喘息などの治療で使われるステロイド薬「プレドニゾロン」の特徴や副作用について解説!

プレドニゾロンという医薬品をご存知でしょうか?
プレドニゾロンは、経口ステロイド薬に分類されている喘息治療薬です。プレドニゾロンには、抗炎症作用と免疫抑制作用があり、喘息の原因となる気管支の炎症に働きかけて喘息を治療します。
今回は、プレドニゾロンの特徴や副作用、注意点などを解説します。
1.プレドニゾロンとはどんな薬?
プレドニゾロンは、合成副腎皮質ホルモンの一つであり、経口ステロイドという医薬品に分類されます。
ステロイドは、副腎という腎臓の上部で作られる副腎皮質ホルモンの一つであり、体内にもともと存在する体内物質です。
ステロイドには、過剰に働く免疫を抑制したり、体内の炎症を抑えたりすることでバランスを保つ働きがあり、医薬品としても利用されています。
喘息は、アレルギーなど何らかの理由によって気道に炎症が起き、発作的に気道が狭くなってしまう疾患です。
炎症によって発作的に気道が狭くなると呼吸困難などの症状があらわれるので、気道の炎症を抑えることが喘息治療では重要です。
プレドニゾロンは、炎症を抑える働きと炎症の原因となるアレルギーを抑える免疫抑制作用によって気道の炎症を抑え、喘息を治療します。
プレドニゾロンは内服薬であるため、吸入ステロイドに比べて全身性の副作用があらわれやすいデメリットがありますが、吸入ステロイドでは十分に効果が見込めない重症の喘息の場合には経口ステロイドも選択肢の1つになります。
プレドニゾロンには、「錠剤」以外にも「散剤」があります。高齢者や子どもなど錠剤を飲み込むのが難しい際は散剤を選ぶことも可能です。
喘息治療薬としてのプレドニゾロンは、気管支喘息、喘息性気管支炎(小児喘息性気管支炎など)で使われます。その他にも、自己免疫疾患やアレルギー性疾患、疾患に伴う炎症など多くの疾患に適応を持っています。
【参考情報】『気管支喘息』一般社団法人日本呼吸器学会
https://www.jrs.or.jp/citizen/disease/c/c-01.html
【参考情報】『経口ステロイド薬』独立行政法人環境再生保全機構
https://www.erca.go.jp/yobou/zensoku/basic/glossary/kw28.html
【参考文献】”Prednisolone (oral route)” by Mayo Clinic
https://www.mayoclinic.org/drugs-supplements/prednisolone-oral-route/description/drg-20075189
【参考文献】”Prednisolone” by MedlinePlus
https://medlineplus.gov/druginfo/meds/a615042.html
2.プレドニゾロンの服用方法
通常、大人にはプレドニゾロンとして1日5〜60mgを1日1〜4回に分けて服用します。
年齢や症状によって増減します。
3.プレドニゾロンの副作用
プレドニゾロンの主な副作用として以下のものがあります。
・発疹
・クッシング症候群様症状
・悪心
プレドニゾロンの副作用として、クッシング症候群様症状というものがあります。
クッシング症候群は副腎から分泌されるコルチゾールというホルモンが、何らかの理由によって過剰になった状態であり、顔が満月のように腫れる満月様顔貌(ムーンフェイス)や高血圧、血糖値上昇などのさまざまな症状が見られます。
プレドニゾロンの服用量が多いと体内のステロイドホルモンが過剰になるクッシング症候群と同じような状態になるので、プレドニゾロンの服用量は厳格な調節が必要です。
めったにありませんが、プレドニゾロンの重篤な副作用として以下のものがあります。
・感染症の誘発、感染症の増悪
・緑内障、白内障
プレドニゾロンなどのステロイドには、免疫を抑制する働きがあります。
