高齢者のいびきが起こる原因とは?睡眠時無呼吸症候群との関連も解説
高齢者のいびきは、加齢に伴うのどの筋力低下や舌の落ち込み、鼻づまり、体格の変化などによって、睡眠中の空気の通り道が狭くなることで起こりやすくなります。
いびきの途中で呼吸が止まる場合は、睡眠時無呼吸症候群が関係している可能性もあるため注意が必要です。
この記事では、高齢者のいびきが生じる仕組みと、悪化に関わる要因を呼吸器内科の視点から解説します。
1. 高齢者のいびきに関わる体の変化

高齢者のいびきは、加齢による体の変化だけが原因ではありません。
睡眠中に空気の通り道が狭くなる仕組みに加え、鼻の状態や体格などが重なることで起こりやすくなります。
1-1. 睡眠中に空気の通り道が狭くなる仕組み
呼吸をするとき、空気は鼻や口から入り、のどを通って気管や肺へ向かいます。鼻からのどまでの部分が、「上気道」と呼ばれる空気の通り道です。
起きている間は、舌やのどの周囲にある筋肉が上気道を支えているため、空気はスムーズに通ります。
一方、眠って筋肉の緊張がゆるむと、のどの内側は起きているときよりも狭くなりがちです。
特にあお向けの姿勢では、重力によって舌の付け根がのどの奥へ移動しやすくなります。
その狭い部分を空気が通ると、のどの奥にある柔らかい組織が振動します。この振動によって生じる音がいびきです。
加齢に伴って舌やのどを支える筋力が低下すると、睡眠中の空気の通り道を保ちにくくなります。
このような仕組みが、若い頃には気にならなかったいびきが年齢を重ねてから目立ち始める理由の一つです。

1-2. 鼻づまりや口呼吸、体格が影響する理由
睡眠中の空気の通り道は、鼻の状態や体格によっても影響を受けます。鼻には吸い込んだ空気を温め、適度な湿り気を与えて肺へ送る役割があります。
しかし、アレルギー性鼻炎や副鼻腔炎、風邪などで鼻づまりが起こると、鼻呼吸だけでは十分に空気を取り込めず、眠っている間に口呼吸へ切り替わりやすくなってしまうのです。
口を開けた状態では下あごが後方へ下がり、それに伴って舌ものどの奥へ移動しやすくなります。
もともと加齢によってのどを支える筋力が低下している場合には、空気の通り道がさらに狭くなるため、いびきが起こりやすくなるでしょう。
また、首やのどの周囲に脂肪がつくと、外側から気道が圧迫されやすくなります。高齢になると筋肉量が減少し、脂肪の割合が増える方も少なくありません。このような体の変化も、睡眠中に気道が狭くなる一因です。
一方で、いびきは肥満の方だけにみられるものではありません。
あごが小さい方や舌が大きい方など、生まれつき空気の通り道が狭くなりやすい方もいます。
高齢者のいびきには複数の要因が関わるため、一つの原因だけで説明できるものではないのです。
これらの要因は、睡眠時無呼吸症候群の発症リスクにも関係するとされています。
【参考情報】『Sleep Apnea – Causes and Risk Factors』NHLBI
https://www.nhlbi.nih.gov/health/sleep-apnea/causes
2. 高齢者のいびきと睡眠時無呼吸症候群(SAS)の関係
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高齢者のいびきは、すべて病気によるものというわけではありません。
ただし、いびきの途中で呼吸が止まる場合や、息を苦しそうに吸い込む様子がみられる場合は、睡眠時無呼吸症候群(SAS)が関係している可能性があります。
2-1. 睡眠時無呼吸症候群(SAS)の特徴
睡眠時無呼吸症候群(SAS)は、睡眠中に呼吸が繰り返し止まったり、浅くなったりする病気です。
空気の通り道が部分的に狭くなっている間は、狭い部分を空気が通るため、大きないびきが生じやすくなります。さらに狭まりが強くなると空気がほとんど通らなくなり、いびきとともに呼吸が一時的に止まります。
その後、体が酸素不足を感知すると、脳が一時的に目覚めて呼吸を再開させます。このときにみられるのが、「ガッ」「フガッ」といった大きないびきや、大きく息を吸い込むような呼吸です。
本人に目覚めた記憶がなくても、睡眠は細かく中断されています。

