喘息治療薬「エナジア」の特徴と使用時の注意点
喘息になると、気道や気管支の炎症によって、咳や息苦しさなどの症状が現れます。
エナジアは、狭くなった気管支を広げたり、炎症を和らげて気道の通りを改善することで、呼吸の問題や咳を緩和する薬です。
この記事では、エナジアの特徴や効果、使い方、副作用などについて詳しく解説します。
1.エナジアとはどのような薬か

エナジアは、「インダカテロール酢酸塩」「グリコピロニウム臭化物」「モメタゾンフランカルボン酸エステル」の3つの有効成分を配合した薬です。
1本の吸入器で、「ICS(吸入ステロイド)/LABA(長時間作用型β2刺激薬)/LAMA(長時間作用型抗コリン薬)」3種類の成分を同時に吸入できるのが最大の特徴です。
【参考情報】『Asthma』National Heart, Lung, and Blood Institute
https://www.nhlbi.nih.gov/health/asthma
1-1.成分の働き
・インダカテロール酢酸塩:長時間作用型β2刺激薬(LABA)。気管支のβ2受容体に働きかけて気管支を広げ、呼吸を楽にする働きがあります。使用後、約24時間効果が持続する成分のため、1日1回の投与で効果が期待できます。
・グリコピロニウム臭化物:長時間作用型抗コリン薬(LAMA)。体内のアセチルコリンという物質の作用を抑制し、副交感神経の働きを抑えることで気管支を広げ、空気の通りを良くする効果があります。
咳や痰に直接作用する薬ではありませんが、気管支が広がることで結果として症状の改善につながる場合があります。
・モメタゾンフランカルボン酸エステル:吸入ステロイド薬(ICS)。気管支の炎症を和らげて気道が狭くなるのを抑えます。

エナジアは、上記の3つの薬剤を一度に吸入することで、気道炎症を抑えながら気管支を拡張し、喘息症状のコントロールや発作予防に役立ちます。
なお、エナジアが処方される主な対象は「吸入ステロイド薬(ICS)+長時間作用型β2刺激薬(LABA)の2剤でもコントロールが不十分な喘息」の患者さんです。
国際的な喘息治療指針でも、ICS/LABAでコントロールが不十分な場合にLAMAを追加する治療(トリプル療法)が選択肢として示されています。
【参考情報】『Enerzair Breezhaler』EU Medicines Agency
[https://www.ema.europa.eu/en/medicines/human/EPAR/enerzair-breezhaler](https://www.ema.europa.eu/en/medicines/human/EPAR/enerzair-breezhaler)
1-2.他の吸入薬との違い
エナジアと同じように、ICS・LABA・LAMAの3成分を配合した吸入薬としてテリルジーがあります。
両者はどちらもトリプル吸入薬ですが、いくつか違いがあります。
| エナジア | テルリジー | |
|---|---|---|
| 吸入デバイス | ブリーズヘラー | エリプタ |
| 薬の形 | カプセル吸入 | 粉末吸入 |
| 吸入操作 | カプセルをセットする | カバーを開けるだけ |
| 成分 | モメタゾン+インダカテロール+グリコピロニウム | フルチカゾン+ビランテロール+ウメクリジニウム |
テリルジーは操作が比較的簡単な一方、エナジアはカプセルを使う吸入方法のため、吸入操作がやや特徴的です。
どちらが良いかは、
・吸入のしやすさ ・症状のコントロール ・副作用の出方
などを考慮して、医師が判断します。
◆『呼吸器内科で使われる吸入薬の種類と正しい使い方』について>>
2.エナジアの使い方

