インフルエンザ治療「タミフル」の特徴と使用時の注意点
タミフルは、インフルエンザの治療に使われる抗ウイルス薬です。
インフルエンザウイルスの増殖を抑えて、高熱や咳、鼻水、のどの痛みなどの症状がひどくなるのを防ぎます。
この記事では、タミフルの効果や使い方、副作用などについて詳しく解説します。
インフルエンザの治療でタミフルを使う方・使う予定の方は、ぜひ参考にしてください。
1.タミフルとはどのような薬か

タミフルは、抗インフルエンザウイルス薬の一種で「オセルタミビルリン酸塩」という成分が配合されています。
カプセル剤と顆粒のドライシロップ剤の2種類があり、生後2週以降の赤ちゃんから成人まで使用が可能です。
オセルタミビルリン酸塩には、インフルエンザA型・B型のウイルスの増殖を抑えるはたらきがあります。
インフルエンザウイルスに感染すると、通常38℃以上の高熱や頭痛、全身のだるさ、筋肉痛、関節痛などが現れ、咳や鼻水、鼻づまり、のどの痛みなどの症状も目立ちます。
これらの症状は、たいてい1週間ほどで改善しますが、まれに悪化して、重い肺炎やインフルエンザ脳症が引き起こされることがあるのです。
タミフルは、発熱など症状が出てから 48時間以内に服用を始めればA型・B型のインフルエンザウイルスの増殖を抑え、感染による重症化を防ぎ、回復までの時間を約1~2日ほど早めることが報告されています。
また、治療のほか、インフルエンザの感染予防(予防投与)に使われることもあるのもタミフルの特徴です。
他の同居家族がインフルエンザにかかってしまった場合に、65歳以上の高齢者や喘息など慢性呼吸器疾患を抱える方などは、発症を防ぐ目的でタミフルを服用することができます。
ただし、予防目的での使用は公的医療保険の適用外(自費診療)となる点に注意が必要です。
予防投与は対象となる人が限定されており(高齢者や基礎疾患のあるハイリスク者など)、必要な場合に医師の判断で行われます。
タミフルによる予防投与はあくまで補助的な方法で、インフルエンザワクチン接種に代わるものではありません。
【参考情報】『呼吸器の感染症 感染性呼吸器疾患 インフルエンザ』日本呼吸器学会
https://www.jrs.or.jp/citizen/disease/a/a-02.html
【参考情報】『保険診療Q&A』京都府保険医協会
https://healthnet.jp/paper/2013年/第2847号 2013年2月5日/保険診療Q&A250/
【参考情報】”About Influenza (Flu)” by U.S. Centers for Disease Control and Prevention
https://www.cdc.gov/flu/about/index.html
2. タミフルの使い方

タミフルは、インフルエンザの治療と予防で使い方が異なります。
それぞれの使い方を説明します。
【治療】
通常、成人および体重37.5kg以上の子どもは、1回75mg(錠剤1錠)を1日2回、計5日間飲みます。
小児は、体重に応じて用量が決まっており、幼児・小児では1回体重1kgあたり2mg(ドライシロップは66.7mg/kg) 、新生児・乳児(生後2週以降)は1回体重1kgあたり、3mg(ドライシロップは100mg/kg)を1日2回、計5日間服用します。
【予防】
インフルエンザの予防目的でタミフルを服用する場合は、治療時より少ない頻度で長めに服用します。
通常、成人および体重37.5kg以上の子どもは、1回75mgを1日1回、7〜10日間飲みます。
体重37.5kg未満の子どもは、体重1kgあたり2mg(ドライシロップなら66.7mg/kg)1日1回、10日間飲みます。
新生児・乳児には、予防投与は行いません。
予防投与を行う際は、インフルエンザ患者との濃厚接触後48時間以内に服用を開始する必要があります。
予防効果は服用を続けている期間のみ持続し、服用終了後は効果が減弱するため、投与期間終了後も体調変化に注意してください。
【参考情報】『タミフル 参考資料 添付文書』厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10601000-Daijinkanboukouseikagakuka-Kouseikagakuka/0000166169.pdf
【参考情報】”Treating Flu with Antiviral Drugs” by U.S. Centers for Disease Control and Prevention
https://www.cdc.gov/flu/treatment/antiviral-drugs.html
3.タミフルの副作用

タミフルは比較的安全な薬ですが、服用により起こりうる副作用がいくつか報告されています。
・腹痛
・下痢
・嘔吐
・めまい
・頭痛
そのほか、食欲不振、眠気または不眠、口内炎、倦怠感といった症状が現れる場合もあります。
ほとんどの副作用は軽い症状です。
しかし、血便や激しい頭痛が現れた場合はただちに服用を中止し、医師の診察を受けてください。
また、ごく稀ではありますが、以下の重い副作用もあります。
・アナフィラキシーショック(冷や汗やめまい、蕁麻疹、意識消失)
・黄疸(白目や皮膚が黄色くなる)、全身のだるさ、吐血・血便
・意識がぼんやりする
少しでも異常を感じたら速やかに医療機関を受診するようにしましょう。
【参考情報】”Tamiflu: Consumer Questions and Answers” by U.S. Food and Drug Administration
https://www.fda.gov/drugs/postmarket-drug-safety-information-patients-and-providers/tamiflu-consumer-questions-and-answers
4.使用上の注意点

