午前 月~木土祝 9:00~12:00
午後 月~土祝   15:30~18:30
土祝の午後 14:30~17:30
ご予約・ご相談はこちらから

咳が止まらないのはなぜ?アレルギーが原因かもしれません

咳はウイルスなどの異物を取り除こうとする生体防御反応で、身近な症状の一つです。

咳の原因としては様々な疾患が考えられますが、風邪や新型コロナウイルス感染症、肺炎などを疑う方が多いのではないでしょうか。

発熱を伴い、比較的短期間で咳がおさまる場合には感染症の可能性が高いですが、長期間咳が続く場合はアレルギー疾患が原因かもしれません。

1.咳の持続期間による分類


咳は、持続期間によって「急性咳嗽」「遷延性咳嗽(せんえんせいがいそう)」「慢性咳嗽」の3つに分けられます。

急性咳嗽とは3週間未満で落ち着く咳で、ほとんどが風邪などの呼吸器感染症によるものです。

遷延性咳嗽とは3週間以上8週間未満、慢性咳嗽とは8週間以上続く咳を指します。

原因としては「感染症後咳嗽」として咳だけが残っている場合や、喘息や咳喘息、アトピー咳嗽などのアレルギー疾患、後鼻漏(こうびろう)、胃食道逆流症などが挙げられます。

このように、咳症状が長引くにつれて感染症の可能性は低くなります。

3週間まで待たずに、2週間以上咳が続く場合はアレルギー疾患の可能性も疑い、早めに受診することをおすすめします。

◆「風邪」の基本情報>>

◆「喘息」とは>>

◆「咳喘息」について>>

◆「アトピー咳嗽」の基本情報>>

【参考情報】”Cough” by MedlinePlus
https://medlineplus.gov/cough.html#:~:text=Acute%20coughs%20begin%20suddenly%20and,Chronic%20bronchitis

【参考情報】”Chronic cough” by Mayo Clinic
https://www.mayoclinic.org/diseases-conditions/chronic-cough/symptoms-causes/syc-20351575

2.そもそもアレルギーとは?


では、アレルギーが原因の場合はどのような仕組みで咳が出るのでしょうか。

人間には、細菌やウイルスなどの侵入者を見つけて排除する「免疫反応」という機能が備わっています。

免疫は身を守るために重要な働きですが、花粉やホコリ、ハウスダストなど通常であれば無害なものにも過剰に反応してしまうことで、アレルギー反応が起こります。

【参考情報】日本アレルギー学会『アレルギーについて』
https://www.jsaweb.jp/modules/citizen_qa/index.php?content_id=1

とはいえ、誰もがアレルギー反応を起こすわけではありません。

「アレルギー反応が起こりやすい体質」というものがあり、アレルゲン(アレルギーの原因となる物質)にさらされることでアレルギー反応が起こることがあります。

〈アレルギー反応で咳が出る仕組み〉
①アレルゲンが体内に入り異物として認識されると、免疫システムが働きアレルゲンに対応するIgE抗体が作られます。

②作られたIgE抗体は、血液を通じて皮膚や粘膜に存在するマスト細胞と結合します。
これにより、マスト細胞はアレルゲンに反応しやすい状態になります。これを「感作(かんさ)」と言い、アレルギー体質の人は感作が起こりやすい傾向にあります。

③感作が起こった後に再び同じアレルゲンが体内に侵入(再暴露)し、IgE抗体がある一定量まで増えると、マスト細胞からヒスタミンやロイコトリエンなどの化学伝達物質が放出されます。

④これらの物質が気道の粘膜を刺激し炎症が起こります。また、気道の収縮や粘液(痰)の分泌量増加なども咳反射の原因となります。

【参考情報】厚生労働省『アレルギー総論』
https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/kenkou/ryumachi/dl/jouhou01-17.pdf

