喘息治療で使われる「アテキュラ」の特徴や副作用について解説!

アテキュラという医薬品をご存知でしょうか?

アテキュラは、喘息治療薬としても比較的新しい医薬品であり、長期管理薬に分類されています。1日1回吸入で済み、何回も吸入する必要がないので患者さんにとって負担が少ないこともメリットです。

当記事では、アテキュラの特徴や副作用、注意点などについて解説します。

1.アテキュラとはどんな薬?


アテキュラには、「インダカテロール酢酸塩」と「モメタゾンフランカルボン酸エステル」の2種類の薬効成分が配合されています。

インダカテロール酢酸塩は、β2受容体刺激薬に分類されており、交感神経のβ2受容体を刺激することで気管支を拡張させる働きがある成分です。

モメタゾンフランカルボン酸エステルは、吸入ステロイドに分類されており、喘息の原因となる気管支の炎症を鎮める働きがある成分です。

喘息治療薬には「長期管理薬」と「発作治療薬」が存在し、アテキュラは長期管理薬に分類できます。

長期管理薬は、喘息の症状をコントロールすることで発作を抑えることを目的としています。そのため、アテキュラを使用しているときに発作が起きたとしても、1日に何回も使うことはできません。

アテキュラの適応疾患は、気管支喘息のみとなっています。特に、気管支喘息の中でも、吸入ステロイドやβ2受容体刺激薬の単剤では効果が薄いものにアテキュラが使われます。

【参考文献】”Atectura Breezhaler” by Asthma Australia
https://asthma.org.au/atectura-breezhaler/

2.アテキュラの服用方法


アテキュラは、専用の吸入器具(ブリーズヘラー)に吸入カプセルをセットして吸入します。
1日1回吸入しますが、症状に応じて低用量、中用量、高用量カプセルの処方が可能です。

アテキュラの吸入器具の使用方法は以下のようになります。

1.吸入器具のキャップを外して、本体上部の吸入口を後ろに倒す
2.アルミシートから吸入カプセルを一つ取り出して、吸入器具の内部に入れる
3.吸入口を音がするまで閉めて、吸入器を垂直に立てる
4.吸入器具の両側のボタンを1回だけ押して、ボタンから指を離します
5.軽く息を吐いてから、吸入口をしっかりくわえます
6.できるだけ深く大きく吸入します
7.吸入口を口から外して3〜4秒ほど息を止めてから、ゆっくり息を吐きます
8.吸入カプセルに粉がなくなっていることを確認してから、空のカプセルを捨てます
9.口の中を3回、喉の奥を3回ずつ吸入が終わったらうがいをします

【参考情報】『ブリーズヘラー吸入法』日本喘息学会
https://jasweb.or.jp/movie_07.html

【参考文献】”Atectura Breezhaler” by electronic Medicines Compendium
https://www.medicines.org.uk/emc/files/pil.11885.pdf

3.アテキュラの副作用


アテキュラにはいくつかの副作用が報告されており、吸入して体調に変化が生じた場合は医療機関へ相談する必要があります。

アテキュラの主な副作用として以下のものがあります。

・嗄声(させい:声がかすれて出にくくなる)
・筋痙攣(きんけいれん:手の震えなど)
・口腔咽頭痛

アテキュラに含まれている吸入ステロイドが、咽頭に残っていると喉の筋力低下が起こって声が出にくくなることがあるので注意が必要です。

また、吸入ステロイドには、免疫抑制効果によって感染症(口腔カンジダ症)などを引き起こして、口の中や喉の痛みを引き起こすこともあります。

口腔カンジダ症では、口の中に常在しているカンジダ菌というカビが増殖し感染を起こし、口の中に白い苔(こけ)のようなもの(白苔:はくたい)ができたり、赤く腫れたり、痛みを感じることがあります。

アテキュラに含まれているβ2受容体刺激薬は、筋痙攣を起こすことがあり、手の震えなどがみられることもあります。動悸や吐き気などもみられることもあるので、副作用がつらい場合は吸入ステロイドのみを配合した吸入薬への変更などの検討も必要です。

