インフルエンザの薬はいつ飲む?市販薬との違いと受診のタイミングを解説
関節痛や高熱が出てくると、「インフルエンザかも」と思っていても、 受診すべきか市販薬で様子を見るか迷うことはありませんか?
実は、インフルエンザ治療薬には「効果が出やすい時間」があり、飲み始めるタイミングが重要です。
市販薬の使い方によっては、重症化のサインを見逃してしまうこともあるのです。
この記事では、代表的な治療薬の特徴や、医師が薬を選ぶ基準、市販薬との違い、服用タイミングや注意点などを分かりやすくまとめて解説します。
1. インフルエンザの特徴と受診のタイミング

まずは、「自分の症状はインフルエンザなのか」「どのタイミングで受診すべきなのか」を整理しておきましょう。
ここを押さえておくと、薬の使い方についても理解がしやすくなります。
1-1. インフルエンザの典型的な症状とかぜとの違い
インフルエンザは、いわゆる「かぜ」と比べて、突然全身の症状が強く出ることが特徴です。
代表的な症状として、次のようなものがあります。
・38〜40度の急な高熱
・強い寒気や震え
・関節痛・筋肉痛、体の節々の痛み
・立っているのもつらいほどの強いだるさ
一般的なかぜでは、のどの痛み・鼻水・くしゃみが中心で、発熱しても37〜38度台で収まることが多く、全身症状は比較的軽めです。
のどの痛みや咳はインフルエンザでも見られますが、「急な高熱」と「全身の強い倦怠感」が同時に出た場合は、インフルエンザを疑ってもいい状況です。
さらに、周囲で流行している場合や、家族・職場で診断された人がいる場合はインフルエンザにかかってしまっている可能性が高まります。
【参考情報】『Q1.インフルエンザと普通の風邪はどう違うのですか?』厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/infulenza/QA2024.html
1-2. すぐ受診した方がいい危険なサイン
市販薬で様子を見るかどうか迷う時は、以下のような「危険なサインがないか」を確認することが大切です。
当てはまる場合は、できるだけ早く 医療機関へ相談・受診することが推奨されます。
・39度以上の高熱が続き、水分がほとんど飲めない
・息苦しい、胸が痛い、少しの会話でも息切れする
・ぼんやりして反応が鈍い、ふらつく、様子がいつもと違う
・けいれん、突然の強い頭痛
・妊娠中・高齢者・心肺疾患・糖尿病・腎疾患・免疫疾患などの持病があり、症状が強い
夜間や休日で受診先に迷う場合は、各自治体の救急電話相談窓口に連絡し、受診の必要性を相談する方法もあります。
【参考情報】『救急安心センター事業(#7119)をもっと詳しく!』総務省消防庁
https://www.fdma.go.jp/mission/enrichment/appropriate/appropriate007.html
1-3. 流行状況と家庭内のリスクも要チェック
症状が同じでも、周囲の状況によっては受診を急いだ方がいいケースがあります。
・家族に乳幼児、高齢者、妊娠中の方、持病のある方がいる
・保育園・学校・介護施設・職場でインフルエンザが流行している
こうした場合は、本人だけでなく周囲への感染リスクも考える必要があります。
熱が出たまま出勤や登校を続けることは控えた方がよいとされています。
流行を防ぐためにも、「感染を予防する」「他の人にうつさない」ための行動を心がけましょう。
2. インフルエンザ治療薬の種類