タミフルを処方されたら、途中で症状が治まっても、必ず5日分を飲み切ってください。
治療期間中にタミフルを飲んだり飲まなかったり、服用を中断してしまうと、薬剤への耐性を持つウイルスが発生する恐れがあります。
4-1.妊娠中・授乳中の方
タミフルは、タミフルは動物実験で胎盤を通過することが報告されていますが、国内外のデータから胎児への明らかな悪影響は認められていません。
インフルエンザに罹患した妊婦への投与について検討した調査でも、タミフルの服用による先天異常や早産・流産の増加は見られず、有益性がリスクを上回ると結論づけられています。
妊娠中の方でも医師が必要と判断すれば使うことは可能です。
心配な場合は医師や薬剤師に相談してください。
授乳中の方は、薬の成分が乳汁に移行する恐れがあるので、タミフルを飲んでいる間は授乳をしないでください。
【参考情報】『抗インフルエンザウイルス薬投与時の 妊婦の安全性について』厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000001vftu-att/2r9852000001vg5t.pdf
【参考情報】”Recommendations for Obstetric Health Care Providers: Antiviral Treatment of Pregnant and Postpartum Women for Seasonal Influenza” by U.S. Centers for Disease Control and Prevention
https://www.cdc.gov/flu/hcp/antivirals/treatment_obstetric.html
4-2.持病のある方
腎機能障害のある方や、血液が固まるのを防ぐ薬であるワルファリンを服用中の方に対しても、タミフルは慎重に投与すべき薬です。
特にワルファリンを内服中の方では、タミフルとの併用により出血しやすくなるおそれがあります。
実際にタミフルの添付文書には重要な注意事項として、タミフル服用中に血便や吐血などの出血症状が現れた場合には直ちに医師に連絡するよう注意喚起が追記されています。
4-3.小児・未成年者
タミフルは苦いので、お子さんは飲みにくいかもしれません。
お子さんがドライシロップの服用を嫌がる場合は、チョコレート味のアイスやヨーグルト、オレンジジュース、スポーツドリンクに混ぜると苦みが和らぎます。
【参考情報】『乳幼児の服薬指導 ―薬を飲みやすくするコツ―』岐阜医療科学大学
https://phar.u-gifu-ms.ac.jp/column/1998.html
逆に、バニラアイスやリンゴジュース、乳酸菌飲料に混ぜると、ますます苦くなるので避けてください。
また中には、タミフルを服用した子どもの異常行動が報道されたことを思い出し、心配な方もいるかもしれません。
しかし、その後の調査で異常行動は、必ずしも薬の副作用ではなくインフルエンザという病気そのものが原因で起こる可能性が指摘されています。
厚生労働省もインフルエンザ発症後少なくとも2日間は小児・未成年者を一人にしないよう注意喚起していますので、お子さまがインフルエンザにかかった際には、十分な見守りを行ってください。
【参考情報】『タミフル使用上の注意』厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou04/medical/090511-02.html
【参考情報】”Tamiflu (oseltamivir phosphate) Information” by U.S. Food and Drug Administration
https://www.fda.gov/drugs/postmarket-drug-safety-information-patients-and-providers/tamiflu-oseltamivir-phosphate-information
5.タミフルの薬価

タミフルの薬価は以下となります。(2025年4月改定薬価)
・タミフルカプセル75mg 約189.4円/1カプセル
・タミフルドライシロップ3% 約120.3円/1g
タミフルには、代わりに使えるジェネリック医薬品もあります。
・オセルタミビルカプセル75mg「サワイ」 約111.6円/1カプセル
・オセルタミビルドライシロップ3%「サワイ」 約79.5円/1g
・オセルタミビル錠75mg「トーワ」 約107.7円/1錠
インフルエンザ治療薬のタミフルおよびそのジェネリックはいずれも市販薬(OTC)としては販売されていないため、使用するには医療機関を受診して医師の処方箋が必要になります。
【参考情報】『「医薬品薬価基準(令和5年4月改定)』厚生労働省
https://yakka-search.com/index.php?s=610443074&stype=7#:~:text=205,00
6.おわりに
抗インフルエンザ薬には、タミフル以外に以下の種類があります。
・ゾフルーザ(内服薬)
・リレンザ(吸入薬)
・イナビル(吸入薬)
・ラピアクタ(点滴薬)
インフルエンザの治療薬は、症状が出てから48時間以内に服用することで効果が発揮されます。
健康な大人なら、抗インフルエンザ薬を服用しなくても、安静にしていれば自然と回復する可能性は高いです。
しかし、薬によって回復までの期間を早めたい方は、症状が出始めたらすぐに医療機関を受診し、できるだけ早く治療を開始するとよいでしょう。
