肺がんの基本情報

「肺がん」は、空気の通り道である気管や気管支、肺胞にできた悪性腫瘍を指します。

肺に限らず「がん」と聞くと、落ち込んだり絶望を感じたりする人も多いでしょう。

今の時代、がんは珍しい病気ではなく、2人に1人はかかるといわれています。

特に肺がんは、がんの中でも罹患する人が多く、たばことの関係が深い病気です。

今回の記事では、肺がんの症状や種類、検査、治療について詳しく解説します。

喫煙経験がある方は、リスクの高い病気です。ぜひ最後までお読みください。

1.肺がんの症状とは


肺がんとは、肺に発生した悪性腫瘍を指します。

主な症状は、以下の通りです。

・咳
・痰
・血痰(肺や気管支などから出た血液が痰に混じったもの)
・胸の痛み
・息苦しさ
・動悸
・発熱

早期の場合には、自覚症状がありません。
病状が進行してから症状があらわれ、病気に気づくケースもあります。

肺がんに限らず、呼吸器の病気では、咳の症状が出る場合が多いです。
2週間以上咳が続く場合には、何らかの呼吸器疾患の可能性が考えられます。

念のため、呼吸器内科の受診をしておくと安心です。

【参考文献】”Symptoms of Lung Cancer” by Centers for Disease Control and Prevention
https://www.cdc.gov/lung-cancer/symptoms/index.html

◆「血痰」が出る原因は?>>
◆「2週間以上続く咳」について詳しく>>

2.肺がんの原因とは


肺がんを起こす最大の原因は、「喫煙」です。

喫煙する人は、喫煙しない人に比べて、男女ともに4倍以上肺がん発生率が高いといわれています。

喫煙している本人だけでなく、周囲でタバコの煙(副流煙)を吸う「受動喫煙」でも肺がんのリスクは高まります。

喫煙以外には、大気汚染やアスベストの吸入、放射線の暴露や被爆などの環境に長くさらされていた人は、肺がんのリスクが高いといえるでしょう。

【参考情報】『肺がん』日本赤十字社医療センター
https://www.med.jrc.or.jp/visit/cancer/lung/tabid/766/Default.aspx

3.肺がんの種類


肺がんには、種類があります。

肺そのものから発生したものを「原発性肺がん」、他の臓器にがんが発生して、肺に転移してきたものが「転移性肺がん」と呼びます。

通常、「肺がん」といわれれば、原発性のものを指す場合が多いです。

ここでは、原発性肺がんの種類について解説します。

3-1.小細胞肺がん

小細胞肺がんは、喫煙との関係が非常に大きいがんです。

肺の入り口近く(肺門部)に出来やすく、他の組織型の肺がんに比べ、細胞が小さいのが特徴です。

肺がん全体の10%程度をしめています。

成長の速度が速く、転移しやすいため、診断された時点で病状が進行している場合があります。

3-2.肺腺がん

肺腺がんは、非小細胞がんのひとつで、唾液腺や胃腺などの腺組織とよく似た形をしています。

肺がん全体の半数をしめ、肺の奥の方(肺野部)にできるのが特徴です。

女性や喫煙しない人にもできる肺がんの多くが、この肺腺がんです。

3-3.肺扁平上皮がん

扁平上皮がん(へんぺいじょうひがん)も、非小細胞がんのひとつです。

扁平上皮とは、皮膚や粘膜など体をおおっている組織を指します。

その扁平上皮によく似た形をしたがんです。

肺の入り口近く(肺門部)にできやすく、喫煙との関連が大きく、肺がん全体の30%をしめています。

3-4.肺大細胞がん

肺大細胞がんも、非小細胞がんのひとつです。

扁平上皮や腺などの組織と似たところがなく、他の種類のがんに分類されない大きな細胞のものを、大細胞がんと呼びます。

肺がん全体の数%程度と、発生は少ない頻度のがんです。

肺の奥の方(肺野部)にできるのが特徴です。

3-5.その他の肺がん

上記の分類以外にも、カルチノイド、腺様嚢胞がん、粘表皮がんなどがあります。

<カルチノイド>

カルチノイドとは、肺神経内分泌腫瘍のひとつです。

細胞の形から、神経内分泌がんとカルチノイドに分けられます。

カルチノイドは気管支にできる場合が多く、肝臓や骨、脳などに転移する可能性があるといわれています。

<線様嚢胞がん>

分泌腺から発生するがんです。

肺以外にも、食道や乳腺、子宮頸部などにも発生します。

<粘表皮がん>

肺粘表皮がんは、粘液を有する細胞と扁平上皮、中間細胞からなる唾液腺型のがんです。

肺がんの中でも発生頻度は非常に低く、肺門部の気管支内に発生します。

【参考文献】”Types of Lung Cancer ” by American Lung Association
https://www.lung.org/lung-health-diseases/lung-disease-lookup/lung-cancer/basics/lung-cancer-types