高齢者では、加齢によるのどの筋力低下や舌の落ち込みに加え、肥満、鼻づまり、あごの形など複数の要因が重なりやすくなります。
そのため、若い頃には目立たなかったいびきが大きくなったり、睡眠中の呼吸停止を家族から指摘されたりすることもあるでしょう。
一方、いびきがあるだけではSASとは判断できません。
飲酒した日や疲労がたまった日に一時的にいびきをかく場合もあり、呼吸停止の有無や日中の体調を合わせて確認することが重要です。
【参考情報】『睡眠時無呼吸症候群』日本呼吸器学会
https://www.jrs.or.jp/citizen/disease/i/i-05.html
2-2. 睡眠時無呼吸症候群が体へ及ぼす影響
SASによって呼吸停止が繰り返されると、血液中の酸素濃度が下がり、呼吸が再開すると再び上がるという変化が一晩に何度も起こります。
体にとっては、眠っている間も負担が続いている状態といえるでしょう。
呼吸停止や睡眠の中断によって、以下のような影響につながることがあります。
・血圧や心拍数の変化
酸素不足や睡眠の中断によって交感神経が活発になると、血圧や心拍数が上がりやすくなる。本来は睡眠中に下がるはずの血圧が十分に下がらず、早朝の血圧が高くなる場合も。
・心血管疾患との関連
SASは、高血圧だけでなく、不整脈、心不全、心筋梗塞、脳卒中などの心血管疾患との関連も指摘されている。ただし、いびきがある方すべてにこうした病気が起こるわけではなく、呼吸停止や酸素不足がどの程度みられるかによって体への影響は異なる。
・日中の眠気や集中力の低下
無呼吸が起こるたびに脳が一時的に目覚めるため、深い睡眠を保ちにくくなる。十分な時間眠ったつもりでも、朝に疲れが残る、日中に強い眠気を感じる、集中しづらいといった変化につながることがあるため注意が必要。
高齢者では、強い眠気として現れるとは限らず、意欲の低下や物忘れ、日中の活動量の減少として気づかれる場合もあります。
こうした変化は加齢やほかの病気、服用している薬の影響でも起こるため、眠気や疲労だけでSASと決めつけることはできません。
いびきに加えて、睡眠中の呼吸停止、起床時の頭痛や口の渇き、日中の眠気などが重なっているかどうかが、状態を整理するうえでの手がかりです。
気になる症状がある方は、医療機関へ相談しましょう。
3. 高齢者のいびきを助長する要因

高齢者のいびきは、加齢による体の変化だけで決まるものではありません。
寝姿勢や生活習慣、季節や寝室の環境によっても、いびきの強さや頻度が変わることがあります。
3-1. あお向けなどの寝姿勢
寝姿勢は、睡眠中の空気の通り道に影響を与える要因の一つです。
特にあお向けで眠ると、重力によって舌がのどの奥へ移動しやすくなります。その結果、空気の通り道が狭くなり、いびきが大きくなる場合があります。
一方、横向きでは舌がのどの奥へ落ち込みにくいため、あお向けよりもいびきが軽くなる方も少なくありません。寝姿勢によっていびきの程度が変わる場合があるのです。
ただし、横向きで眠っていても大きないびきや呼吸停止が続く場合は、寝姿勢だけでは説明できない可能性があります。
睡眠時無呼吸症候群など、ほかの要因も含めて考えることが大切です。
3-2. 飲酒や服用中の薬の影響
就寝前の飲酒は、いびきを悪化させる要因として知られています。
アルコールには筋肉をゆるめる作用があり、舌やのどの周囲にある筋肉も影響を受けるといわれています。
そのため、睡眠中は空気の通り道がさらに狭くなり、普段より大きないびきをかくことがあるのです。
また、睡眠薬や抗不安薬など、眠気を促す作用がある薬では、種類によってのどの筋肉がゆるみやすくなる場合があります。
服用している薬がすべていびきの原因になるわけではありませんが、薬を飲み始めてからいびきが目立つようになった場合は、一度、医師や薬剤師に確認するとよいでしょう。
なお、自己判断で薬の服用を中止したり量を変更したりすることは避けましょう。
【参考情報】『Impact of Alcohol Consumption on Snoring and Sleep Apnea: A Systematic Review and Meta-analysis』PubMed
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32513091/
3-3. 季節や寝室環境の変化
季節や寝室の環境も、高齢者のいびきに影響を与えることがあります。
春は花粉、秋はダニなどの影響で鼻づまりが強くなる方もいます。
鼻呼吸がしにくくなると口呼吸になりやすくなり、空気の通り道が狭くなることで、いびきが目立つこともあるでしょう。
冬は空気が乾燥しやすく、鼻やのどの粘膜も乾燥しがちです。乾燥によって鼻づまりやのどの違和感が生じると、睡眠中の呼吸へ影響することもあります。
また、寝室にほこりやダニが多い環境では、アレルギー性鼻炎の症状が悪化する場合があります。
高齢者では複数の要因が重なっていることも多いため、「特定の季節だけいびきが強くなる」「旅行先では気にならない」といった変化があれば、生活環境との関係を振り返ることも原因を整理する手がかりになるでしょう。
4. 悪化の兆候と確認したい症状

