子どもの頃の喘息が再発?若い世代に多い原因と予防法

「子どもの頃は喘息だったけど、もう治ったはず…」
そう思っていたのに、進学や就職をきっかけに再び咳や息苦しさが戻ることがあります。
特に10代〜20代の若い世代では、生活環境の変化や喫煙習慣が再発のきっかけになることも。
本記事では喘息再発の理由と予防するための工夫を解説します。
1. 喘息はなぜ再発するのか
喘息は「治った」と思っても、気道が敏感な状態が残っていることがあります。
そのため、環境や生活習慣の影響で再び症状が出てしまうのです。
1-1. 子どもの頃の喘息と寛解
小児喘息は、成長とともに症状が落ち着くことが多いです。
しかし、完全に治癒するのではなく、寛解(かんかい)という状態に過ぎません。
寛解とは、喘息の症状がなくなる状態を指しますが、気道の炎症は完全に治るわけではなく、少しの刺激で症状が再発する可能性があります。
1-2. 気道の炎症が続く仕組み
喘息は、気道に慢性的な炎症が起こる疾患です。
この炎症が続いていると、喫煙やストレス、大気汚染などの外的要因が気道に影響を与えやすくなり、再発を引き起こすことがあります。
再発の際には、咳や喘鳴(ぜんめい)といった症状が現れ、日常生活に支障をきたすこともあります。
1-3. 寛解後の再発リスク
寛解後の再発リスクを減らすためには、定期的な医師の診察と治療が重要です。
特にアレルゲン(ダニや花粉)や気温差、風邪などが引き金となることが多いため、自分の生活環境や体調に気をつけておくことが予防につながります。
【参考情報】『気管支喘息』厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/kenkou/ryumachi/dl/jouhou01-06.pdf
【参考情報】“Asthma remission: what is it and how can it be achieved?” by European Respiratory Journal via PMC
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC9630609/
2. 若い世代に多い再発のきっかけ
10代〜20代では、生活環境や生活習慣の変化が喘息再発の引き金となり、進学、就職、喫煙など、さまざまな要因が再発を引き起こすことがあります。
2-1. 進学や受験期のストレス
受験期や進学など、環境の変化が多い時期には、体調を崩しやすくなることがあります。
特にストレスや睡眠不足が続くと、免疫力が低下し、喘息の症状が悪化する可能性があり、受験勉強や新しい環境に慣れる過程で、精神的な負担が大きくなるため、喘息の症状が再発しやすいです。
2-2. 新社会人期の生活習慣
新社会人としての生活が始まると、仕事の忙しさや飲み会の増加、喫煙習慣の再開など、生活習慣が乱れがちです。
これにより体調が不安定になり、気道が過敏になりやすく、再発のリスクが高まります。
また、長時間のPC作業やストレスも悪化の要因となるので注意が必要です。
2-3. 環境要因(大気汚染・花粉など)
都会の大気汚染や、季節による花粉の飛散も喘息再発を引き起こす大きな要因です。
特に春や秋は花粉の影響を受けやすく、アレルギー性の喘息を引き起こすことがあります。
また、大気汚染がひどい場所に住んでいる場合、PM2.5などの微細な粒子が気道に入り込み、喘息症状を引き起こすこともあります。
【参考情報】『大気汚染と健康』国立環境研究所
https://www.nies.go.jp/kanko/kankyogi/67/02-03.html
【参考情報】“Asthma — Causes and Triggers” by National Heart, Lung, and Blood Institute
https://www.nhlbi.nih.gov/health/asthma/causes?
3. 再発を防ぐためのライフスタイルの工夫
喘息の再発は、生活習慣を見直すことで予防することができます。
ここでは、再発防止に効果的な工夫を紹介します。
3-1. 規則正しい生活と十分な睡眠
喘息の症状を予防するためには、規則正しい生活が重要です。
特に十分な睡眠は免疫力を高め、気道の健康を保つために欠かせません。
また、食事もバランスよく摂ることが大切です。
3-2. 喫煙を避ける
喫煙は喘息の最大の敵です。
煙草に含まれる有害物質は気道に炎症を引き起こし、症状を悪化させる原因となります。
禁煙することで喘息の再発リスクを大幅に減らすことができます。
3-3. 適度な運動と体力維持
運動不足も喘息の症状を引き起こす原因になります。
軽い有酸素運動は、肺活量を増やし、気道を健康に保つために有効です。
呼吸法を意識した運動を取り入れると、喘息予防に効果的です。
【参考情報】『禁煙と健康』厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/tobacco/
【参考情報】“Asthma Triggers: Gain Control” by US Environmental Protection Agency
https://www.epa.gov/asthma/asthma-triggers-gain-control?
