長引く咳の原因は?呼吸器内科で行う検査を解説
咳が長引くと、「風邪は治ったのに」「もしかして喘息?」と不安になる方もいるでしょう。
呼吸器内科では、咳が続いている期間や出やすい場面、痰・発熱・息苦しさなどを確認し、必要に応じて検査を組み合わせながら原因を調べます。
この記事では、呼吸器内科で咳をどのように調べるのか、問診や検査の流れに沿って解説します。
1. 呼吸器内科で咳の原因を確認する流れ

咳は、気道に入った異物や痰を外に出すための体の反応です。
ただし、長引く咳では、喘息や咳喘息、肺炎、COPDなど複数の原因を考える必要があります。
症状だけで原因を見分けるのは簡単ではないため、問診、診察、検査結果を合わせて整理していきます。
呼吸器内科で最初に行うのは、咳の続いている期間や経過を確認する問診です。
診察で呼吸の状態を見たうえで、必要に応じて検査を組み合わせます。
検査には、肺の状態を画像で確認するもの、呼吸の機能を調べるもの、気道の炎症や血液中の炎症反応を見るものなどがあります。どの検査を行うかは、問診や診察で得られた情報をもとに判断します。
【参考情報】『Q1. からせき(たんのないせき)が3週間以上続きます。』日本呼吸器学会
https://www.jrs.or.jp/citizen/faq/q01.html
咳の原因は、問診と診察だけである程度見当をつけられる場合もありますが、長引く咳では判断が難しいケースもあります。そのため、咳の背景にある病気や体の状態を、複数の情報から整理することが大切です。
ひとつの検査だけで原因を決めつけないことも大切です。問診、診察、検査結果を総合的に見ながら、治療や経過観察の方針を考えていきます。
2. 問診で確認すること

問診は、咳の原因を考えるうえで重要な手がかりとなります。咳が始まった時期、出やすい場面、一緒に出ている症状、生活環境などを整理することで、必要な検査を選びやすくなります。
2-1. 咳の経過と出やすい場面
問診では、咳がいつ始まったのかを確認します。急に強い咳が出てきたのか、以前から同じような咳を繰り返しているのかなど、咳の経過は原因を考えるうえで大切な情報です。
風邪のような症状の後に咳だけが続く場合は、その後の経過を確認します。
毎年同じ季節に咳が悪化する場合は、花粉、ダニ、カビなどのアレルギーとの関係も考えられるでしょう。
咳が出やすい時間帯や場面も大事な情報です。夜間や早朝に咳が強くなる場合は、喘息や咳喘息との関係を考えるきっかけになります。会話中や運動後、冷たい空気を吸ったときに咳が出る場合は、気道が敏感になっているかもしれません。
食後や横になったときに咳が出やすい場合は、胃酸の逆流との関係を考えます。鼻水や鼻づまり、のどに鼻水が流れる感じがある場合は、鼻や副鼻腔の症状が咳に影響している可能性もあります。

2-2. 検査につながる症状と生活背景
問診では、咳と一緒に出ている症状も大切な確認項目です。
痰や発熱、胸の痛み、息苦しさなどがある場合は、気道や肺で炎症が起きていないかを考えます。
特に、発熱を伴う咳や痰が増えてきた咳では、肺炎や気管支炎などを確認するために、胸部レントゲン検査や血液検査を検討することがあります。
ただし、熱がないから肺炎ではない、痰がないから呼吸器の病気ではない、と単純に判断できるわけではありません。
咳の続き方、痰の状態、息苦しさ、胸の痛み、全身のだるさなどを合わせて見たうえで、胸部レントゲン検査や血液検査が必要かを判断します。
生活背景も必要な情報です。喫煙歴や受動喫煙の有無は、COPDや慢性気管支炎などを考える材料になります。咳や痰が続く場合は、禁煙歴や周囲の喫煙環境も重要です。
服用している薬の中には、咳と関係するものがあります。高血圧の薬の一部では、乾いた咳が続くことがあります。
職場や家庭でほこり、カビ、ペット、香料などに触れる機会が多い場合や、アレルギー性鼻炎、花粉症、過去の喘息歴がある場合は、気道への刺激やアレルギーとの関係も確認します。
【参考情報】『室内環境の整備について』日本アレルギー学会
https://allergyportal.jp/knowledge/indoor-environment/
3. 呼吸器内科で行うことがある検査