医療機関で処方されるインフルエンザ治療薬にはいくつかの種類があり、効果や使い方が異なります。
どの薬を処方するかは年齢・持病・生活背景などを踏まえて総合的に判断されます。
2-1. 代表的な抗インフルエンザ薬の種類
現在、日本でよく使われている抗インフルエンザ薬には、主に次のようなものがあります。
多くは「ノイラミニダーゼ阻害薬」と呼ばれ、ウイルスが細胞から外に出るのを妨げて増殖を抑える作用があります。
特徴は次のとおりです。
・オセルタミビル(タミフル)
飲み薬で、1日2回・5日間の服用が基本です。年齢を問わず使いやすいのが利点です。
・ザナミビル(リレンザ)
専用の吸入器を使って吸入する薬です。胃腸への負担が少ない一方、正しい吸入が必要です。
・ラニナミビル(イナビル)
1回の吸入で治療が完結します。服用回数が少なく便利ですが、初回の吸入を確実に行うことが大切です。
・ペラミビル(ラピアクタ)
点滴タイプの薬で、飲み薬や吸入薬が使いにくい人、症状が強い場合などに選ばれます。
【参考情報】『抗インフルエンザウイルス薬の種類と特徴』厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001519449.pdf
【参考情報】”Oseltamivirl” by National Center for Biotechnology Information
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK539909/
2-2. 新しいタイプの薬の特徴
2018年にインフルエンザ治療薬として国内承認された比較的新しいタイプの薬に、バロキサビル マルボキシル(ゾフルーザ)があります。
ウイルスが増えるために必要なタンパク質の働きを抑える薬で、1回飲むだけで治療が完了するという大きな特徴があります。
飲み忘れや吸入操作ミスなどのリスクを減らせる点が期待されている薬です。
【参考情報】『インフルエンザ委員会(statement)「キャップ依存性エンドヌクレアーゼ阻害薬について」』日本感染症学会
https://www.kansensho.or.jp/modules/guidelines/index.php?content_id=14
【参考情報】”Influenza Antiviral Drug Baloxavir Marboxil” by U.S. Centers for Disease Control and Prevention
https://www.cdc.gov/flu/treatment/baloxavir-marboxil.html
2-3. 妊娠中や高齢者・基礎疾患の有無で変わる選び方
妊娠中の方や、高齢者、心臓・肺の病気、糖尿病・腎臓病などの持病がある方は、インフルエンザが重症化しやすいとされています。
そのため、発症からの時間に関わらず、早期の抗インフルエンザ薬の使用が推奨されることがあります。
受診時には以下を伝えると、適切な薬を選びやすくなります。
・妊娠中・授乳中かどうか
・持病の有無
・日常的に服用している薬
・過去の薬での重い副作用歴
【参考情報】『妊娠中の人や授乳中の人へ』厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou04/pdf/ninpu_1217_2.pdf
2-4. 解熱剤との併用はどう考える?
抗インフルエンザ薬とあわせて解熱剤を使用することはよくあるケースです。
多くの世代で比較的安全に使われる成分はアセトアミノフェンですが、持病や服用中の薬によっては注意が必要です。
市販薬を使用する場合も、成分表示を必ず確認し、不安な場合は医師や薬剤師に相談することをおすすめします。
3. 市販薬との違いと注意点

ここからは「市販薬で様子をみていいのか」を判断するために、病院で処方される抗インフルエンザ薬と、市販の解熱剤や総合感冒薬の違いを整理します。
3-1. 抗インフルエンザ薬と市販薬の役割の違い
抗インフルエンザ薬は、ウイルスの増殖を抑えることで病気の勢いを弱める薬です。
発症から48時間以内に使うと、発熱期間が1〜2日短くなり、ウイルスを周囲へばらまく量も減るとされています。
一方、市販薬の多くは「症状を和らげる薬」です。
解熱剤は熱や痛みを抑えますが、ウイルスそのものを減らすわけではありません。
総合感冒薬は、解熱成分、咳止め、鼻水を抑える成分などが一緒に入っている薬です。
市販薬はつらさを軽くするうえで役立ちますが、「飲んだから安心」と考えて自己判断で様子を見続けると、治療開始が遅れるおそれがあります。
3-2. 解熱剤を使うときの注意点
解熱剤は、体温を完全に平熱に戻すことよりも、「つらさを和らげて水分や食事をとりやすくすること」を目的に使うことが大切です。
注意していただきたいポイントは、次の通りです。
・複数の解熱剤や総合感冒薬を同時に飲まないようにしましょう。
別の薬だと思っていても、同じ成分が重なって入っている場合があり、知らないうちに飲み過ぎになるおそれがあります。
・ラベルや説明書に書かれた用量・用法・間隔を守ること。
早く効かせたいからといって量を増やしたり、間隔を詰めたりしないようにしましょう。
・小児や10代では、インフルエンザに使うべきでない成分(アスピリンなどサリチル酸系、ジクロフェナクナトリウム、メフェナム酸など)があるため、自己判断での使用は避け、医師や薬剤師に確認すると安心です。
【参考情報】『第3章 主な医薬品とその作用』厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/bunya/iyakuhin/ippanyou/pdf/shikenc.pdf?
3-3. 総合感冒薬で様子を見ていい場合と注意が必要な場合
総合感冒薬は、のどの痛みや鼻水、咳などさまざまな症状にまとめて対応できる便利な薬ですが、次のような点に注意が必要です。
・眠気を起こす成分が入っていることがあり、車の運転や高所での作業前には服用をおすすめしません。
・すでに解熱剤を別に飲んでいると、成分が重複してしまうことがあります。
・飲み続けている間は症状が一時的に抑えられるため、肺炎などの重症化のサインに気づくのが遅れる場合があります。
インフルエンザが疑われるときは、「とりあえず総合感冒薬で数日様子をみる」よりも、症状の強さや発症からの時間を考えて、適切なタイミングで受診を検討することが大切です。
4. 発症後何時間以内が目安?服用タイミングで変わる効果