そのため、病原体に対する免疫力も低下するため、感染症にかかりやすくなったり、感染症が悪化したりすることがあります。また、緑内障や白内障が重大な副作用として報告されているので、長期的に経口ステロイドを服用する場合は眼科も受診した方が良いでしょう。
【参考情報】『クッシング症候群』一般社団法人日本内分泌学会
https://www.j-endo.jp/modules/patient/index.php?content_id=31
【参考文献】”Prednisolone” by Healthdirect
https://www.healthdirect.gov.au/prednisolone
4.使用上の注意点
プレドニゾロンは、喘息治療以外にもさまざまな疾患に適応を持っており、多くの医療現場で活躍する医薬品の一つです。しかし、プレドニゾロンには副作用も存在し、服用する上で注意が必要なポイントもあります。
・妊婦、授乳中の方
妊娠している方や授乳している方は、プレドニゾロンの服用に注意が必要です。服用量によってはお腹の赤ちゃんにも悪い影響が起こる可能性もあり、母乳にも移行することがあります。そのため、妊婦や授乳中の方が喘息治療をする場合は、喘息治療と産婦人科の主治医に相談することが大切です。
・小児
子どもに対する長期間の経口ステロイドの服用によって、発育抑制が報告されています。そのため、症状と治療効果を比べて服用量と治療期間を検討する必要があります。
・高齢者
高齢になると病原体の抵抗力が低下したり、生活習慣病などのさまざまな疾患を発症しやすくなったりします。プレドニゾロンの長期間の服用によって糖尿病や骨粗鬆症、高血圧、白内障、緑内障などの副作用があらわれる可能性もあるので、プレドニゾロンを服用する場合は、定期的な受診をして医師に経過を見てもらう必要があります。
・デスモプレシンによる治療を受けている方
デスモプレシンは、男性における夜間頻尿治療で使われる医薬品です。デスモプレシンを使用している方は、プレドニゾロンを併用すると急激な低ナトリウム血症を起こす可能性があるので、デスモプレシンとプレドニゾロンは一緒に服用できません。
【参考文献】”Prednisolone Tablets” by Cleveland Clinic
https://my.clevelandclinic.org/health/drugs/18881-prednisolone-tablets
5.プレドニゾロンの薬価
・プレドニゾロン錠「タケダ」5mg
薬価1錠9.8円
・プレドニゾロン散「タケダ」1%
薬価1g6.5円
・プレドニゾロン錠1mg「旭化成」
薬価1錠8.3円
・プレドニゾロン錠2.5mg「NP」
薬価1錠8.3円
プレドニゾロンは先発医薬品、ジェネリック医薬品という分類がありません。
6.おわりに
プレドニゾロンは経口ステロイドに分類されており、抗炎症作用と免疫抑制作用があります。
喘息はアレルギーなどが原因で気道に炎症が起こることで発症するため、経口ステロイドによる抗炎症作用と免疫抑制作用で治療が可能です。吸入ステロイドとは異なり、全身性の副作用がデメリットとしてありますが、吸入ステロイドなどの治療で効果があらわれなかったときの治療の選択肢として経口ステロイドが選ばれることもあります。
経口ステロイド治療は様々な疾患で用いられますが、気管支喘息でも発作時の治療として使用されます。
確認いただきたいのは喘息治療のおける「吸入」ステロイドと「経口」ステロイドの違いです。
「吸入」ステロイドは全身作用がほとんどなく先に述べたような全身性の副作用がほとんどありません。その長点を利用して長期コントローラー=発作予防薬として用いられます。
「経口」ステロイドは使用時の抗炎症作用も高いため発作時を脱却するために投与されますが長期に使用すると全身性の副作用が問題となるのであくまでも発作状態が改善するまでの短期間使用が前提となります。
同薬剤の投与経路が違うだけですが混乱しないようにしていただければと思います。
喘息治療は気道の炎症を抑えて、発作が起きないように症状をコントロールするために継続して治療薬を使っていくことが大切です。喘息でお悩みの方は医療機関で相談してください。