4. 再発が疑われるときの受診の目安
喘息の症状が再発したと感じたとき、自己判断で放置せず、早めの医療機関受診が大切です。
喘息の症状は一般的な風邪より長引く傾向があり、放置すれば悪化する可能性があるため注意が必要です。
4-1. 咳やゼーゼーが続く場合
喘息の症状が2週間以上続く場合や、夜間や朝方に咳込みが強くなったり息苦しさ・ゼーゼーという喘鳴(ぜんめい)が聞こえたりと症状が悪化する場合は、再発を疑うべきです。
通常、風邪による咳は1~2週間程度で改善に向かいます。
発熱や鼻水など風邪の他の症状がないまま咳だけが長引いているなら、それは風邪ではなく喘息の症状である可能性が高いでしょう。
特に若い方で、小児喘息がいったん寛解していた場合でも、乾いた咳が続くことは再発のサインかもしれません。
「たかが咳」と侮って放置すると気道の炎症が進み、症状がさらに悪化したり治療が難しくなったりする恐れがあります。
寝ている途中に咳や呼吸困難で目が覚める、息を吐くときにヒューヒュー・ゼーゼー音がする、といった状態になっているなら、早急に医師の診察を受けてください。
4-2. 運動や気候変化で悪化する場合
寒暖差や運動後に喘息症状が出る場合は、早急に受診することをおすすめします。
例えば、ランニングや体育の後で咳が止まらなくなる、冷たい空気を吸ったときに胸が苦しくなるといった症状があげられます。
健康な人であれば運動後や寒い日に息苦しさを感じることはほとんどありませんが、過去に喘息歴のある人や気道が敏感になっている人は、運動や冷気といったちょっとした刺激でも気管支が過剰に反応して症状が出てしまいます。
運動をきっかけに一時的に気道が狭くなる運動誘発喘息という状態もありますので注意が必要です。
また、季節の変わり目や花粉の飛ぶ時期、大気汚染がひどい日などに咳が悪化する場合も要注意です。
それらの環境要因で症状が出るのは気道が敏感になっているサインです。
こうした症状に心当たりがある場合は、自己判断せず早めに医療機関を受診することをおすすめします。
4-3. 早期の受診が重要
再発を防ぐためには、早期に診断を受け、必要な治療を始めることが重要です。
定期的な診察とアドバイスを受けることで、再発を効果的に防ぐことができます。
5. 喘息再発後の治療と長期管理
喘息が再発した場合でも、適切な治療と長期的な管理で症状はコントロール可能です。
再発後に重要なのは、治療法を継続しつつ、生活全体を見直し、症状の改善に向けて努力することです。
5-1. 吸入薬の継続使用とその重要性
喘息治療には、吸入薬(吸入ステロイド薬や気管支拡張薬)が最も効果的とされています。
再発後も、これらの薬を継続的に使用することが症状をコントロールするために不可欠です。
5-1-1. 吸入ステロイド薬(ICS)
吸入ステロイド薬(ICS)は、気道の炎症を抑える働きがあり、喘息治療の基本です。
再発後も、医師の指示通りに定期的に使用することで、気道の炎症を長期間抑制し、再発を防ぎます。
特に、気道の炎症を抑えることができるため、喘息の発作の頻度を減らすことができます。
5-1-2. 気管支拡張薬(SABA)
気管支拡張薬は、急な喘息発作が起きた際に使用する薬で、気道を広げて呼吸を楽にします。
再発後、気道が敏感になることが多いため、発作が起きたときにすぐに使用できるようにしておくことが大切です。
特に、運動や気温差が原因で咳が出やすい場合、気管支拡張薬が効果的です。
5-1-3. 長期管理薬の併用
喘息の管理には、長期使用を前提にした薬(例:長時間作用型β2刺激薬やロイコトリエン受容体拮抗薬)の併用が有効です。
これらの薬は炎症の予防や気道の過剰な反応を抑える効果があり、喘息症状の安定をサポートします。
【参考情報】『成人ぜん息の基礎知識 治療』環境再生保全機構
https://www.erca.go.jp/yobou/zensoku/basic/adult/knowledge/medicine.html
【参考情報】“Asthma Symptoms | Asthma Attack” by MedlinePlus / U.S. National Library of Medicine
https://medlineplus.gov/asthma.html?
