咳止め薬「アスベリン」の特徴や副作用について解説!
アスベリンというお薬をご存知でしょうか?
アスベリンは、非麻薬性中枢性鎮咳薬に分類される咳止め薬であり、風邪などで伴う咳症状に対して使われます。
鎮咳薬(ちんがいやく:咳を止める薬)の中でも比較的副作用が少ないとされ、メジコンやアストミンなどと並んで、代表的な非麻薬性中枢性鎮咳薬の一つです。
今回は、アスベリンの特徴と副作用、使用する上での注意点などを解説します。
1.アスベリンとはどんな薬?
アスベリンは、チペピジンヒベンズ酸塩という成分が配合されている鎮咳薬です。
アスベリンは、非麻薬性中枢性鎮咳薬に分類されており、延髄(えんずい:大脳や小脳と脊髄をつなぐ脳幹の一部)に存在する咳中枢を抑制することで咳を鎮めます。
従来の麻薬性中枢性鎮咳薬は、強い鎮咳作用がありますが、便秘や呼吸抑制などの副作用と、耐性や依存性のリスクがあります。
副作用や耐性、依存性のリスクを軽減する目的で開発されたのが非麻薬性中枢性鎮咳薬です。非麻薬性中枢性鎮咳薬は、麻薬性中枢性鎮咳薬に比べて咳を止める作用は弱いですが、副作用が少なく、耐性や依存性がないというメリットがあります。
アスベリンには、「錠剤」以外にも「散剤」「ドライシロップ」「シロップ」が販売されており、患者さんの年齢や嚥下能力(えんげのうりょく:ものを飲み込む力)の状態に合わせて剤形を選べます。
ドライシロップは粉の状態で渡されますが、水に溶かしてシロップ剤のようにして服用することもできます。そのため、散剤(粉薬)が苦手な人でも、水に溶かして飲めるのがドライシロップのメリットです。
アスベリンは、感冒(風邪)や急性気管支炎、慢性気管支炎、肺炎、肺結核、上気道炎(咽喉頭炎、鼻カタル)、気管支拡張症に伴う咳症状に使われます。
痰が絡んで咳き込むような咳にもアスベリンが使われます。
【参考情報】『咳嗽・喀痰の診かたと薬物療法 』日本内科学会雑誌110巻6号
https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/110/6/110_1063/_pdf
2.アスベリンの服用方法
アスベリンは、大人に対して1日60mg〜120mgを3回に分けて服用します。
小児では以下の量で服用します。
・1歳未満
5〜20mgを1日3回に分けて服用
・1歳以上3歳未満
10〜25mgを1日3回に分けて服用
・3歳以上6歳未満
15mg〜40mgを1日3回に分けて服用
年齢や症状によって増減が可能です。
3.アスベリンの副作用
非麻薬性中枢性鎮咳薬に分類されているアスベリンは、比較的副作用が少ないとされていますが、注意したい副作用がいくつかあります。
アスベリンの主な副作用として以下のものがあります。
・食欲不振
・便秘
・眠気
アスベリンについての調査では、2006例中86例(4.3%)で副作用が報告されており、食欲不振22例(1.1%)、便秘(0.5%)と報告されています。眠気についても報告されているので車の運転などにも注意が必要です。
めったにありませんが、重大な副作用としてアナフィラキシーショックがあります。
アナフィラキシーショックは、急激なアレルギー症状の一つであり、適切な治療を受ける必要があります。腹痛や嘔吐、蕁麻疹、呼吸困難などがみられた場合は、アナフィラキシーショックの可能性もあるので速やかに医療機関へ受診してください。
アスベリンを服用する前に、医師や薬剤師に副作用や薬の飲み合わせなどについて説明、確認をしてもらうことで重大な副作用を防ぐことができます。
【参考情報】『妊娠・授乳と薬』愛知県薬剤師会
https://boku-clinic.com/pdf/d3.pdf
【参考文献】”A pediatric case of anaphylactic shock induced by tipepidine hibenzate (Asverin)” by National Institutes of Health
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC6209596/
4.使用上の注意点
アスベリンは体質や年齢などによって注意したいポイントが存在します。アスベリンを安全に使用するためにも、事前に確認しておくことが重要です。
・妊婦、授乳婦
妊婦や授乳婦がお薬を服用する場合には注意が必要です。お薬によっては、胎盤を通ってお腹の赤ちゃんに影響する可能性があり、服用できないものも存在します。また、母乳へ移行することで赤ちゃんにも影響するお薬も存在します。
アスベリンについては、胎盤や母乳への移行については検証されたデータが存在しないため、母子の様子を見ながら服用することになります。
アスベリンは、1歳以上の小児にも使われる安全性の高い医薬品であるため、赤ちゃんへの影響は少ないことが推測されていますが、服用する前に主治医へ相談することが大切です。
・高齢者
高齢者は、健康な若い人に比べると肝機能や腎機能などが低下している場合が多く、副作用のリスクが高くなります。また、持病などで他の薬を服用していることも多くなる傾向があります。アスベリンを安全に使用するためにも、薬の飲み合わせやアスベリンの服用量などを医師や薬剤師に確認してもらうことが大切です。
5.アスベリンの薬価
・アスベリン錠10
薬価1錠 9.8円
・アスベリン錠20
薬価1錠 9.8円
・アスベリン散10%
薬価1g 11.9円
・アスベリンドライシロップ2%
薬価1g 9.8円
・アスベリンシロップ0.5%
薬価1ml 1.97円
・アスベリンシロップ「調整用」2%
薬価1ml 6.5円
アスベリンのジェネリック医薬品は存在していませんが、アスベリンの薬効成分であるチペピジン散塩を配合している市販薬が販売されています。市販薬は、医師の診察を受けずに顧客の判断で購入できるので、休日や夜間など医療機関に受診するのが難しい時間帯などで咳症状などに対応する場合に便利です。
しかし、市販薬も医薬品であるため副作用のリスクが存在します。市販薬を使用して体調変化が起きたら、市販薬の使用を中止して医療機関へ受診しましょう。
6.おわりに
アスベリンは、非麻薬性中枢性鎮咳薬に分類されている医薬品であり、風邪や肺炎、気管支炎などに伴う咳症状に対して使われています。
非麻薬性中枢性鎮咳薬は、延髄に存在する咳中枢を抑制することで咳を抑える働きがあり、副作用も少なく、耐性や依存性がないことがメリットです。
アスベリンは比較的副作用は少ないですが、体質的に合わなかったり、効果を感じなかったりする場合は、他の非麻薬性中枢性鎮咳薬が使えます。アスベリン以外の非麻薬性中枢性鎮咳薬は、メジコンやアストミン、レスプレン、フラベリックなどがあります。
なお、アスベリンのような中枢性鎮咳薬は万能ではなく、咳の原因を除去しないと効果が限定的となることが多いです。
よく「処方された咳止めが効かない」ということがあると思いますが、それは原因を探りに行くアプローチが不足している可能性があります。効果が乏しい場合は原因病態を考慮した診断とそれに応じた薬剤への変更、追加が必要となります。
アスベリンを服用しても咳が改善しなかったり、体調に変化が起きたりする場合は、薬が合っていない可能性があるので医療機関へ受診して相談することが大切です。