エナジアは、「ブリーズヘラー」というデバイスを使って吸入します。
通常、成人はエナジア吸入用カプセルを1日1回・1カプセルを吸入しますが、症状に応じて、エナジア吸入用カプセルの高用量1カプセルに増量することもあります。
吸入は1日1回、毎日なるべく同じ時間帯に行うことが大切です。規則正しく続けることで、薬の効果が安定して発揮されます。
用量は、医師の指示で決まりますので、自分の用量を必ず確認しておきましょう。
2-1.エナジアの吸入方法
エナジアの使用方法を順を追って説明していきましょう。
1. 吸入準備
マウスピース(吸入口)を開け、本体に記載されている矢印面を手前に向けて、吸入口を奥側へ倒します。
2.カプセルを取り出す
薬剤が入ったシートから、カプセルをひとつ取り出します。カプセルを取り出すときは押し出すのではなく、アルミシートを剥がして取り出してください。カプセルは、湿気による薬の変質を防ぐため、吸入直前にシートから取り出しましょう。
3. 薬剤をセットする(カプセルに穴をあける)
カプセルを装填部に入れ、「カチッ」と音がするまでしっかりとマウスピースを閉じます。吸入器を上に向けて持ち、本体両側のボタンを強く1 回押します。
4. 息を吐き出す
姿勢を正し、無理のない程度で、しっかり息を吐き出してください。
このとき、吸入口(マウスピース)に向かって息を吹き込まないように注意してください。
湿気により薬剤が固まる原因になることがあります。
5. 薬剤を吸い込む
マウスピースを深くくわえて、スーッと一気に息を吸い込んでください。その際、容器の中でカプセルが「カラカラ」という音が聞こえる程度の強さで吸入しましょう。
カラカラという音は、薬がきちんと吸入できているサインです。音がしない場合は吸い方が弱い可能性があります。
なお、「チョコチョコ吸い」(小刻みに何度も吸う)はNGです。一気に深く吸い込む様にしましょう。
※カプセルに穴を開けるボタンは、通常1回だけ押します。何度も押すとカプセルが破損する可能性があるので注意しましょう。
6. 息を止める
薬剤を吸い込んだら、マウスピースから口を離して3〜5秒ほど息を止めてください。その後ゆっくりと息を吐いて呼吸を戻します。
その後、容器に残ったカプセルが空になっていることを確認して、カプセルを捨てましょう。
7.うがいをする
口の中に残った薬剤を洗い流します。のどを洗う「ガラガラうがい」と、口の中をすすぐ「ブクブクうがい」の両方を行ってください。
うがいは、口腔カンジダ症や声がれ(嗄声)などの副作用を予防するために非常に重要です。うがいの水は飲み込まないように注意が必要です。うがいが困難な場合は、口腔内をすすぐだけでも行うとよいでしょう。
ブリーズヘラー(容器)は、水などで洗う必要はありませんが、30日程度を目安に交換してください。

2-2.吸入を忘れた場合
吸入を忘れたことに気づいた場合は、できるだけ早く1回分を吸入してください。ただし、1日に2回分を吸入することは避けてください。
次の吸入時間が近い場合は、忘れた分は吸入せず、次の通常の時間に1回分を吸入します。自己判断で吸入回数を増やすことはせず、心配な場合は医師または薬剤師に相談しましょう。
【参考情報】『Medicines and Asthma』National Health Service
https://www.nhs.uk/conditions/asthma/treatment/
2-3.保管方法
エナジアは、直射日光や高温・多湿を避け、1〜30℃の室温で保管します。冷蔵庫で保管すると結露が生じる可能性があるため避けましょう。
カプセルは湿気に弱いため、使用直前までアルミシートから取り出さないようにしてください。シートから取り出したカプセルはすぐに使用するようにしましょう。
【参考情報】『日本薬局方 通則(温度の定義)』PMDA
[https://www.pmda.go.jp/files/000241438.pdf](https://www.pmda.go.jp/files/000241438.pdf)
3.エナジアの副作用

エナジアの服用で比較的よくみられる副作用は、以下となります。
■ ICSによる副作用
・発声障害(嗄声:させい)※声がかすれる症状。発現率は約8.7%と報告されています。
・口腔カンジダ症(口の中や喉に白いコケのようなものが生える真菌感染症)
・口内炎、舌炎
・口腔、呼吸器感染
■ LABAによる副作用
・動悸(心臓がドキドキする)
・手の震え(振戦)
・筋痙攣(有痛性の筋肉のけいれん)、骨格筋痛
■ LAMAによる副作用
・排尿困難
・口の渇き(口内乾燥)
・便秘
副作用がみられた場合でも、多くは軽度で自然に改善することが多いとされています。
ただし、体全体にわたる発疹や痒みが出た場合は過敏症の可能性があるので、服用を中断して医療機関を受診しましょう。
また、ごく稀ではありますが、以下の重篤な副作用もあります。
・アナフィラキシー(血管浮腫・呼吸困難・じんましん・顔面の腫脹など)
・血清カリウム値の低下
・心房細動
また、長期間・高用量の吸入ステロイド使用により、クッシング症候群、副腎皮質機能抑制、骨密度の低下、白内障、緑内障などの全身性の作用が現れる可能性があります。
長期使用中の方は、医師の指示のもとで定期的な検査を受けることが重要です。
【参考情報】『エナジア吸入用カプセル中用量、エナジア吸入用カプセル高用量』PMDA
https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/ResultDataSetPDF/300242_2290807G1026_1_07
4.使用上の注意点