5-2. 定期的な受診と検査
喘息の治療には、定期的な医師の診察と検査が重要です。
症状が再発した後でも、治療の進行状況を確認し、必要に応じて薬の変更や追加を行います。
これにより、喘息の症状をより効果的に管理することができます。
5-2-1. 症状のモニタリング
定期的に症状をモニタリングすることは、喘息管理の重要な要素です。
ピークフロー測定器を使って、呼吸機能の状態を自宅でチェックすることができます。
これは、気道の状態をリアルタイムで把握できるため、喘息の再発や悪化を早期に発見する助けとなります。
5-2-2. アレルギー検査
喘息の再発原因として、アレルゲンの影響がある場合があります。
再発後にアレルギー検査を行うことで、アレルギー反応を引き起こす物質(ダニ、花粉、ペットの毛など)を特定し、生活環境を改善するための手助けになります。
アレルゲンに対して適切な治療を行うことが、喘息症状の軽減につながります。
5-2-3. 環境調整の提案
診察時には、生活環境に関するアドバイスも行われます。
例えば、喫煙を避けることや、アレルゲンを減らすための室内環境の改善(空気清浄機の使用、布団の定期的な洗濯)などが推奨されます。
これらの環境調整により、喘息の再発を防ぐ効果があります。
5-3. 家族や周囲の理解
喘息は自己管理が大切な疾患ですが、周囲の理解も非常に重要です。
特に家庭や学校、職場で喘息の症状や治療に対する理解が得られていれば、より安心して生活することができます。
5-3-1. 家族のサポート
家庭内での理解は、喘息患者にとって大きな支えとなります。
例えば、家族が禁煙を実践したり、部屋の湿度を管理したりすることが、患者の症状の軽減に寄与します。
また、発作時に迅速に適切な対処ができるように、家族全員で共有しておくことが重要です。
5-3-2. 学校・職場での配慮
学生や社会人の場合、学校や職場でも喘息への理解が必要です。
喘息の再発を予防するために、休憩時間に換気をする、運動をする際に配慮する、過度なストレスを避けるといった配慮が求められます。
特に、喘息が悪化した際には適切な休養をとることが重要です。
5-3-3. 周囲の理解を深めるための教育
喘息に関する正しい知識を周囲に伝えることも、再発防止に役立ちます。
喘息の症状や対処法について簡単に説明し、喘息患者が生活しやすい環境を作りましょう。
【参考情報】“Asthma in Children and Adults—What Are the Differences and What Can They Tell us About Asthma?” by Frontiers in Pediatrics via PMC
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6603154/
6. まとめ
子どもの頃に治ったと思っていた喘息も、生活環境や習慣の変化で再発することがあります。
喘息は完全に治癒するのではなく「寛解」という状態であり、気道の炎症は残り続けているため、ちょっとした刺激で症状が再び現れる可能性があります。
特に10代〜20代の若い世代では、進学や就職によるストレス、新しい環境での喫煙習慣の開始、大気汚染や花粉などの環境要因の影響を受けやすく、喘息再発のリスクが高まります。
喘息が再発した場合でも、吸入薬による継続治療、定期的な受診と検査、家族や周囲の理解とサポートにより、症状を適切にコントロールが可能です。
喘息は「子どもの病気」ではなく、大人になっても再発する可能性のある慢性疾患であることを理解し、自分の体と向き合いながら適切な管理を続けることで、快適な日常生活を取り戻しましょう。