肺水腫とは?

「肺水腫」という名前を聞いたことがありますか?

肺水腫とは、肺に水が溜まった状態で、ガス交換がうまくいかず、とても息苦しさを感じます。

症状が進行する前に治療を開始することが大切です。

今回の記事では、肺水腫の原因や症状、検査、治療について詳しく解説します。

肺水腫について理解し、早期発見、早期治療に役立てましょう。

1.原因


肺水腫は、肺胞の周囲の毛細血管から液体が染み出し、肺胞内に溜まった状態を指す言葉です。

※肺胞(はいほう):肺にある小さな袋のような構造で、酸素と二酸化炭素を交換する場所。肺全体で約3億~6億個あるといわれている。

肺水腫は「心原性肺水腫」と「非心原性肺水腫」に分けられます。

心原性肺水腫は、心臓疾患が原因で引き起こされる肺水腫です。

その他の原因で引き起こされる肺水腫は「非心原性肺水腫」と呼ばれています。

肺水腫はさまざまな原因で引き起こされますが、状態によって3つの肺水腫に分類されます。

・静水圧性(せいすいあつせい)肺水腫
・透過性(とうかせい)亢進型肺水腫
・混合型肺水腫

それぞれ、わかりやすく解説します。

1-1.静水圧性肺水腫

静水圧性肺水腫とは、肺の毛細血管静水圧が上昇したために液体成分がもれ出ることが原因で起こる肺水腫です。

心臓弁膜症や心筋梗塞、心不全などの心臓疾患によって引き起こされる場合が多く、「心原性肺水腫」と呼ばれます。

心原性肺水腫のほとんどが左心不全によるものです。

※左心不全:心臓の左心室が十分に血液を送り出せなくなる状態

心臓の病気以外での原因として、肝硬変や腎不全などの疾患や、過剰輸液でも起こる場合があります。

※肝硬変:肝臓に慢性的な炎症が起こり硬くなる病気

※腎不全:腎臓の機能低下により老廃物や余分な水分を体外に排泄できなくなった状態

毛細血管内の静水圧が上昇したり血漿膠質浸透圧(けっしょうこうしつしんとうあつ)が低下したりすることによっても起こります。

1-2.透過性亢進型肺水腫

透過性亢進型肺水腫とは、血管の透過性が高くなり血液成分が血管の外に漏れ出ることが原因で起こる肺水腫です。

急性呼吸窮迫症候群(きゅうせいこきゅうきゅうはくしょうこうぐん・ARDS)とも呼ばれており、呼吸不全の一種で死亡率の高い疾患といわれています。

※呼吸不全:十分な酸素を取り入れ、二酸化炭素を排出するという肺本来の働きができなくなる状態

直接的または間接的に、肺への侵襲(負担やダメージ)が原因で炎症反応が起きたために透過性が亢進することが原因です。

以下のようなさまざまな疾患がきっかけとなり、透過性亢進型肺水腫が引き起こされます。

・誤嚥(ごえん:食べ物が間違って食道ではなく気管に入ってしまった状態)
・重症の肺炎
・刺激性ガスの吸入
・熱傷
・重症の多発外傷
・膵炎
・敗血症

肺への直接的または間接的な侵襲がきっかけとなり、1週間以内に発症する重症の呼吸不全です。

1-3.混合型肺水腫

混合型肺水腫とは、静水圧性肺水腫と透過性亢進型肺水腫が混合した肺水腫です。

以下のようなものが原因で引き起こされます。

・頭部外傷やてんかん発作の神経系障害
・褐色細胞腫
・高地肺水腫(高山病)

【参考文献】”Pulmonary eduma” by Mayo Clinic
https://www.mayoclinic.org/diseases-conditions/pulmonary-edema/symptoms-causes/syc-20377009