アレルギー疾患は単独で起こるとは限らず、他のアレルギー疾患にも罹りやすい傾向があります。

小児の場合、アトピー性皮膚炎、食物アレルギー、喘息、アレルギー性鼻炎のように段階的に進行する「アレルギーマーチ」が起こりやすいとされています。

最近の研究では、アレルギー疾患を起こりにくくするためには乳幼児期のスキンケア(保湿)をしっかり行い「経皮感作」を防ぐことが大切だと言われています。

【参考情報】国立成育医療センター『アレルギーについて』
https://www.ncchd.go.jp/hospital/sickness/children/allergy/about_allergy.html

また、既にアレルギー症状が出ている場合には早期にアレルゲンを特定し、避けることが治療の第一歩です。

アレルゲンを特定する血液検査は呼吸器内科でも行うことができますので、気になる場合は一度相談してみましょう。

◆『呼吸器内科で行われる検査とは?専門的な検査を紹介します』>>

【参考情報】”Allergies” by Mayo Clinic
https://www.mayoclinic.org/diseases-conditions/allergies/symptoms-causes/syc-20351497

3.咳が出るアレルギー疾患


咳が出るアレルギー疾患には、喘息、咳喘息、花粉症、アトピー咳嗽などがあります。

3-1.喘息

喘息患者さんの気道は、症状が落ち着いている時でも常に慢性的な炎症が起こっている状態です。

そこにアレルゲンや冷たい空気、感染症などの刺激が加わることで気道が狭くなり、咳や喘鳴、息切れ、呼吸困難などが引き起こされます。

◆『喘息とはどんな病気?原因と症状を解説します』>>

喘息はアレルギーが原因の「アトピー型喘息」とアレルギー以外が原因の「非アトピー型喘息」の2つのタイプに分けられます。

小児喘息ではアトピー型が多く、成人の喘息では非アトピー型が多いと言われていますが、両方を合併している場合もあります。

◆『原因別・子どもと大人別の喘息のタイプ』>>

喘息は、長期的に付き合っていかなければいけない病気です。

通院や治療、服薬の継続はもちろんのこと、日常生活管理をしっかりと行うことで、発作をコントロールすることができます。

咳が2週間以上続く場合や息苦しさを感じる場合には、早めに呼吸器内科を受診しましょう。

【参考情報】Mayo Clinic “Asthma”
https://www.mayoclinic.org/diseases-conditions/asthma/symptoms-causes/syc-20369653

3-2.咳喘息

咳喘息は乾いた咳だけが長期間続く、喘息の前段階の状態です。

喘息と違い、「ヒューヒュー、ゼーゼー」といった喘鳴や息苦しさは伴いません。

主な原因としては、風邪などの感染症やアレルゲンなどが挙げられます。

これらの刺激がきっかけとなり、気道が過敏になることで咳反射が引き起こされます。

咳喘息の約30%は喘息に移行すると言われているため、「咳だけだから」と放置せず早めに治療を受けることが大切です。

◆『咳喘息の症状とは?喘息との違いについても解説します』>>

【参考情報】日本呼吸器学会『音のない乾いた咳だけが続く場合』
https://www.jrs.or.jp/citizen/faq/q03.html

【参考情報】”Cough-Variant Asthma” by Cleveland Clinic
https://my.clevelandclinic.org/health/diseases/25200-cough-variant-asthma

3-3.花粉症

花粉症(季節性アレルギー性鼻炎)は、花粉が原因で起こるアレルギー疾患です。

2章で説明したように、本来は無害であるはずの花粉を「異物」として認識されてしまうことで免疫が過剰に反応し、咳やくしゃみ、鼻水などのアレルギー反応が起こります。

春や秋など特定の季節に咳が止まらなくなったり、鼻水や目のかゆみなどの症状を伴う場合は花粉症によって咳が出ている可能性があります。

花粉症の場合は、マスクの着用や、部屋をこまめに掃除して花粉を取り除くなど、なるべくアレルゲンを避けるようにしましょう。

また、喘息の患者さんは花粉症の季節に喘息症状が悪化する場合があります。

事前に医師に相談して薬を貰っておくなど、症状が出る前に準備しておきましょう。

◆『花粉症の基礎知識』>>

【参考情報】”Hay fever” by Mayo Clinic
https://www.mayoclinic.org/diseases-conditions/hay-fever/symptoms-causes/syc-20373039

