小児喘息とは
小児喘息は子どもの日常に大きな影響を与える病気といえます。喘息の症状がある場合でも、子どもは息苦しさをうまく言葉で伝えることができません。
子どもを見守る保護者の方が正しい小児喘息の知識を理解しておくことが大切です。
この記事では、小児喘息の症状、原因、診断方法、治療方法、そして予防策について詳しく解説します。いざというときの対策や、子どもたちの健康と生活の質を守るための参考にしてください。
1.小児喘息とは
気管支喘息は、呼吸するときに空気の通り道である気道が炎症を起こし、狭くなることで呼吸困難を引き起こす病気です。そのなかで、とくに子どもの時期に発症するタイプが小児喘息と呼ばれます。
小児喘息の発症は、3歳までが最も多く見られます。多くの子どもたちが小学校に入学するまでに小児喘息を発症することが一般的です。
子どもが成長するにつれて、12歳から15歳頃には多くの場合、症状が自然と軽減または消失する傾向があります。
しかし、すべての子どもたちがこの年齢で症状が完全になくなるわけではありません。実際、約30%の小児喘息の患者さんは成人後も症状があり、継続的な治療が必要となることがあります。
小児喘息の症状は、成長と共に変化する可能性があるため、定期的な医療のフォローアップと適切な管理が重要です。症状の重さや頻度に応じた治療計画を立てることが、子どもたちの健康と生活の質の向上に役立ちます。
小児喘息の早期発見と適切な治療により、長期的な健康リスクを軽減することができるでしょう。
【参考文献】独立行政法人 環境再生保全機構『小児ぜんそく基礎知識』
https://www.erca.go.jp/yobou/zensoku/basic/kodomonozensoku/index.html
【参考文献】”What is childhood asthma?” by Cleveland Clinic
https://my.clevelandclinic.org/health/diseases/6776-asthma-in-children
2.症状
小児喘息は、さまざまな症状を引き起こす可能性があります。以下に代表的な症状をご説明しましょう。
咳
とくに夜間や早朝に悪化する傾向があります。しばしば発作的に起こり、睡眠を妨げることもあります。
呼吸困難または息切れ
活動中だけでなく、安静時にも息切れを感じることがあります。
胸部の圧迫感や痛み
胸が締め付けられるような感覚や痛みを訴えることがあります。
喘鳴 (ぜんめい:呼吸時の異音)
呼吸時に胸からヒューヒュー、ゼーゼーといった音が聞こえることがあります。これは気道の狭まりによるものです。
一過性の呼吸困難や咳の発作
急激に症状が現れたり、短時間で改善したりすることもあります。
小児喘息の症状の一つに発作があります。以下のような強い喘息発作の症状があらわれた場合には、すぐに病院を受診してください。 必要であれば救急車を呼びましょう。
発作時の吸入のお薬を持っている場合は、直ちに使用します。20~30分毎に3回まで使用可能です。
強い喘息発作のサイン
・唇や爪の色が白っぽくなる
・息を吸う時に小鼻が広がる
・息を吸う時に胸がペコペコと凹む
・脈拍が異常に速い
・苦しくてうまく話せない
・吐く息が吸う息よりもあきらかに時間がかかる
・歩くことができない
・横になることができず、眠れない状態
・意識がもうろうとしている
・過度に興奮する、または暴れる行動
喘息発作は突然かつ深刻になることがあります。子どもの安全を確保するために、これらのサインと対処法をよく理解し、迅速に行動できるようにしましょう。
【参考文献】”What are the symptoms of asthma in children?” by Cleveland Clinic
https://my.clevelandclinic.org/health/diseases/6776-asthma-in-children#symptoms-and-causes
【参考文献】 ”Childhood asthma” by Mayo Clinic
https://www.mayoclinic.org/diseases-conditions/childhood-asthma/symptoms-causes/syc-20351507
3.原因
小児喘息の多くは、特定のアレルゲン(アレルギーの原因となる物質)に対するアレルギー反応が原因で起こるといわれています。アレルゲンはハウスダスト、ダニ、花粉、ペットの毛やふけ、タバコの煙などです。