エナジアはカプセルタイプの薬剤ですが、内服薬ではありません。直接口から飲んでも効果は得られないため、必ず専用の吸入器(ブリーズヘラー)を使って吸入してください。
また、エナジアには「中用量」と「高用量」の2つの用量があります。処方された量と異なる量を服用すると、効果が得られなかったり、副作用が強く出たりする可能性があります。吸入する前に必ず用量を確認しましょう。
エナジアは喘息発作が起こったときに服用する薬ではありません。
喘息の急性発作が起きた際は、本剤ではなく医師から処方された短時間作用型吸入β2刺激薬(SABA)などの発作治療薬を使用してください。
また、症状がなくなったからといって、途中で服用をやめてしまうと、再び症状が現れる恐れがあるため毎日必ず吸入しましょう。
エナジアを毎日吸入しているのにもかかわらず、喘息の症状が治まらない時は、医師に相談することをおすすめします。
4-1.エナジアを使用できない方(禁忌)
以下に該当する方は、エナジアを使用できません。必ず医師・薬剤師にお伝えください。
・有効な抗菌剤の存在しない感染症、深在性真菌症の方:ステロイドの作用により症状を悪化させる恐れがあります。
・本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある方
・デスモプレシン酢酸塩水和物(ミニリンメルト等)を投与中の方(男性の夜間頻尿治療薬): 低ナトリウム血症を発現する恐れがあるため。
【参考情報】『Desmopressin Acetate』U.S. National Library of Medicine
https://medlineplus.gov/druginfo/meds/a682876.html
4-2.エナジアの使用に注意が必要な方
以下の状態・疾患をお持ちの方は、使用に際して医師への申告が必要です。
・閉塞隅角緑内障の方: 抗コリン作用により眼圧が上昇し、症状を悪化させる恐れあり。
・ 前立腺肥大等による排尿障害がある方:抗コリン作用により尿閉(尿が出なくなること)を誘発する恐れあり。
・結核性疾患または感染症のある方
・甲状腺機能亢進症の方
・心血管障害(冠動脈疾患、急性心筋梗塞、不整脈、高血圧、心不全、QT間隔延長)のある方、またはその既往歴のある方
・ 糖尿病の方(高血糖を起こす恐れがあるため、血糖値のモニタリングが必要)
・ てんかん等の痙攣性疾患のある方
・ 重度の腎機能障害のある方(eGFR30未満)や透析を受けている方
・ 妊婦、妊娠の可能性がある方(治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与可)
・ 授乳中の方(乳汁中への移行が報告されているため、授乳の継続・中止を医師と相談)
・ 牛乳アレルギーのある方(添加物の乳糖に乳タンパクが混ざっている可能性)
・ β遮断薬(一部の目薬を含む)を使用中の方(エナジアの効果が弱まる可能性)
・低カリウム血症のある方
5.エナジアの薬価

エナジアの薬価は、以下となります。(2026年3月時点)
・エナジア吸入用カプセル中用量 290.3円/カプセル
・エナジア吸入用カプセル高用量 331.5円/カプセル
【患者さんの自己負担額の目安(30日分)】
3割負担の場合:中用量 約2,610円 / 高用量 約2,983円 1割負担の場合:中用量 約 870円 / 高用量 約 995円
※処方日数や窓口負担割合により異なります。詳しくは窓口にてご確認ください。
エナジアの代わりとなるジェネリック医薬品や市販薬はありません。
【参考情報】『薬価基準収載品目リスト(R8.3.18適用)』厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/topics/2025/04/tp20250401-01.html
6.よくある質問(FAQ)
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Q1. エナジアは何歳から使えますか?
A. 現在のところ、小児を対象とした臨床試験は実施されておらず、成人の喘息患者さんへの使用が基本です。お子様への使用は医師にご相談ください。
Q2. 他の吸入薬(気管支拡張薬など)と一緒に使えますか?
A. 原則として医師の指示に従ってください。特にβ遮断薬(目薬を含む)やMAO阻害剤、三環系抗うつ薬などはエナジアとの相互作用があるため、必ず使用中の薬を医師・薬剤師にお伝えください。
Q3. 妊娠中・授乳中でも使えますか?
A. 妊娠中や授乳中の方は、医師が治療の有益性と危険性を総合的に判断して処方します。自己判断で中止・継続せず、必ず医師に相談してください。
7.おわりに
エナジアは、1日1回の吸入で3種類の薬剤を使用できるため、治療の継続がしやすいという特徴があります。
特に、ICS+LABAの2剤治療で十分なコントロールが得られなかった患者さんに対して、治療の選択肢の一つとなることは大きな意味があるでしょう。
ただし、吸入方法や副作用など注意すべき点もあるため、医師の指示に従って正しく使用することが重要です。