めったにありませんが、重大な副作用として以下のものがあります。

・アナフィラキシーショック
・重篤な血清カリウム値の低下

アナフィラキシーショックは、アテキュラの成分によって急激なアレルギー反応が起こる副作用であり、呼吸困難、顔面の腫れ、蕁麻疹などの症状があらわれた場合はすぐに医療機関へ受診してください。

血清カリウム値が低下すると筋力の低下や痙攣などが起こり、不整脈を起こすこともあります。

アテキュラの副作用を予防するためにも、吸入後は必ずうがいをすることが重要です。

【参考情報】『吸入ステロイド薬の副作用である嗄声発言の要因解析』医療薬学40(12)716-725(2014)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjphcs/40/12/40_716/_pdf

【参考文献】”Indacaterol and Mometasone”by electronic Medicines Compendium
https://www.mskcc.org/cancer-care/patient-education/medications/adult/indacaterol-and-mometasone?msk_tools_print=pdf

4.使用上の注意点


アテキュラを使用する際には、併用薬や持病、体質などを確認してください。

・妊婦、授乳婦
可能性は低いですが、アテキュラに配合されている成分によってお腹の赤ちゃんに影響する可能性があります。また、母乳へ薬効成分が移行する可能性もあるので、妊婦や授乳婦の方はアテキュラを使用する前に主治医にご相談ください。

・小児
12歳未満の小児を対象とした臨床試験は実施しておらず、他の薬剤を選択する場合が多いです。また、年齢が低いうちは吸入薬がうまく使えない可能性もあるので、子どもの状態を見ながら薬を選ぶ必要があります。

・高齢者
高齢者は肝機能や腎機能が低下しており、健康で若い人に比べると副作用のリスクが高くなる傾向があります。また、吸入する力も低下している可能性もあるので、副作用があらわれたり、吸入が難しかったりする場合は内服薬や別の吸入薬への変更が検討されます。

・デスモプレシンを服用している方
デスモプレシンは、男性における夜間多尿に使われる医薬品です。デスモプレシンとアテキュラを併用することで急激な低ナトリウム血症を起こすことがあるため、併用は禁忌とされています。そのほかにも、アテキュラの作用を増強したり、副作用のリスクを高めたりする薬剤も存在するので、併用薬がある方は医師や薬剤師に相談してください。

お薬手帳をうまく活用することで医療機関にて薬剤の飲み合わせを確認でき、安全にお薬を服用できます。

【参考文献】”ATECTURA® BREEZHALER® 125/62.5, 125/127.5, 125/260 micrograms” by NPS MedicineWise
https://www.nps.org.au/assets/medicines/07629238-4712-4d71-95ce-acb00075b657-reduced.pdf

5.アテキュラの薬価


・アテキュラ吸入用カプセル低用量
薬価1カプセル140.4円

・アテキュラ吸入用カプセル中用量
薬価1カプセル153.1円

・アテキュラ吸入用カプセル高用量
薬価1カプセル171.6円

アテキュラについてはジェネリック医薬品が存在しておらず、市販薬で代わりなるものも存在しません。

6.おわりに

アテキュラは、β2受容体刺激薬「インダカテロール酢酸塩」と吸入ステロイド「モメタゾンフランカルボン酸エステル」が配合された喘息治療薬です。

喘息治療薬の中でも「長期管理薬」に分類されており、喘息の症状をコントロールして発作を予防するために使われます。

アテキュラは、ブリーズヘラーという専用の吸入器を使用し、吸入器にカプセルをセットして使用します。吸入後にうがいをすることで嗄声や口腔咽頭痛などを予防することが可能です。

アテキュラを使用しても喘息の症状が改善しない場合や副作用があらわれた場合は、医療機関で相談することが大切です。

自分の判断で処方された薬の服用を中断すると喘息の症状を抑えられない可能性もあるので、主治医の指示に従ってアテキュラを使用してください。

◆「喘息悪化の要因」について>>

◆「喘息治療のゴール」について>>