喘息発作などの治療で使われる「サルタノールインヘラー」の特徴や副作用について解説!

サルタノールインヘラーという医薬品をご存知でしょうか?
サルタノールインヘラーは、喘息やCOPD、気管支炎の治療で使われており、気管支を拡張させる働きを持っています。主に、喘息発作時に症状を鎮めるために使われます。
当記事では、サルタノールインヘラーの特徴や副作用について解説します。ぜひ、参考にしてみてください。
1.サルタノールインヘラーとはどんな薬?
サルタノールインヘラーは有効成分として「サルブタモール硫酸塩」という成分を配合しています。
サルブタモール硫酸塩は、選択性β2受容体刺激薬に分類されており、気管支を拡張させる働きを持っています。
喘息治療において、症状をコントロールして発作が出ないようにする「長期管理薬」と喘息の発作が起きたときに使う「発作治療薬」があり、サルブタモール硫酸塩は「発作治療薬」に分類される医薬品です。
サルタノールインヘラーの「インヘラー」は吸入器のことであり、ガスの圧力によって薬剤を噴霧します。霧状に噴霧することで、喘息発作など呼吸が難しい状態でも薬剤を吸入しやすいことがメリットです。
サルブタモールの同成分の医薬品として、吸入薬以外に錠剤やシロップ剤、吸入液が存在します。シロップや錠剤は吸入が難しい場合にも使えますが、体内へ吸収されるのに時間がかかることがデメリットです。
サルタノールインヘラーは気管支喘息、小児喘息、肺気腫、急性、慢性気管支炎、肺結核のうち、発作によって気道がせまくなって起こる諸症状を改善します。
【参考情報】『成人ぜんそくの基礎知識』 環境再生保全機構
https://www.erca.go.jp/yobou/zensoku/basic/adult/knowledge/medicine.html
【参考情報】『β2刺激薬(交感神経刺激薬)』環境再生保全機構
https://www.erca.go.jp/yobou/zensoku/basic/medicine/05.html
【参考情報】”About salbutamol inhalers” by nhs.uk
https://www.nhs.uk/medicines/salbutamol-inhaler/about-salbutamol-inhalers/
2.サルタノールインヘラーの服用方法
サルタノールインヘラーは、発作時に成人では1回2吸入(200μg)、子どもでは1回1吸入(100μg)を吸入します。年齢や症状によって増減することもあります。
サルタノールインヘラーの吸入方法は以下の手順で行います。
1.サルタノールインヘラーのキャップを外してボンベの中の薬が均一になるようによく振ってください。
2.息を吐き出してから、舌を下げ、喉を広げた状態にします。
3.吸入口を唇または歯で軽くくわえて、ボンベの底を強く押して吸入します。
4.吸入口を口から離して、3〜4秒以上息を止め、その後ゆっくり静かに息を吐きます。
5.吸入口をキャップを閉めます。
【参考情報】”Salbutamol Sulphate” by electronic medicines compendium
https://www.medicines.org.uk/emc/files/pil.15454.pdf
3.サルタノールインヘラーの副作用
サルタノールの主な副作用として以下のものがあります。
・心悸亢進
・手のふるえ
・頭痛
サルタノールはアドレナリンβ2受容体を刺激することで、気管支を拡張する働きがありますが、交感神経が優位になって動悸や手の震えなどの副作用が見られます。
動悸や手の震えが見られる場合は、吸入ステロイドなどのβ2刺激薬以外の薬剤への変更を検討してみてください。
めったにありませんが、重大な副作用として以下のものがあります。
・重篤な低カリウム値低下
・ショック、アナフィラキシー
重篤な血清カリウム値低下もみられます。カリウム値が低下すると筋力の低下や不整脈を起こすことがあります。
アナフィラキシーショックは、サルタノールインヘラーに対する過剰なアレルギー反応であり、呼吸困難や、唇が腫れるなどの症状があらわれたら医療機関へご相談ください。
サルタノールインヘラーを使用して体調に変化があらわれたら受診の目安です。
【参考情報】”Salbutamol in the Management of Asthma: A Review” by National Institutes of Health
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC9696300/
4.使用上の注意点
・妊婦、授乳婦
サルタノールインヘラーの効果は気道に限定されており、副作用は内服薬に比べると少ないと言えます。しかし、妊婦や授乳がサルタノールインヘラーを使うことで、赤ちゃんに悪い影響があらわれる可能性もあります。妊娠中や授乳中の場合は、主治医に相談することが重要です。
・小児
サルタノールの使用法や体調変化が起きたときにすぐに相談するなど、注意事項をしっかり伝えることが大切です。一人で吸入が難しい時は保護者がそばにいて、見守ってください。
・高齢者
高齢になると若い人に比べて、心臓や肝臓、腎臓などの様々な臓器の機能が低下する傾向があります。薬を分解したり、排泄したりする能力も低下しているため、体内に医薬品が長く残って副作用を起こすことがあります。持病や併用している薬がある場合は注意が必要です。
・持病がある人
サルタノールインヘラーには、心臓の機能を亢進させる副作用があるため、心臓に持病がある人は、状態を悪化させる可能性があるので注意が必要です。また、サルタノールの使用によって交感神経が優位になるため、血圧が上昇することもあります。心臓の薬や血圧の薬などの他の薬を使用している場合は、医師や薬剤師に相談してください。
【参考情報】”Pregnancy, breastfeeding and fertility while using salbutamol inhalers by nhs.uk
https://www.nhs.uk/medicines/salbutamol-inhaler/pregnancy-breastfeeding-and-fertility-while-using-salbutamol-inhalers/
5.サルタノールインヘラーの薬価
サルタノールインヘラー100μg
薬価1瓶535.4円
2024年8月現在、サルタノールインヘラーのジェネリック医薬品は存在しません。
サルタノールインヘラーに配合されているサルブタモールは、シロップと吸入液、錠剤があります。
6.おわりに
サルタノールインヘラーは、定量噴霧式気管支拡張剤に分類されており、ガスを使って薬剤を噴霧する吸入薬です。
選択性β2刺激薬であるサルブタモールが有効成分であり、気管支を拡張させる働きがあります。
主に、サルタノールインヘラーは、喘息や気管支炎、肺気腫などの気道閉塞による発作を抑えるために使われます。
サルタノールは発作が起きたときに使われる医薬品であり、気管支の炎症を鎮める働きのある長期管理薬で発作が起きないようにすることも必要です。
長期管理薬には、吸入ステイロイドと長時間作用性β2刺激薬の配合剤や長時間作用性抗コリン薬があります。
代表的な長期管理薬には、レルベアやアドエア、フルティフォームなどがあります。
サルタノールインヘラーを使用しても発作が何回も起きてしまう、喘息の症状が辛いと感じたら長期管理薬と発作治療薬を併用したり、長期管理薬に切り替えたりすることも検討することも必要です。
喘息の症状に困っているなら、一人で悩まずに医療機関へ相談してみてください。