これらのアレルゲンによって気管支の炎症が引き起こされ、気道が過敏になり狭くなることで、喘息の発作が起きることがあります。
アレルギー要因でない原因としては風邪ウイルス、気候の変化、ストレスなどの要因があります。これらも、小児喘息の発症に影響を与えます。アレルギー反応とは異なり、直接的に気道の炎症を引き起こすことが原因です。
また、アトピー性皮膚炎やアレルギー性鼻炎を持つ子ども、または家族内に喘息の患者さんがいる子どもの場合、喘息を発症するリスクが高まるといわれています。
【参考文献】”What causes childhood asthma?” by Cleveland Clinic
https://my.clevelandclinic.org/health/diseases/6776-asthma-in-children#symptoms-and-causes
4.検査
小児喘息の診断には問診とさまざまな検査が主に利用されます。
問診と症状の確認
医師が患者さんの症状の特徴を詳しく聞き取ります。咳、息切れ、喘鳴(呼吸時の異音)などの症状があるか確認します。
症状が出やすい時間(とくに夜間や早朝)、状況(運動中や特定の季節など)、アレルギー歴(食物アレルギー、アトピー性皮膚炎など)、家族歴(気管支喘息や他のアレルギー疾患)、ペットの飼育状況、家庭内の喫煙状況なども聞き取ります。
呼吸機能検査
6歳以上の子どもの場合、呼吸機能検査を行い、気管支の狭さを確認します。発作がある場合や症状が現れているときには、息を吐く力が低下していることを確認できます。
ピークフローメーターという装置を使用し、息を吐き出す力を測定します。
アレルゲン検査
特定のアレルゲンが喘息の原因である疑いがある場合、血液検査でアレルゲンを特定します。
【参考文献】 ”What tests will be done to diagnose asthma in childhood?” by Cleveland Clinic
https://my.clevelandclinic.org/health/diseases/6776-asthma-in-children#symptoms-and-causes
5.治療
小児喘息の治療は大きく2つに分かれます。
喘息の治療は、「症状が起こらないように毎日行う治療」と「症状や発作が起きたときに行う治療」の2つです。喘息は毎日の治療が重要であり、発作がない場合も気道の炎症が続いているため、普段からの治療が必要です。
気管支や気道の炎症を抑えて、発作が起こらないようにする薬や、狭くなった気管支を広げて呼吸しやすくする吸入薬が使用されます。
また、アレルギー検査により、喘息の原因となるアレルゲンを特定することも治療として重要です。アレルゲンを避けることにより、喘息の症状を回避しやすくなるでしょう。
喘息は、子どものうちから治療することが重要であり、適切な治療を行えば症状をコントロールできる病気であるとされています。
【参考文献】 ”How is asthma in childhood treated?” by Cleveland Clinic
https://my.clevelandclinic.org/health/diseases/6776-asthma-in-children#symptoms-and-causes
6.予防・対策
小児喘息の予防には、主な原因のアレルゲンを特定し、アレルゲンとの接触を避けることが不可欠です。とくに、家庭内での禁煙は非常に重要です。喫煙は小児喘息を悪化させる可能性が高く、子供の気道に悪影響を及ぼします。
また、家の中を常に清潔に保ち、ホコリやダニの蓄積を防ぐために定期的な掃除を行うことも、喘息予防に役立ちます。
そして、医師の指示に従って処方された薬を正しく使用し、症状の変化に応じて定期的に診察を受けましょう。すでに小児喘息を発症している場合でも症状の管理と悪化を防ぐことができます。
【参考文献】 ”Can childhood asthma be prevented?” by Cleveland Clinic
https://my.clevelandclinic.org/health/diseases/6776-asthma-in-children#symptoms-and-causes
7.おわりに
子どもに小児喘息の兆候や症状が見られる場合、速やかに医療機関の受診を検討しましょう。呼吸器専門の医師のいる病院や小児科が推奨されます。
小児喘息は早期に治療を開始することが大切です。適切な医療機関での早期診断と治療を受けることで、症状の進行を抑え、健康に過ごせる状態を維持することが可能になります。