いびきの大きさだけでは、健康への影響があるかどうかは判断できません。
睡眠中の呼吸や起床後の体調、日中の様子をあわせて確認することで、睡眠時無呼吸症候群(SAS)が疑われるサインに気付きやすくなります。
4-1. 睡眠中の呼吸停止や苦しそうな呼吸
家族が睡眠中の様子を確認する際は、いびきの大きさだけでなく、音や呼吸の変化にも注目してください。
一定の間隔で続いていたいびきが急に止まり、しばらくして再び大きないびきが始まる場合は、静かな間に呼吸が止まっている可能性があります。
胸やお腹は呼吸するように動いているのに、鼻や口から空気が出入りしていない様子も注意したい変化の一つです。
こうした状態が毎晩繰り返されているか、寝姿勢によって変化するかなどを把握すると、睡眠中の呼吸状態を整理する手がかりになるでしょう。
4-2. 日中の強い眠気や集中力の低下
睡眠中に呼吸が繰り返し止まると、睡眠時間を確保していても深い眠りが続かず、日中の眠気につながります。
以前より昼寝が増えた、会話や読書の途中で眠ってしまう、運転や日中の活動中に眠気を感じるといった変化がないか確認してみましょう。
また、同じ作業でミスが増えた、話の内容を追いにくくなったなど、集中力の低下として現れることもあります。
ただし、日中の眠気は睡眠不足や生活リズムの乱れ、服用している薬、ほかの病気によっても起こります。
いびきや睡眠中の呼吸停止とあわせてみられる場合は、睡眠の状態を見直すきっかけになるでしょう。
4-3. 息苦しさや胸部症状
いびきに加えて、睡眠中や起床時に息苦しさを感じる場合は、その症状もあわせて確認しておきましょう。
睡眠時無呼吸症候群では、呼吸が止まることで息苦しさを感じて目が覚めたり、起床時に十分眠った感じがしなかったりすることがあります。
一方で、夜間の息苦しさや胸の違和感は、睡眠時無呼吸症候群だけでみられる症状ではありません。例えば、横になると息苦しさが強くなる、胸の圧迫感が続く、動悸を繰り返すといった症状では、呼吸器や心臓などの状態が関係している場合もあります。
いびきだけで判断するのではなく、睡眠中の呼吸の変化や日中の眠気、息苦しさなどの症状をあわせてみることで、体の状態を整理する手がかりになるでしょう。
5. おわりに
高齢者のいびきは、加齢によるのどや舌の筋力低下だけでなく、鼻づまり、体格、寝姿勢、飲酒など、さまざまな要因が重なって起こります。
また、睡眠時無呼吸症候群(SAS)が関係している場合もあります。
そのため、「年齢のせいだから仕方がない」と考えるのではなく、どのような場面でいびきが強くなるのか、睡眠中の呼吸や日中の体調に変化がないかをあわせて確認することが大切です。
いびきの仕組みや影響を正しく理解することで、体の変化に気付きやすくなります。
高齢者のいびきを一つの原因だけで捉えず、複数の要因が関係している可能性を踏まえながら、睡眠中の状態や日中の体調を振り返るきっかけにしてください。
以下の症状がある方は、早めの受診をおすすめします
- 家族にいびきや呼吸の止まりを指摘されたことがある
- 日中に強い眠気を感じる
- 朝起きたときに頭痛や口の渇きがある
- 十分寝ているのに疲れがとれない
- 夜中に何度も目が覚める
当てはまる項目がある方は、睡眠時無呼吸症候群の検査を受けてみませんか?