咳の検査は、すべての人に同じ内容で行うわけではありません。症状や年齢、持病、診察所見などをもとに、必要な検査を組み合わせて原因を調べます。
また、ひとつの検査だけで咳の原因を決めるのではなく、問診や診察、複数の検査結果を合わせて判断します。
3-1. 胸部レントゲン検査
胸部レントゲン検査は、肺全体の状態を大まかに確認する検査です。肺炎による影、胸水、肺の一部がしぼむ変化などがないかを調べる目的で行われることがあります。
咳が長引いている場合や、発熱、胸痛、息苦しさを伴う場合に検討される検査の一つです。
ただし、胸部レントゲン検査ですべての病気がわかるわけではありません。この検査の主な役割は、画像で確認できる異常がないかを調べることです。そのため、異常が見つからなくても、咳喘息や喘息、風邪のあとに残る咳などの可能性がなくなるわけではありません。
肺の場所や影の大きさによっては見えにくいこともあり、必要に応じて胸部CT検査などを検討します。
3-2. 呼吸機能検査

呼吸機能検査は、肺活量や息を吐き出す力、空気の通りやすさなどを調べる検査です。スパイロメトリーとも呼ばれ、喘息やCOPDなど、空気の通り道が狭くなる病気を確認するときに行われることがあります。
検査では、機械に向かって大きく息を吸い、勢いよく吐き出します。咳が強いときや体調が悪いときはうまく実施できない場合もありますが、症状だけではわかりにくい呼吸の状態を数値で確認できる点が特徴です。
本人が強い息苦しさを感じていなくても、息を吐き出しにくくなっている場合があります。咳に加えて息切れがある、運動後に咳が出る、喫煙歴がある場合などは、この検査で呼吸の状態を調べます。
息を吐き出しにくくなっていないかを確認することで、COPDなどを考える判断材料になります。検査時の体調や咳の強さによって、十分に息を吐き切れないこともあるため、結果の見方には注意が必要です。
3-3. 呼気NO検査

呼気NO検査は、吐く息に含まれる一酸化窒素の量を測る検査です。気道にアレルギー性の炎症があると、呼気NOの値が高くなることがあります。そのため、喘息や咳喘息が疑われる場合に、診断の参考となる検査です。
呼気NO検査では、気道に起きている炎症の状態を数値で確認できます。
喘息や咳喘息では、胸部レントゲン検査で異常が見つからないことがあります。そのため、長引く咳の原因を考えるときは、肺の画像だけでなく、気道に炎症が起きていないかを見る視点も大切です。
咳が強くて息を吐き続けることが難しい場合は、検査がうまくできないこともあります。
【参考情報】『成人ぜん息の基礎知識 検査と診断』環境再生保全機構
https://www.erca.go.jp/yobou/zensoku/basic/adult/knowledge/test.html
3-4. 血液検査・感染症関連検査
血液検査では、炎症の程度やアレルギーの傾向を確認することがあります。肺炎や気管支炎などの感染症が疑われる場合は、白血球数やCRPなどを参考にします。喘息や咳喘息が疑われる場合には、好酸球やアレルギーに関係する項目を調べることもあります。
血液検査は、咳の原因を決めるためだけの検査ではありません。発熱や痰、だるさなどがある場合に、感染症や炎症の程度を確認する補助的な検査です。肺炎や気管支炎などを考える際は、胸部レントゲン検査や診察所見と合わせて見ることが大切です。
症状や流行状況によっては、インフルエンザ、新型コロナウイルス、マイコプラズマ肺炎などの検査が必要になる場合もあります。
【参考情報】『Complete Blood Count(CBC)』MedlinePlus
https://medlineplus.gov/lab-tests/complete-blood-count-cbc/
4. 検査で確認する主な病気