2.症状


肺水腫の主な症状は、息苦しさや呼吸困難感です。

その他にあらわれる症状は、以下のとおりです。

・咳
・横になると苦しいため、起き上がって座位をとる(起坐呼吸:きざこきゅう)
・夜中に苦しくて目が覚める(発作性夜間呼吸困難)
・喘鳴(ぜんめい:ヒューヒュー、ゼーゼーといった呼吸音)
・チアノーゼ(皮膚や粘膜が青紫色に見える状態)
・ピンク色の血性痰(水様または泡沫状)

進行すると、唇が紫色になり、冷や汗が出てきます。

心拍出量が低下するために血圧が下がり、脳への血流低下を起こし、意識障害をまねく危険性があります。

万が一、突然の息苦しさや呼吸困難があらわれた場合は、上半身を起こし、何かに寄りかかって座位になりましょう。

横になると、呼吸困難が悪化します。

無理に横にせず、速やかに医療機関を受診してください。

【参考情報】『肺水腫』日本呼吸器学会
https://www.jrs.or.jp/file/disease_f03.pdf

3.検査


肺水腫の診断のために、以下のような検査をおこなう場合があります。

検査 特徴
胸部の聴診 ぶつぶつというラ音が聴かれる
血液ガス分析 PaO2とPaCO2の低下・重症化するとPaCO2は上昇
採血 BNP(脳性ナトリウム利尿ペプチド)の上昇
心臓超音波(エコー) 心臓の動きを確認
X線検査 心臓が大きく写る・蝶が羽を広げたような影(蝶形陰影)

胸部レントゲンや胸部CTなどの画像検査の目的は、血管や気管支の周りに液体成分があるか、心臓や肺血管が通常より大きくなっていないかを確認するためです。

動脈血ガス分析では、血液中の酸素(PaO2)や二酸化炭素(PaCO2)について調べ、低酸素血症(動脈血中の酸素が不足した状態)かどうかを確認します。

その他、肺水腫の原因となった病気を疑う場合、血液検査や痰の培養検査、心臓のカテーテル検査などをおこなうこともあるでしょう。

すべての検査を必ずおこなうわけではなく、状況や症状によってさまざまな検査を組み合わせる必要があります。

4.治療


肺水腫の人は、低酸素血症となっていることが多いです。

そのため、まずは、体位の調整と安静を保ちましょう。

半座位になることで、静脈還流を減少させ、肺うっ血(肺に血液が溜まりすぎてしまう状態)の軽減が見込めます。

※静脈還流(じょうみゃくかんりゅう):心臓から送り出された血液が動脈を通って体全体を廻った後、静脈を通り心臓に戻ること

PaO2が60(SpO2 90%)以下の場合、酸素投与をおこないます。

酸素投与で低酸素血症が改善されない場合、人工呼吸器を装着して呼吸管理が必要です。

心原生肺水腫では、強心薬や利尿薬、血管拡張薬などの薬物治療もおこなわれます。

肺に炎症がある場合は、炎症を抑えるための抗生物質や抗炎症薬などさまざまな薬剤を使用し治療します。

肺水腫の治療では、原疾患の治療も大切です。

肺水腫の治療をおこないつつ、原疾患の治療もおこなっていきます。

【参考情報】『肺水腫③』厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/topics/2006/11/dl/tp1122-1b15.pdf

5.おわりに

肺水腫は、肺に液体が溜まり、換気がうまくできない状態です。

息苦しさを感じ、放っておくと重症の呼吸困難を起こし、救命率が下がります。

肺水腫を起こす原因はさまざまですが、心臓疾患が原因となる肺水腫と、それ以外の原因で起こる肺水腫に分けられます。

主に心筋梗塞や心不全など、心臓疾患が原因で起こる「心原生肺水腫」の場合が多いです。

そのため、心臓疾患をお持ちの方は、定期的な受診をし、日常から呼吸の状態に注意しておきましょう。

息切れや呼吸困難などの自覚症状がある場合は、早めに医療機関を受診してください。
症状がひどい場合、迷わず救急車を呼びましょう。