喘息などの治療で使われる去痰薬「ムコダイン」の特徴や副作用について解説!
ムコダインという医薬品をご存知でしょうか?
ムコダインは、空気の通り道である気道の粘膜から分泌される粘液を調整する働きと、気道粘膜を修復する働きがあり、痰が絡んでつらい症状を抑える医薬品です。
風邪以外にも、喘息や肺炎などの去痰(痰を出しやすくする)や慢性副鼻腔炎の排膿(膿を出す)などに使われます。
今回は、ムコダインの特徴や副作用、注意点などを解説します。
1.ムコダインとはどんな薬?
ムコダインは、有効成分のカルボシステインが配合されており、「喀痰修復薬(かくたんしゅうふくやく)」に分類されている医薬品です。
気道粘膜には繊毛という器官があります。繊毛は、呼吸によって肺に病原体やホコリなどが入らないように肺から喉の方向へ動いています。気道粘膜では常に、粘液が分泌されており、繊毛によって運び出された異物と一緒に運ばれた粘液が痰です。
痰は、体内に侵入した異物を体外へ排出する役割がありますが、気道に炎症が起きている状態だと痰の粘り気が強くなることがあります。痰の粘り気が強くなると痰が喉に絡んで咳き込んだり、呼吸しづらくなったりすることもあるので注意が必要です。
ムコダインは、気道粘膜を正常化するとともに、気道粘液の構成成分を正常化させる働きがあります。
ムコダインには「錠剤」以外にも「シロップ」や「ドライシロップ」が販売されています。シロップは液体タイプの薬剤です。ドライシロップは粉状の薬剤ですが、水に溶かすことでシロップとしても服用できます。錠剤を飲み込むのが難しい場合は、錠剤を粉砕してもらうか、シロップやドライシロップに変更してもらうように医師や薬剤師に相談してみてください。
ムコダインは、上気道炎(風邪など)や急性気管支炎、気管支喘息、慢性気管支炎、気管支拡張症、肺結核に伴う痰に対して使われますが、慢性副鼻腔炎に伴う膿を出すために使われることもあります。
【参考情報】『咳嗽・喀痰の診かたと薬物療法 』日本内科学会雑誌 110 巻 6 号
https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/110/6/110_1063/_pdf
【参考情報】”Mucodyne Syrup” by Electronic Medicines Compendium
https://www.medicines.org.uk/emc/product/3042/pil#gref
2.ムコダインの服用方法
・成人:通常、ムコダインを1回500mg、1日3回服用します。
・小児:通常、ムコダインを体重kgあたり1回10mg、1日3回服用します。
年齢や症状によって増減が可能です。
3.ムコダインの副作用
ムコダインの主な副作用として以下のものがあります。
・食欲不振
・腹痛
・発疹
めったにありませんが、ムコダインの重大な副作用として以下のものがあります。
・中毒性表皮壊死融解症(ちゅうどくせいひょうひえしゆうかいしょう)、皮膚粘膜眼症候群(ひふねんまくがんしょうこうぐん・別名:スティーブンス・ジョンソン症候群)
・アナフィラキシーショック
中毒性表皮壊死融解症、皮膚粘膜眼症候群は一連の疾患と考えられており、皮膚粘膜眼症候群が進行すると中毒性表皮壊死融解症へと進展すると考えられています。二つの疾患は、38℃以上の高熱、目の充血、唇のただれ、皮膚の赤みなどの症状があらわれます。中毒性表皮壊死融解症、皮膚粘膜眼症候群の発生メカニズムはよくわかっていませんが、医薬品の服用によって症状があらわれることもあるので注意が必要です。
アナフィラキシーショックには、薬剤に対する急激なアレルギー反応であり、医療機関での適切な処置が必要です。呼吸困難、浮腫、蕁麻疹などの症状があらわれたらムコダインの服用を中止して医療機関へ受診してください。
【参考情報】『中毒性表皮壊死症』厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/topics/2006/11/dl/tp1122-1a06.pdf
【参考情報】『スティーブンス・ジョンソン症候群』厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/topics/2006/11/dl/tp1122-1a02.pdf
4.使用上の注意点
ムコダインは、体質や年齢、併用薬などによって服用に注意する必要があります。
・妊婦、授乳婦
妊娠中や授乳中にお薬を服用すると、お腹の中の赤ちゃんや母乳を飲んでいる赤ちゃんの成長に影響する可能性があるので、ムコダインを服用したい場合は主治医に必ず相談してください。
・高齢者
高齢者は、健康な若い人に比べると肝臓や腎臓などの内臓機能が低下している傾向があるため、お薬の成分が体内に長く残る可能性があります。体内に薬が長く残るということは、副作用のリスクも高くなるので、必要に応じてムコダインを減量することもあります。また、お薬を飲み込む力が低下している場合は、薬局で錠剤を粉砕してもらうことも可能なので医師や薬剤師に相談してみてください。
・他にお薬を飲んでいる方
お薬を複数種類飲んでいる場合、薬によっては飲み合わせに問題が生じることもあります。ムコダインによって他のお薬の作用に影響することは報告されていませんが、複数の医療機関に受診していると薬の種類が重なってしまうこともあります。お薬手帳を活用することで、医師や薬剤師がお薬の飲み合わせを確認できるので活用してみてください。
5.ムコダインの薬価
・ムコダイン錠250mg:薬価1錠 8.5円
・ムコダイン錠500mg:薬価1錠 10.1円
・ムコダインシロップ5%:薬価1ml 6.1円
・ムコダインDS50%:薬価1g 16.4円
ムコダインには、ジェネリック医薬品が存在しています。お薬代を少しでも安くしたい場合は、ジェネリック医薬品へ変更することをおすすめします。
ジェネリック医薬品は、最初に販売された「先発医薬品」の特許期間が切れたことによって、他の製薬会社も先発医薬品と同じ有効成分の医薬品を製造販売できるようになります。先発医薬品とは異なり、研究開発に費用がかかっていないので薬価も先発医薬品に比べると安く抑えられるのがメリットです。
・カルボシステイン錠250mg「サワイ」:薬価1錠 6.7円
・カルボシステイン錠500mg「サワイ」:薬価1錠 9.3円
・カルボシステインシロップ5%「タカタ」:薬価1ml 2.6円
・カルボシステインDS50%「タカタ」:薬価1g 12.5円
上記以外のメーカーもムコダインのジェネリック医薬品を販売しています。ジェネリック医薬品への変更を希望される場合は、調剤薬局で相談してみてください。
6.おわりに
ムコダインは、カルボシステインを有効成分とした喀痰修復薬です。炎症によって荒れた気道粘膜を修復し、粘り気が多い粘液の構成成分を正常化することで痰の絡みを抑制します。
喘息になると気道に炎症があらわれ、粘液の粘り気が強くなるため、痰が絡んで呼吸困難になる可能性があります。ムコダインは、痰の粘り気を少なくして、気道の炎症も抑制する働きがあるため喘息の治療にも使われます。
ムコダインによって副作用があらわれたり、思うように効果を感じなかったりした場合は、ムコソルバンやビソルボンなどの去痰薬に変更を検討した方が良いでしょう。他にも、喘息の症状が改善しない場合は、吸入ステロイドなども併用する必要になることもあります。
喘息治療は継続して行うことが重要です。喘息でお悩みの方は、医療機関で相談してみてください。