4. 肺がんの検査


肺がんが疑われる場合、いくつか検査がおこなわれます。

どのような検査をおこなうのか、解説します。

4-1.スクリーニング検査

肺がんのスクリーニング検査は、肺がんを早い段階で見つけるためにおこなう検査です。

主に、以下の3つの検査を行います。

・胸部レントゲン検査
・胸部CT検査
・喀痰細胞検査

胸部レントゲン検査は、最も手軽に検査ができるため、健康診断や肺がんの集団検診でよくおこなわれる検査です。

健康な人や喫煙習慣のない人は、胸部レントゲン検査のみの場合もあるでしょう。

喫煙習慣がある人や肺がんのリスクが高い人には、胸部レントゲン検査のほかに胸部CT検査や喀痰細胞検査を実施します。

胸部レントゲン検査で異常があった場合も、胸部CT検査や喀痰検査で詳しく調べます。

多くの自治体でがん検診の費用を負担してくれる制度があるので、気になる方はお住まいの自治体でどのような制度があるか調べてみましょう。

4-2.確定診断検査

スクリーニング検査で肺がんの疑いがあると判断された場合、確定診断検査をおこないます。

確定診断のための検査は、以下の4つです。

・気管支鏡検査
・経皮的肺針生検
・胸腔鏡検査
・外科的肺生検

細胞や組織の採取のために最も多くおこなわれる検査は気管支鏡検査ですが、状況によって経皮的肺針生検や胸腔鏡検査をおこないます。

外科的肺生検は、侵襲(生体に傷をつけること)が大きく合併症も懸念されるため、リスクよりも必要性が上回る場合におこなわれます。

【参考情報】『肺がん 検査』がん情報サービス
https://ganjoho.jp/public/cancer/lung/diagnosis.html

4-3.その他の検査

上記で説明した検査以外にも、医師が必要と判断した場合に、以下のような検査がおこなわれます。

・PET検査
・腫瘍マーカー検査
・MRI検査

がんの診断や治療の方向性を決めるために大切な検査です。

不安や疑問がある場合には、しっかり担当医と話しておきましょう。

5.肺がんの治療


肺がんの種類やできている部位、病期やステージなどの進行具合によって治療法が異なります。

また、ひとつの治療法だけではなく、いくつかの治療法を組み合わせ、治療を進めていきます。

ここでは、肺がんの主な治療法について解説します。

5-1.手術

手術では、がん細胞だけでなく、その周囲の血管やリンパ管にも広がっている可能性も考え、大きめに臓器の切除をおこないます。

侵襲の大きな治療ですが、麻酔をかけて痛みを取り除き、安全に配慮しおこないます。

5-2.放射線治療

放射線治療では、がんの部分に体の外から放射線を当てて治療します。

痛みや熱を感じることはなく、侵襲の少ない治療法といえます。

ほとんどの場合、通院で治療がおこなえることがメリットです。

5-3.薬物療法

薬物療法には3つの種類があります。

化学療法
免疫療法
分子標的療法

薬により服用方法が異なり、効果や副作用にも違いがあります。

【参考文献】”Lung Cancer” by Cleveland Clinic
https://my.clevelandclinic.org/health/diseases/4375-lung-cancer

6.肺がんを予防するには


喫煙は、肺がんの発症と大きく関係しています。

肺がんの予防のために、まずは禁煙に取り組みましょう。

また、がんで死亡する人の中で、肺がんは上位に位置しています。
40代から罹患する人が増加してくるため、定期的な検診を受けることが大切です。

肺がんは早期には自覚症状がありません。

早期発見、早期治療で、完治することもできるでしょう。

すでに血痰や長引く咳、声枯れ、息切れなどの症状がある場合は、すぐに医療機関の受診をおすすめします。

【参考文献】”What Can I Do to Reduce My Risk of Lung Cancer?” by Centers for Disease Control and Prevention
https://www.cdc.gov/cancer/lung/basic_info/prevention.htm

◆「タバコで咳が出る理由」について詳しく>>

7.おわりに

前述したとおり、肺がんは、喫煙と大きな関係があります。
喫煙者はまず禁煙に取り組みましょう。

肺がんの種類によって、検査や治療法は異なります。

また、早期の肺がんは自覚症状がない場合が多いです。

そのため、定期的な検診を受け、早期発見につとめましょう。