ここでは、多くの方が気になる「インフルエンザの薬は発症から何時間以内に飲むべきか」「時間が過ぎたらもう意味がないのか」という疑問についてお答えします。
4-1. なぜ「発症後48時間以内」が目安になるのか
インフルエンザウイルスは、発症してから数日の間に急速に増えるといわれています。
この「増え始めの時期」に薬を使うことで、ウイルスの勢いを早めに抑えられるため、症状の期間が短くなりやすいと考えられています。
一方、症状が出てから2日(48時間)以上たってから薬を開始した場合は、発熱期間を大きく短縮する効果はあまり期待できないとされています。
【参考情報】”Influenza Antiviral Medications: Summary for Clinicians” by U.S. Centers for Disease Control and Prevention
https://www.cdc.gov/flu/hcp/antivirals/summary-clinicians.html
4-2. 発症のカウントの仕方とよくある勘違い
「発症から48時間」と聞くと、いつから数えたらよいのか迷うことがあります。
一般的には、次のようなタイミングを目安に考えます。
・急な悪寒や震えとともに熱が上がり始めた時刻
・いつもと明らかに違う強いだるさや関節の痛みが出た時刻
市販の解熱剤で一時的に熱が下がっても、「熱が上がり始めた時刻」自体は変わりません。
発症の時刻は、最初にインフルエンザらしい症状が出てきた時間として考えます。
受診の際に、「昨日の夕方18時ごろに急に寒気がして38度台の熱が出た」など、なるべく具体的に医師に伝えると、薬の必要性を判断しやすくなります。
4-3. タイミング別の効果のイメージ
抗インフルエンザ薬の効果は、おおよそ次のようにイメージできます。
・発症から0〜24時間以内 最も早い段階での治療になります。
検査でインフルエンザがまだ陽性に出にくい場合もありますが、症状の経過によっては早期の投与が検討されます。
・発症から24〜48時間以内
発熱期間の短縮効果が期待しやすい時間帯とされています。重症化リスクが高い方では、特にこの時間内での受診が重要です。
・発症から48時間以降
健康な成人では、抗インフルエンザ薬による発熱期間の短縮効果は小さくなるとされています。
ただし、乳幼児や高齢者、基礎疾患がある方で症状が重い場合には、48時間を過ぎていても投与を検討することがあります。
時間だけで「もう意味がない」と決めつけず、持病や年齢、症状の重さも含めて医師と相談することが大切です。
【参考情報】”Impact of Late Oseltamivir Treatment on Influenza Symptoms in the Outpatient Setting” by National Center for Biotechnology Information
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC4525010/
5. 飲み忘れや途中でやめた時に起こりやすいトラブル

ここでは、抗インフルエンザ薬や市販薬を「飲み忘れた」「自己判断で途中からやめた」場合にどのような問題が起こりやすいかをお伝えします。
小さなことのように思えても、治り方や周囲への感染に影響することがあります。
5-1. 抗インフルエンザ薬を飲み忘れた場合
タミフルなどの抗インフルエンザ薬は、決められた間隔で飲むことで血中濃度が安定し、ウイルス増殖を抑えやすくなります。
飲み忘れが続くと濃度が不安定になり、十分な効果が得られない可能性があるので注意が必要です。
飲み忘れに気づいたときは、次の点に注意してください。
・次の服用時間が近い場合は、2回分まとめて飲まない。1回分のみ服用する。
・判断に迷う場合は、自己調整せず医療機関に相談する。
5-2. 自己判断で途中でやめた場合のリスク
熱が下がると薬を中断したくなりますが、体内にウイルスが残った状態でやめてしまうと、症状がぶり返したり、周囲に感染させる期間が長くなったりする可能性があります。
完全には治りきっていない状態で仕事や学校に戻ると、職場や教室での集団感染につながるおそれもあります。
また、一部の薬では中途半端な使用が耐性ウイルスの出現につながる可能性も指摘されており、適切な用量・期間を守ることの重要性が強調されています。
【参考情報】”Influenza Antiviral Drug Resistance” by U.S. Centers for Disease Control and Prevention
https://www.cdc.gov/flu/treatment/antiviralresistance.html
5-3. 解熱剤・総合感冒薬の間違った飲み方
解熱剤や総合感冒薬についても、「飲み忘れたから次に二回分飲む」「なかなか治らないので複数の市販薬を重ねて飲む」といった自己判断はトラブルの原因になります。
・飲み忘れたからといって、次の服用で前回の分もまとめて飲むと、肝臓や胃腸への負担が増え、副作用のリスクが高くなります。
・複数の市販薬を併用すると、同じ成分を二重に飲んでしまい、知らないうちに過剰摂取になる場合があります。
・長期間だらだら飲み続けると、「実は肺炎が起きていた」「別の病気が隠れていた」といった重要なサインを見逃す原因になります。
市販薬で数日様子を見てもよいのは、「症状が軽く、日常生活は何とか送れる」「危険なサインがない」「徐々に良くなってきている」という条件がそろっている場合です。
不安なときや症状が長引くときは、早めに医療機関に相談する方が安心につながります。
6. おわりに
インフルエンザの治療薬は、どの薬を使うかと同じくらい、いつ飲み始めるかが大切です。
市販薬は症状を和らげるうえで役立ちますが、それだけに頼ってしまうと、適切な受診のタイミングを逃してしまうおそれがあります。
「市販薬で様子を見るべきか」「受診のタイミングが分からない」と迷うときは、無理に自己判断せず、かかりつけ医や地域の医療機関へ相談することをおすすめします。
この記事が、体調がつらい時でも落ち着いて判断するための参考になれば幸いです。