前述のとおり、咳の原因は一つとは限りません。
呼吸器内科では、問診や検査結果をもとに、症状や経過を合わせて病気を整理します。
4-1.喘息・咳喘息
喘息では、咳に加えて息苦しさや喘鳴がみられることがあります。
咳喘息は、喘鳴が目立たなくても、咳が長く続くことがある病気です。夜間や早朝、会話中、運動後、冷たい空気を吸ったときなどに咳が出やすい場合があります。
症状が出やすい時間帯やきっかけを確認することも、喘息や咳喘息を考える手がかりになります。
4-2.肺炎・気管支炎などの感染症
肺炎では、咳や痰、発熱、息切れ、胸の痛みなどがみられることがあります。
胸部レントゲン検査では肺に炎症の影がないかを確認し、血液検査では炎症の程度を調べます。
風邪のような症状の後に咳だけが残る場合は、明らかな肺炎がないかを確認しながら経過を見ることが大切です。
気管支炎では、気管支の炎症によって咳や痰が続くこともあります。
4-3.COPDなど喫煙と関係する病気
喫煙歴がある方で咳や痰、階段や坂道での息切れが続く場合は、COPDや慢性気管支炎などを確認します。
症状がゆっくり進むこともあるため、いつから咳や痰が続いているか、息切れが悪化していないかも大切な情報です。
受動喫煙や職場での粉じんなども、咳の背景を考える手がかりになります。
長く続く咳を年齢や喫煙のせいだけと決めつけず、症状の経過を整理することが必要です。
4-4.結核・肺がん・間質性肺炎など注意が必要な病気
長引く咳では、頻度は高くなくても確認が必要な病気があります。
結核では、咳や痰、発熱、体重減少、だるさなどがみられることがあります。
肺がんや間質性肺炎でも咳や息切れが続くことがあり、必要に応じて胸部CT検査などを検討します。
咳が長引く場合や全身症状を伴う場合は、胸部レントゲン検査の結果だけでなく、症状の経過や全身状態も含めて判断することが大切です。
【参考情報】『Signs and Symptoms of Tuberculosis』CDC
https://www.cdc.gov/tb/signs-symptoms/index.html
5. 検査後の説明と治療方針

検査を行った後は、結果をもとに咳の原因を整理し、治療や経過観察の方針を考えます。
5-1. 原因に合わせた治療と経過確認
咳の治療では、原因に合わせた対応が大切です。たとえば、次のように原因や状態に応じて方針を考えます。
・喘息や咳喘息が疑われる場合:気道の炎症や気管支の狭さに対する治療
・肺炎や細菌感染が疑われる場合:必要に応じて抗菌薬などの使用
・明らかな肺炎がなく、風邪のあとに咳だけが残っている場合:経過を見ながら対応
・咳が強く生活に支障がある場合:症状を和らげる治療の検討
咳の原因は、初回の診察や検査だけでは判断が難しいことがあります。治療を始めた後に、咳の回数、夜間の症状、息苦しさ、痰の量などがどう変化したかを確認しながら、治療内容を見直すことが大切です。
喘息や咳喘息では、症状が落ち着いても気道の炎症が残っていることがあります。そのため、自己判断で治療を中断せず、検査結果や症状の変化に合わせた調整が必要です。
5-2. 呼吸器以外の症状や生活環境への対応
咳の原因が肺や気管支だけではない場合もあります。
鼻水がのどに流れる後鼻漏、アレルギー性鼻炎、副鼻腔炎、胃酸の逆流などが咳に関係することがあります。問診で鼻症状や胸やけが目立つ場合は、耳鼻咽喉科や消化器内科など、ほかの診療科と連携して原因を確認します。
検査や治療とあわせて、生活環境の見直しが役立つ場合もあります。乾燥、冷気、たばこの煙、ほこりなどは、気道を刺激して咳を悪化させる要因です。自宅での工夫は、原因に合わせた対応を支えるものとして考えるとよいでしょう。
6.おわりに
呼吸器内科では、咳がいつから続いているのか、どのような場面で出やすいのかを確認しながら、必要に応じて検査を組み合わせて原因を調べます。
咳の背景には、喘息や咳喘息、肺炎、COPDなど、さまざまな病気が関係することがあります。
大切なのは、咳だけで原因を決めつけないことです。
2週間以上咳が続く場合や、息苦しさ、胸の痛み、発熱、痰などを伴う場合は、自己判断で様子を見すぎず、医療機関で相談しましょう。
