確認します。

・組織検査:気管支鏡検査で肺の一部を採取する「経気管支肺生検」を行い、顕微鏡で肉芽腫の組織所見が確認できればサルコイドーシスと診断されます。

その他、尿検査、肺機能検査、心電図など、他の病気の可能性を排除する検査や肉芽腫による全身への影響を調べる検査も行います。

また、全身の病変部位を調べるために、入院してガリウムシンチという検査を行うこともあります。

ガリウムシンチは、ガリウムが腫瘍や炎症部位に集まる性質を利用して、静脈投与した後に特殊なカメラで撮影する検査です。

【参考情報】『気管支鏡検査とはどのような検査ですか?』日本呼吸器学会
https://www.jrs.or.jp/citizen/faq/q33.html

4.治療


サルコイドーシスは自然に治癒することも多い病気です。

特に、若くて自覚症状がないという患者さんでは8割方自然に治ってしまいます。

そのため症状が軽い場合は自然治癒を期待して積極的な治療は行わず、定期的に検査をして経過を見ます。

しかし、次のような場合には積極的治療が必要とされています。

・肺病変の進行
・心臓病変
・具体的な機能障害を伴う中枢神経病変(顔面神経麻痺、聴覚神経麻痺、尿崩症など)
・点眼薬で改善しない眼病変
・高カルシウム血症が持続している時(尿結石や腎障害予防のため)
・美容上問題となる皮膚病変などQOL低下に関わる場合

【参考情報】『サルコイドーシス診療の手引き2020 III章.治療総論』日本サルコイドーシス学会
https://www.jssog.com/wp/wp-content/themes/jssog/images/system/guidance/1-3.pdf

原因がはっきり分かっていない病気のため、基本的には原因にアプローチする治療ではなく、肉芽腫によって起きた炎症を抑える治療が行われます。

治療薬としては副腎皮質ステロイド薬や免疫抑制剤が使われます。

肺サルコイドーシスで咳が続いている場合には、喘息治療で用いる吸入ステロイド薬を使用することもあります。

軽症で済む患者さんも多い一方、慢性化や再発する場合や、急に悪化して難治化する患者さんもいます。

難治化した場合は厚生労働省の指定難病とされていて、重症度によっては医療費補助を受けることができます。

ステロイドなどの全身治療を受けている場合には、多くが医療費補助の対象になります。

5.妊娠・出産について


治療にステロイドを使っている場合は、妊娠して良いか医師に相談しましょう。

また、メトトレキサート(免疫抑制剤)などを使用している場合は、中止後6か月は妊娠をしないように注意が必要です。

肺サルコイドーシスの患者さんが妊娠すると、ホルモンの作用によって一時的に症状の改善が見られることがあります。

しかし、出産後は悪化することが多く、産後1年は慎重に経過を見る必要があります。

悪化した場合は母乳をミルクに替えてステロイド治療を行うこともあります。

6.おわりに

サルコイドーシスは全身性の病気ですが、肉芽腫ができる場所で最も多いのは肺です。

咳や痰、息切れなどの症状があり、肺サルコイドーシスが疑われる場合は呼吸器内科を受診してください。

皮膚や心臓などにサルコイドーシスが発症した場合でも、肺にも病変がある可能性が高いため、循環器内科や皮膚科と共同で治療を行うこともあります。