3-4.アトピー咳嗽

アトピー咳嗽はアレルギーが原因で乾いた咳、のどのかゆみや違和感などが起こる病気です。

喘息と似たアレルギー疾患ですが、喘鳴や息苦しさは見られないのが特徴です。また、咳喘息と違って喘息に移行することはありません。

アトピー咳嗽の患者さんの気道は、「咳受容体」というセンサーが過敏になっている状態です。

そのため、本来であれば咳受容体が反応しないような弱い刺激(運動や会話など)にも反応して、咳が出てしまうのです。

◆『アトピー咳嗽の基本情報』>>

これらの咳嗽を引き起こすアレルギー疾患のうち、気管支喘息(咳喘息含む)とアレルギー咳嗽の区別は重要です。(頻度は喘息の方が多いとされています)

初期症状はほぼ同一なのですが治療方針が大きく異なります。

アレルギー咳嗽は自然経過で重症化することはほぼありませんが気管支喘息は気道炎症を慢性的に起こしているので適切な治療をしていかないと重症化する可能性があります。

これは必要治療期間に大きくかかわるため正確に診断しないと治療方針があやふやになってしまいます。同じ慢性咳嗽でもこれらを念頭においた治療検査戦略をしていくことが重要です。

【参考情報】”Cough variant asthma and atopic cough” by National Institutes of Health
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC3463094/

4.アレルギーが原因の咳の治療


喘息は完治が難しいため「発作が起きない状態を維持して健康な人と同じような生活を送る」ことを目標に、長期間付き合っていかなければならない病気です。

喘息の治療には次の4つが重要です。

・定期的な通院、治療効果の確認
・毎日の「長期管理薬(コントローラー)」の服薬
・発作時に服用する「発作治療薬(リリーバー)」の適切な使用
・発作の原因を避け、発作が起こりやすい状況を把握するための日常生活管理

長期管理薬には気道の炎症を抑える「吸入ステロイド薬」と、気管支を広げて呼吸を楽にする「気管支拡張薬」があります。

症状が落ち着いているように感じても、気道の炎症は治まっていない可能性があるため、自己判断で断薬・減薬せず医師の指示通りに服薬を続けましょう。

発作治療薬は即効性があり、気管支を広げて呼吸を楽にする効果があります。

しかし、長期管理薬を使わずに発作治療薬だけに頼っていても、根本的な治療効果はありません。

正しい治療を行わずにいると、気道が炎症を繰り返すことで硬くなる「気道のリモデリング」を起こし、喘息が悪化する場合もあるため注意が必要です。

◆『喘息を悪化させる要因』>>

◆『喘息の症状とは。症状が出る時を把握しておこう!』>>

花粉症の治療は、基本的には症状を緩和する対症療法を行います。重症の場合は「アレルゲン免疫療法」や「手術療法」を行う場合もあります。

アレルギーによる炎症が軽い時期に治療を始めることで、薬の効きも良くなると言われています。なるべく花粉が飛散する前に対策し、重症化を防ぎましょう。

アトピー咳嗽の治療には主に、抗ヒスタミン薬や吸入ステロイド薬が使われます。

市販の抗ヒスタミン薬でも症状が落ち着く場合がありますが、他の呼吸器疾患が隠れている可能性もあります。念のため呼吸器内科を受診するのがおすすめです。

◆『アレルギー性の咳は市販薬を使用していいの?』>>

5.おわりに

アレルギーが原因で咳が出る場合、喘息や咳喘息、花粉症、アトピー咳嗽などが考えられます。

「熱はないのに咳だけ続く」「2週間以上咳が止まらない」という方は、アレルギー疾患や呼吸器疾患が隠れているかもしれません。

「咳だけだから」と甘く見て放置せず、早めに呼吸器内科を受診することをおすすめします。

◆『呼吸器内科とはどんな診療科?扱う病気と症状を解説します』>>

◆『咳が2週間以上続いている…・・風邪じゃない?』>>